人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オルガマリー「各員、レイシフトの観測を誤らないように。マスターが増えたのはいいけれど、皆の頑張りがなければ意味消失よ。しっかりお願いね」

ムニエル「任せてくださいよ、所長!」

シルヴィア「夏草の若いみんなには負けられないわ!」

ガストン「まるで若くないみたいな言い草だな…」

オルガマリー「ぼやかない。皆いずれおじさんおばさんになっていくのだから」

アカネ「私は喪女確定ですからね〜…」

ルル「そんなこと無いだろう、高校生から人生を投げるな、アカネ」

アカネ「だまれリア充!ピザをゆかなと仲良く末永くはんぶんこしろ!」

エル「僕は家族を養うお金をロボットに費やしたいのですので独身で!」

ルル「こいつら…!」

モリアーティ『もし、我が娘。少しいいかな?』

オルガマリー(作戦中です)

『重々承知だ。だが…割と緊急連絡なのだヨ!』

オルガマリー「……………………副所長」

ゴルドルフ「疲れ対策のクロワッサンかね?任せなさいよ君ィ」

「指揮権を預けます。少し席を外すので」
 
ゴルドルフ「えぇ!?ちょ、この状況で他があるのぉ!?」

ロマニ「ファイトです、ゴッフおじさん!オルガマリーはレイシフトできないだけのスーパー現場派なので!」

ゴルドルフ「君のほうが歳上だよねぇ!?ま、まぁオルガマリー君に限ってしょうもない用事なわけないだろう。なるべく早く帰ってきてね!」

オルガマリー「感謝します、副所長」

シオン「心労で痩せたりしますかねー?」
ダ・ヴィンチちゃん「健康診断どうなるかなー?」

ゴッフ「不健全なダイエット断固反対!!」

アイリーン『からかいだったら鼻の穴を一つにしてしまいましょうね、マリー』
(過激だわ、アイリーン…)


されど堕ちぬ雷切

「雷位、開帳」

 

その言葉と共に齎された戦を開始する一撃、それは設えた空間たる暗雲立ち込める草原を文字通り一閃する。それは、カルデアに在籍するものならば知らぬものはいない、藤丸龍華が手にした母との絆、極みたる位そのもの。比類なき、無双の剣の境地。

 

アタランテがカドックを連れ、超絶的な速度で範囲から離脱したのが功を奏する。マスター、サーヴァント共々灰燼に帰すといった最悪の事態は免れたからだ。しかし…。

 

「ッ………」

 

謎の鎧武者の眼前、紫電にて薙ぎ払われ焦土と化す。雷そのものを刃と化した一閃は、その一撃を対軍宝具に等しい威力へと上昇させていた。刀一本では到底起こせぬ絶技、それはリッカが振るうものと全く遜色ない正真正銘の極みと言わざるを得なかった。

 

「───!!」

 

だが、鎧武者は止まることなく二撃、斬撃と刀を振るう。それに比類する雷は柔軟に姿を変え、鞭や拡散する槍、機雷となって戦場を蹂躙する。カドック、並びにアタランテは立ち止まらず駆け抜ける防戦へと押し込まれてしまう。

 

「ゼウスの雷霆程ではなかろうが、それでも雷であることに変わりはない!しかもよりによって藤丸リッカの奥義をこうも振るってくる相手とは!」

 

アタランテも駆け抜けながら弓矢を撃ち、反撃を試みる。しかし謎の鎧武者は驚愕の対処をやってのける。

 

「──!」

 

『雷の弓矢』を、構えたのだ。

 

「なんと!?」

 

アタランテの持つタウロポスの一撃を、呑み込むような雷の大弓。雷位の一端だとするならば、それらは刀に収まらぬと無言で告げるかのようだ。

 

「!!」

 

そしてそれに収まる事なく、次は雷の大槍を投げ込んでくる。弓矢程巨大ではないが、両手で脅威の連射を誇る弾幕形成の体を取る厄介な戦術を展開する。カドックの驚愕は秒単位で上乗せされていく。

 

(汎用性、応用力が桁違いだ…!確かリッカが教えてくれた話だと位に目覚めたのは半年か一年かの期間、このサーヴァントが振るう熟練度はその比じゃない…!)

 

「────!!」

 

(弘法筆を選ばずっていうのはヒナコの国の由来だったか…とんでもない話だ、これが雷位の真髄って事なのか…!)

 

位に至れば、後はただそれを手足のように使うのみ。現代人のリッカが到達した事実こそが狂気であり、そして奇跡であることは疑いようがないが…戦に生きた英霊が振るう位には、また一味違う凄絶さが宿る。

 

だが──戦慄はしても、カドックは決して絶望していなかった。

 

(慌てるな。リッカを上回っているのはあくまで応用力と汎用性だ。本来だったら、開帳の時点で僕達は死んでいるに決まっているんだから)

 

そう、カドックの知るリッカの一閃は戦い、ましてや拮抗するなどという次元にない。雲耀神雷…そう冠された一撃は放たれたならば最後。人理を切り拓いてきた希望の一閃は、遥か高き目標としてカドックの心に焼き付いている。

 

(それに、極みに達した領域の剣士や戦士には、同じ領域に至った存在しか戦うなんてできない筈だ。それに世界に召し上げられた英霊が、中途半端な習得だなんて考えられない)

 

カドックは思考を巡らせる。アタランテを信じ、自身がマスターとして成すべき事を思案する。かのサーヴァントは、何を目的で招かれたのか。何故、問答無用で雷位を開帳したのだろうか。

 

「!!」

 

考える間にも雷位の披露は留まらない。次なる演舞はなんと、源氏棟梁が行うような分身だった。雷を材料にした手数の増やし方に、強引極まるとアタランテが忌々しげに息を吐く。

 

『カドック、大丈夫かい!?心配しないつもりだったけど流石に極みに至った剣士は危険すぎるぞ!』

 

ロマニの言葉に、少しだけ緊張が緩み一息をつく。そして思考の末、カドックは一つの仮説に辿り着く。

 

「ロマニ。…この戦闘を記録してくれ。一分一秒、見逃さないように」

 

『記録!?…あぁ、そうか!そういう事か!』

 

ロマニは緩いようでいて、比類なき知恵の覇者だ。カドックの真意を余さず理解し、その戦闘記録を鮮明な映像で記録する。

 

「彼、いや彼女かどっちかはわからないが…カルデアに招かれる筈だったサーヴァントであるならば、そして何かしら、強制力に縛られていると仮定するならば…!」

 

「「「「!」」」」

 

「彼が見せる雷位、あえて奥義を使わぬ基礎や応用を見せてくれているのには、きっと意味がある…!」

 

そう信じたカドックは、自らの最強礼装たる麒麟の軽装を展開する。そして思考速度と反応速度を上げ、アタランテの動きの精彩を助ける。

 

「念話で目指すべき地点を送る!少しの間堪えてくれ、アタランテ!」

 

「ふっ、誰にものを言っている?アキレウス程でなくとも、私は駿足でギリシャに名を轟かせし狩人だ!」

 

信頼を口にし、あえてサーヴァントの攻撃を引き出させる立ち回りを行うカドック。読みを外し、奥義を発動されたらその瞬間カドックの死が確定するが、今更死ぬ事や恐怖に竦む程彼は腑抜けていない。彼もまた、カルデアの誇る人類最高峰のマスターチームの一人なのだから。

 

(かのサーヴァントが遺してくれる記録は、きっと彼女にとっての値千金になる。…本来ならカルデアに来て懇切丁寧に教えてくれるつもりだったんだろうな)

 

二人が弓矢を放ち、一人が槍を投げ、一人が刀を振るい眼前を焼き払う。同時に暗雲から雷撃を落とす、雷そのものをムチで振るう、エンチャントを行う。それは物言わぬ、雷位の扱い方の示唆である。

 

(理性があるのかどうかは解らない。だが現界する魔力すらも攻撃に回し、宝具であろうそれらを乱射する。待っているのは当然、退去にほかならない)

 

カドックは鎧武者の行動を信じ、そして読み取る。それは彼が尊敬し、目標とする彼女の在り方を彼なりに再現した、洞察という技能。彼程論理的に、冷静に正解を導こうとするマスターはいないといっていいだろう。かつての卑屈や正確な現状把握が、この迅雷の戦場で彼らを生存させている武器となっている。

 

(リッカの先達として、カルデアにやってきてくれたんだな。でもそれは今回叶わなくなってしまったから、せめて…)

 

せめて、その技を遺さんが為に、見せられるもの全てを見せてくれている。カドックは鎧武者の行動を読み取った。

 

弓矢と雷飛び交う戦場、そこについに決着が訪れる。

 

「……………、……」

 

鎧武者が膝をつき、退去が始まった。全てを魔力に回した一撃を何度も何度も振るえば、それは必然だっただろう。そしてそれは、あちらも覚悟の上だった。カドック達は、鎧武者に歩み寄る。

 

「…あんたは、現代の雷位に自分の技を託そうとした。カルデアの、藤丸リッカに。そうだろ?」

 

「………お見通しか。敵の手に堕した我が身、せめてもの土産にと思ってな」

 

その声音から、このサーヴァントは敵ではないと確信する。鎧は束縛するものなのだろう。声をあげるも精一杯といった様子だ。

 

「サーヴァントは、敵にも味方にも変わる。此度は味方でありたかったが…ままならぬものだ」

 

「安心してくれ。その気持ち、あんたの技。余すことなくリッカは読み取る。…きっと、縁もな」

 

「──忝ない。ならば、生き恥を晒すのもこれまでだ」

 

誉れもない召喚を厭うたのか、名乗らず静かに座し消滅する。召喚は叶わなかったが、託すことは出来たと無言で告げるように。

 

「次があるかは、解らない。だが──私はいつも、汎人類史のサーヴァントだ。必ず、機があれば参じよう」

 

「そうしてくれ。流石に奥義…いや、真髄の伝授は顔を合わせてやってほしい。今のを掻い潜るのもしんどかったからな」

 

「ふふ…雷切の真髄、次こそは人理の為に捧げよう──」

 

その言葉は、彼あるいは彼女の真名に繋がるもの。彼女が託したものを、カドックは確かに受取り…

 

「……ますます、リッカの背中が遠くなるな…」

「望むところ、なのだろう?」

 

 

口調はため息交じりに、しかし視線は天を見上げ。カドックは笑うのであった。




オルガマリー「教授、並びにニャルさん。どうなさいましたか?」

モリアーティ『我が娘よ。実は我々、アメリカの基地で愉快なものを見つけてね』

オルガマリー「愉快なもの…?」

ニャル【あぁ、もしかすると本当に、私達はどのカルデアも知らぬ存在を、人類は真化の存在を手にしていたのかもしれないよ】

オルガマリー「…………?」

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