人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「急げ急げ!エレベーター急げよ!もっと速く動かないのかこれ!」


「騒ぐでないわ!肉体がある以上光速は出せぬ!数分の待てもできぬとはとんだ駄犬よな!保健所に出頭して処分されるがよい!狂犬病など撒き散らされては事だ!」

「んだと金ぴかぁ!!」

「ギル、挑発は程々に。モードレッド、静かになさい」

「ぐぬ・・・」


『・・・・・・』


「どったのゴールデン。静かになっちゃって」

『い、いや・・・なんつーか。ゴールデンな勘がデンジャーって叫んでるっつうか、ベリーデンジャラスっつうか・・・』

「?」


(無銘、この先に飢えた野干がいるから気を付けてね)


――ヤカン?


(ジャッカル、あるいはフォックス、狐さ。男日照りの哀れな狐。かなり癖のあるヤツだから適当に付き合ってあげて)


――な、なるほど・・・


「そら、見えてきたぞ。雷電の摩天楼、マキリの魔霧の果て、我が眼に焼き付けてやろうではないか!マキリの、魔霧よな!い、いかん!思いだすべきではふははははははははは!!」


「うるさいですよギル!人をからかったり苛立たせたりときめかせたり、忙しい人ですね――!」


「それが我よ!悪鬼か嵐のようなものと諦めるがいい!さぁ目を慣らせ!カビ臭い地下を抜け、地表に出るぞ――!」


――何が待っていようと、全霊をこめ打ち砕くまでだ――!


細やかな母の力添え

「ライトニンッ!!」

 

 

 

放たれる交流の天才たるニコラ・テスラの雷撃

 

 

電磁投射にて放たれる、紛れもなき電撃。腕から、掌から放たれるこの世で最も速き物質たる光の矢

 

 

(あー、なるほどー。雷を飛ばすからアーチャーなんですねー。地球のエネルギー放ってゴミを出さないとか超エコロジー精神なんですねー。尻尾がパーリパリするんで絶対御近づきになりたくはないんですけどぉ・・・)

 

荒れる尻尾の毛並みを丁寧にブラッシングしながら、階段の端でぼんやり玉藻が俯瞰解説を行う

 

 

 

「ははははははは!!これこそ我が人類神話の一端!神々のみの力であった雷を!このように自由自在に我が力とする偉大なりし天才の発露!このニコラ・テスラがアーチャーたる所以!あらゆる生物を畏怖させるこの雷電!それを、それを――!」

 

 

(えぇ、それを――)

 

 

――源頼光、そう名乗る武士は――

 

 

(なーんで剣やら弓矢で対応なさってるんですかあのMONONOFUは――!?)

 

 

放たれる雷撃を弓矢で叩き落とし

 

 

「むんっ!」

 

迫り来る雷撃を、事も無げに刀を振るい無力化し

 

 

「はぁああっ!」

 

 

返す刀に雷を纏い、返礼とばかりに打ち返す――!

 

(いやいやいやいやなんなんです!?何をあの女武者は当たり前のように雷迎撃して打ち払ってんです!?雷の威厳武練とか修練とかでなんとかされたらたまったもんじゃねーですよ!雷神とか威厳形無しなんですけど――!!)

 

 

「素晴らしい!素晴らしいぞオリエンタル・レディ!雷を制し、雷を束ねまた雷を使役する!貴女もまた、神域に到達せし者か!雷電、雷の力を纏いし英霊か!ははははははは素晴らしい!特にその肉体!超弩級の胸が!素晴らしい!!」

 

 

大笑と共に心からの称賛を送るテスラ。その言葉に偽りと憤りはなく、ただただ楽しげだ

 

 

「まぁ、お上手ですわ。ですがこれはほんの手遊びのようなもの。そしてれっきとした対処法があるのですよ」

 

 

「ほう!我が雷霆、我が神話に綻びがあると!?是非、ご教授いただけはくれまいか、マスラオ・レディ!」

 

「マスラオ・・・ぐすっ、間違ってはいませんが・・・いいえ、いいえ。今はぐぐっと耐えましょう。まだ見ぬ我が子と、愛する我が子の為と思い」

 

(いや、片方はともかく片方は許可すら、というか面識すらないんです?当たり前のように我が子認定、おかしくないです?)

 

涙を払い、頼光は告げる

 

 

「よいですか?雷には放たれる前に先んじて疾る一筋の稲妻『すとりーまー』という現象が起こります。これは雷である以上、必ず発動なさいます。言わば、着弾する場所を指南している弓矢のようなもの」

 

 

「――――」

 

「――位置を教える攻撃など容易く払えねば源氏の棟梁の名折れ。いかに疾く走ろうと場所が解るなら――えぇ。えいっと。やぁっと」

 

フォンフォンと刃を振るい、放たれる雷を容易く無力化し打ち払う

 

 

「えぇ、えぇ。このように」

 

弓矢を雨霰のように放ち、総ての雷を発生させる前に放ち穿つ

 

 

「『雷を祓う』など容易き事なのです。私の腕前程度でできるならば、綱や金時は余程上手くやりましょう。ね?簡単でしょう?」

 

 

にっこりと笑う頼光

 

 

「源氏流『くわばら雷対処指南』です。参考になりましたか?」

 

 

「――――は」

 

 

(――ね)

 

 

一瞬の沈黙の後

 

 

「ははははははははははははははははははははは!!なんと!なんと極まりしアーツか!凄まじいサムライか!これがジパング!神秘なりし黄金の技か!実に!実に素晴らしい!」

 

 

(ね?じゃねぇですよこの激ヤバペアレント――!!誰がそんなの簡単にやれるってんですか!ただし源氏に限るって注意書きしてもらえます!?金時さん早く!こちらの日本のやべーやつを引き取ってもらえませんか!?見せ場が!見せ場がなくなっちゃいますよ――!?)

 

 

「ふふふ、あらあらまぁまぁ、そんなに目をまるくして。これはほんの露払い。私の役目はこれからですわ」

 

ちゃきり、と剣を掲げる

 

 

「貴方を調伏するは我が子の役目。母はけして我が子の成長を妨げはしません。――ええ、ただ。細やかに手伝いをするのみ。ですので――」

 

 

――雷が、爆発するかのように迸る

 

 

「この輝き!真なる力を見せるか、マスラオ・レディ!」

 

 

「えぇ、我が子が思う存分戦えるように。力を憂い無く振るう事が出来るように」

 

 

放たれた紫電の雷は掲げた刀から縦横無尽に放たれ、ロンドンの天空を走り、駆け抜け、疾走し

 

 

 

「――その目障りな霧は総て、この母が『没収』させていただきますね?」

 

 

「ぎゃわ――――!!!!誰彼構わず味方の私も感電させんのやめてくださいませんですかこの鬼子母神(バーサーカー)――――!?」

 

 

感電し毛並みを総立ちさせ頭を抱え伏せる玉藻

 

 

「まぁ・・・すみません。ですが、あなた様は天照の分御霊、私の攻撃など容易く」

 

 

「スケールダウンしてるんですから容易くね――ですよ――――!!そこんとこ解っているんですか牛女――――!!」

 

 

「では歯を食い縛り、耐えましょう♪」

 

 

「マジこのホルスタインやっべぇ――――――!!し――っぽがぱーりーぱーりーすーるーー!!」

 

 

無差別に放たれる雷撃は、霧に許容限界を遥かに越えた魔力を叩き込み

 

 

「むうっ!!活性を越え!許容を突破し!オーバーロードを果たし、霧が行き着く果ては、行き着く先は――!!」

 

――頼光が、ゆっくりと剣を下ろす

 

「――はい、確かに」

 

・・・辺り一帯の霧は、総て

 

 

「魔なる霧、吹き晴らしていただきました」

 

 

影も形もなく、消え去っていた・・・

 

 

「――これほど、か!ははははははは!!これほどか!天の英霊!地の英霊!目障りなれどこれ程の威を持っていたか!素晴らしい!ライトニング・マスラオ・レディ!君に心からの敬服を!新たなる雷神に比肩する、素晴らしき雷電を目の当たりにした貴女こそ!我が目論見を阻みし者に相応しい!」

 

 

「えぇ、私の役目は終わりです。お気をつけてお進みください」

 

 

にっこりと笑う

 

 

「む――?」

 

「は!?ちょ、は!?ナニいってんですこの牛女!?止めないんです!?ここまでやっといて素通りさせるんです!?」

 

「?えぇ、そうですが?」

 

何を慌てているのか、と言わんばかりに問う、頼光

 

「私が行うのは魔霧の払拭のみ。それを果たした以上、ここに留まる意味は無いでしょう?」

 

「あ・り・ま・す・よ!あのライトニングさんを止めなきゃ!人理とか色々終わるんですよ!?今が絶好のチャンスじゃねーですかぁ!?」

 

「はぁ・・・玉藻さん?」

 

 

「はい!?」

 

 

「『世界の終焉(そんなもの)』より、私達には優先せねばならぬ事があるでしょう?」

 

やれやれ、と首を振る。まるで幼児の駄々に困る母のように

 

 

「そんなもの!?」

 

「えぇ、私達には・・・」

 

 

ビシッ、と階段の下を指差す

 

 

「『今まで頑張った我が子達を労う』という、母としての使命があるのですから!いつまでも世界の救済などにかかずらっている場合ではありません!」

 

 

「うきゃ――――――――――!!!マジ鬼種めんどくせ――――――――!!!」

 

 

ふしゃーっと叫ぶ巫女狐

 

 

「試練を越えるために、しっかり子を愛し励まし労らなくては!さぁ行きますよ玉藻さん!あなたの陣地作成スキルで茶屋の一つをこしらえるのです!」

 

むんずと着物を掴み、凄まじい力で引きずり階段を下りていく

 

「うきゃー――!!着物の端を引っ張らないでくださいましポロリしちゃう脱げちゃいますなんですかこの扱いエクステラのサブサーヴァント扱いといい私の不遇が極まってないですが(コン)チクショ――――――――――!!!!」

 

 

「では、テスラ様。ごきげんよう。いずれ辿り着く我が子達を、どうぞ宜しくお願いいたします」

 

ぺこり、と頭を下げる

 

「さぁ、玉藻さん?わがままを言ってはいけませんよ。母の言うことは聞くものですわ」

 

「私の母はナミです最古のヤンデレです最古の離婚夫婦です!断じて私がママになるんだよ女じゃねぇ――――ですよ――――!!うわぁあぁんご主人様!まだ見ぬご主人様!!玉藻をもふってなぐさめてくださいましぃ――――!!」

 

 

母の決意と、狐の涙が、ロンドンに響き渡った・・・

 

 

「・・・ははははははは!天才は過去を振り返りはしない!さらばだジパングのマスラオレディ!そして、オリエンタルフォクシー!はははははははははははははは!」

 

 

テスラはゆっくりと、バッキンガム宮殿へと歩みを再開したのだった・・・




「ついた!!わ!階段がある!」 



「ハッ!飛んで行けば片が付くものを、このような階段まで用意するとは気が利くにも程がある!余程の自信家か停止を懇願しているかあるいは両方か!ふはは!星の開拓者とは奇人変人ばかりよ!なぁダ・ヴィンチ!」

『変人じゃないですぅ―!パンピーには解らない感性なだけですぅー!』

「まぁ我的に天才の悲哀や苦悩などどうでもよい!誰にも理解されぬまま部屋の一室で孤独に生を終えるが定番であることくらいであろうさ!さて、収穫の時だ!あくせくこのくだらぬ大仰な階段を・・・」


「皆!見て!あれを!!」


――なんだ!?

「どうしたのだマスター!戦いは最終局面、サブイベントなどにうつつを抜かしている暇は・・・」


『みこっと!源茶屋』 

「えぇ、ようこそいらっしゃいました」

「ど、どうも~・・・私、巻き込まれたただの天照でし――」


「?」


「――っあ」

(――めぇえっちゃくちゃイケ魂キタ――――!!ボロボロで傷だらけなのにそれがワイルドさに繋がって危ない雰囲気醸し出してます!?根の国色の闇を抱えながらそれを遥かに上回る輝きを放つとかとかDO・ND・A・KE!?誰がどれだけ魂を磨いて磨いて磨き抜けばこんなズタボロの魂が金剛石みたいな形になって真っ直ぐ輝きを放たせられるってんですか――――!?まさに天然ダイヤモンド!道端で掌大の磨かれぬいた宝石拾った感じ!眩しい!眩しいぃ!たまもちゃん不覚ぅ!輝きで遅れを取っちゃうとか!ぶっちゃけ・・・!――抱いてほしい・・・っ!)

「だ、大丈夫?顔が赤いけど?私は藤丸立香。可愛らしいお耳の人、お名前は?」


「はっ、はひっ!わたっ、わたくし・・・たまものまえと、もうしましてぇ・・・」

「玉藻・・・可愛い名前!私には解る!あなたは誰かに尽くして一緒に幸せになりたいタイプ!良妻賢母だね!」


「きゃ――――!!玉藻見抜かれちゃいました――――!もうアタックしか、ねぇ!あのぉ、リッカさん・・・もしよろしければぁ・・・ごしゅじ」

「む?なんだ狐ではないか。アレか?何処ぞの誰かに出逢いを潰され、涙を流して傷心旅行、といったところか?」

「どの口がほざきやがるんですか金ぴか――!!アナタのせいで私のごしゅじ、ん、さ・・・」


――?


「・・・ぁ・・・」



(な・・・なんですかこのピュアっピュアな魂の王様――!?無垢!あまりにも魂が無防備!穢れを知らず隙だらけ!白い無地のキャンパス!サファリに肉をぶら下げた人間!?いやなんです!?誘ってんです!?玉藻をおいでおいで♥してるんです!!ああっあまりにノーガード過ぎて野性がっ!ケモノの本能がうずきだしてきますぅぅう!!らめぇえぇ玉藻理性飛んじゃう見た目成金イケモンなのに襲いかかりたくなっちゃうのぉおっ!!静まれ――私静まれ――!ケダモノに、ビーストになるのははぇえってんですよぉ!でもしこみたい!この純真無垢な魂を私の色に染め上げてコロコロしてやりたいですぅ――うきゃぁ――!!誘い受けた――ま――――ん――――ね――――!!!♥♥♥)

――綺麗な人だなぁ・・・キャットにそっくりだ。あ、耳も尻尾もある。かわいい

「フーッ、フーッ・・・!フーッ!!」


「――何を発情しておるのだ、気色の悪いヤツよ。性処理なら家畜小屋で一人寂しく角に股座でも擦り付けておくがいい」

(やばい!やばいです!今話しかけられたら理性が!理性が――!!)

「はなしかけねーでもらえます!?」

――あっ・・・

・・・嫌われてしまったみたいだ・・・


「フン、言われずとも貴様のような畜生、視界に入れるのも憚れるわ。女狐が。かの勤勉かつ甲斐甲斐しいキャットめとどうしてこうもかけ離れるのか、不思議なものよな・・・」

「あっ――違うんです違うんです今のは私の失言ですごめんなさい私の口がかるぅございました――!!罪悪感で死にそうです――!!いっそ殺生石に敷いてください――!!」


「ふふ、あなたさまが藤丸立香様・・・えぇ、まぁ、まぁ・・・」

「・・・?こ、こんにちは・・・?」

「・・・私と同じ・・・おぞましき澱みと諸人を惹き付ける光を備えたお方・・・あなた様なら・・・えぇ・・・」


「茶屋みたいです。休憩していきましょう、ギル」

「状況を把握しているのか貴様は。まぁ、急いては事を仕損じるとも言う。我の口に合う金箔菓子は取り揃えていような」


『頼光の大将!?』

「えぇ、母ですよ。金時」


『ご主人、オリジナルだ、殺せ』

「キャット!?」

「やっべぇ――――!!!」

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