人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カーマ「ガルーダ…まぁヴィシュヌならいいでしょう。いけすかない優等生ではありますが、それ故無害ですし」


(問題はシヴァ関係者が来るということ…私としてもあまり見たい顔はいませんからここは祈っておくしかありませんね)

「どうかシヴァ関係者が来ませんように…ん?」

(…誰が聞き届けるんでしょうか、この願い…)

「……とにかく!せめてルドラさんとか話のわかる方が来ますように…!」

パールヴァティー(トイレが長いですね、カーマ…サーヴァントなのに…)


近付きがたき者

「誉れも高き戦女神、ドゥルガー。お逢いできて光栄の至りですわ。私はカルデアのマスター、スカンジナビア・ペペロンチーノ。アシュヴァッターマンの御力を借りている身でございます。偽名でありますことをどうぞお赦しくださいませ」

 

多腕のかわりに鎧を着込み、射殺すような戦気と威光を示しているドゥルガーに、ペペロンチーノは最大限の礼節を払う。アシュヴァッターマンは勿論、ベリルもすかさず平伏し頭を垂れる。

 

(冗談じゃねえ、ドゥルガーといやあ神様連中が戦いのために用意したマジモンのバトル担当じゃねぇか!そもそも神霊なんかがランダムで来るなっての!)

 

ドゥルガー。神々に狼藉を働いた一族を滅ぼすためシヴァ、ヴィシュヌを始めとした神々の祝福を一身に受けたパールヴァティーの別側面。この姿においても強く、そして苛烈ではあるが…彼女の先に、決して顕現させてはならない神格がいる。そう、彼女の夫ですら止めきれないほどに血に狂う女神の顔が。ベリルはそれを知っているため、戦うなどという考えを捨てる他無かった。

 

「うむ、代表の名乗りを知ればそれでよい。そも此度は戦いに来たわけではない。我が眷獣、ドゥンの召喚を歪めた者を仕留めに割り込んだだけの話であるからな」

 

「あら…偉大なる眷属、ドゥンをカルデアに差し向けてくださったのですね?」

 

ドゥルガーは静かに頷いた。見た目自体はパールヴァティー、カーマと同じである疑似サーヴァントなのだろうが、固く結んだ口許と鋭い目つき、剣のような硬質な声音が類似を全く感じさせない。彼女は、人の形をした威圧であった。不興を買わぬよう、ペペロンチーノが慎重に会話を続けていく。

 

「我が夫、シヴァはお前たちカルデアに協力的だ。我等がインドの何者かが狼藉を働けば必ずやその威光を示すと言う程度にはな。今は神霊の座にて深き瞑想に耽っているが、ルドラからあらましは聞いている」

 

「シヴァ様のご助力まで!これは素晴らしき福音でありましょうぞ!」

 

「うむ。その証として我等が息子、ガネーシャを派遣しようと考えたのだが…アレに合う依代がその、こう…」

 

言い淀み、そしてまぁよいと会話を切る。何やらガネーシャは前に出せぬ何かが起きているようだ。

 

「なので、ナンディかドゥン、どちらかを派遣しようとしたところ、パールヴァティーに置いていかれた事を拗ねていたナンディは傷心しこれまた瞑想に落ちた。必然的にドゥンしか動けなかったので、召喚に我が眷属を選んだという訳だな」

 

(インドってスケールデカいのに無駄に繊細だよな)

 

(口を慎みなさい。不興を買うわよ)

 

「だが、ついでという体で力を貸すなどと勘違いされてはシヴァの人格や格式を落とすことにも繋がろう。故にこうして私も随伴し、ドゥンを直々に託そうとしていたのだが…その召喚に干渉するものを知った」

 

ドゥンの見送りとしていたところ、景清による召喚の歪みを感知したドゥルガー。狼藉は許さぬとなんとドゥルガー本人が先んじて招かれてしまった…というのが彼女が在りし理由であるのだという。彼女はあくまで、ドゥンとシヴァの為にここにやってきたのだ。

 

「我が召喚を阻むなど無礼狼藉の極み。首を跳ねカルデアの手土産にしてやろうかと思ったが…アスラどもほどの無礼でもなし。今を生きるお前達こそが適任と知り、こうして接見するに留めていたのだ。どうだ?カーリーと違い理性的だろう?人狼」

 

(やべぇ、見透かされてやがる…!)

 

「恐れは良い。神への正しき感情だ。カーリーの前身、カーリーの下位互換、などと浮かべていれば即座に殺していたがな。フフ。皮肉だが…カーリーの威光に感謝することだ」

 

その時、ほんの少しだけドゥルガーの雰囲気が和らいだ。彼女も、ただ威圧と戦慄を撒き散らすばかりの女神ではないと言うことであり、そこにあるのは友好的なものである。

 

「お前達人間はよくやっているよ。マーラを興させぬその善性、私もシヴァも高く評価している。カルナ、ラーマ、アルジュナといった者たちもよく力を振るっているようだからな。私としても実に喜ばしい」

 

「えぇ。インドの生み出した英雄はみな規格外の素晴らしき方ばかり。ここにいるアシュヴァッターマンも勿論その一人ですわ」

 

「マスター…はい、我が身も粉骨砕身の覚悟で戦いに臨んでおります!」

 

「うむ。神の時代は去り、今は人が生きる時代。けして負けられぬ戦いであろう。人類が積み重ねてきた全てを懸け、あらゆる全てを討ち倒せ。アスラの如き敵に容赦はいらぬ。敵を全て滅ぼすが故に戦いはある。惑わず、躊躇うな」

 

その真言はまさに苛烈かつ凄烈なものだ。戦いを躊躇うな。敵は討ち滅ぼせ。その先に勝利と栄光はあるのだから。戦いの側面に相応しき激励は、ベリル、ペペロンチーノ、アシュヴァッターマンの魂を震わせる。

 

「肝に銘じます。その敵を過たぬよう、人として正しき道を皆で歩いていくと誓いますわ、女神ドゥルガー」

 

「真言、魂に刻ませていただきました。シヴァ神にこの栄光を捧げましょう!」

 

(おっかねぇので黙っている)

 

「よし、では私は退去する。カーマはシヴァを嫌っておるだろうし、私もあまりいい顔をされぬであろうからな。カーマが安らぎを得ているというなら、壊してやるのはよくあるまい」

 

そしてドゥルガーは退去していく。次に彼女に会うとすれば、それはインドに異常が起きた時が予測されるだろう。

 

「我がドゥンはよく気の利く獣だ。どのような姿見であるかは分からぬが、インドのサーヴァント達にならば理解されよう。お前達、狼藉を働いた輩は必ずや仕留めるのだぞ」

 

「えぇ、何から何まで本当にありがとうございます。その期待、決して裏切る事は致しません」

 

「うむ。さらばだペペロンチーノ。アシュヴァッターマン。並びに縮こまっている人狼よ。カリ・ユガの世を打ち払わんとするとき、再び巡り合わん」

 

最後まで風格と威圧を崩さず、ドゥルガーは消え去った。そして入れ替わりに、燃えるような虎の四肢を有サーヴァントが現れる。

 

「話の通り、サーヴァント・ドゥン。召喚に応じ参上した。シヴァ神、ならびにドゥルガー神の顕現まで場を整える役割を背負う。どうかよろしく頼む」

 

ドゥンの挨拶により緊張が弛緩したのか、ぐったりと倒れ伏すベリルとペペロンチーノ。

 

「いっや〜…ヒヤッとしたわねホント。ドゥルガー様だけであんなに恐ろしいなら、カーリーってどうなっちゃうのかしら…」

 

「見ただけで発狂しちまうんじゃねぇかな…人間の見た目であれだぜ…?」

 

「…主がお騒がせをした」

 

「まぁ気にすんな!よろしく頼むぜ、ドゥン!」

 

ドゥンは歓迎と共に迎えられる。彼はシヴァ夫妻が送った、友好の証でもあるのだから。




カーマ「………………………………………」

ドゥン「あ、あの。カーマ殿」


カーマ「………………………………………」

ドゥン「カーマ殿…」

そしてカルデアにて、カーマ渾身の圧を受ける不憫なドゥンでありましたとさ…

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