人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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イザナミ(縁の召喚…日本の誰かとめぐり逢いたもうや?会っちゃう?誰かと会っちゃう?)


「おばば、そうなったら今度こそ威厳をなんとかしたいですね!せめて、頼れる知恵袋みたいに!」

(しかしそうなると、私を知らぬ日本の英霊が望ましい?)

「…多分いないでありましょう…ナギとナミ、原初の離婚調停者たち…あなや…」

アスカ(日本の女神様が一喜一憂してる…)

ヤマト(天皇の十倍以上偉い方なのにね)

「ワンチャン!ワンチャン私を頼れる女神と誤解している方来たもう!そう、お婆ちゃんは皆に頼られる〜♪素敵なおばば〜♪」

((誤解って言ってる…))

「…いつか会えたらいいですね、ヒルコ…おばば、待っておりますよ…」

ルル「イザナギ様とは…」

イザナミ(うずくまり)

「ノーコメントの構えを!?」


情念の行末

「調査、とは言ったものの。こっちや夏草には被害の予想は無いっぽいのよね。寸断された跡もなし、傷つけられた跡もなし。ホント、執念の一つで人界にやってきたとしか言い様がないわ」

 

ぐっちゃんことヒナコは、アイリスフィールと共に夏草の霊脈を確認しにやってきていた。霊亀と応龍、そしてイザナミの力があればたとえ枯れ果てた土地ですら息を吹き返すことだろう。

 

「誰か以外は傷つけるつもりはない、という意思表示なのかしら。無辜の民を傷つけない分別が備わっているの?アヴェンジャーに?」

 

アイリスフィールの素朴な疑問に、ヒナコは答える。もう本はないが、調査をしながら真摯にぶっきらぼうに仲間と関わる。

 

「それをやったら、アヴェンジャーじゃなくてバーサーカーね。誰彼構わず傷つけるならそれはもう狂乱、気狂いというべきものよ。だからこそ、アヴェンジャーは振り下ろす刃の先を選べるものが選ばれるの」

 

「まぁ、お詳しい…」

 

「Aチームの時、訓練や座学で教わった事の丸暗記よこんなの。要するに、源氏憎しなだけで他がどうでもいいならアヴェンジャー。源氏がいる世界を許さないならバーサーカー。そんな区分けじゃないの?」

 

ヒナコもまた、座学くらいには参加していたのでアイリに違いを説く。アイリスフィールは素質という面ではキリシュタリアに並ぶ、或いは上回る存在だがそういった教養は少し疎い。そういう意味では聞けば答えるヒナコは中々に相性が良しなのだ。

 

「とは言っても、それじゃあ弱体化は狙えそうにもないわね。あの秘宝を掠め取るしかないか…とにかく、霊脈はイザナミに報告して任せましょう。私達がするべき事はないわ」

 

「えぇ、解ったわ。ありがとう、ヒナコさん」

 

「…まぁ、これもマスター活動の一環よ。戦うのは面倒くさいから、こういった後方支援のほうが私好き。面倒くさくないからね」

 

ものぐさで面倒くさがりと彼女は言うが、仕事に手は抜かない義理堅さが顔を見せている。そんな彼女も当初はそうでなかったであろう事から、カルデアの環境の良好さがうかがえよう。

 

「…じゃあ、今回の黒幕はどうしてこんな事をしようとしたのかしら。もし、サーヴァント達を糧にして復讐したい相手を呼べたとして、復讐が目的…?」

 

その目的に、アイリは違和感を覚えた。前提としてサーヴァントは死者である。英霊の一側面を切り取って現れた存在であり、広義な意味では本人ではない。そんな存在が、果たして復讐を遂げられるのだろうか?

 

「まぁ、確かに道理は通らないわね。サーヴァントが何をしようと、それは改変にはならない。座で本体が本を読むように記録されるだけ、決して生前が書き換わることなんて無いでしょう」

 

「そう、よね。だったら今回の黒幕は…破綻していないかしら」

 

何も変わらない、何も起こらない。ならばその復讐はなんの為か。アイリの疑問に、ヒナコはなんとなくで答える。

 

「理屈じゃないのよ、多分。そういう怨霊で、そういう英霊で、世界に刻まれた。きっと理屈なんてそれだけよ。理屈や道理で復讐するのは正当かもしれないけれど、そうじゃない奴等だっているでしょう。今回はそういうやつが引き起こした事件って話なのよ。理屈や理由なし、ただ、憎いだけって理由でね」

 

復讐者に道理はいらない。黒き炎と情熱に焼かれながら、復讐の成就をただ願う。その後にどうなるか、どうするかなどは考えもしないのだろう。眼の前の怨敵こそ、自身の全てであるのだから。

 

「そう言われると…苛烈で哀しいわ、アヴェンジャーという英霊は。何かを憎まなきゃいけない、いえ…憎むために生きているだなんて」

 

それを果たさなければ死ねない。それを成し遂げなくば生きれない。狼王やマリーといった憎しみの化身は、最早それだけが自らの寄る辺であるのだろう。ジャンヌオルタのみが唯一、憎悪を補填、凌駕するような運命を手にしたが、そういった出会いは早々に用意などされていまい。

 

「…まぁ、その意見には同意だけど。憎むだけじゃ多分無いんじゃないのかしら」

 

ヒナコは柄にもないと思いながらも、復讐者を読み解く。彼等を知るには、愛を知らねばならぬからだ。

 

「理屈も道理も全部蹴っ飛ばしてやりたいことがある。それはきっと、それだけ何かを愛さないと無理なんじゃないかしら。ほら、イザナミだってイザナギを愛して、覗き見されたからあんなに怒ったわけだし」

 

情なきものに復讐成らず。愛なきものに獣たる資格なし。それは世に刻まれた、愛という不確定要素を元にする絶対的な法則でもある。

 

「景清やら義経やらも、根底にあるのはただの憎しみじゃないんじゃないのかしら。アヴェンジャーは必ず誰かに情を向けるサーヴァントであるのなら、それぞれ情を向ける筈の相手がいるんでしょ、多分」

 

それが彼女の語るアヴェンジャー理論だ。ならば黒幕である彼女らには…必ずや、何かの想いがあるはずなのだ。

 

「!ヒナコさん、これって…!」

 

その時、アイリはとあるものを見つけた。それは…景清が用意していたのであろう黄金の杯。

 

「わざわざ持ってたのに使わなかったわけ?どういうつもりなのかしら…ん?」

 

そしてそこには、義経のものと思われる刀剣と、脇差しが寄り添うように置かれていた。それは、何を意味するものであろうか。

 

『あなや…それはきっと景清の意思表示なのでありましょう。武士の魂たる刀を、聖杯と共に置く。歪めず、使わずそこに置いた。世を乱す力は振るわなかったという類の』

 

イザナミが、その意志を読み取る。聖杯に邪気は在らず、刀は静かに光り煌く。そこに邪、不埒は見受けられない。

 

『義経に罪過なし、悪は景清のみ。…そんな決意を感じます。宿った景清は、きっと義経の無念を汲み取り、僅かなりとも癒やすために…』

 

幻霊、或いはシャドウサーヴァントとして這い出た怨霊は、やがて義経を召喚したのだろう。そして、彼女と共に此度の事件を催した。

 

『義経もまた景清を憎み、厭うている訳ではなさそうです。イザナミ感知能力的に、険悪なものは感じられませぬ故…』

 

「…なのだとしたら…」

 

そう、なのだとしたら。彼の、彼女らの願いは怨敵調伏ではなくもっとシンプルであるのやもしれない。少なくとも…

 

「ま、そこは上手くやるでしょ。全員お人好しなんだから上手く、ね」

 

ヒナコはそれだけを告げ、刀と聖杯を回収する。義経と景清、その決着は近い。

 

「じゃぁ浄化は頼むわね。仕事は終わったわ」

 

『あなや任せたもう、ぐっちゃん!』

 

(…遥かに歳上なので訂正させられない)

 

「英霊…本当に多種多様ね…」

 

今回は召喚した縁には出会えぬ二人であったが、いや、それこそが縁なのやもしれない。

 

義経、景清。憎悪の裏に秘めたる二つの想い。それがカルデアに託された縁そのものであろうか。




──そして、リッカは相対する。


リッカ「源…義経…」

源義経『………』

満月の夜、静かに笛を吹き鳴らす此度の黒幕へと。

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