「ギルが遅れを取り戻すようにとカスタマイズして作り上げたものらしいです。壊さないでくださいよ。修理代は円卓請求らしいですから。もしもの時は霊核売ってください」
「死ぬだろそれぇ!?あれ、父上のバイクはねーの?モータードなんとか、それに、そのメンテしてるバイクはあの金ぴかのうぉっ!?」
「煩いですねモードレッド。メンテの邪魔です。黙るか死ぬかどっちかになさい」
「スパナ投げんなよぉ!?死ぬだろ当たりどころ次第で!」
「チッ。――私のバイクはいりません」
『アルトリウムロード装置』
『ドゥン・スタリオンワープ装置』
「私には・・・ちゃんとシートが用意されていますから」
『小柄な女性用特注シート』
「・・・知りませんでした。貴方はきちんと気遣いができたのですね、ギル。・・・ふふっ」
「あ、父上がわらっ」
「カリバァアァアァアァア!!!」
「オレのプリドゥエン――――!!!」
霧が全て晴れ、澄み渡るロンドン
ロンドンの一角に現れた本格的な日本茶屋
そこにて、一時の交流が行われていた
「えぇ、では。改めまして自己紹介などさせていただきますね」
一室にて正座し
「私、セイバー・・・では、ではなくて。バーサーカーの。源頼光と申します。未来を救わんと奮闘せし我が子、それに力を貸す我が子を助力せんとする我が子の力になりたいが一念にて、現界致しました」
深々と頭を下げる
「どうぞ、末永くよろしくお願いいたします」
――凄い
気品、風格、佇まい。どこをとっても隙一つない・・・完璧以外形容しようのない美しい立ち振舞い
柔らかに笑い、マスターを見つめる慈愛に溢れたその目は・・・優しい光が宿っていた
「・・・極東の神秘殺し。マスターの魂に救いを求め顕現するとはな」
――神秘殺し?
『あー、頼光サンは日本の都を守護してた大将だ。その神サマも震え上がって鬼も啼いて赦しを乞う暴れっぷりで片っ端から怪異、鬼に土蜘蛛一切合切斬り倒して伝説になった、俺ら頼光四天王のヘッド、日本最強のサムライっつーわけよ』
「か――カッコいい・・・!!チャンピオン!チャンピオンなんだ!!怪物バスター・・・!最強のサムライ・・・!!かぁっこいぃ――!!」
キラキラと瞳を輝かせるマスター。・・・喜びかたが完全にスーパーヒーローを目の当たりにした・・・
『女性だったんだね!?頼光さまは女性だったんだね!?』
『・・・歴史家も適当なのね、意外と・・・』
驚きと開き直りの通信陣営
「はぁ・・・金時?」
若干沈んだトーンで語りかける
『な、なんだよ頼光サン?』
「何故そのような無粋な言葉で私を表すのです?ヘッドだの暴れっぷりだの最強のサムライなどと・・・えぇ。確かに私はそのような些事をこなし、虫を潰し、都を守護はいたしました。――でも」
うるうると目を潤ませる
「『それが私の本質』であるように語られるのは大変心外です。――母は哀しいです。寝食を共にし、深く結ばれたと信じていた我が子に、そのような事を言われては・・・私・・・」
口を抑えて
「泣いてしまいます~・・・よよよ~・・・」
「金時、謝って」
『う、うぇ!?大将!?』
「お母さんを泣かせちゃダメ。心が繋がってるなら尚更。愛を当たり前と考えちゃダメ。一言でいいから」
『り、リッカくん?なんか、怖くない?』
「私、解ってるから。当たり前の愛なんか無いし、一回心が離れたらそれで終わりなんだよ」
――マスターは真剣だった
それ以外の対応は認めない、許さないという意志すら感じるほどだ
『あ、あぁ・・・すまねぇ、頼光サン。俺が無粋だった。頼光サンは立てた武勇と同じくらい・・・『愛が深ぇ』御方だもんな』
「えぇ、えぇ!母は嬉しいです!最初からそのように言ってくれればよいのです!照れ屋な我が子には困ったものです!えぇ!」
ぱあっ、と満面の笑顔になる頼光を見て、マスターもにっこりと笑う
「――うん!ごめんね、ゴールデン。無理矢理迫って。・・・心はね、些細な一言で離れていくの。当たり前の愛なんて、どこにもないの。例え、家族だって」
『・・・大将?』
「当たり前の感謝を忘れないで。あなたを心配してくれる人達を当たり前だと思っちゃダメ。『あなたに期待してごめんなさい』なんて・・・言われないようにね!あははっ!ごめんごめん!」
――あなたに、期待して・・・ごめんなさい・・・?
「――・・・それはマスター、お前が言われた言葉か?」
「ん~?忘れちゃった!昔のはなしだしね~」
――もし、それが家族から言われたものだとしたら・・・
・・・マスターの闇は、想像より深いのかもしれない
「――・・・」
すっ、と頼光が立ち上がり
「~わぶ?」
マスターを、その胸に抱きしめる
「・・・?頼光さ」
「母と」
「・・・?」
「母と、御呼びください。良いのですよ。甘えても。あなたは、甘えても良いのです」
ゆっくりと、頭を撫で、優しく囁く
「貴女は強き子。戦場を駆け、傷付くことも怖れず戦う女傑。その輝きには、あらゆる者が魅せられましょう。私も、その姿を遠くより目の当たりにしておりました。ええ、えぇ。本当に輝かしく、素敵な貴女・・・けれど」
「・・・暖かい・・・」
「けれど、えぇ。戦場に安らぎなく、誅罰に果てはなく。その心は凍てつくばかりでしょう。・・・辛かったでしょう。哀しかったでしょう」
ゆっくりと背中に手を回す
「――御会いできて本当に良かった。これより先は、貴女を私が、我が子のように愛すると誓いましょう。あなたの傍に、私は離れず在ると誓いましょう。貴女の痛みや嘆きも苦しみも分かち合うと誓いましょう。どうか、貴女のそばに、この母を受け入れてはもらえませんか?」
――驚くべきことに、それは本心だった
心から、誓っている。彼女は本気で、マスターの母になることを決めている
それは『提案』ではなく『決意』だ
――回した手は、『けして離さぬ』と子を捕らえる母の愛が垣間見えた
「――神性の俯瞰、雑ざった血。よもやそれが、ここまで人間の倫理と道徳を破綻させようとはな」
感嘆と哀れみを、器が呟く
「良かったではないかマスター。思わぬところで、母が手に入ったぞ?」
「――うん!うんっ!!うんっ!!」
キラキラと顔を輝かせるマスター
「やったぁ!!私にも母上ができた!!甘えてもいいんだよね!期待に応えなきゃいけないんだよね!母上のために頑張らなきゃいけないんだよね!やったぁ!!」
頼光の胸の中で喜びを表す
「えぇ、えぇ。良いので――・・・待ってください、リッカさん?今、あなたはなんと・・・?」
「母上!母上!一つだけ、聞いてもいいですか!?」
満面の笑みで、マスターは語る
「『お母さんに甘える』って、どうやったらいいんですか!?私、物心ついたときから習い事しかやった事なくて!完璧にこなさなきゃ、口も利いてくれなくて!私に価値があるのは上手く出来たときだけで!だから解らないんです!」
「――――」
「教えてください母上!『何をすれば、母上は私を愛してくれますか』!?嬉しいな!それさえ解れば、もっともっと頑張れますから!」
――――――・・・・・・
『・・・大将・・・』
「・・・よもや生き物が始めに学ぶ感情すら塗り潰されていたとはな。おまえの闇はこれ程であったか」
――何をすれば、愛してくれますか
・・・これは、何かを求められ、何かを義務付けられた事でしか発せられぬ言葉だ
――両親にすら、彼女は正しい感情を向けられなかったと言うのか・・・
「――予定が変わった。次の召喚、必ず貴様を招くぞ、頼光とやら」
「・・・はい。必ず召喚に応じさせていただきます」
「貴様の学ぶことが増えたぞ、マスター。・・・まずは、人並みの温もりを覚えるがいい」
「え?どゆこと?なに?なにこの雰囲気?え?」
「・・・良いのです」
強く、強く抱きしめられるマスター
「私が貴女に教えましょう。世には『無償の愛』が在ることを伝えましょう。・・・だからどうか」
「え?母上?あははっ、おかしいな。私何かおかしいこと言いましたか?」
「だからどうか――『泣かないで』くださいませ。母は・・・哀しみで。胸が張り裂けそうでございます・・・」
――マスターの両目からは、涙が流れていた
「な、泣いてないですよ?いやだなぁ!なんで泣くのこのタイミングで!?いや、確かに女性として色々、負けて、い、る・・・けど・・・」
「色々?完全に、の間違いであろう」
「辛辣ぅう!!」
「先輩・・・」
『・・・ロマニ』
『はい。カウンセリング、メンタルケアを徹底します』
「勘違いはするなよ。こやつは無理も取り繕いもしていない。こやつはこれが『自然体』なのだ。こやつの快活さが虚なのではなく、こやつの闇も浅くはない」
――それは解る
だからこそ
「だからこそ・・・こやつの輝きは美しいのだ。・・・フン。やはり雑種どもを生き延びさせるべきではなかったな。拵えた生命にまともに教育も施せぬなど、生命体として破綻していよう」
器が吐き捨てる
――それでも
それでも彼女は立ち上がった。誰も憎まず、誰も恨まず
そんな彼女の在り方に・・・敬意を
そして。両親の想いすら知らなかった彼女を救った『誰か』に・・・心から感謝を
「さ、さぁ!そろそろ行こうよみんな!世界終わっちゃうから!――母上、ありがとう!」
「リッカさん・・・」
「リッカでいいですよ!心がスッキリしました!だから私、行ってきます!」
自信と確信に満ちた声音で言う
「『世界を救いに』行ってきます!待っていてください!霧を払ってくれた母上に報いるよう!一生懸命頑張ります!」
「――はい。母はあなたを待っています。リッカ。金時」
『あぁ――解ってる。このデンジャラスガールはきっちり見てるぜ』
「頼みましたよ。そして・・・」
――
「英雄王様『お気をつけて』くださいね?」
にっこりと笑う頼光
「誰にものを言っているのだ貴様は。我は王。ただ一人の友を除いて、我を脅かすものなどいるものか」
「えぇ、ふふ。『何故か』そう言わなければいけないような気がして・・・。カルデアの再会、お待ちしております」
「うむ。――そら貴様ら。呆けるな。即座に追走するぞ!」
「はいっ!!」
『リッカ』
「ん?」
『――私と貴女は友達よ。何があろうと、起ころうと』
「――うん!!行こう!ギル!」
「良かろう!さぁ!寂しく歩く天才に引導を渡そうではないか!!」
『徒歩は、よい文明』
――さぁ、駆け抜けよう!!
「お弁当を用意させていただきました。それに細やかですが、御守りを。ああっ襟が曲がっておりますリッカ様。・・・はい、これでよし。時間がないゆえ、自己紹介もままならず。正式な契約を結んでいない以上、ご主人様と御呼びするわけにも参りません。・・・名を呼ぶ無礼、お許しくださいまし」
「全然構わないよ!そっか、はぐれ扱いだから・・・契約結んでないのかぁ・・・」
「はい・・・あなた様に会えると知っていたならば、もっともっと着飾りをしていたのに・・・玉藻ちゃん不覚ぅ!」
「――でも、縁はしっかり結ばれたと思う!待ってて、玉藻」
「あっ――だきしめ・・・」
「必ず迎えにいく。必ず貴女を招いてみせる。はじめてあった私の為にこんなに良くしてくれた貴女の気持ちに、必ず応えてみせる」
「あ、ぁあ・・・」
「――その時は正式に!私の
『頬にキス』
「これはその、責任を持った約束ってことで!」
「――い」
「い?」
「――――い、一生ついていきますぅうぅうぅう!!!♥♥♥私の玉藻になってとか殺し文句からの頬接吻いただきましたぁ――――――!!!♥♥尻尾がビリビリきゅんきゅんしてもう立ってられないですぅうぅうきゃわぁあぁあんっ!!」
「ほう。よく仕上げているなアルトリア。宇宙船操舵技術は伊達ではないな」
「ギルギルマシンは完璧です。事故やクラッシュは貴方のミスと思ってください」
「その割には、防護装備が無いではないか」
「貴方の騎乗スキルを信じていますから。あ、私の席はここで」
「貴様のバイクの一つや二つ見繕えない筈がなかろうが。望むなら貴様専用の」
「いいんです。私は・・・ここがいいんです」
「――そうか。では乗れ、アルトリア」
「はい、ギル」
「――本当はセイバー用なのだがな、そのシートは」
「私用ではないですか!!」
『大将!見た感じ、大将はかなりライダーが好きっぽいじゃんよ!』
「大好き!話はダブルが一番好き!」
『んーじゃあ、後でちっと面白いもん見せてやるよ!腰を抜かすなよ?大将!』
「うわぁ楽しみぃ!!なんだろ!?」
「また友をいけない道に・・・リッカが怪我をしないよう見張るのですよ、わかりましたか?」
『もちろんだっての!』
「いぃですか金ぴかさんっ!♥貴方のその眼でしっかりっ!しっかりっリッカ様を御守りくださいましっ!フーッ!♥フーッ!♥♥怪我とかしたら、いや怪我とかさせたらないちゃっ、いやいやゆるさねぇですよっ!♥フーッ!♥どうか無事で!フーッ!!♥」
――言われるまでもない。自分と王がいる限り
「無論だ!貴様は待っておけ、主の帰還をな!」
――皆は必ず護ってみせる!
「はっ♥はひいっ!!ああっ・・・鼻血が――♥♥♥」
「なんですかこの発情きつね。切り捨てて宜しいですか」
「捨て置け。我が黄金律にまいったのであろう」
――黄金律にまいるとは、お金に目が眩むという意味である
「行くぜてめぇら!!オレのプリドゥエンに続けー!!」
「ギル!撃ち落としましょう!」
「後でな!ではいくとするか!我等が行くは天空のソラ!!新たに設置した『ゴージャスロード』にて産み出されしコース!我が庭に走破できぬ場所などないわ!さぁ唸りを上げろギルギルスタリオン!ゴージャス一行!!出立である!!!」
「おーっ!!!」
――唸りを上げるバイク達
(いつか二人でツーリングしようね、無銘)
うん!さぁ、行こう!
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