人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カドック「援軍に来たぞ、リッカ!…のはいいんだけど…なんだあれは!?」

リッカ「あれは鎌倉幕府だよ!」

カドック「鎌倉幕府!?」

キリシュタリア「なるほど、古来の武士の親玉が現れたのだね!確かに凄まじい威容だ、数多無数の侍の親分なだけはある!なんという威容だろうか…!」

カドック「幕府って、こんな物理的な威容だったか…?」

ペペロンチーノ「あれはロボットではなくて、魂や気迫、精神的概念がサムライを形作っている感じね。大和魂凄いわぁ。そりゃあ蛮族めいた伝説残るわよねー!」

ベリル「日本やべぇな…」

デイビッド「待て、カルデアよりオープン通信が来る。…イザナミからだ」

オフェリア「!……まさかシリアスではないわよね…」

イザナミ『あなや皆さま!おばばの放送聞いたもう!』

一同(((((まだ大丈夫だ…))))


鎌倉幕府・外郭勾留戦

『皆さん、あれは頼朝くんの宝具にして武士道とか、魂とか、色々な武士のアレコレが具現化したもの!皆で力を合わせて、武士の魂を押し返したもう!つまるところおばばが言いたいのは!ふぁいと皆!奮起してくださいということです!』

 

イザナミの知恵袋による説明を受け、合流したグランドマスターズはミッション内容を把握する。つまるところこれこそ召喚祭りの大目玉。あらゆるものを使い、利用し、この超巨大な鎧武者を食い止めろということである。そう理解した者達の行動は極めて迅速だった。

 

「極東の神秘を撃ち貫く、か。ケワタガモよりは歯応えのある獲物だろう。旋回とポジショニングは頼む、ガルーダ」

『承知した。思う存分にその腕を振るうといい!』

 

鎌倉幕府の周囲を、超高速で旋回するは黄金の鳥人、ガルーダだ。その大いなる体躯による堂々とした飛行は、巨大極まる鎌倉幕府武者にも怖じることなく雄大な風を孕み飛翔している。

 

「状況、開始」

 

そしてその上部から、鎧武者の関節を狙いモシンナガンより魔力塊を放つはシモ・ヘイヘ。先に喚び出された二人が協力し、グランドマスターズの行く道の先陣を切る。ガルーダの神話的飛行にすら微塵もたじろがず、冷徹に狙撃を決めていく様はまさにフィンランドの白き死神の面目躍如だ。本人は妖精志願であるけれど。

 

「む…!」

 

ハユハ、並びにガルーダが死の気配を感じ取る。鎌倉幕府が身をもたげ、全周囲を焼き払わんとする大熱波照射態勢に入ったのだ。対空対地全て完備する、大和魂の熱き血潮を焔に換える鎌倉武士の気迫の顕現だ。勿論当たれば瞬時の蒸発は免れない。速やかに離脱──しようとした、その瞬間であった。

 

『!!!!!?』

 

驚嘆、驚愕すべき事に。なんと鎌倉幕府の巨体が『仰け反った』。それらはまるで弾き飛ばされるように身動ぎし、たたらを踏んで後退する。それを成した方角をハユハは見やる。

 

『着弾、確認。鎌倉幕府の怯みを確認。第二射へ移行する』

 

それは、戦艦落としの為朝が剛弓の成し得た偉業であった。紅蓮の魂たる武者すら押し退けてみせる気迫の剛弓。人たる機神の彼が、カルデアに協力の意を見せたが故の大いなる一撃。しかしそれでも、さしたるダメージを受けていないのは流石武者の概念集合体と唸らされるものであると為朝は頷く。

 

『!!!!!』

 

その脅威を鎌倉幕府はよく理解していた。鎮西八郎為朝、源氏の弓取り。それを知るが故に幕府は巨大刀から焔を噴き出し、為朝を排除せんと大いなる武具を振るわんとした。

 

『超巨大熱量確認。直撃すれば即死は免れん。だが…』

 

だが、為朝は構わずに二射目を番える準備に入る。一撃を撃てば位置が割れるは自明の理。それに構わず為朝は矢を放ったのだ。なぜならこれは、自らのみの作戦行動ではないのだから。

 

「その紅蓮の刀、私達が受け持ちましょう。レーギャルン、第一封印超限定解放。さぁスルト、機敏にちゃっちゃと振るってくださいな」

 

為朝の傍らに来たるは、紅蓮の髪と銀色の瞳の淑女シンモラ。彼女は封印せしレーギャルンの淡き幻影、儚き影とスルトの腕を限定的に召喚させる術式を行使した。

 

『灼熱(あっつ)…』

 

為朝が微かに漏らすほどの莫大な熱量。存在せぬ影ですら辺りを紅蓮に染め上げるムスペルヘイムの王の腕とその得物。それらは確かに鎌倉幕府の刀と打ち合う奇跡を見せ、質量を真っ向から受け止めてみせる。

 

「流石は音に聞く北欧神話の終末兵器!それを世界を救うための組織が振るうとはまさに奇跡!よーし、俺も頑張っちゃうぞぉ!」

「なんでもいいけどロジェロはどこ行ったのさ!ここはシャルルマーニュ十二勇士がやるぞー!な場面じゃないの!?」

「仕方ねぇんだ…あいつはハードなラックとダンスっちまったんだからな…!」

 

やがて陽気な聖剣、幻獣、そして絶世の剣による援護が刀を更に押し返す。ヒポグリフに乗ったローラン、アストルフォ、そしてシャルルマーニュがレーギャルンに加勢する形で勢いを重ねたのだ。

 

「アガルタを思い出すなアストルフォ!あの時の冒険も最高にカッコよかったぜ!なぁヒポグリフ!」

 

「うんうん!ローランがいなかったのが残念だなー!ボクたちの活躍凄かったのになー!ローランいなかったからなー!」

 

「うわすげぇ疎外感と敗北感!だがまぁいいですー!こっからローランの大活躍劇が始まるんだからな!さぁどこからでもかかってきなさいブリキの侍!ローランのカッコいいとこ見せちゃうぞー!」

 

『!!!』

 

「「「ぎゃーーーーー!!!?」」」

 

右の刃に気を取られていたため、左の拳にぶん殴られる三人。遥か彼方に吹っ飛んでいく三人を、シンモラは見やる。

 

「見えますか。ヨーロッパの父が、吹き飛んでいきます」

 

「何故その様に冷静なのか…!」

 

すかさずドゥルガーの眷属ドゥンが瞑想を行い、ドゥルガーに助力を嘆願する。彼に力を貸すはドゥルガー、並びにシヴァ。武者にも引けを取らぬ超巨大な槍、ピナーカがレーギャルンと共に振るわれる。

 

「そちらも素敵な武器を振るわれますね。まぁレーギャルンは杖なのですけれど本来は」

 

「ドゥルガー殿は神々の決意と武器を担う者、これは夫たるシヴァ神の武器であります。くれぐれも本人に、強いのは武器と祝福だけなどと言わぬよう。それを宣ったアスラは滅びました故」

 

「苛烈ですのね…」

 

シンモラとドゥンは協力し腕を抑える。このメンバーにて、鎌倉幕府の進軍は押し留められていることは確認された。奇しくも召喚したサーヴァント達が、早速力を振るう機会を得たのだ。

 

『皆!突入ポイントを割り出したから、そこに一気に向かうんだ!具体的にはイザナミお婆ちゃんが見つけてくれたよ!』

 

『鎌倉幕府もまた日本。頼朝くんと義経ちゃん、景清ーズの位置からえいやと導きたもう!おばばが導く故、マスター皆でれっつらごー!』

 

日本に関しては底知れぬ有能さを見せるイザナミの報告に、一同は頷く。

 

「鎌倉幕府に突撃、っていうとなんだか逆賊みたいに聞こえるな…」

 

「油断しちゃダメよ、カドック。鎌倉時代の武士は理性も情緒も希薄な戦闘民族。乗り込んでからも壮絶な筈だものね」

 

「日本って国はアレだな。島国だから蛮族っぽさが国柄なんだな多分」

 

「ベリル、そんな言い方は良くないな。君には薩摩武士とタイマンする栄誉をあげようじゃないか!」

 

「日本の芸能はいいぞ(デイビッドステマ)」

 

「ウーサー、行けますか?」

「問題ない。聖剣は輝いている」

 

「マシュ、リッカ。私達がサポートするからあなたたちは頼朝の場所へと向かって。あなたたちの事だから、ただ倒すつもりではないのでしょう?」

 

「行け、現代のアジ・ダハーカよ!このクルサースパ、善として道を切り拓こう!」

『むさい』

 

「えぇ!?」

 

「皆…ありがとう!よし!グランドマスターズ、鎌倉幕府へ突撃ーっ!!」

「前面強行突破はお任せ下さい!!マシュ・キリエライト、こう見えてAチームでは首席だったのですよ先輩ー!!」

 

一同が一丸となって、真正面から突撃を敢行する。召喚より始まったこの祭りは、いよいよ最高潮の盛り上がりを見せる。

 

(頼朝さん、無慙さん。信じてるからね、私…!)

 

彼等が決して、無益不利益なだけの戦いを行うはずはない。その真意を果たすため、リッカは決意と共に鎌倉幕府へと突入を敢行するのであった───。




リッカ「牛若丸、聞こえる!?」

『勿論です、リッカ殿!此度は私と兄上が申し訳ありません!』

リッカ「それは大丈夫、今からまた会いに行くから!一緒に行こう、お兄さんと義経に会いに!」

『リッカ殿…!はい!お供させてください!』

鬼一法眼『そういう事なら私もついて行く!もうホント、色々言ってやりたいことがあるからな!』

牛若丸『お師匠様も!?』

リッカ「わかった!じゃあ皆で会いに行こうよ!」

えぇ〜〜!?牛若丸の嫌そうな声と、制裁の快音が響き渡るは同時でありましたとさ──。

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