人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
デイビッド「む」
キリシュタリア「いたいた!茶室で一服していたのかな?マイペースだね!」
ベリル「あんたが言うなあんたが」
デイビッド「皆、集まっていたのか」
マストリア「どうせなら合流してリッカさんやカドックさんを助けようと…なんですかそのスイッチ?」
デイビッド「武士の本懐スイッチらしい」
マストリア「武士の本懐スイッチ」
マシュ「やる気スイッチのようなものでしょうか!?」
ペペロンチーノ「絶対自爆よね!そうよねコレ!」
デイビッド「うむ。押してはならないもの故放置していたが…」
ゴルドルフ『デイビッド!デイビッド聞こえるかね!?』
デイビッド「む、副所長」
『そんなスイッチに狼狽えてはいけない!カルデア職員は狼狽えないッ!いいかね、押してはならんよ!絶対押してはならんよそれ!絶対だからね!?』
ペペロンチーノ(あっ…)
マシュ「デイビッドさんっ!!」
キリシュタリア「グランドオーダーだ!!」
デイビッド「了解(ポチッ)」
ゴルドルフ『なんで押すのーーーーー!!?』
シオン『いや…フリですもん…どう考えたって…』
『武士の本懐、作動。鎌倉幕府、武士道に殉じ爆散します』
コールブランド「武士道とは……?」
マストリア「凄い生き様なんだねきっと!(思考放棄)」
イザナミ『あなや皆様ピンチーー!?』
ロマン『脱出開始だー!?』
鎌倉幕府、爆破五分前──
「それはつまり…!義経は嫌いだが牛若丸はそんなに嫌いじゃない!ということですか兄上!?そうなのですね!?義経ではなく牛若丸はセーフと!」
「こいつ…!途端に活き活きとし始めた…!」
義経、そして牛若丸の前でとうとう心中を吐露した頼朝。言わぬが花、言わずともよいことをあっさり言ってのける彼女の有様に義経は怒り、頼朝は呆れ気味にため息をつく。
「敗残の屈辱とはいえ、言うべきでは無かったな…。まぁおおむね合ってはいる。義経としてからの無軌道、愚劣ぶりには殺意すら懐いたが、そうではない幼少の折、無邪気であり奔放な牛若丸の事はまぁ、嫌いではなかったという事だ」
頼朝はそこもまた、完全に切り離せる存在だった。義経と牛若丸、無くしてしまった過去の思い出と現実。自身もまた無邪気であった頃の妹との触れ合いは、彼にとっては大切なままだったのだ。
「ちょっと待て!師匠として言わせてもらうが、幼少のこいつの暴れ回りぶりは無邪気とかそんなんでは表せない程に酷かったぞ!?」
そんな頼朝の認識に待ったをかけるは師匠である鬼一法眼。彼女は逆に、悪戯好きであった彼女を見知っている側面がある。そこからしてみれば頼朝の牛若丸評はまぁまぁ看過できないものであるという。
「盗み見るわ戯れとして一日中山を飛び回るわ、ちょっかいは出すわ悪びれないわの悪戯小僧!だいぶ思い出に美化入ってるぞ頼朝!」
「それは牛若丸の幼少故の至りであり私が殊更糾弾する事ではありません」
「いやあるだろ!?義経は百歩譲ってお前の為にやった事と納得できる!牛若丸の愚行三昧は有体に言ってクソガキだったぞ!?」
「それは牛若丸の幼少故の至りであり」
「政治家かお前は!?いや武家社会の政治家だったか!お前わかったぞ、牛若丸にだけは若干甘いな!?」
牛若丸の若気の至りだからセーフ。美化した思い出を思い出のままにしておく気満々の頼朝に憤慨する鬼一法眼。そう、非常に複雑な頼朝の内面は、義経を公人として憎みつつ、牛若丸をかつての思い出として愛しているといった様相を見せていたのである。それもまた、彼が内に秘めていた内密の心情には間違いなかったが…
「上に立つものは、好きなものを好きなままじゃいられなくなるんだな…」
カドックの呟きが総評に近いものだろう。親しかろうと愛しかろうと、公的な執務を果たす際には邪魔になってしまう。かつて愛した家族であろうと切り捨てる決断を果たす時が来てしまった者、それが頼朝であったのだ。だが、彼もまた完璧な政治機構にはなりきれなかったという事である。
「嫌よ嫌よも好きのうち。無関心じゃなくて嫌いだと言い続けたのは、きっとそういうことだったんだねぇ…」
リッカが深く頷く。牛若丸の報告から薄々そんな感覚はしていたが、こうして見れば複雑怪奇ながら解りやすいというとんでもない心の機微を見てきたものだ。思うに彼はどれだけ妹を厭おうと、決してその生誕や血縁そのものを否定しなかった。
つまるところ、彼は妹の存在を確かに認めていたのだ。見れば見るほど愚かさと愚昧さが目に付くのは、彼が彼女を誰よりも心の傍に置いていたからであろう。近いからこそ、その愚かさがよく見える。意志なき政治の化身という領域は、頼朝程の傑物でも難しい領域なのだ。
【…カルデアの、マスター】
そんな中、リッカに話しかける影がある。それは景清、義経を支えていた平家の怨霊だ。この騒動の張本人でもある。
【恥を忍んで、我等景清が頼む。義経を…少しでも、報わせてやってはくれぬか…】
報わせる。このままでは牛若丸大勝利になってしまうという危惧の下の状況を言っているのだろう。頼朝の与えなかった情を、この景清は担っていたのだ。
「──解りました。いい突破口を見つけましたので!」
「本当か?僕には見当も付かなかったが…」
カドックにウィンクで返し、頼朝達の乱痴気騒ぎに歩み寄るリッカ。もう頼朝に戦闘の意志はない。ならばこそ問えるだろう。
「頼朝さん。サーヴァントっていうのは厳密には英雄本人じゃありません。英霊の座の本体から、召喚に応じてやってきた影法師…それがサーヴァントシステムの根幹と聞いています」
「うむ。元は決戦術式たる7騎の英霊を招くものをスケールダウンしたものと聞くからな」
「それをコピー品、使い魔という認識をする人もいます。でも私はそれをこう思うんです。二度目の人生、奇跡だって」
だからこそ、そんな奇跡だからこそ…あえて、かつてのしがらみに囚われる生き方は『もったいない』と考えることはできないだろうか。リッカはそう、頼朝に問うた。
「生前じゃ絶対にあり得なかっただろう、牛若丸との大人になってからの語らい。義経と、殺し殺されのない私人としての付き合い。そういったもしもを味わえ経験…無下にするのは、もったいないと考えられないでしょうか?」
「サーヴァントとしての間は、鎌倉幕府創始ではなく一人の頼朝としての夢に浸るも一興…そういう事かな?」
「はい!冗談みたいな奇跡の類、どうせならとことん楽しんでみませんか!カルデアで、人理を護る為の戦いの役得として!未来に生きる者として、個人的にその光景を見てみたいんです!」
リッカの言葉は打算や契約ではなく、純粋な願いだった。頼朝、義経。その確執は悲劇で悲運と語られている。もしもの奇跡であれど、それは確かに目の当たりにしたいと願う者はいるだろう。
頼朝と義経が、再び兄妹として立ち返り共に戦う奇跡。それは日本人が目の当たりにしたい光景に、他ならない筈だから。
「……本来の私なら、何を馬鹿なと一蹴するが。私はこの通り敗残の身。そして頼朝の影法師たるサーヴァント、無慙殿の身体を借りた仮初の幽鬼。…そこまで意固地になる理由も、最早ない」
その願い、その思いにこそ頼朝は応えた。そもそもの話、こうなることを無慙と予見していたわけではなかった事を彼は言う。そう、もしもの話はしていたのだ。
「景清として現れたならともかく、義経と景清の有様であるならば十分に共闘は可能だろう。兄として…カルデアでの狼藉を諌める役柄に収まることも出来ようからな」
「!」
「兄上!それでは…!」
「それが責任のとり方であり、カルデアの要求であるというのならば。この頼朝は甘んじて受けよう。未来の棟梁の願いに応え、義経や牛若丸と共に…共に……共に、在ろう」
長い長い葛藤と共にその一言を捻り出した頼朝。それを聞き、鬼一法眼はようやく胸を撫で下ろす。ようやく血腥い責任追及が終わったのだから。
「全く。妹をこうまで嫌う兄は珍しいぞ頼朝?現代ではシスコンなる、妹を溺愛する兄が流行っている界隈があるのだ!」
」
「地球の裏側あたりの文化ですか?」
「日本だよ!?」
「兄上!ありがとうございます!これでお祭りを一緒に楽しめますね!」
「言っておくが壊したもの、人的被害、領収書ツケ諸々は私は一切負担しない。どうしてもというなら師匠に頼め。祭りとは名ばかりのお前の尻拭い行脚など真っ平ごめんだ」
「兄上!?」
「僕だって嫌に決まってるだろ!?戦闘以外で褒められるとこほとんどないんだぞこいつは!」
「師匠!?」
色々なぶっちゃけトークが、殺伐とした空気を押し流していく。やはりあの鎧こそが将軍としての決意であり、素の頼朝はそこまで鉄面皮では無かったのだろう。
「うんうん!家族なんだもん、殺し合いなんて駄目だよね!」
「…あぁ。そうだな。家族は仲良く、が一番だよな」
リッカの言葉に深く、深く頷くカドック。
【義経……ようやった…】
そして怨霊、景清は姿を消す。…始まりから大分目的は変わったが、彼等もまた満足したのだろう。
其処に、憎悪を越える笑顔を見たのだから。
リッカ「ほわぁ!?」
カドック「!?なんだ、この揺れは!?」
頼朝「む、どうやら隠していた武士の本懐爆発スイッチが起動したようだ。鎌倉幕府は武士道に殉じ爆発する」
リッカ「!?!?!?」
カドック「武士道に殉じってなんだよ!?爆発スイッチってなんのためにつけたんだ!?」
頼朝「もしカルデアが鎌倉幕府に勝てなかった場合、オーバーロード爆発を装い和睦に用いるための処置だ」
リッカ「元からカルデアに負けるつもりだったんだね!?」
頼朝「万が一を考え茶室に隠していたが、寄った者がいたとは。風流と風情の解る者がいたようだな(うんうん)」
鬼一法眼「理解した!兄妹揃って大馬鹿だお前たちは!」
牛若丸「リッカ殿、カドック殿!逃げましょう!」
アタランテ「ここまで来て爆死など容認できるか…!」
リッカ「逃げろーーー!!」
〜
ローラン「よしデュランダル!奇跡を、奇跡を起こせ!あの鎌倉幕府を食い止められる奇跡を!基本の代償としてオレの服を持っていけ!」
アストルフォ「いつものすぎるよそれ!コストでもなんでもないじゃん!」
シャルルマーニュ「なら…俺達の服も一緒ならどうだ!?」
アストルフォ「その手があったかー!!」
ローラン「よし!ならここにいる十二勇士の服と引き換えに!鎌倉幕府を食い止める奇跡を起こしてくれ!!聖剣デュランダルよ!!」
ローランの必死な訴えは──
『─────』
為朝『…?』
『─────!!!!!!』
ローラン「やったーーーー!!」
アストルフォ「うそだーーーー!?」
シャルルマーニュ「マジかーーーー!!」
突如動きを停止し、七色の花火を撒き散らし大爆発を起こす鎌倉幕府。その奇跡(?)の成就に、勇士は感嘆を漏らす。
ハユハ「おぉ、マスター達…」
ガルーダ『良かった、脱出したか…』
爆散する幕府から、光条を目の当たりにし状況終了を確信するサーヴァント達。
頼朝「ありがとう、武士たちよ。誉れ高き武者たちよ」
鬼一法眼「彼等も二度とゴメンだと思うぞ、こんな徴兵は…」
…こうして、些細な事から始まった鎌倉幕府の乱は幕を下ろす。
地味に爆破処理と脱出は紫、イザナミ、ロマンという豪華メンバーだったのは、知る由もない事である。