人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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二刻前
「こ、これを私にですか?」



「うむ。貴様用のバイク『ましゅ・きゃめろっと』だ。専用にチューンしてある故乗りこなせよう。上手く使え」


「やったねマシュ!バイカーだよ!」

「はい!ありがとうございます!大切にします!」


――気に入ってもらえて良かった。さて



「では始めるか!案ずるな、もう既に勝利の道筋は捉えている!後は手筈通り動けば容易き戦よ!」


「自信あり、ですね。信じますよ?」

「ふははははは許す!マスター!ゴールデンめと一合目にて待機せよ!」

「えっ!」


「耳を貸せ。・・・・・・だ。貴様しか果たせぬ事よ」

――この戦法なら、マスターも共に戦えるはずだ


かけがえのない『財』たる彼女と共に


「やれるな?」

「もちろん!!テンション上がってきた――!!」


「しゃあ!じゃあ乗り込むとするか!!」



「総員奮起せよ!!ここが明暗を分ける大一番となろう!!総力をあげてマキリの魔霧をふははははははははははははははははははは!!!」


「うるせぇ!!自分で言っといて受けてんじゃねぇ!クソつまんねぇだろが!!」


「このセンスが理解できぬのならば貴様は王の器ではないわ!!ジョークとユーモアを極めし道化王となり出直すがいい!!」


「そんなにかよ!?」

「全くです。はっきり言っておけば良かった。はじめからあなたに王の器など備わっていなかったのです」

「親父ギャグからオレの人生全否定は止めてくれよ父上ぇえぇえ!!」



――まぁそれはともあれ

さぁ、行こう!!





「手筈は頭に叩き込んでいるな!さぁ、火蓋を切るとしよう!!」


「おうっ!!」


「掴まっていろよ、アルトリア!」

「誰にものを言っているのですか、ギル!」


「で、あったな!全く、口の減らぬアルトリアよ――!!」


――見えた!さぁ、行くぞ!


決戦!!キャプテン☆ニコラ!!

「――来たか!!」

 

 

ロンドン上空、バッキンガム宮殿の上空にて歩みを進めていたテスラが歓喜の声をあげる

 

 

 

「来たか!ようやくか!待ちわびた!!待ちわびたぞ!!人類神話を越え!新たなる神話を打ち立てるものよ!!ははははははは!!ははははははは!!」

 

 

 

「――フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!真打ちは遅れてやってくるものよ!!天に轟かす大笑、愚者を嗤う哄笑は我の専売特許であると教授しに来たぞニコラ・テスラ!!」

 

 

天に言霊を轟かす、黄金の王

 

 

「むっ――!?天空か!?」

 

 

テスラの見立ては正鵠を射ていた

 

 

星の開拓者たる彼が目の当たりにしたのは――

 

 

「トレイター!手筈通りに暴れるがよい!枷を外した狂犬の暴威、存分に見せてやれ!」

 

 

「任せなっ!!」

 

 

真紅のボディ、至るところに鋭角的な突起や兵器を搭載した反骨心の結晶たる『レッド・プリドゥエン』

 

 

「マシュ!バイクを駆る際に余計な雑念は捨て置け!己と、己の鉄馬を信じよ!!」

 

 

「はい!王から賜った『ましゅ・きゃめろっと』!使いこなして見せます!」

 

 

白と紫の流線形の素直なデザイン、マシュの心を顕し形にしたかのような美しきバイク『ましゅ・きゃめろっと』に跨がり、力強く頷くマシュ

 

 

これは、マシュにも騎乗スキルがあることを認めた王が、「折角だ、お前も風を感じよ!」と鶴の一声でカスタム・設計したマシュの鉄馬である

 

 

「騎士とは馬に乗ってこそ!現代の馬すなわちバイク!我の着眼と気前の良さに感謝を捧げながら疾走するがよい!貴様の蠱惑的な鎧には映えようさ!フハハハハハハハ!」

 

 

――ちなみに材料とデザインは自分だ。マシュの身体にフィットするよう、的確に財を選別しました

 

 

さぁ、これでマシュもバイクの気持ちよさを知ってくれれば嬉しい・・・!

 

 

「はい!マシュ・キリエライト、必ず乗りこなして見せます!」

 

 

「おぉ、おぉ!天空を疾走する鉄馬!放たれる路線!理解した!君達は今ここに!確かに新たなる神話を掲げようとしている!!」

 

 

「新たなる神話、だと?たわけめ!我が主役、我が活躍せし英雄譚!神なんぞの名前など冠するものか!それだけで愚書の烙印は免れぬではないか!よいか良く聞け!我が最新を彩る書物には、それに相応しき銘が既に与えられているのだ!」

 

 

 

――こちらの見立てが上手くいけば、必ずニコラ・テスラを下せるはずだ!

 

 

「ほう!目障りな天の英雄の極致英雄王ギルガメッシュ!是非教えていただきたい!新たなる歴史に打ち立てられし新たなる神話の名とは!」

 

 

「良かろう!しかと聞け!そして震えよ!!下らぬ悲劇を蹴散らし、当たり前の結末を消し飛ばす!我の、我による、我の為の英雄譚!!」

 

 

 

唸りをあげて疾走する、騎士王と英雄王の手によりカスタマイズされ新生した『清廉なりし王の鉄馬(ギルギルスタリオン)

 

 

 

「その名!『ゴージャス☆ギルガメシュ叙事詩』!!フハハハハハハハ!!賛美せよ!新たなる時代!最先端に打ち立てられしこの英雄譚!全身全霊で賛美せよ!さぁ――ここから先は神話の再演と行こうではないか!!」

 

 

王の言葉と共に、ギルギルスタリオンから放たれる、無数の黄金の疾走路。それらがロンドンの上空に天の川のごとく敷き詰められる

 

 

 

「我が疾走!我が法は天に満ち!我が決意は大地を濡らす!我が庭足り得るこの星に、我が駆け得ぬ道理無し!!そう!!森羅万象に敷かれるルール=つまり我!!」

 

 

天空にて形どられたバイクコースを走る、三騎の英雄たち!

 

 

「天空であろうが我が蹂躙は思うまま!神が我が物顔で君臨していた忌まわしき天空、思うまま蹂躙し辱しめてくれるわ!!歯ぎしりするがいいイシュタルよ!もはや貴様の威光や威厳など、この世には芥子粒程も残っておらぬとな!フハハハハハハハ!ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

 

王の大笑が、最終決戦の開幕を告げる――!

 

 

 

「くたばりやがれニコラ・テスラァーっ!!」

 

 

レッドプリドゥエンの機能がアクティブとなり、魔力放出の赤雷、神秘を纏ったガトリング、ミサイルなどの近代兵器が思うままに叩き付けられる

 

 

「斬り込み隊長、トレイターモードレッド!!さぁ、くたばっちまいなぁ!!」

 

 

中指を立て挑発するはモードレッド。反逆(物理)がニコラ・テスラを襲う!

 

「ははははははは!!人類神話とゴージャス叙事詩!!真に歴史に名を残すは――どちらか!!」

 

しかし揺らがぬ天才。電磁投射により総てを打ち返し、逆にモードレッドに襲い掛かるテスラの雷

 

「雷に関しては私の専売特許だよ!さぁ見たまえ!!ライトニンッ!!」

 

「ハッ!ビカビカビカビカ光りやがって!」

 

 

「我が神話は揺るぎはしない!この戦いの主軸はそう!この黄金の道を作り出す英雄王のマシン!そう!君だ!その君のマシンだ!!」

 

 

テスラの雷、そして

 

 

「時に問おう!その麗しく雄々しきギルギルスタリオンとやらの動力源!それらのエネルギーを聞かせてもらおうかな!?」

 

 

「問いを投げるか!ハッ!良かろう教えてやる!!ギルギルスタリオンのボディに巡りしは神代に満ちし真エーテル!我がヴィマーナを動かせし昨今の世には喪われし、王のみが所有せし原初の資源よ!そして――」

 

「同時に私のカスタマイズにて新たなる動力生成機関を設置!ドゥン・スタリオンⅡを駆動させ、アイテム交換に必要な夢のエネルギー、アルトリウム!えぇ、そして――」

 

 

示し合わせたかのように、完璧なタイミングで言葉を重ねる

 

 

「「ノー・リスク!ノー・テスラの夢のエネルギーである!!(です!)」」

 

――とってもエコロジー!

 

「許さん!!交流的に断じて許さん!!そこはニコライルと名付けたまえ!!オリジンエーテルとかアルトリウムとかふざけているのかぁあぁあぁあぁあ!!」

 

 

かつてないほど怒り狂う雷電博士。無数の雷撃が此方に振りかかってくる

 

 

 

――よし。手筈通りだ

 

「フハハハハハハハ!!檄する箇所はやはりそこか!!流石は天才!人類史に名をのこせし比類なき変人よ笑ってやるフハハハハハハハ!!」

 

 

確かに空中にゴージャスロードを作り足場を整えているのは此方だ。もしギルギルスタリオンを喪えば遥か地表に真っ逆さまであろう

 

「マシュ・キリエライト!」

 

 

「はい!!させません!!」

 

 

しかし、守護は万全だ。アルトリアが雷を払い、マシュのきゃめろっとが総てを阻む

 

 

「むうっ――!!」

 

 

「防護においても我は完璧よ!入念な下準備と対策を我が行うというその意味!魂で理解し絶望するのだな!!」

 

――万が一に突破されたとしても、絶縁素材の選別は完遂している。さらに言うなら、雷電を逸らす宝具、それが駄目なら因果を歪ませ、雷を発生前に収束させる宝具も選別している

 

用心と対策はこちらの領分。王に迫る不穏分子は自分が無力化してみせる!

 

 

「余所見してんじゃねぇ雷オヤジ!!」

 

 

クラレントを振るい、猛接近するモードレッド

 

 

「テメェに勝ち目はねぇ!『俺達を纏めて消し飛ばす』ようなもんでもなけりゃあな!!」

 

「――――ある!!」

 

 

――よし!

 

 

「あるとも!!真なる雷霆、我が人類神話を顕す具現は確かに存在するとも!!」

 

――かかった!

 

「フハハハハハハハ!!では見せてみよ!貴様の神話の顕現とやらを!」

 

 

「まぁ、私達のバイクは捉えられはしないでしょうが!何せギルと私のバイクですからね!」

 

 

「それはどうかな!?肉体的に麗しくないレディ!!」

 

「ギル!ハンドルを切ってください斬り殺しますあのキャプテン!!」

 

「貞淑であると前向きに取れ!我は少なくとも好みであるからな!」

 

「そうですか!なら涙を呑んで許容します!さぁ見せなさい!追い詰められてお祈りぶっぱはヴィランの得意技でしょう!モードレッド辺りを巻き込みなさい!噛ませ犬は必要でしょう!!」

 

 

「暗殺を示唆すんな父上ェ!!」

 

 

「暗殺!?バカを言わないでください!大々的な殺人教唆です!!私以外のセイバー!もっと言うなら私以外のアルトリアなどこの宇宙には不要ですから!!」

 

 

「み、皆さん落ち着いて!落ち着いてください!」

 

 

天空に繰り広げられる大笑と雷電と怒号と殺意と困惑

 

 

「では!ではご覧にいれよう!新たなる神話!新たなる雷霆の顕現を!!」

 

 

テスラの身体に莫大な魔力がチャージされていく。そしてその魔力はガルバニズムにて電力に変換され、都市をも呑み込まんとする威圧と電圧に変わり大気を震動させる

 

 

「――――」

 

器がニヤリと笑う

 

 

「――チャージ完了!!さぁ!!ご覧にいれよう!!」

 

 

放たれるは空間断層すら成し遂げるであろう雷電の究極。稼働効率を極限まで上昇させ臨界にまで達した宝具の具現

 

――それを

 

 

「『人類神話(システム)』――」

 

 

――待っていた!!

 

 

 

「――今だ!!マスター!!!」

 

 

「『雷電降(ケラウ)』――なにぃ!!?」

 

 

――神話の顕現は叶わなかった

 

 

発射直前に強制停止されるテスラ。指一本すら動かせなくなり強制ストップをかけられる

 

 

「しゃあ!!!」

 

ガッツポーズを取るモードレッド

 

 

「やりました!!成功です!」

 

 

――宝具の発動は一部を除いてノータイムとはいかない。チャージ、発射の瞬間に必ず硬直が生まれる

 

 

高速にて機動するサーヴァントの、僅かにして致命的な隙。――それを誘発するのが、自分達の役目

 

 

「これは呪い――いや、違う!『女神の祝福』か――!?」

 

 

 

「フッ、慣れぬ囮などをさせたのだ、この勝機、モノにして見せよ!」

 

 

 

――後は、ウイニングランを決めるのみだ!

 

 

「貴様の活躍!母が見ているぞ!!マスター!!!」

 

 

――後は、頼む!

 

 

 

 

 

遥か地表、数千メートル下、階段の一合目

 

 

 

「よっし!当たった!」

 

『月女神の弓矢』に、自らの右手、人差し指を矢に見立てた姿勢でガッツポーズを取るリッカ

 

 

「マジかよ大将!?こっから天辺近くまでゴールデンな距離があるんだぜ!?」

 

「この弓矢をつがえてるとき、アルテミスの祝福のお陰で【月の光が届く場所】なら私の眼はどこでも見えるようになるの。それと【障害物が無い】なら何処でも弓矢を届けられるし【放った弓矢は夜にのみ光線になる】からね!ガンドを月の光に変えて放ったわけ!バッチリテスラに当たったよ!」

 

ぶい!とピースを放つリッカ

 

 

「マジかよ・・・ギリシャの女神サン半端ねぇじゃん・・・日本のツクヨミさんは影薄いけどよ・・・半端ねぇじゃん・・・?」

 

 

「当たり前!私の大事な女神友達だもんね!アルテミスありがとう!またお話しようね!」

 

 

「――しゃあ!!なら今度は雷神様の出番って訳だな!ゴールデンなdrive!バッチしキメるぜ!!」

 

――金時の出立ちはいつもの姿ではない

 

 

キメッキメなヘアースタイル、筋肉で盛り上がるヤバめなヘアージャケット、リッカのリクエストでドライバー風味になった腰のベルト

 

そして何より、巨大な熊が姿を変えた、千里を一瞬で疾走する鉄馬ならぬ鉄熊『ゴールデン・ベアー号』。金時が座席、リッカを後部座席にタンデムさせる最高にロックンロールなツーリングスタイル

 

快男児バーサーカーではなく、雷神ドライブをキメるゴールデン・ライダー――

 

 

「レッツゴー!!ライダーゴールデン!!」

 

「まぁかせろ!!」

 

 

坂田金時――ライダークラスがゴールデンにエントリーしていやがった!!

 

 

「かっ飛ばすぜ!!――だが、その前に一つ言わせてくれ、大将」

 

 

「ん?」

 

背中に掴まるリッカに、ゴールデンは語る

 

 

 

「――頼光サンを信じてやってくれ。面食らったかもしれねぇがありゃマジだ。マジのマジに、大将の母親になろうとしてくれてる」

 

 

「うん!!」

 

「頼光サンは絶対に自分の子供を裏切りゃしねぇ。大将ントコの、地獄の閻魔サマも呆れちまう俺っちが100辺ぶん殴っても飽きたらねぇ人間のカタチしたバケモンとはちげぇ。あんたの事を、愛して愛して愛し抜いてくれる、とびきりの大将だ。だから――」

 

 

「うん!私、母上が大好きになっちゃった!だって、私初めてだったんだもん!あんなに優しく包まれて、あんなに優しく私を抱きしめてくれた人、今まで一人もいなかった!」

 

 

「――・・・」

 

「解ったよ!ゴールデン!あの優しい眼差しが、あの柔らかい温もりが『お母さん』なんだね!私――生きてて本当に良かった!もう二度と味わえないだろうなって諦めてたその気持ちを、教えてくれる人がいたんだから!」

 

 

「――あぁ、そうだ!そうだ!頼光サンは日本一の、俺っちの大好きな母さんだ!そんでもって、大将のな!」

 

 

「うんっ!!行こう!ゴールデン!」

 

 

グッと腰に手を回す

 

 

 

「『こんな素敵なキモチが溢れてる世界を、絶対に救って見せる!』世界中に溢れてるこのあったかい気持ちを取り戻すためなら、私はどんな事だって乗り越えられる!皆と一緒に!!」

 

その言葉は、希望と確信に満ちている。『親に褒められ、満面の笑みを浮かべる子供』のように

 

 

「ゴールデン!私、『生きてて良かったよ』!」

 

 

「あぁ!!アンタは頼光サンの娘、俺っちの妹みてーなもんだ!二人で頼光サンに魅せるぜ!!ゴールデン・ライディング!!」

 

 

『GAAAAAA――――――!!!』

 

「ベアー号も御機嫌だ!そうだよな、フェイスパスで背に乗せろなんて言い出すくれぇとびきりの傑物だ!タンデムするに不足はねぇ!!」

 

「行こうブラザー!!レッツパーリィ!!」

 

 

「OK!!振り落とされんなよ!!――『吼えやがれ、熊公(ベア・ハウリング)』!!!」

 

 

『GAAAAAAOOOOOOOOO!!!!!』

 

ベアー号の咆哮と同時に、ギルギルスタリオンから放たれるゴージャスロードが目の前に放たれる

 

 

『来るがよい!!画竜点睛の役割は貴様らの役目よ!!』

 

 

「オッケー!!!」

 

 

「大将も叫びな!!」

 

 

「「『夜狼死九・黄金疾走(ゴールデン・ドラァアイブッ)』!!!!」」

 

 

 

イグニッションキーを叩きつけ、超高速形態へ変わるゴールデン・ベアー号

 

 

 

雷神の太鼓を変質させた前輪と後輪は、疾走しながら回転を速め、速度を音速、マッハの壁すら容易くブチ破る雷神の化身が

 

 

 

「ロォオックンロォオールッ!!!!」

 

「ヒャッホー――!!!」

 

 

日本神話も含めた神様に散々コイてくれやがったシャバ僧に、ヤキを入れにブッ込みを駆ける――――――!!!!

 

 

 

 

 

 

「――来る!来る!!雷が来る!そうか!そうか!!ははははははは!!ははははははは!!」

 

 

月の祝福を受け超強化されたガンドの戒めを受けながら、テスラは悟る

 

 

「我が神話!幕を下ろすはまた私と同じ雷電!!そう、そうだ!!当然の帰結!!雷電こそが神であり、また真理であり!!悪に堕ちた者を裁く審判の光なれば!!我が身を砕くは当然の」

 

 

「たわけ」

 

「!?」

 

――そうだ。この戦いは、けして超常の意思の介入など起こり得ない

 

 

 

「裁きなど下らぬ。我が赦さぬ。世を乱し、未来を紡ぐは神などではない。――今を生きる生命のみよ」

 

「――――」

 

「貴様を砕くは神の戯れではない」

 

 

「では――!?」

 

 

それは――

 

 

「――――――人が手繰り寄せ、掴みとりし必然だ。人間力で総ての困難を踏み越える。かつての貴様のようにな。星の開拓者」

 

 

――世界を救うと言う意志。消えぬ闇

 

 

それらを総てを抱え、先頭を走り続ける人間、リッカ

 

 

――その輝きが潰えぬ限り

 

 

自分達に、敗北は無い!

 

 

 

「――そう、か」

総てを理解したとし、目を閉じるテスラ

 

「いずれまた違うカタチで見えることもあろう。サーヴァントとはそういうものだ。その時は楽園の扉を叩け。そして智恵を貸すがよい。まだまだカルデアには穴が多い。座から気紛れに送られてきた『アラフィフ・ウィルス』とやらに電子機器の穴を浮き彫りにされたゆえな」

 

 

 

「――再会!そうか!!再会を望むか!!天才たる!このニコラ・テスラに!!」

 

 

 

「機があれば、な」

 

 

 

「来ます、ギル」

 

 

――黄金の龍神が駆け抜ける

 

 

「――ではな。末期は潔く在るがよい。理性を手放すことなく立ちはだかった、人類神話とやらの担い手よ」

 

 

 

――あ、ところで・・・

 

 

 

「――気にかかったのだが。人類神話、とはなんだ?聞いたことのない単語だとは思っていたが」

 

 

 

――素朴な疑問を器が拾ってしまった・・・!

 

 

 

「では!!人類神話の意味を口にし私は世界から去ろう!!そう!!人類神話とは!!」

 

 

――雷龍神の牙が、テスラを噛み砕く

 

 

「私の――造語だ!!!

 

 

 

一瞬の交錯の刹那に、雷電博士は姿を消し

 

 

 

「――さらば、キャプテン☆ニコラ。やはりアルトリウムこそが至高なのです」

 

 

キャップを深く深く被り直し、黙祷を捧げる

 

 

 

火花と雷を放ちながらドリフト、急停止し

 

 

「――――」

 

 

ゴールデン・ベアライターにてタバコに火をつけ、煙をはき

 

その後ろでどこからか取り出したサングラスを着用し

 

 

二人合わせて、〆を飾る

 

 

「「『Good night』」」

 

 

呟くと同時に、ロードの軌跡が大炎上

 

 

 

ニコラ・テスラの階段を、焼き付くしたのだった――




「きゃ――――――!!!やったやった!!リッカがやった!見てた!?私のリッカがやったやった――!!」


「落ち着けって!リッカちゃん・・・あらゆる意味でヘラクレスだったんだね・・・ごめんね軽い気持ちで女ヘラクレスなんていって・・・ヘラクレスも親に色々されたもんね・・・」


「リッカ大好き!本当に大好き!!愛を知らなかったとしても、私達の幸せを願ってくれたリッカが本当に大好き!自分が苦しくても、辛くても、誰も憎まないリッカが大好き~~!!ダーリンも好きよね!大好きよね!?ね!?ね!?」

「いででででで好きだよすげぇよ半端ねェよ神話にだっていないよあんなオリハルコンメンタル!」

「浮気~~~~!!!私以外の女の子好きっていった~~!!」

「お前理不尽にも程があんだろぉおぉお!!!」


「頑張ってリッカ!うんとうーんと祝福あげちゃうから!あなたにいっぱいいっぱい幸せを!――ねぇオリオン。リッカの親御さんにあげるのは疫病か猪か、やるならどっちかな?」


「ガチトーンにならないでくださいこわすぎです」


「えぐっ、えぐっ・・・リッガ、リッカぁ・・・」

『SweetSジャンヌ永久無料券』

「いつでも来なさい・・・美味しいスイーツ、いつでも振る舞ってあげるから・・・!私、ずっとあなたの傍にいるから・・・!えぐっ、えぐっ・・・」




「守護らねばならぬ・・・リッカたんのやさしみを、とうとみを・・・拙者が守護らねばならぬ・・・――」

『ドレイク裸婦画100選』


「なにぶつくさいってんだいアンタ。・・・そうだねぇ、いけすかない相手からむしりとるやり方でも教えてあげようかねぇ・・・あらゆるものを、さ」

(親の繋がりを感じられない・・・か。・・・まさか、こんなカタチで共通点を見出だされるとは)


「どした?先生」

「気掛かりなことでも?」


「いえ、・・・ただ、母の愛は流石に教えられませんね、と」

「「?」」




「おそらくリッカ君は自然体で振る舞われる事が一番の安らぎになるんだ。今までのメンタル変動からして間違いない。無闇に他人行儀を増やさないよう、信頼できる人格と交友関係にのみリッカ君の発言を開示しよう」

『最高級スイーツ詰め合わせ』


「ようやく医療スタッフとして僕が力を振るえるんだ!リッカ君の心が突然砕けないよう僕がカウンセラーになってみせる!彼女の心は、僕らが支えるんだ!」

(だから、必ず帰っておいで。いまここにいる皆に、君の敵は一人もいないんだから)


「早速メンタルの見返しを・・・うわぁ!?改めてみるとなんだこれ!?『リッカ君は常にリラックス状態かつ、ハイテンション状態!?』ポジティブとかそういうレベルじゃないぞ!?悩みも苦難もどこかにおいてきたみたいな精神構造だ!彼女は精神が壊れてるんじゃない『壊れかけていたものを、徹底的に打ち上げて鍛え直した』んだ!傷は消えなくとも生まれ変わった刀身だ、折れることはない!」


(この歳で大成している精神性・・・過去に受けた形跡のある過度のストレスの程度を計算して・・・おかしいぞ、矛盾している!『こんなレベルの精神的外傷、心が壊れていない方がおかしい』!親御さんにすら愛されなかった君は一体誰に、どんなカタチで救われたって言うんだ!?)


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