ヴリトラ「活気に溢れとるの〜」
(試練の果てに生まれた都市…きひひ、よい。よい都市じゃ。市長の奮闘、見たかったのぅ…)
「うむ、わえもこういう楽しい苦難の果ての仕掛けをしたい。しかしあのクリームヒルト、予算を下ろさなかったゆえな…」
〜
クリームヒルト「斬りなさい。自腹」
〜
「世知辛い…どこぞに財宝眠っとらぬかのぅ」
ベルゼブブ【ヴリトラ】
「おぉ、バアル殿。如何にしたか」
【私をバアルと呼んだお前を支援する。情報を渡す】
ヴリトラ「おぉ、ありがたや!やはり神は敬うが吉よ」
【日本の北部に迎え】
「北ぁ?」
【魔性の財が、眠っている】
「あぁ、その書物か。それはちょくちょくカルデア大使を名乗って様子を見に来る、茨木なる鬼が見ている品だ」
温羅の部屋にで見つかった、オニキュアと読める書物。それに思い当たる節の無かった温羅が聞いてみたところ、犯人はあっという間に断定できた。どうやら茨木童子、ちょくちょく足を運んでいたようである。
「カグツチを母に会わせに来るのだよ。あぁ見えて面倒見の良い輩なようだ。酷い目に合わせたことを恨んでいるかと思えば、カグツチの為にそれは水に流すという。なんとも首魁らしい割り切り方だ」
「そんなことやってたのか…茨木」
カグツチの面倒を見ている茨木は、人目を偲んで母たる伊耶那美へと彼女を会わせていたのだ。その面倒見の良さは知るところではあったが、よもや異聞帯に至るまでの気配りとはと温羅は瞠目する。
「その書物はその折にカグツチに勧めていた、鬼と天の為に戦う戦士おにきゅあなるものが綴られている。カグツチと合判して読み耽っていたよ。カルデアに持ち帰らずに置いていった時はどうしたのかと思ったが…なるほど、秘密の趣味なようだな」
それを温羅の部屋にそっと仕舞わせていたのは何故か。恐らく見付けても無用な勘繰りもひけらかしもしないだろうとの信であろうか。きっとこれは桃源郷に通う理由付けなのだ。カグツチを、何度でも連行く為の。
「その真意、よく汲み取ってやるのだぞ。では私はおむすびを作る。カルデアに帰るときに持って帰るといい」
微笑ましげな表情を浮かべ、アマノザコは厨房に戻っていく。尊厳破壊の一歩手前の仕打ちすらも水に流すとは、つくづく茨木童子は鬼に向かぬ鬼だなと温羅もまた笑う。
「解ったよ、茨木。ここにあるのは誰にも内緒だ。アタシとの約束だぜ?…にしても…」
この鬼救痾なるもの、リッカの好きなウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムとも違う女児向けヒロインの体を感じさせる。天より使命を授かった鬼が鬼救痾と変身し、悪逆無道の豪族や地頭から鬼の領地を護る…というのが大まかな筋であるらしい。
「ばりっばりの変身アクションヒロインだなこりゃ…そうか、茨木は甘いものと変身ヒロイン好きか…」
そんな趣味嗜好の可愛らしさに笑みを浮かべながら、温羅は思う。これはもしや、自分にもできるのではないかと。
(家族連れでヒーローショーを見に行くのは珍しくもない。んでもって鬼といったら基本は悪役よ。だがこのおにきゅあとやらなら大丈夫なんじゃないか?)
そうすれば、アマノザコや伊耶那美、それに茨木やカグツチにも楽しんでもらえる催しが出せるやも知れない。それをカルデアで行えでもすれば、魔性組にウケが良いヒーローショーの一つも出来るはずだ。酒呑あたりは手を叩いて笑うだろう。酒でも頭に回ったかと。
(うーむ、しかしアタシみたいなゴツい大女がやっていいもんなんかねぇ?)
書物を見てみれば、ヒラヒラとした華美な服装を纏いそれだけで人を殺せそうなキラキラとしたエフェクト、怪光線めいたそれを纏いバトルコスチュームに変身するおにきゅあを見ていささか気後れする温羅。この手の作品に不可欠なのはイメージだ。それを壊してしまった際の子供の涙は何よりも辛いものとなるだろう。
「…よし。試しにアタシも見てみるか。先入観は取っ払って、新しい知恵に触れるのもいいだろ」
自分は全く知らなかったし、茨木もシャイなのか勧める事もしなかった。酒吞あたりには教えているのだろうが、わざわざ教えてもらっては恥をかかせるだけだろう。幸い、書物は軽く五十冊。半日あれば読み取れるものだ。
「どれどれ…パワー自慢のおにきゅあとかいないかー?」
そんな風にちょっぴり楽しみに読み進めていく温羅。彼女は今、魔性の希望たるヒロイン達の世界に足を踏み入れようとしていた。読んでは進め、読んでは進めを繰り返すこと約数時間…
〜
「お邪魔しまーす。どう?家族団欒は上手くいったかしら。改築も近々始まるみたいよ…って…」
にゅっとスキマが開き、出で立つは神出鬼没の境界の覇者八雲紫。豊かな金髪と落ち着いた紫色の服のびじょが温羅に会いに来た時…
「おぉ、おにきゅあ…文芸とエンターテインメント…」
眼鏡をかけ、人知れず余韻に浸っている温羅を見て面食らう紫。また彼女が文化吸収でもしていたのかしら、と見てみれば、手にした巻物を見て合点が行く。
「あら、あなた鬼救痾好きだったのね。意外ではあるけど理解はできるわ。バリバリの秩序善だもの。グランドなバーサーカーだけど」
「おぉ、紫!おにきゅあはいいな!おにきゅあはいいぞ!」
無事に好感触だった温羅の様子を見てスキマから羊羹片手に出てくる紫。彼女は幻想郷でなんにもやりたくないとき、桃源郷を避暑地にして眠っているのだ。要するに別荘扱いである。
「子供向けにあって子供だましにあらず。ハマったのはそんな場所かしら」
「そうなんだよ。子供向けってもっとシンプルかと思ってたんだが、ヒロインとしての葛藤や暴力の正当性、相手幹部とのすれ違いと和解、クライマックスの王道展開…なんつーかな、ツボが抑えられまくりだった!」
中にも最後に合流したきゅあ猛鬼の力を借りた天地神明マーブル棍棒にて邪悪なる朝廷を星ごと粉砕し蓄えられた惑星再生のエネルギーが全宇宙に照射されるシ~ンの巻物は酷くにじんている。きっと涙がたくさん垂れたのだろう。うんうんと頷き紫は語る。
「子供向けというのは得てして大人から見ても唸らされるものよ。子供の無垢な感性はだましやまやかしをあっさり見抜くもの。改善を望む大人の批判より、子供のつまらないの一言が一層響くのだから」
「あぁ、よく練られてた…思わず時間も忘れて読み耽っちまったよ。戦う少女、可憐な姿…そういうの、いいよな…」
「まああんな細腕でビルくらいの棍棒振り回したり、決め手が基本撲殺なのは流石の魔性向け番組よね」
「そこは確かに…少なくとも人間向けじゃないよな…」
噛みつき目潰し、睾丸潰しやひっかきなどは常套手段。苛烈なファイトスタイルはご愛嬌といったところであろう。それを差し引いても、鬼から見てそれはキュートの部類に入るのだ。
「茨木のやつも水臭いなぁ。こんなにいいものなら誘ってくれればいいのによぅ。巻物だけなのかなこれ」
「映像化されてるわよ?閻魔亭に私が全シリーズ寄贈したからいつでも見れるわ」
「マジか紫!なにやってんだでかした!」
なんとシリーズ化しているし全部持っていた。年の功全開の紫に手を叩く温羅。
「たまには頭空っぽにして娯楽作品見たくなったりするのよね〜。どう?親孝行計画立案のためにも見に行ってみない?大方ヒーローショーにインスピレーション得てるんでしょ?」
気楽な振る舞いながら、紫はとても鋭い。自身の行動方針は筒抜けであるようだ。恐ろしい賢者である。
「お見通しかよ。なら乗りかかった船として付き合ってもらおうか!行こうぜ、紫!」
「はいはい。家族には私から伝えておくから、スキマに飛び込んで先に行ってなさいな」
「よし!邪魔するぜー!あっくそ、狭いな相変わらず!」
「やめて~。スキマ引き裂かないで〜。ゆっくり滑り落ちて〜」
そんなこんなで、親孝行計画立案のための資料拝見が始まった温羅。彼女の願いを叶える鍵は、茨木のおにきゅあであった。
…その発案の果てが、大いなる騒動の一片であることを。その時はまだ、誰も知る由もなかった。
ベルゼブブ【サタン様、よろしいのですか?】
サタン【何が〜?】
ベルゼブブ【あのクリームヒルトなる娘、サーヴァントでありながらサタン様をも上回る力を渇望しているよう見受けられます。今はまだ胎動の段階ですが、いずれ脅威になるかと…】
サタン【いいのいいの、好きにさせてあげよう。好きなだけ、気の済むまで強くなってもらおうよ】
ベルゼブブ【…真意を、お尋ねしても?】
サタン【どうせ楽園に負けるしね♪】
ベルゼブブ【…承知しました。では、資金の情報をお伝えします】
サタン【しきん?】
ベルゼブブ【はい。ヴリトラめに、邪悪なる竜の財宝…カムイの黄金の所在を教えます】
サタン【あー。いい特異点ができるといいね!】
ベルゼブブ【はい。では…】
サタン(えーと、クリームヒルトを仕留められるくらいの英霊はどれがいいかなー?)
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