人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ヴリトラ「おぉ!これがカムイの黄金!これはよいリソースじゃ!」

ベルゼブブ【聖杯を預かっている。好きに使え】

ヴリトラ「何から何まですまぬのぅ。きひひ、これでよき試練、よき褒美は確実じゃ。ヴリトラとして、やりがいがあるというものよ」

ベルゼブブ【サタン様の計画する特異点の完成の時間を稼いでもらう。頼んだぞ】

ヴリトラ「んん?あの魔王、また何かをする気かえ?」

【あぁ。…悪龍を討ち果たす為の場らしい】

ヴリトラ「ん〜………???」


極まると冷静に番組スタッフとキャストと監督を見るタイプ

「よーし、そんじゃあいっちょ見るとするか!」

 

閻魔亭の特上客室に案内された温羅に紫。周りのどよめきはものともせずに自分らのペースを貫いていく。要するにオニキュアの視聴である。紫も特にやることがないのか、隣で寝転がりながら侍っている。

 

「シリーズものとしてたくさん話があるから、休憩を挟みながら視聴なさいな。一気見は身体に毒よ」

 

「おうとも、節度は守って部屋は明るく。模範的な見方を極めていこうと思うぜ」

 

紫の忠告もそこそこに、映像再生を行う温羅。ヒーローものや子供向けを物語としての観点で見る。それもまた、楽しみ方の一つであろう。

 

「おぉ、やっぱ色合いや声が付くとダンチだな…!ガッツリ追いかけていくとするぜ!」

 

(スーツアクターや役者に興味が湧く、みたいな現象かしらね。案外そういうのも発見があって面白いのよね)

 

夢中になり胡座をかいて見ている温羅の横顔を眺めながら、紫は一人頷く。子供のころに憧れていた夢を別の観点で見る。それもまた、夢との向き合い方の一つだろう。とはいえ、紫にとっては勝手知ったるシリーズものなので目新しさというものはないのだが…

 

「そういや紫、お前さんなんだってこれシリーズもので持ってたんだ?用意したのお前さんだよな?」

 

閻魔亭に寄贈されたもの、即ち紫が有していたものであることを指摘する温羅。残念ながら紫は人を惑わす側の妖怪であるので、愛や勇気を掲げるには胡散臭い方のタイプなのである。

 

「あぁ、それはあなたを勧誘する際のプロバガンダにするつもりだったのよ。鬼はこの世界ではこんな一面もありますのよ、ってね。想像以上にあなたが理知的なおかげで、これを使わずに済んだのは良し悪しだったけれど」

 

「夢も希望も身も蓋もないやっちゃな〜…」

 

「ごめんなさい、リアリストなの私は。でも、無駄にならなくて良かったわ。画面の向こうの彼女達から、何かを掴めるといいわね。…ふぁ…」

 

夢も希望もない答えに、軽く肩を竦め軽口を叩きあう紫と温羅。その言葉のすぐ後に、紫は大きな欠伸を披露する。

 

「なんだお前さん、四六時中寝てるくせにまだ眠いのかよ?」

 

「そうねぇ…寝れども寝れども眠くなるのはどういう性なのかしら。不思議よねぇ…悪いけど、少しだけ眠らせてちょうだいな」

 

本来なら身の回りの世話をする九尾とその式神がいるのだが、温羅と会うときはそれらに休暇と自由時間を与えている。妖怪や魔性で温羅に挑むなど、地震や天変地異に挑むそれと同義だからだ。

 

「おうよ。一息ついたら起こすからゆっくり寝な」

 

「えぇ、それじゃあおやすみ〜…」

 

こうして紫がダウンし、温羅は黙々とオニキュアを拝聴する時間に移る。定期的に紅閻魔がコース料理や風呂の支度を行い経過することまる一日。

 

「ふぁ…どう?一段落ついたかしら…?」

 

朝日が登る頃、伸びを行い紫が目覚める。一週間寝続けるのもザラないつもと比べたら多少は早起きである。すると紫かは、奇妙な視聴を行っている温羅を見やる。

 

「あら?なぜ初代をまた見ているのかしら?」

 

見れば、また初代、一話の様相が現れていたのである。もしや、まさかと思い訪ねてみれば、当たり前のように温羅は答える。

 

「全部見た。今は二週目だな」

 

「あら〜…」

 

想像以上にどっぷりハマっているわね…などと思った紫だったが、意外にも温羅のハマり方は一般とは違うものであることを知る。

 

「ここの名乗りポーズの発生とカメラを意識した態勢は…次の奴らが名乗るまでフレームアウトしていたとして…全員で声をかけるタイミングも含めて…」

 

それは一ファンとしての顔でなく、計画の企画者やアクター、仕掛け人の側の視点でオニキュアを解析する温羅の姿があった。自身らが演じるものとして、行うものとしての観点を見出している、徹頭徹尾冷静で論理的な思考。それを子供向け番組において発揮している隣人に、紫は若干呆れ気味に声をかける。

 

「あなたねぇ。そこはリッカちゃんみたいに無邪気にはしゃいでもいいんじゃないかしら。オニキュア最高ー!がんばえー!みたいに言ってもバチは当たらないわよ?」

 

「悪いな、アタシが同じことやったら閻魔亭がガレキの山になるんだわ。こう見えて感動で心はめちゃくちゃ揺れてるんだぜ?抑えるには別の事考えるしかないんだわマジで」

 

どうやら、感情や情動のままに…といった行動は本能レベルで行えないのがこの鬼神らしい。盛り上がりやクライマックスの際にも、彼女は感嘆の声一つあげず心の内のみで猛っていたのだろう。

 

「…大変ね、グランドバーサーカー様は」

 

どれだけ好きなものを見付けても、どれだけ心躍るものを見ても、どれだけ美しいものや醜いものを見ても、彼女は決して狂えず、酔っぱらえず、乱れることも我を失うこともない。徹底した現実の俯瞰と、解析と判断と理論的思考。それが彼女がグランドの霊基を与えられた所以なのだ。この親友が一人は、熱狂すらも人並みに出来ない。自分の理性が、狂ったように強く強固であるが故。

 

「桃子と同じで元だ元。母ちゃんぶん殴るのに使ったからな」

 

酒を飲もうと文化に触れようと、ずっと素面でいるようなものたる彼女を紫なりに労るも、温羅はそれを笑顔で返す。オニキュアから始まる彼女の理性の強固さの発見に、紫は改めて問いかける。

 

「それで、なにかプランは見つけたのかしら?親孝行に使えそうなプランは」

 

「あぁ。手っ取り早くやれるのが…オニキュア五天王は実在する、って体でショーするこったな」

 

オニキュア五天王。シリーズ4作目の追加戦士を含めた四人の大所帯となったオニキュア達。それを演目に温羅は選んだ。

 

「何度も現れる理由にもなるし、数がいるから飽きも来にくい。アタシと酒吞と伊吹で三人、萃香と勇儀で二人でなんとかやれそうじゃないか?」

 

「想像以上の豪華メンバーね…桃源郷でやるの?」

 

「だな。ステージや会場は長老サマに話しつけてなんとかするから、あとは気まぐれで飲んだくれの鬼どもに話をつけりゃいけるだろ。勇儀は間違いなく話のわかるやつだからな」

 

特異点があれば手っ取り早いが、そうもいかぬのである場所で話を展開する。そのために、温羅は二週目に入っていたのだ。

 

「起きたのなら丁度いい。鬼二人に話を付けに行くから付き合えよ。そこでどこが良かったか、どこが感動したかをじっくりたっぷり教えてやるからな」

 

「一応お尋ねしますけれど、それは文字数にして3000文字くらいかしら…」

 

「いいや、20000文字ほどやる」

 

ハマりにはハマっていたのね…。キラキラとした目から放たれる一人のオニキュアファンのレビューに付き合わされる事が確定した紫は渾身の苦笑いを浮かべるのであった。

 

「紫さま、温羅さま。会合はおわりまち…ましたか?大変お疲れさまでした。お風呂にお入りになってくださいませ」

 

「会合ぉ?」

 

「雀たちが騒いでおりまして。鬼神と大妖怪の秘密の会合チュン!何かまた、とんでもなく凄いお話をしているっチュン!と、ひっきりなしだったんですよ。ご意見はまとまりましたか?」

 

「「あ〜…」」

 

アニメ見て寝てただけなんだけどな…そう言い出すことは、神妙な表情の紅閻魔に告げること叶わず。苦笑いのままに美食と朝風呂を堪能する二人であったとさ。

 

 

 




幻想郷・博麗神社

温羅「かくかくしかじか。というわけだ」

勇儀「ふむふむなるほど。いよいよ私らも変身ヒロインになるわけかい。時代変わりまくりだねぇ」

萃香「楽しそうだなぁ!やってやってもいいぞー!」

温羅「助かるぜー!」

萃香「温羅!私と手合わせしたらの話だけどなー!」



『地面に突き刺さった萃香』



霊夢「地面から鬼が生えるようになったか〜…」

紫「妖怪神社の面目躍如ね」

霊夢「あぁん!?」

温羅「すまんな霊夢。頭が抜ける頃には酔も冷めてるだろ。すまないが打ち合わせに使わせてくれ」

霊夢「まぁ、温羅さんがそういうなら」

紫「彼女の言うことは聞くのねー」

霊夢「アンタみたいに胡散臭くないからねー」

勇儀「温羅、一つ問題があるよ」
温羅「なんぞ?」

勇儀「伊吹はともかく酒吞の気分。アレ、はじめに誘うべきだったろう?」

温羅「………気分か〜…」

先に話しつけとくべきだった…。温羅は浮かれからやらかしたミスに天を仰ぐのだった。
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