酒吞「よよよ、まさか仲間外れにされるなんて思わんかったわぁ、辛いわぁ。よよよ〜」
温羅「悪かった。ほんとに悪かったって!思いつきの立案だったんだよ!」
紫(嘘泣きね…)←怖いので隠れている
酒吞「おにきゅあなんたらはまぁなんでもえぇけど、温羅はんは筋を通す鬼やったのに…うちは哀しいわぁ、よよよ…」
温羅「そこをなんとか…。機嫌直してくれよ、なんでもするからさ」
酒吞「言うたね?なんでもするって」
温羅「あ?あぁ、言ったが」
酒吞「ふふ、ほなやろか。うちらの、お遊び」
温羅「…一応聴くが、そりゃあ蹴鞠やおはじきとかのお遊びか?」
酒吞「あほ。うちらのお遊びは…わかるやろ?」
紫(あ〜……………)
温羅(紫、すぐ終わるから待っててな…)
(お疲れさま…)
「それじゃあ…始めよか?温羅はん。よろしゅう頼みますえ?うふふ」
へそを曲げた(自称)の酒吞の提案した手打ち案。それはシミュレーションルームでのお遊びに付き合う…という名目の命のやりとりである。どことなく嬉しげな酒吞に対し、温羅は念を押すように声をかける。
「言った手前は付き合う。だが楽園で殺し合いは御法度なの知ってるよな」
「もちろん。やけんどしょうがないやろ?うちらの遊びはいつだって命がけ。角や牙、爪はそのために付いとるんやもの。温羅はんも、うちも。せやろ?」
否定はしないがな…。温羅にはどうにも、鬼の本能というやつが苦手であった。そういう生き方こそが本懐だとしても、どうしても、彼女のいた魑魅魍魎の地獄を思い出す。
「仲良しこよしのお利口さんもえぇけど、たまには発散せんと滾ってしまってあかんわぁ…そうやね、もしかしたら…」
「もしかしたら、なんだよ」
「小僧や、それこそリッカはんの骨…抜いてしまうやもしれへんよ?ふたりともいけめんで、めんこくて…うふふ。最高のコレクションになりそうやしねぇ?」
そう来たか…温羅は観念する。ギルガメッシュが治めておらぬカルデア程でなくても、人魔が共存する以上こういった些細な諍いは起こり得るものなのだろう。だからこそ、自身がそれを聞き及べたのは幸いだ。
「その名前と所業を聞いたら…ちょいと穏やかじゃあいられんな」
「せやろ?止めてくれなきゃあかんよ、温羅はん?」
「あぁ──本当にできるかどうかは脇に置いて、だ」
温羅は構える。酔うのは酒にだけにしてもらう。血に迷い、世界を救うための人間に手を出させぬ様に。
「来いよ。お詫びと諫めも兼ねて…相手になるぜ」
「そう来なくっちゃ。ほな──行くで?」
その言葉と同時に、酒吞が盃を空へと投げ捨てる。それと伴い、猛烈な俊敏さで酒吞は温羅の目を抉りにかかる。
「目ぇ、もろた」
「やるか、馬鹿」
その端的な急所攻めを、むんずと頭を掴み無効化する温羅。温羅はスピードステータスはそれほどなので動き回るのはやや不得手だが、その力はどの鬼すらも並ばぬ無双。例え酒吞であろうともだ。
「っ、く…二日酔いより、えぐいわぁ…」
そのまま頭を握る手に軽く力を込めれば、それだけで必殺の技となる。2メートル近くある温羅のアイアンクローに、酒吞は宙ぶらりんになりながら苦悶を受ける。
「満足するまで付き合ってやるよ。さぁどうした、これで終わりか?」
「冗談。始まったばかり…やろ?」
酒吞は口から酒気を吐き出す。それは彼女の有する神の酒の一旦、鬼すらも酔わせる魔性の酒気だ。鬼には痺れになるそれを、温羅は手を離し吸わぬよう口を覆う。
「目ぇが駄目なら肝、おくれやす!」
そしてよろけた温羅の腹に、渾身の爪を食い込ませる。腹から引き抜く生き肝抜き。それは生物にとっての逃れ得ない死。
「…あぁ──…もう、どないなっとるん?」
だが、酒吞は不満げに声を漏らす。突き出した腕の爪が全く進まない。全くもって動かないのだ。渾身の力を持ってしても、温羅の皮一枚も穿けず血すら流れない。
「身体は丈夫なわけよ。アタシの腹筋はそりゃあムキムキだぜ?」
「自身無くすわぁ。これじゃあ鬼の名前が型無しやないの」
「萃香にも言えることだが…」
ぶわり、と温羅は右脚を、サッカーボールを蹴る際のように高々と上げる。当然蹴るのはボールではなく、酒吞童子だ。
「まともにやりたきゃ、まずは酒を断つんだな!」
「っ───」
咄嗟に身体を庇った酒吞だが、蹴り飛ばされる事をかわせはしない。脚の先端速度は音速に達する程の超絶的速度で、酒吞は蹴り飛ばされる。そこからの軌跡は凄惨の一語だ。
一切の減速も無しに、遥か彼方の山脈に叩きつけられる。蹴り飛ばされた音速の蹴りのダメージもさることながら、吹き飛ばされる速さもまた然り。酒吞は生身で音速を越えたが故に、自身の速度で音の刃に切り刻まれたのだ。もくもくと、穿たれ激突した山から煙が上がる。
「首を落としても死ななかったんだ。お前さまがこんな程度でくたばるわけねぇよな」
といいつつ、精巧なシミュレーションは山までの距離まで再現されている。運動がてら歩いてその様子を見に行く温羅。
「いち、に、さんと」
一飛び、二飛び、三飛びと重ね、着弾地点の酒吞を見やる。
「おーい、生きてるかー?」
「うっふふ…いややわぁ、ほんまにえげつなくて…たまらんわぁ…」
身体中から血を流しているが、霊核も心臓にも異常は無いことを温羅は見やる。勝敗を分かったのはたった一つ。酔ったか酔っていないかだ。真面目にやれば、角の一つはへし折れているだろう。
「満足してもらえたか?悪かったよ、たまたま見つけたもんで思い付いたんだ」
「ええよ、解っとる。茨木が言うとるやろ、鬼は嘘をつかへんよって。よりによって温羅はんが、不義理なんて働かんくらいも解っとる」
「ならもっと穏便に済ませてくれよなぁ…」
ほい、と手を差し出し、酒吞がその手を取って立ち上がる。
「うふふ、そっちもどない?少しはひやりとしたんとちゃう?」
「んん?」
「温羅はん、いっつも生真面目で羽目外すの下手やもん。少しはうちと遊んで気持ちもほぐれたやろか。親孝行だの家族さぁびすだのは笑顔でやるもんで、仏頂面は心配かけてしまわへん?」
まぁ、うち親孝行なんかしたことあらへんけど。あっけらかんという酒吞に、温羅は盃を渡す。
「お前さまなりの気遣いだったってことかよ。うぉお、物騒なやっちゃな…」
「うちをなんだと思っとるん?それに温羅はんだけには物騒とか死んでも言われとうないわぁ。次はこうはいかへんから、覚えとき?また遊んでもらうの、楽しみやわぁ」
普通に考えたら目と腹を抉られてる酷い被害なのだが、そこはもう諦める。人と魔の軋轢は、自分が緩衝材になって受け止めると決めているのだから。
「あぁ、御手柔らかによろしくな〜…ところで本題だが、機嫌直してくれたかい?」
「あー、おにきゅあがどうの、やね?しゃーない。茨木のお子様主義には困ったもんやけど、たまには酔狂もええね。うちで良ければ、やってあげてええよ」
よし!温羅はガッツポーズをかまし作戦成功の手応えを感じる。味方にする以上に、鬼は気まぐれで何もかもを台無しにする生き物故に目の届く場所にいてほしいのだ。
「うふふ、そないに喜んでくれるん?なら素直に首縦に触ればよかったわぁ。まぁまぁ、適当によろしゅう?」
「あぁ、基本は抑えるから好きにやってくれ。オニキュアは大抵強いやつが生み出すワンマンからのチームプレーがコンセプトだからな」
「それ、小僧が好きそうなひーろーものとしてどないやのん?」
「しょうがないだろ、鬼ってそういうものらしいから…」
とりあえず名乗りだけは全員でやって、後は思い思いに敵に挑むがオニキュアである。誰が一番先に敵の首を上げるかの姿勢は、競争社会と弱肉強食の世界を端的に分かりやすく表し魔性のちびっ子に大人気。やれー!ころせー!おにきゅあー!が銀幕御伝に響き渡るのは様式美。
「じゃあ、そうならんようしっかり監督しないといけんねぇ。気張りや、温羅はん?」
「おう。マイルドめに行かせてもらうからな。モツ抜き骨抜き禁止だからな!」
「えー」
「えーじゃねぇよ!はるえやなつきも見るんだぞ多分!」
「あはは、冗談や冗談!…多分」
「絶対って言わんかい絶対って!」
けらけら笑う酒吞。しかし、彼女は決して温羅の意思には背かぬだろう。
何故なら力こそ鬼の故。鬼神たる温羅の力を、彼女はとっくに認めているのだから。
温羅「という訳でなんとか協力の運びになった!」
紫「非戦の平和主義者なのに、どうしても暴力が絡むのが哀しいところよねぇ」
伊吹童子「しょうがないわよー。酒!暴力!せっくす!が鬼なんだもの!温羅は酒しか好きじゃないものね?」
温羅「世に平穏のあらんことを…」
伊吹「大丈夫!アタシは遠慮なくお付き合いいたしますわよ。ヒーローショーなんて楽しそう!あれでしょ?首捩じ切って血をぴゅー!がファンサービスなのよね?」
温羅「よし決めたぞ!こうなりゃオニキュアだけじゃなく、人のプリキュアも全員で見る!!」
紫「その心は?」
温羅「どいつもこいつも血生臭すぎるメポ!!人間のヒーロー常識を頭に叩き込むメポ!!」
伊吹「やだー!語尾おかしくなってておもしろ~い!」
初めて茨木の苦労がわかった気がする。極まった個の統率の難儀さを痛感する温羅でありましたとさ。
そして閻魔亭に戻り数日後…歓迎せぬ報せが来たのは言うまでもない…。
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