人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アマノザコ「大人ニ名、子供ニ名」

伊耶那美【あ、アメノウズメが脱いでいるのか?なんと賑やかな空間なるや…】

アマノザコ「地上ではいつもの事だ、母よ」

茨木「うむむ、酒吞も温羅もどこへ行ったのだ?連絡が取れぬな…」

カグツチ『不安…』

茨木「案ずるなカグツチ、酒吞も温羅も卑怯なもてなし以外で果てるものか!信じて良いぞ!」

カグツチ『…うん』

(しかし気配は感じる…この場、この特異点の何処にいるのか…?)


ゲームマスター〜その名はヴリトラ〜

『皆!周りを見てくれ!』

 

遂にドラランド入園を果たしたカルデアメンバー。マシュ、シトナイ、アテルイ、そしてリッカの先行部隊にロマンが勢い良く声をかける。

 

『どこもかしこも!ワイバーンだ!!』

 

空を飛ぶワイバーン、風船を持つリザードマン、二足歩行のヒューマノイドドラゴン。古今東西多種多様なドラゴンが愉快に呼び込みを行っている異様にして勇壮な光景。言ってやったと得意気なロマニ。タイミングを狙っていたのだろう。

 

「確かにワイバーンも点在しております。しかし比率で言えばどこもかしこもと言うほどではないような?」

 

『あっはい、そうだよね…ちょっと調子に乗りましたごめんなさい…』

 

『アテルイよ。今のはこのロマニ殿の持ち芸なんだ。過去には話の合間にワイバーンが来るのが通例でな…』

 

そ、それは失礼をと慌てふためくアテルイのコントを生暖かく見守る中、伊耶那美とアマノザコ、茨木、カグツチはマップを見やる。

 

『広い…』

 

「アミューズメントブース、ドームシティブース、フードコート…竜種の楽園だけあって、広大な敷地だな」

 

竜の背中をイメージした地形に、夏草デスティニーランドよりも一回り大きくなったパークには施設が区分けされて展開されている。ジェットコースター、観覧車といったメジャーな乗り物などの施設が纏っているのがアミューズメントブース。広大かつ壮大な、ショー向けのドームが設置されているのがドームシティブース。フードコートはセーフエリアといったところだろうか。

 

「ここがまるまるカムイの黄金なら、きっとどこかに中核になるであろう黄金塊があるはずだよね。その目星が付けばいいんだけど…」

 

「何分とても広いですからね!歩き回るのに大変時間がかかりそうです!」

 

虱潰しにするにはあまりにも広大なドラランド。この場のどこかに存在するであろう原因は、間違っても棚ぼたで見つかるものでないのは明白だ。さてどうしたものかと首を傾げていると、彼女らに声をかけるものがある。

 

「おうおう、ようぞ来た。来ないとは思うとらんが、いざ待つ側になると気を揉むものじゃのう。いやいや、ようぞ来た。わざわざ邪竜の口の前になぁ。き、ひ、ひ」

 

「──!邪気!」

 

アテルイ、シトナイが即座に臨戦態勢を取る。眼の前に存在するもの、それは紛れもなく邪悪なるものとの確信があった。金髪褐色、暗き衣服に身を包みし女性。何より醸し出す風格の圧が桁違いだ。

 

「おぉ、ヴリトラ様だ!」

 

「となると彼女らがカルデアの一行か!」

 

一斉にどよめくスタッフ達。その反応で、ヴリトラと呼ばれたこのサーヴァントが統率者に値する存在なのは明白だ。

 

『ヴリトラ!インド神話におけるインドラと確執した邪竜!た、確かに運営者としては相応しい格だけど…!』

 

インドラと戦い、ヴァジュラにて討たれし邪竜。間違いなく敵対者であろう反英雄な重鎮。それが、このヴリトラである。

 

「きひひ、安心せい。わえが力を振るうは最後。わえは運営者として、貴様らにドラランド攻略と試練の内容を教えに来たまでよ。無論、ただ楽しみにきた客は楽しんで構わぬ。羽根を持っていよう?」

 

「預かりものだが」

 

「構わぬ構わぬ。それは非戦不干渉の証。少なくともわえらからは手を出さぬと誓おうぞ。ゆるりと楽しむとよいぞ〜」

 

どうやらアマノザコ達は敵としては見ないようで、ヴリトラなるサーヴァントはリッカ達に意識を向ける。

 

「というわけで、ゲームマスターとして説明をしようと思うが…どうしても戦いたいかのぅ?それなら相手をせんでもないが…」

 

「…リッカさん。仮契約の身分で献策は越権行為だとしても、ここは話を聞くが得策と進言させてください」

 

「私も賛成。なんかこの魔力量と圧…普通じゃないよ」

 

アテルイ、シトナイの感じた何か。なんとヴリトラは、聖杯クラスの魔力総量を有している。その事実に管制室がにわかにどよめき立つ。

 

「…是非、聞かせてください」

 

リッカは理性的に献策を履行する。ここは、争って勝てる相手ではないと判断したのだ。

 

「うむ。当代の邪龍同士仲良くできそうじゃのぅ。まぁそれはともかくじゃ。このドラランドは察しの通り、カムイの黄金を中核に作られたテーマパークよ。これを是正するには単純明快。黄金を集めわえを討ち果たせばよい」

 

勝利条件を提示するヴリトラ。自分が黒幕であり、倒すべき相手と明言するは流石と言ったところか。

 

「黄金を集める…?どういう事?」

 

「防衛に使っておるのじゃよ、女神。そしてそれらからわえは魔力を吸い上げておる。わえを倒せる領域に貶めるには、各地に点在するドラゴン…ガーディアンドラゴンを倒すことじゃな。急がば回れ、良い言葉じゃの」

 

防衛と絶対性の両立。それを崩すためのガーディアン攻略。筋道と段階を組んだ挑戦は、おそらく多分なる趣味の発露であろう。

 

「そしてわえの魔力を受けたガーディアンドラゴン共はとても手強い。楽園カルデアの精鋭でも一人や二人は死人が出るほどにのぅ。完全無欠の旅路に犠牲は問題じゃろ?」

 

「…そのドラゴン達にも、張れるメタがある?」

 

「そうじゃ!敏いの〜。そのままではまず相討ちになろうドラゴン共は、ドラランドのアトラクションに挑みクリアすることで弱体化する。そしてアトラクションクリアの暁には地脈と召喚サークルも手にできるようになっておる。手順を踏んで真っ当に倒すか、形振り構わず捻じ伏せるかは貴様らに任せよう。愉快な選択を取るんじゃぞ?き、ひひ」

 

つまり、ガーディアンドラゴンを倒すためにアトラクションに挑み、弱体化を狙うのが正道。カルデアの戦力を信じ、真正面から強力無比なドラゴンに挑むが邪道、或いは王道といった筋書きなのだろう。試練として、手の込んだ遊興である。

 

「アトラクションには肉体か精神、どちらかに巨大な負荷がかかるものとなっておる。生身の人間は愚か、サーヴァントすらも危うい上質なギミックじゃ。まぁ普通に考えてクリアするのは難しいが…救済措置も用意してやった故に安心せい」

 

「救済措置…?」

 

「人の手にあまるなら鬼の手を借りるが良い。このテーマパークのどこかに、鬼に伝わる五人の戦士が配置されておる」

 

「鬼救痾だなっ!?」

 

茨木のあまりに早い回答に満足気に頷くヴリトラ。話が早いのは好きなようだ。

 

 

「竜種をなぎ倒す力を有す伝説の鬼達。それらの力を借りてみるのも良いかもしれん。まどろっこしい小細工抜きで、ガーディアンドラゴン達を討ち果たせるならそれでよし。なんでもよい、わえの元にたどり着き殺すだけ。簡単であろう?」

 

どこまでも奮闘を楽しむ方針を崩さぬヴリトラ。余すことなくテーマパークを楽しませる為の試練内容に脱帽しつつ、リッカは更に問う。

 

「ちらほら一般人も見えたけど…食べられたりしない?」

 

「あぁ、そこは安心せい。貴様らが敗北した瞬間あやつらは臨時ボーナスとして食い散らかして良いと指示しておるでな」

 

『何が大丈夫なのかね!?』

 

「きひひ!わえらなどさっさと踏み越えなくては未来など語れまい!負けの想像をして死地に挑む莫迦はおるまい、勝てば良いだけの話よ!」

 

至極真っ当かつシンプルな理論にて、締め括るヴリトラ。責任は果たしたとばかりにふわりと浮き上がり…

 

「説明は大体が以上じゃ。さぁ、噂の楽園の奮起と奮闘…特等席で見守らせてもらうぞ。きひひ、気張るが良い!」

 

告げるべきを告げ、消え去るヴリトラ。どうやら彼女は最奥にて待つ構えを選んだようだ。故に、ドラゴン達を配置している。

 

「伊耶那美さん、アマノザコさんはカグツチやばらきーと一緒に行動してください。ばらきー、お願いね」

 

「そ、それはよいが…汝らはどうする?」

 

「勿論…!為すべき事をするまでだよ!」

 

リッカの言葉に、一同は頷く。悪龍の試練、乗り越えなくては明日がないと言うのならば。

 

「よーしみんな!まずはガーディアンドラゴン撃破!行ってみよー!」

 

「「「おーっ!!!」」

 

【おぉ、あな頼もしや…】

 

「未来を、頼むぞ」

 

試練にこそ挑むのみ。鍛え抜かれた人間力を持つカルデアのメンバー達が今、竜の楽園に挑む…!




リッカ「と言ったものの、どこから攻めようか?観覧車やメリーゴーランド、ジェットコースターやパレードロードなんてのもあるね」

田村麻呂『パンフ見てみたらどうだ?配ってたやつ』

アテルイ「それでは失敬…」

『ジェットコースター・バザガジールエリア』

『観覧車・ボルシャックエリア』

『メリーゴーランド・ボルメテウスエリア』

『マグマストーム・スサノオエリア』

『パレードロード・ボルバルザークエリア』

マシュ「なんだか仰々しい名前が並んでいますね!中にはスサノオの名前も…先輩?」

リッカ「………皆」

シトナイ「?」

リッカ「なるべく、いや確実絶対に!直接挑むのはやめようね…!」

エリアの枕詩についている名前。嫌な予感極まるその名称に、リッカは人知れず戦慄するのであった…。

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