人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ニャル【ルーちゃん様】

ルー「なぁに?今私は己を高める儀式に忙しいの」

ニャル【モロコシ食ってるだけじゃないですか。被ってますよ】

ルー「被ってる?」

ニャル【お名前、コンラのおじいちゃんルー神と被ってます】

ルー「…あっ」

ハスター【紛らわしいので改名はどうかの?ニャルが考えよう】

ルー「…なんか良さげなのお願い!でも、ルーも気に入ってるのよね…」

ニャル【では表記とイントネーションを変えましょう。ルゥ、と表記して…あなたの武器から取って、アンセス。ルゥ・アンセスなんてどうです?】

ハスター【おお、名前っぽくなったのぉ。やはり貴様よう気が回るのぅ】

ニャル【伊達にパパやってないよん、どうです?】

ルゥ「ニャル!」

【はいっ】

「モロコシあげる。ハスターと食べてね」

ニャル【…ありがとうございます】
ハスター【好感触だったのかの】

ルゥ「(もしゃしゃしゃ)…こんなに美味しいのに、なぜガンランスだとあんなに…(もしゃしゃしゃ)」




焦土の平穏

『まず俺等は火の文明に属するドラゴンだ。一に戦い、ニに鉄火場、三四が修羅場で五が焼け野原がモットーの、な』

 

ボルシャックドラゴン、ヘラクレス、そしてリッカ。割と竜、英雄、人の頂上クラスの集いが幕を開ける。と言ってもその空気は穏やかなもので、ヘラクレスもボルシャックも理知的に茶を啜っている。

 

「た、戦いこそ我が人生すぎる…」

 

『おうとも。そんでとにかくバトル!バトル!バトルな日々を送っていた俺等で、勢力図なんかもよく覚えてねぇくらいに戦い抜いてた。それが俺達の日常、ライフワークだったもんでな。小難しい争いなんてうだうだ考えてるから起きるのよ。全員ぶっ潰して強いやつが頭を張る。そういうシンプルな理想を貫いて戦ってたのが俺ら、火文明だ』

 

平和ボケとは対極の位置にある者達。鉄風雷火と怒涛の権化。戦いに生き戦いに死ぬ。それが彼等であったという。

 

「そ、それじゃあ、他の4文明とは激戦だったのかな?」

 

水、光、闇、自然。同盟関係もあるが基本敵であろう勢力とは、さぞかし激闘を繰り広げたのだろうとリッカは問うたが、帰ってきた答えは驚愕のものであった。

 

『あぁ、全部ぶっ潰したぞ。バロムもアルカディアスが最後だったか?俺らで捻り潰してやったぜ』

 

「嘘ぉ!?」

 

なんと彼等は成し遂げてしまったという。火文明の勝利…

すなわち、全文明の統一を。それはすなわち、火の竜の世界の降誕という事だ。原作カードゲームとは大いに異なる、紅き火の時代の到来である。

 

「覇道の果てに、世界を掴んだということか」

 

『そういう事だ。…だがまぁ、玉座や王冠なんてもんは、追いかけてる内が華でな。なんにもなくなっちまったんだ』

 

「なんにも…?もしかして、好敵手や発展性の事…?」

 

ボルシャックは遠い目をし頷いた。強さの果ては、赤く焼け焦げた地平線であったと。

 

『いくら考えても似たような結論しか出せんし、もう新しい強いやつとも戦えねぇし、どん詰まりになった感がひしひしとしてなぁ…戦いってのは、相手がいねぇとできないんだよな。俺等はそれを忘れてやりすぎちまった。相手へのリスペクトが無い戦い、蹂躙をやっちまったんだよな』

 

「未来の無い世界…リッカ、これはまさしくだな」

 

「…異聞帯…。あなたたちは、火文明が勝利した世界からやってきたドラゴン達…」

 

彼等の闘志が世界を灼き尽くした世界。戦う相手がいなくなった焦土の平穏。それが彼らの世界たる故郷であったという。未来の可能性を無くした、劫炎の果て。

 

『寝ても覚めても似たような毎日でな。仲間内でバトルも互いに知り尽くしててフラストレーションが溜まるのが目に見えた。同士討ちは俺が許さなかったから、どん詰まりの日々が続いた。戦いの余波でもう星は丸焦げだったしな』

 

「凄まじすぎる…!じゃ、じゃあボルバルザークやボルメテウス、スサノオやバザガジールは生き残り?」

 

『おう、光のアルカディアスと闇のバロムを潰した面子だ。そいつら以外は、戦いでいなくなっちまってな…残らず名誉の戦死に殉じやがって…』

 

「──そこが分かれ目だったんだ…!」

 

そう、本来なら文明のバランスは保たれていたのだ。だが、その戦いで犠牲が出すぎてしまった。火文明の壊滅的被害、ボルシャックの仲間を想う心。それが倒れた仲間達の魂を受け限界を超えた。超えてしまった。世界の命運を変えるほどに。

 

『散った仲間の為にも負けねぇ、って気がついたらなんにもねぇ世界。やりすぎちまったなー…って時にアイツが来た。アルカディアスみてーに輝く、サンタとかいうやつだ』

 

「サンタ…?」

 

ヘラクレスはピンと来ていないが、リッカには思い当たる節がある。異聞帯を巡るような底知れなさ、そして彼等をそのまま有してこれるような者。それはつまり──。

 

『そいつは俺等に言った。君達の力を貸して欲しい。世界を救うためにってな。その世界ってのがお前の世界だ、リッカ』

 

ボルシャックは指さした。彼等は自身の意志でやってきたのだという。この世界へ。

 

「私…?あなた達の世界を救う、じゃなくて?」

 

『俺等の世界なんぞもう燃えカスだ。俺らもあの世界でやることをやっちまった。そんな世界、蘇らせたって邪魔なだけだろ?それよりもよぉ』

 

ボルシャックは笑い、大きな手でリッカをぽんと叩く。そこには友宜と敬意に満ちた感慨があった。

 

『こんなちっこいナリで、よく頑張ったじゃねぇか。サンタが語ってくれたぜ。ヘッタクソな歌とヘッタクソな琴に乗せて、燃えるようなアツいお前らの戦いをよ!』

 

「ボルシャック…」

 

『ちっこい人間が一生懸命頑張って未来を取り戻す…痛快じゃねぇか、ってのが俺らの感慨だ。あぁそうだ、ケンカするなら…黒焦げになっちまった世界よりキラキラ光ってる世界のためがいい。俺等はそう思ったんだよ』

 

ボルシャックは勇敢であり、そして誇り高かった。滅びた自身らよりも、未来ある世界へ。そういう判断ができる、英雄たる竜であった。

 

『まぁ本音言やぁ、『こいつらの世界危機だらけだな!味方すりゃ片っ端から敵ぶん殴れんじゃねぇか!』『それな!世界を護る為に全員ぶっ倒そうぜ!』『カルデアの世界ドラすげぇ!この調子で侵略者全員ぶっ殺して行こうぜ!』ってのが全部だがな!』

 

「やはりそこは好戦的なのだな…」

 

「じゃ、じゃあ…私達に力を貸しに、助けに…皆は来てくれたんですか?」

 

リッカの問いに、ボルシャックドラゴンは躊躇わずに答える。

 

『おう!お前らの世界を護る喧嘩、俺等も是非混ぜてくれ!俺等みたいになるなって反面教師にもしろよな!だっはっはっは!』

 

「デュ…デュエルマスターズの不動の顔…!ありがとうございます!!」

 

リッカの深々とした感謝の挨拶も気前よく受け止めるボルシャック。ヘラクレスは戦士として、冷静に語る。

 

「だが良いのか?私達はお前たちを弱体化させるつもりだが」

 

『あぁ、気にすんな。ちょうどいいハンデだし、デバフかかった戦いなんざ逆に燃えるぜ。戦いてぇって言っときながら、搦手小細工に文句言うのは違うだろ?小兵の智慧も立派な戦いだ。水の奴等のよくわからん賢いやつよりシンプルでいい』

 

「そうか。ならば、まずは戦うのだな?」

 

『あぁ。サンタの野郎には斡旋してもらった恩義がある。それにまずは報いるつもりだ。ヴリトラの奴にはドラランドを一緒に作ったよしみだ、俺等も最後まで付き合うわけよ』

 

「その後は、カルデアに来てくれますか!?」

 

『勿論だぜ。サンタからもそう言われてるからな。ただ、だからって手加減は期待すんなよ?ガーディアンドラゴンとして、い、イブンタイ?モーマンタイ?代表として、全力でやるつもりだからな。しっかりやれる事はやってかかってこい!』

 

話すこと、聞くべき事は全て交わした。ならばここから先は、魂の戦いのみ。

 

「ありがとう、ボルシャックドラゴン!やっぱりあなたは、私の知ってるカッコいいドラゴンでした!」

 

『むふふ、カワイイ女の子にゾッコンされちまったぜ。あいつらに自慢してやるか!ボルバルザーク辺りはまた殿堂らなきゃいいが…』

 

「(殿堂る?)今は特異点ゆえ、全力は厳しいだろう。しかしカルデアに招いた暁には…必ずや、本気でお相手しよう」

 

『おう!じゃあ次会うときはどつきあいだな!じゃあなー!』

 

最初から最後まで、苛烈なる人情味にて二人を見送ったボルシャック。彼等は味方であった。立場と陣容が違うだけの。

 

「これは負けられないよヘラクレス!火文明の皆が認めてくれたカルデアの力、見せてやろう!」

 

「邪悪なのはカムイの黄金だけだった、という事か。痛快な攻略になりそうだな」

 

そこにあるのは悪意でなく、闘志。全力を出すに心置きない情熱に、リッカは魂を燃やすのであった。




リッカ「でも、それだと全然解らないのがサタンの行動なんだよね…」

ヘラクレス「彼等を招いた、サンタ呼ばわりされていた存在か。知っているのか?」

リッカ「ヘラクレスには伝えても大丈夫だよね。実は…」



ヘラクレス「なるほど…大魔王もまた介入する、か」

リッカ「大英雄から見て、何か感じることはある?」

ヘラクレス「そうだな…感じるのは、無邪気さだ」

リッカ「無邪気さ」

「嬉々としてアリの巣穴に水を入れるような、虫を解剖するような、目的の為の残虐さや残酷さが見える。サタンとやらの気分次第では、ボルシャック達は洗脳、改造されていてもおかしくなかった筈だ」

リッカ「…確かに…」

「そうならなかった、どころかカルデアに斡旋してきたのは…サタンとやらにしか解らぬ私情や心境があるのだろう。読み取れんがな」

リッカ「……」

対話しても、何も解らぬ初めての存在、サタン。その存在の不気味さに、やや動揺を隠せぬリッカであった…

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