人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「流石鬼、泰然自若というか全然周りを気にしないというか…」

マシュ「先輩はこう見えて寝相がとてもいいのですよね!」

リッカ「何の話!?…ん?」



メリーゴーランドエリア

喪服の淑女「………」



リッカ「…一人でメリーゴーランド…美人さんが…?」

シトナイ「リッカ?」

リッカ「あ、ううんなんでもない!」

マシュ「起きてください二人と…」

リッカ「マシュ、迂闊に近づいちゃだめ。寝返りや寝ぼけで骨が逝くよ」

マシュ「はいっ!起こすのはお任せします!」

アテルイ「手慣れておりますね、リッカ様」

リッカ「吸血鬼に抱きまくらにされていますので!」

アテルイ「!?」


二人はオニキュア!(雑魚寝)

『そこにいるのは幻想郷にいる鬼二匹だな!オニキュアやるって話だったな!なんでそんなところでくたばってるんだ!ヒーローヒロインとしての自覚はどうなってるんだ自覚は!』

 

カルデアの技術室から通信が飛ぶ。河城にとり、彼女ら二人と同じく幻想郷の妖怪だ。彼女は自分のパッションと閃きにしか敬意を払わないので、四天王たる鬼にも言いたい放題である。物怖じの辞書は彼女にはない。

 

「見たところ酔い潰れてるってわけじゃないみたい。ウラネキが徹底監修したんだよ、禁酒の」

 

「目の下の隈、深すぎる睡眠…単純な疲労の蓄積による休息と考えられます」

 

『鬼が疲れて爆睡ってどんな状況だよ…?まぁいいや、そっちに医療班謹製の疲労回復ドリンクを送るから、飲ましてやってくれ』

 

完全に後方支援将軍モードとなった田村麻呂から薬を受け取ったアテルイは、リッカに一瞥し二人にそのドリンクを手渡すよう促す。

 

「おにきゅあ、なるものの絆を紡ぐもまた天命。リッカ様、どうか」

 

「うん、解った。お二人共〜、大丈夫ですか〜?」

 

寝返りや寝ぼけの腕振りや身じろぎに巻き込まれれば粉砕骨折間違いなしであろう危険にも怖じず、リッカは二人にドリンクを飲ませる。その勇気と決心は、鬼二人の気付けとなり働く。

 

「ん、ん〜…?解ってるよ、言葉遣いは丁寧に、だろう?上手くやるさ、大丈夫さ…」

 

「まつたけろぼ〜…おぉ、んん?」

 

「おはようございます…お二人様…」

 

「リッカ!あれ、ここどこだ?どうなった?りはーさるはどうなった?どうしたー!?」

 

ゆっくりのそのそと起き上がる萃香、そして勇儀。その疲労ぶりはやはり、オニキュアになった際の反動なのであろうか。

 

「デカい声を出すんじゃないよ…あぁ、そうだ。あたし達は確かプリキュアとオニキュアを閻魔亭で見ていたんだっけか…」

 

「プリキュアもですか!?」

 

「そうなんだよ。どうせやるならきっちり人間にとってのヒロインとはなんなのかを学べって真面目にさぁ…温羅主導でね」

 

そう、オニキュアとしての心構えや練習は独自かつ各自にやっていた事は確定事項であったのだ。自由気ままに生きる彼女らの行動をある程度律する事が出来るなど、できる相手は一人しかリッカは思い至らない。

 

(ウラネキが主導でオニキュアをやってるって考えて、アマノさんは招待状を持っていた。ばらきーも一緒に付かせたってことはオニキュアを演じて皆に楽しんでもらう計画を立てたって事かな。でもこんなに疲れてて前後不覚気味って事は…)

 

リッカは二の句を告げる。仮定している事が事実であるなら、鬼達は突如としてここに招かれる事となったのだから。

 

「…もしかして、鑑賞中か練習中に誰かの干渉を受けたりしませんでしたか?」

 

「あぁ、されたされた。ヴリトラ、とかいう輩が訪ねてきてね。さぁ明日が本番だって言うときに、練習と稽古でヘトヘトだったあたしらをまとめて巻き込んでさ〜…」

 

「そういえばうら達もいないぞ!ぐっすり眠っていたけどオニキュアはどうなるんだ!?あんなに練習したのにお蔵入りになるのか〜!?」

 

当たりだ。まず温羅達がグルという最悪の展開は避けられた事にリッカは胸をなでおろす。ヴリトラ達竜、そしてウラネキ達鬼が共謀していたなら人理終了は濃厚に過ぎたからだ。

 

「お、落ち着いてください萃香さん!私達はこれからあなた方オニキュアに力を貸していただくためにやってきたのですから!」

 

「?なんだなんだ?どういう事だ?」

 

「それは私と、アテルイが説明するわ。理解したなら、どうか迅速に力を貸して頂戴な」

 

アテルイとシトナイは事のあらましを丁寧に説明する。特異点が発生していること、竜達を討ち果たすために、オニキュアたる者らの力が必要な事。詳しく解りやすい説明に、鬼ら二人は合点が行ったと頷く。

 

「なるほどなぁ!竜を相手に本気の喧嘩をすればいいんだな!よぉし、任せろー!」

 

「お力を、貸してくださいますか?」

 

「あぁ。本気の竜の相手なんて人の手には余るだろう。どうも可愛く美しく振る舞うのは無理筋だと自覚してたんだけど、こういうのなら大歓迎だ。オニキュアも、戦いに関しては過激で苛烈だと学んだからねぇ」

 

気まぐれで気分屋、自己を第一とする鬼達は意外にも快く力を貸すことを承諾する。オニキュア活動として、今回の騒動への関与を行うことは確定させていたとの事だ。

 

「面子はあたし、いや私か。萃香、伊吹、酒吞、そんで温羅だ。本来のプリキュアはそりゃあもういっぱいいたけど、私達はとりあえず少数精鋭で行こうって話になってこれに落ち着いた訳だね」

 

「私は台詞なく行動で示すタイプのオニキュアだったから楽でいいぞ!つまるところ、そのドラゴンを倒せばオニキュアとしてオッケーなんだな!任せろー!」

 

『助かるぜ。怪力乱神と過密と過疎を操るオニキュアがいてくれりゃあ百人力じゃねぇか』

 

「ウラネキや伊吹姉さん、酒吞の場所はご存じ…ありませんか?」

 

「あぁ、すまないね。私達も巻き込まれた形でここにいるんだ。死ぬようなタマじゃないから必ずここにいるはずだと思うから…」

 

「探してみろー!」

 

勇儀、そして萃香の二人を保護したとはいえ、まだカルデアにおける中枢戦力達の姿は見えない。恐らくこの高台なアミューズメントパークにて召喚されてはいるのだろう。二人の言うように、絶対に死に絶えるような脆弱な生命ではないからだ。

 

「リッカ。私の意見だけど、一回ボルシャックは倒しておいた方がいいわ。話を付けるというべきかしら」

 

「シトナイ。その心は?」

 

「あのドラゴン、失った仲間の無念を力に変える力があるって話よね。最後に回せば回すほど手が付けられなくなるんじゃない?」

 

そう、ボルシャックの力は仲間の無念と死を受け燃え上がる力である。もし他のガーディアンドラゴンを倒し最後に残したら…

 

『……詰むんじゃねぇか?話聞いた限りじゃ、世界に止め刺したのはボルシャックの旦那だろ?』

 

「はい。カムイの黄金と、ヴリトラの魔力。どのような無茶な能力でも再現されている恐れがあります」

 

「だ、大丈夫でしょうか!先輩は絶対に守り抜いてみせますが、もしかしたら先輩がこんがりドラゴンに…!」

 

「──うん。まずはボルシャックと戦いに行こう。手の付けられない強さに挑むのは、全部が終わった後だよ」

 

その決断に一行は頷く。試練は乗り越えた。オニキュアは見出した。まずは、ボルシャックに挑む資格は得た事となろう。

 

「あ、そうだ。そのボルシャックをぶちのめしたら、そこでオニキュアショーをやるってのはどうだい?」

 

「おぉ!妙案だなぁ!せっかく練習したんだから無駄にするのはモヤモヤするしな!やると決めたら、とことんやってみたいものだからな!」

 

鬼二人も想像以上に乗り気であり、さらなる妙案も提案される。そう、ドラゴンを乗り越えたならば、オニキュアショーの最高の舞台は整うという手筈だ。

 

「うん!それがいいと思う!じゃあシオン、ダ・ヴィンチちゃん!」

 

『ん〜、本来ならあんなレベルの魔力と神秘の塊に挑むとか自殺行為以外の何者でもないので止めたくはありますが…』

 

『王道に退路なし。挑まれた試練は全部乗り越えるスタイルが我々だ。正直王様ならぬ身にはたまったものじゃないけれど、今更さ!皆、存分にやってくれたまえ!』

 

参謀達の許可をも取り、リッカ達は目標を定める。まず乗り越えるべきは、世界を友情の炎で焼き払ったドラゴン、ボルシャックだ。

 

「よーし!オニキュア、やるぞー!!」

 

「竜との喧嘩かぁ…久しぶりにワクワクできそうだね!」

 

オニキュアを招き、カルデアは試練の幕を開ける──。




ボルシャックの間


ボルシャック『準備はできたのか?』

リッカ「はい!全力で、挑ませていただきます!」

ボルシャック『そうか!じゃあ──行くぜっ!』

ボルシャックの目が紅く輝く。翼を広げ、覇気と威圧が一行を押し潰すかのように展開される。

ボルシャック『アーマード・ドラゴン、ボルシャック!さぁ──楽しもうじゃねぇか!!』

勇儀「久々に全力でやらせてもらうよ…!」

萃香「いくぞぉ!!」

ドラゴンと鬼が相対するとき、天地を揺るがす祭りが始まる──!

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