人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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茨木「オニキュア…まだ二人では足りぬ。伝説の5人の戦士を集めなくてはならぬ…」

カグツチ『みんな揃って、オニキュアだよね』

「然り!オニキュア集結せし時、あのような邪竜など即座に討ち果たされようぞ!アレらは我等、鬼の希望なのだ!」

アマノ「なれぬのか?」

「にゃんと?」

「お前も鬼だ。オニキュアには…なれぬのか?」

「わ、吾がオニキュアに!?なな、なれるはずが無い!オニキュアとは冷酷!無情!畏怖!それらを全て兼ね備えた絶対強者のみが名乗れる最強の鬼の名!吾は名乗れぬ…!烏滸がましい!」

カグツチ『ばらきー…』

「吾はよい。応援するだけでよいのだ。頂とは、酒吞や温羅のような覇者があるべきなのだから」

アマノ「そうか…」

伊耶那美【えっ、自販機でジュースが買える…お手軽豊穣…】


マッハホース・スペシャル

「さて、ゼウス。リッカ君やカドックも奮起していることだ。我々も試練を乗り越え、カルデアに、グランドマスターズにしっかりと貢献しようじゃないか」

 

『異議なし。戦う女性は美しいものだ。男として支える事になんの不満があろうものか。ギリシャの主神として全力で試練に挑んじゃおっかなー』

 

そんなこんなで次の試練。ボルメテウスが統治するメリーゴーランドコーナーへとやってきたキリシュタリア、そしてゼウスは試練に挑む気概を見せていた。それはAチーム元リーダーとしての自負と、試練とは如何なるものであるかの好奇心が大半を締めているのもあり彼のテンションはいつにも増して高い。

 

「カドック達は精神的な試練を経験したようだし、私達は肉体的試練を選択するとしよう。多角的なデータは必須だ。精神の傷より肉体的な傷のほうが対処しやすいからね」

 

『うんうん、ゼウスボディは凄い固くて強靭だから存分に利用するといいよ。精神的な負担で三女神誰が一番美しい問題やらされるのも真っ平だし』

 

そんな軽いノリで、二人はメリーゴーランド、肉体の試練を選択する。精神的な面では厄介な事が多く、また肉体は我慢勝負になるだろうと予想したゆえの決断だった。

 

『せっかくだからカイニスも呼んだらどう?絵になるよ絶対』

 

「招きはしたんだけど、たまたまカイニスだった時に声をかけちゃって『そんなヌルい乗り物誰が乗るか!ジジイと乗っとけ!』なんて言い返されてしまったんだよね」

 

『照れ隠しだなぁ。別に男がかわいいやぬるいを追求したっていいじゃない。まぁカイニス的に女を連想させる行為はNGだったんだろう』

 

「あぁ、だから次はイニスにも声をかけようと思うんだ。一人だけに声をかけるのはフェアじゃないからね!」

 

『それがいい。心の傷に寄り添ってあげてほしい。ポセイドンの偏愛にも困ったものだ…全体的に野蛮に過ぎると思う』

 

聞くものが聞けばギャグにしか聞こえない評価を聞きながら、キリシュタリアはチケットを買う。愉快な外国人お兄さんはその泰然とした楽観をそのままに、試練に挑むのであった。

 

 

「ほう、これは中々楽しいものだね!愉快な遊具とはいつ体験しても愉快と言うことか!素晴らしい!」

 

というわけでキリシュタリア、メリーゴーランドの馬にまたがりテンションを上げている真最中。見る人が見れば白馬の王子様と見紛うばかりの麗しき絵面だが、ノリがテンション上がった大学生なのできっと幻滅されることだろう。

 

『馬か。ケイローンは良き者だったがケンタウロスは全体的にどうしてああなったのか。野蛮で粗暴な厄介者。アトラクションにならなくてマジで良かった』

 

ゼウスもゼウスで、人が作った遊具となじることなく楽しんでいる様子が見て取れる。彼はキリシュタリアの内にいる際は神の威厳など示す気のないフランクおじさん神と化しているためエンジョイに余念がない。

 

『日本には乗馬なるテクニックもあるという。学んでみたいものだ、色んな意味で。確か北欧のオーディンは専用の馬を持っているんだったか。いいなぁ』

 

「なんだいゼウス、数多の女性に乗ったのでは飽き足らないと?」

 

『男として自分を常に磨いておくのは悪い事じゃないものだからね。ゼウスおじさま、テクはイマイチですねなんて言われないよう自らを高める。ゼウス、これすなわち生涯現役ゴッド』

 

「カルデアにはヘラ神もやってきた。そのテクを無闇矢鱈には振るえないだろうけどね!」

 

『すみません、かなりダメージ負って致命傷ですんで精神試練クリアでよろしいでしょうか』

 

無論、駄目なのでメリーゴーランドの馬に揺られるキリシュタリアとゼウス。二人は試練にも気負わず、のんびりとマイペースに過ごしていく。

 

「そういえばギリシャ神話には、ドラゴンらしいドラゴンは少ないと思わないか、ゼウス?」

 

『そうだなぁ。有名にすぎるのはヒュドラだね。ヘラクレスが討ち果たした毒持つ邪竜、あるいは蛇。ギリシャにおける竜といったら、まずはアレを思い出すだろう。このドラランドにはいないようだが、本当に良かった。あとその戦いで踏まれて死んだカニ』

 

ヒュドラ。十二の試練でヘラクレスが討ち果たした不死の怪物。頭は切られた側から生え、その毒はけして治療できぬ猛毒であったという。ヘラクレスですら単独では手を焼き、甥のイオラオスの手を借りた魔獣の中の魔獣だ。

 

「不死殺しの毒…。そのあまりの毒性は、不死身のケイローン氏が不死を天に返還し死を選ぶ程であったという程恐ろしいものだったと伝わっているね」

 

『あぁ。そしてその毒はヘラクレスすらも殺めた。夫のありもしない不義を唆した者に騙され、妻はヘラクレスのパンツにヒュドラ毒を浸してしまった。それを履いたヘラクレスはケイローンのように不死を返還し、天に登った。その件からヘラクレスは生涯ノーパン主義となったのだ』

 

最後の情報はともかく、カルデアを確実に討ち果たすならば不可欠とも言えるヒュドラがいないことに、ゼウスは所感を告げる。

 

『全体的にドラランドからはカルデア打倒の意志が稀薄に感じる。龍や竜といったスケールを同じにしてみれば、あるのは純粋な興味、好奇心、歓楽といったものだ。アジ・ダハーカ、黄龍、テュポーンといったガチドラゴンの姿も見えないし』

 

「アジ・ダハーカや黄龍はともかくテュポーンも龍なのかい?」

 

ゼウスにとっては、テュポーンとは特別な意味を持つ怪物だという。歴史において、敗北を喫したのはテュポーンにのみだからだ。

 

『テュポーンは異形全ての総括にして統率者だ。我等ギリシャにとって、白き巨人セファールと同じくらいのトラウマである者…それがテュポーンなのだよ。無論この私にとってもだ。二度と会いたくもないし戦いたくもない。弱体化させないと雷霆効かないんだもんアイツ』

 

「腱を切られ、幽閉された苦い過去は忘れられないかな?」

 

『正直おっかなくて夢に出るよ。サーヴァントユニヴァースのテュポーンは話の解る美人妻持ちのヤンパパらしいが、それでも私は関わるのが怖いよ。だからエキドナと夫婦をシェアしてるニャルとかいう神はちょっと引き気味に礼賛しているのさ私は』

 

全知全能の神とはいえ、恐ろしいものはある。そんな当たり前の事実にキリシュタリアは深く頷く。この世界に絶対無敵の存在はそうそういない。だからこそ多くが根付く多様性が法則になったのだろう。

 

『話を戻すが…気楽な特異点だと気を緩めすぎない方がいいと私は思うよキリシュタリア。私にとって規律の取れた敵勢力より、無軌道な快楽主義者の愚連隊の方が恐ろしい』

 

「理解できない、というのは根源的な恐怖に通ずるもの…だからだね?」

 

『うん。見れば見るほど、この特異点は何故作られたのかがさっぱり解らない。これは高次の思慮、思案を有する者達共通の見解になっているだろう。楽しませることにも、試練の厳しさにも嘘はない。ただ…その果てに何が待っているのか、それをくれぐれも見誤らない事だ。楽しかったありがとう、で済ませてくれるようなメンツでも無さそうだったからね』

 

ゼウスが普段よりほんの少し真面目に考察する事をキリシュタリアは驚きの目で見やる。それほど、この特異点は不可思議なものであるということの証左なのだろう。

 

「あぁ、もしかしたら特異点2回攻略な事になったりしてね!そうなったらハードスケジュールにも程があるが、我々にはそれくらいが丁度いいだろう!」

 

『うむ。出来れば見目麗しい英霊が沢山出る特異点プリーズしておくとしようか』

 

真面目な話をメリーゴーランドで行うキリシュタリアとゼウス。泰然自若、威風堂々ともいえる二人は男二人のメリーゴーランドもものともしないのであった。




キリシュタリア「時に試練はいつ来るのだろう?もうそろそろ回りきってしまうが…」

ゼウス『メリーゴーランド自爆!巻き込まれて生きてたらセーフ!なんてものじゃないだろね』

キリシュタリア「はは、まっさかぁ!」

メリーゴーランド『それでは、試練モードに移行します。御武運をお祈り申し上げます』

「『え?』」

アナウンサーの言葉が流れた瞬間。馬に変化が起きる。支柱は外れ、脚は折り畳まれ、飛行に適したフォルムに変化し──

馬『音速モード、起動。音を越えた疾駆をお楽しみください』

キリシュタリア「え──」

…それがキリシュタリアの、試練挑戦の最後の言葉だった。

試練モードになった馬は、瞬時に超ダッシュ。成層圏付近にまで一気に加速。そのまま、雲海を眺めながら三次元的機動により縦横無尽のムーブをかます。

『なるほど、これは確かに肉体的な試練だな──』

その試練が十分程続く事実に、キリシュタリア&ゼウスコンビは他人を呼ばなくて良かったと痛感しながら、マッハホース・スペシャルを堪能するのであった…
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