人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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鈴鹿『あ、あのー。あのさー』

アテルイ(秘匿通信…)

鈴鹿『こんにちは。その…』

アテルイ「まぁ、田村麻呂の妻たる鈴鹿御前様。拝謁、光栄の至りです」

『う、うん。あなたがアテルイ…アイツの、ライバル?』

「えぇ。恋仲でなく、知己であり宿敵。そして日本の未来を語り合った、親友でもあります」

『そ、そっか。あのさ〜…』

「はい?」

『一回、バトルしない?ガチのやつで。あ、殺したいとかしじゃないから、マジ!』

「……はい、わかりました」

(…田村麻呂、貸し一つよ?)



キュアのんべぇ〜一回休み〜

「あら。ようけ見慣れた顔を見つけたと思うたらリッカはんやないの。こないな場所で会うなんて奇遇やわぁ。ご機嫌どない?」

 

オニキュアレーダーを使い、アミューズメントエリアを散策すること数十分。位置がわかるとはいえあまりにも広いランドを回り、巡った果てに出会いたるは風雅なる鬼、酒呑童子。異様な空間に飛ばされようが微塵も揺らがず、彼女は茶屋で団子を食らっていた所を発見される事となる。

 

「あぁ、良かった!やっと見つけたよ酒呑!イブ…ううん、温羅ネキはどこ行ったか解る?」

 

リッカが言い淀んだのは、何故か酒呑童子と伊吹童子は互いをぼんやりとしたモヤでしか認識できない故だ。本来の姿として認識はできず、ただそこにだれかいるんだなくらいの感覚である。つまり、聞いても詮無き事を言わなかったのである。

 

「んー、閻魔亭では一緒におったんやけんど、そこからはさっぱりやね。オニキュア、でも首領格やから特別待遇なのと違うん?そう簡単に切り札切れたらそりゃあつまらんわぁ。ふふ、こういうのは鬼札言うんやったっけ?流石やわぁ」

 

「な、なるほどぉ…確かに納得の扱いといえばその通りだね…」

 

マルドゥーク神を楽園の切り札とするなら、同じランク、クラスの『切り札』扱いの存在は数点存在している。ソロモンの指輪や、ブラックバレル。そういった扱いを受けている一人がかの統合鬼神だ。敵からしてみても好きに動かれ段取りを壊されるのはたまったものではないのだろう。彼女、ひいては彼女の『金棒』はそういう類の戦略兵器なのだ。

 

ちなみにリッカ以外が言葉を挟まないのは、酒呑童子が気軽に語れるほど気に入り認めているのがリッカだけという事情がある。機嫌を損ねたら最後、楽園で八つ裂きという事件すら起きかねないほどに恐ろしい鬼なのだ。酒呑童子という存在は。

 

「せやからね?うちや萃香はんや勇儀はんが力を合わせて頑張らないとあかんやと思うて腹ごしらえしとったんよ。ふふ、お呼びがいつかかるかちょっと心配やったんやけど、ちゃあんと迎えに来てくれてありがとね?」

 

「そりゃあ勿論!だって酒呑童子も仲間だもんね!」

 

「仲間…うふふ。あんたはんのお母さんが聞いたらなんて言うんやろねぇ?ほら、ね?」

 

見てみれば、腰に差した童子切安綱から紫電が迸っている。丑御前的にはこらえてはいるものの、酒呑や茨木は誅伐対象には変わらぬようだ。

 

「あ、あれっ!?おかしいな、スイカちゃんや勇儀ねぇにはこんな事無かったのに…!?」

 

「あぁ、まぁ。そりゃあ…せやろねぇ」

 

酒呑童子は知っていた。丑御前、ひいては源頼光。それらは本来ならば魔性を絶対に赦さぬと言った心持ちではなかった事を。そもそもの話、彼女は牛頭天王の神威を受け継いだ、人界にいてはならざるものでもある。人間に歓迎された存在ではないのだ。

 

故に、これは秘匿ではあるが…彼女、源頼光は酒呑や茨木といった鬼、人界にあだなすというだけで討伐されていった数多の魑魅魍魎や怪異には同情の念すら有していた事すらある。彼女と自身を隔てるものは、本来何もないのだと。

 

しかし──現実において、特に酒呑童子を頼光は討ち果たすべき虫としか見ていない。なぜ彼女だけなのか、なぜ彼女なのか。…その切実かつままならぬ殺意の正体を、酒呑は知っているのだ。

 

「ま、頼光はんの感慨なんてうちにはどうでもええ。マスターはんの頼みなら、うちも一肌脱ぐのもやぶさかや無いからねぇ。えぇよ、うちもついて行ったる」

 

「やった!ありがとね、酒呑!」

 

「た、だ、し。いくつか条件、設けさせてな?ホントなら茨木の役目なんやけど、今は引率で忙しいやろ?やからうちが言わせてもらうわ。堪忍ね?」

 

酒吞は仲間入りする代わりに、何か条件を提示するという。示した条件は、不思議なものであった。

 

「あんたはん、次は何に挑むん?竜どもの話」

 

「メリーゴーランド、ボルメテウスエリアだよ!」

 

「あぁ、あかんわ。そこにはうち、出ぇへん。萃香と勇儀に任せるわぁ、堪忍ね?」

 

なんと、ボルメテウスとは戦わないことを明言する酒吞。彼女は強者との戦いを避けるような存在ではないことをリッカはよく分かっている。ならばそこには、必ずや理由と意味があるのだろう。

 

「そしてもう一つ。うちが戦うときの機会はうちに任せておくれやす。うちはそう、華奢な鬼やから。敵をよーく見定めんとあっという間に首が飛んでまう。すぽーんと。それは嫌やって、な?えぇやろ?」

 

本来なら、マスターの意思にも反し戦場を自ら定めるなどサーヴァントとしてあるまじき振る舞いだ。通常のマスターであるなら令呪すら切るであろう独断、暴走であろう。

 

「──解った。酒吞の判断を信じるよ」

 

しかしリッカは、あえてそれを受け入れた。勘違いしてはならないのは、彼女は前提として鬼である。温羅が汎人類史の鬼の在り方を彼女から学んだほどの最強の怪異だ。

 

そんな彼女が、条件付きとはいえ戦う意志を固めていることこそが僥倖以外の何物でもない。それ以上を求めれば、彼女はまた嵐の只中の風見鶏のように考えを改めるだろう。誰にも理解できぬような方向に行くやもしれない。

 

だから、交渉として済ませられるのは加入の誘いまで。温羅という纏め役がいない今、ここで離反や対立は忌避するべき存在なのである。

 

「ほんま、えぇ子やねぇ。鬼のマスターに相応しい度胸と度量。ほんま、信頼が厚くて胸が熱くなるわぁ」

 

『おまえに胸なんかないだろー!』

 

「うふふ、すいちゃんは黙っとき。角折るで?」

 

『リッカ嬢ちゃんがそう決めたなら、あたし達にも異論はないけどさ。せめてなんでそうなのか理由は説明するのが義理じゃないかい?不誠実はやめときな』

 

「せやねぇ、勇儀。でもそんな大したことじゃないんやよ?せやね、なんて言うたらええんやろか…」

 

(茨木はホント大変なメンツに囲まれてるなぁ…)

 

「ほら、ボルメテウスなんたらはなんでも吹き飛ばすんやって?そんならうち、やりたくないんよ。ちょっと用意したものが消し炭になったらうち、ショーどころじゃないわぁ」

 

『『?』』

 

「うふふ、お楽しみや。せやからボルメテウスなんたらは、あんたら二人で支えてやるんやで。信じとる〜」

 

体よく押し付けた、というわけでもなく。どうやら相性の観点があるようだ。そして酒吞は締めくくりに告げる。

 

「ボルメテウスなんたらの後、必ず助けたるさかい。信じて待っとってや?うちのマスターで、源氏の棟梁の娘やもん。それくらいはできるやろ?」

 

「勿論だよ、酒吞!必ず来てくれるって信じてる!」

 

「うふふ、ありがとう。ほなら先に行っておいでやす。うちはうちの準備を終えたら行くさかい、よろしゅうなー」

 

はんなりと手を振り、茶屋に戻る酒吞。会話を終え、リッカは一同にそれらを報告する。

 

『うぅん、気まぐれなのは知っていたけどすごいなぁ。まぁ、共闘の約束は取り付けたから大丈夫だよね!』

 

『ま、まぁ言いたいことはあるにはあるが、伊吹萃香と星熊勇儀、二人を確保できているから帳尻は合っている。無事に交渉できたことを称賛しよう。よくやった』

 

「必ず酒吞は来てくれます。信じて私達は…ボルメテウスに挑みましょう!」

 

同時刻に、キリシュタリアから試練達成の報告がカルデアに届く。いよいよ火文明の巨頭が一体、ボルメテウスに挑む時が来た。

 

『あいつの炎か、カルデアの灯火か…どっちが強いか試すってわけだな!』

 

当然、負ける気などない。ボルシャックはその戦いに、闘志を燃やすのであった…──




ボルメテウスの間

ボルメテウス『来たか、カルデアの皆。歓迎しよう。そして、尋常に戦おう。ガーディアンドラゴン、その一人として』

一同の前に立ちはだかる、白と青のドラゴン。辺りには遮蔽物となりうる、建造物が数多点在する。

『まずはその力…見せてもらおう!』

ドラゴンスレイヤー達との対決、その第二幕の幕が開ける!

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