人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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その怒りに触れるもの、百万回死んでもおかしくない。


ボルメテウスの試練〜進軍防衛行進〜

『ボルメテウス・ホワイト・ドラゴンとの距離、大分離れているね…エネルギー反応も穏やかだ。そして周囲には、霊脈とシステムを同じくする建造物。おそらく自身の陣地を有し、ボルメテウスに近づけということなんだろう』

 

『と言っても、肩や背中のキャノンはどう見ても戦略兵器クラスの威圧を感じてならない。リッカ君、サーヴァントと協力して防衛陣地を設置なさい!解ったね!』

 

「了解!」

 

ボルメテウス…彼との戦いはボルシャックとは異なり、論理的かつ規律の用意されたものだ。遥か向こう、姿がぼんやりと見据えられる場所にかの竜は鎮座し、沈黙を保っている。だからといって、自身らに与えられた時間はそう多くないだろう。ビル群を飛び移りながら、リッカ達はボルメテウスへと接近していく。

 

「ガチガチの肉弾戦じゃなくて、進んだり止まったり、防御するタイミングを考えろって事なんだね。力押しだと炭になるよってことかな」

 

『アイツは責任感と自制心が強いやつだからな。担当は土地の丸焼きだったが、非戦闘エリアも含め焼き払う時は必ず避難を勧めるマメなやつだった。これもターン制として、自分の火力を試練に落とし込む様に考え抜いたんだろうぜ』

 

ボルシャックの言葉と共に、リッカ達は一つのビルを定め進軍を停止する。上空にはニキチッチ、メリュジーヌが哨戒と偵察を行い、ボルメテウスの動向を見張っている。

 

「先輩!どうやら宝具を展開するとビル全体に効果が波及するようです!まずは迅速にこちらに構えますか!」

 

「うん、そうだね。攻撃の規模や威力を測るためにも、ここは一先ず進軍せずに防御を整えてみよう。マシュ、お願い!」

 

リッカの言葉に応え、マシュは円卓を突き立て宝具を解放する。ロード・キャメロットが展開され、そしてそれらはビル全体に波及し、強固な護りと変化する。

 

『マシュが頑張ってくれている間に進軍スケジュールを詰めよう。今、僕達はボルメテウスと1キロほど離れている。それらを歩いて距離を詰めるとなると、どうしても時間がかかってしまうだろう。管制室からの見解としては、三百か二百メートルに到達するまでは防御と回避に専念。そしてその後はボルメテウスに突撃をかけるやり方を推奨したい』

 

「大口径火力でも、近付いちゃえば怖くない…的な?」

 

『あぁ。オニキュアとボルシャック・ドラゴン、そしてジークフリートやゲオルギウスがいてくれる以上、フィニッシュを決めることは出来るはずだ。近付く事さえできれば勝機はある。リッカ君、いつものようなパワープレイはまだ温存だ。冷静に、慎重に行こう』

 

ロマニらスタッフの言葉と方針を理解し、リッカは拠点にしたビルを探索することを決め、皆に指示を出す。

 

「試練って言うなら、もしかしたら役立つアイテムがあったりするかも。みんな、捜索お願い!」

 

そしてビルの捜索を開始したところ、その予想は正しいものと裏付けられるアイテムがいくつか発見される事になる。ボルシャック・ドラゴンとは異なる趣向、裏を返せばそれは臨機応変な対応が求められる、ということだ。

 

「進軍中一時的無敵のアイテム…、ボルメテウスの場所に一気に行くには心許ないけど、空中飛行して次の場所に行くには使えそうね」

 

「こちらはワープアイテムです。拠点からある程度遠い拠点に一度だけ移れる。しかし、そこから進軍はボルメテウスの攻撃が終わるまでは不可能…」

 

「魔力回復。そのままですね!」

 

用意されていたのは強力かつ使い道を選ぶアイテム。やはり今回の戦いは試練であり、殺し合いではない。活路は用意されている。

 

「無敵があるってことは、空路は対空攻撃があるってことだね。ワープは拠点防衛が間に合わなかったりした時の為に使おっか。魔力回復は、防御のあとひと押しに使おう!」

 

『こちらメリュジーヌ。周りの地形、ニキチッチやアテルイと一緒スキャンしたわ』

 

『送るぞ』

 

展開された地形はまさに廃墟ビル群。一個都市の風体を齎されたフィールドだ。それらはボルメテウスの眼前に広がる広大なエリアであり、不気味に乱立している。

 

「まずは最初の射撃がどういうものかを見極めましょう。エリアを区分して焼き払うのか、あるいは…」

 

「『防御エリアにした以外の全体』を焼き払うのか…それができたらエライことだけど、楽観的じゃない方を考えよう。ボルシャック、ボルメテウスはここら一帯を消し飛ばせる?」

 

『おぉ、余裕だな。おまけにお前さんら以外は避難の完了した土地と仮定すりゃあなんの憂いもねぇ。恐らく本気で…』

 

 

ボルシャックが告げた次の瞬間だった。管制室からのオペレーターから、怒号に近い放送が聞こえてくる。

 

『ボルメテウスホワイトドラゴン、エネルギー急速充填!なんだこの変換効率は!十秒後に臨界を迎えます!』

 

『肩部砲台、展開を確認!背部主砲部分にエネルギーチャージ開始を確認!』

 

『砲撃、来ます!エネルギー総量、た…対国宝具!!』

 

「ニキチッチ!メリュジーヌ!ビルに退避!マシュ、命運任せたよ!」

 

「お任せください!どんな攻撃であろうと、マシュ・キリエライトは無敵のなすびです!!」

 

準備猶予はエネルギーチャージまでに終わらせること。それもまた、不文律の一つだ。セーフティエリアに全員が集結した、次の瞬間──

 

『砲撃、来ます!対軍宝具クラスの領域殲滅斉射!』

 

『来るぞーー!総員備えろぉー!!』

 

ゴルドルフの言葉と同時に、ビルに激震が走る。辺りを絶えず爆撃されているかのような、絶え間ない爆発に巻き込まれているかのような、極大の衝撃。

 

『肩のキャノンだな、こりゃあ!火力的に、防御しなかったほかを全部焼き払う腹づもりかよ!』

 

「こんな戦場クラスのドンパチで小手調べなんだね…!」

 

『こんなもんは序の口だ!さぁ頼むぜ紫の娘ちゃん…!お前がとちったら俺らは纏めて炭も残らねぇからな!』

 

そして──本命が来る。遥か彼方のボルメテウスが、背部主砲を重々しく構え、エネルギーを瞬時にチャージするのをカルデアが捉える。

 

『主砲来ます!!』

 

『防護魔術多重展開!カルデアの魔力の備蓄をマシュに!耐え抜いてくれ、皆…!』

 

そして──放ちし主砲。全てを飲み込む、ビルの何倍も巨大で苛烈な、白熱のバーストキャノン。竜のブレスそのものたる、超巨大砲撃。

 

その軌跡は、真正面。しかし恐るべき事実があり、それらは『真正面』から放たれているにも関わらず、ボルメテウスの『眼前』を全て焼き払い、薙ぎ払っていく。赤と青を超えた、白熱。火力において大地を割ったアーラシュの一射にすら通ずる、絶大なエネルギーの奔流。それは最早、基地や都市、機動要塞が用いる類の火力である。矮小な人が、耐えうるものには成りえない。

 

「く、っ──はぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」

 

しかし、入念な防御の届いたリッカ達は生きている。白熱に晒されながら、しかし人理そのものを凌ぎきったマシュの防御はそれを防いでみせる。それは、いかなる時にもマスター、背中にある全てを護ると奮い立つ彼女の雄々しき心が吼えたが故の勇壮にして堅牢さであった。

 

時間にして数秒。十にも満たぬ拮抗は終わる。やがて白熱は収まり、ボルメテウスの斉射は一度留まる。

 

『こ、れは…』

 

「ちょっと、スケールミスった感が強すぎるね。これ…」

 

ロマン、そしてリッカの言葉はなんら大げさではない。隠れる場所は大いにあったであろう無数の都市群、ビルの山。都市の体を成していたもの。

 

それらは、残さず消滅していた。地面がまだ熱を有する赤を宿す中、瓦礫一つすらない完全な『消滅』。ボルメテウス・ホワイト・ドラゴンの白熱、それは最早、エーテルすらも焼き払う神代にすらない超抜の炎であったのだ…──

 




マシュ「皆さん、無事ですか!」

アテルイ「マシュ様こそ…!あのような焔を、よくぞ…!」

マシュ「これが私、マシュ・キリエライトですので!さぁ先輩、次はどうしましょう!」

リッカ「まずはマシュはひと休み。クールダウンね!ありがと!」

マシュ「了解です!(スヤァ)」

ロマン『これは迎撃を考えるわけにはいかないな…対軍宝具と対国宝具の二段は可能ではあるけれど、楽園のシステムが盤石じゃなくなってしまう。やるなら、勝ちの目処が見えてからだ!』

ゴッフ『いいかリッカ君!近付き、拠点作り、耐えてまた近付く!あの火力は最早触れたらアウトだ、張り合ってはいかん!解析は全力でするから、無理せず恐れず進んでくれ!』

リッカ「了解!皆、行くよ!」

ボルメテウスの試練、その開始が今、破滅の白熱と共に告げられる──!

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