人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ファーストオーダーは完結したが、短編をあげないとは言ってない


メンテでさぁ・・・マテリアルを読み返せない・・・


幕間 愉快なえーゆーおー
勉学


「医師、指示した書物は用意しているな」

 

とある日に、頼んでいた物をロマンから受け取りに行く

 

冬木の時に頼んでいた、ギルガメッシュの資料を、編纂しておいてもらったのだ

 

「ちゃんと用意してあるとも。ギルガメッシュの叙事詩『ギルガメシュ叙事詩』。ライブラリにしっかり残っていたからね」

 

「でかした医師。ロマンの名は伊達ではないな」

 

「僕にも飴をくれるかい?」

 

「いや、マギ☆マリとやらの実写ブロマイドをやろうと」

 

「いらないよそんなの!?御褒美に致死の刃を仕込むのは止めてくれ!」

 

「ははは、サブカルチャーとやらに傾倒するのは勝手だが、公然としていると肩身が狭くなるぞ。自分が世間に如何な眼で観られているか自覚するのだな」

 

「ほっといてくれ!AUOジョークとか平気で飛ばす君には言われたくないやい!」

 

「我は人の目は気にするぞ?赦しなく見たら処断的な意味で」

 

「即死フラグを振り撒くのは一般市民に迷惑だからね!?」

 

 

「ははは。ではな。礼を言うぞ」

 

 

 

部屋を出る。書物を抱え足取りは軽めだ

 

 

なんだか妙にこの器はロマンに気安い。向こうもなんだかいい意味で遠慮がない。まるで同じ職場の同僚みたいだ。気のおけない、というか

 

 

確かにロマンは優しい。柔和な、ゆるふわっとした感じに敵意を湧かせる者は初対面ではいないだろう

 

しかし、どうもどこかで『理由は解らないがこいつが悪い』と告げる部分がある。

 

何が悪いのだろうか?未だ、自分には解らない

 

 

……まぁ。ロマンに対してはそのうち話すだろう。カルデアに戻ってからのロマンの奮闘を見てから、あの頑張りを否定するのは無礼に当たる

 

 

 

それよりも主題はこちらだ。器――英雄王ギルガメッシュ。その活躍を綴った英雄譚

 

 

名を『ギルガメシュ叙事詩』。世界最古の英雄譚として高い評価を受けており、あらゆる英雄譚の原典であるとか

 

 

自分自身も原典なのかこの王は。どれだけ起源に拘るのか。あらゆるモノは我のものとするその物言いに感嘆する

 

 

――誇張でもなんでもない。それは『事実』なのだ

 

 

 

しかしながら。そこに宿る自分は英雄王の殆どを知らない。知っているのはサーヴァントとしての規格外さ、戦法くらいだ(財を擲つなんて思いもよらなかったが)

 

 

 

――知らない事は罪ではない。無知に甘んじる事が罪なのだ

 

 

そんな器の導に倣い、自分なりにこの英雄を知ることにした。

 

 

英雄王とはある意味一蓮托生だ。自分の不手際で、英雄王の戦歴に泥を塗るのはあまりに忍びない

 

 

尤も、この英雄王が負ける事など普通は考えられないが……むしろ何をすれば遅れをとってしまうのか?

 

 

それに、さんざん自分に敬意を払うと抜かしておいてエピソードの一つも諳んじられないなど虚言もいいところだろう。畏敬には中身が伴わなくてはならないのである

 

 

そして、単純に知りたい。無味乾燥とは無縁のこの英雄が、どんな人生を歩んだのかと

 

 

せっかくなので図書室の広い空間で読もうと足を運ぶ。流れるように器は中央の大きい広間のテーブルを選択した

 

 

足を机に投げ出し組んで、片手で叙事詩を開く。分厚いのに器用だなこの器。というか姿勢が悪すぎる。行儀が悪い。これが楽な姿勢だと器が知覚しているので、渋々従う。申し訳ない、カルデアの皆

 

 

ともあれ、紐解くとしよう。この英雄王の人生とは如何なものなのだろうか……

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

眠い

 

 

 

 

いや。とても眠い。めっちゃ眠い。クッソ眠いのだ

 

 

鉛のように瞼が重い。指を動かすのも億劫だ。読み進めるほど欠伸が止まらない。今すぐこの本をアイマスクか枕にして寝てしまいたい程だ

 

どうした英雄王!?怠慢は許さんとロマンに言ったばかりじゃないか!自分の物語じゃないか!自慢げにするところではないのか!?

 

 

 

自分の所感を言わせてもらうと、すぐに続きを読みたい。ページをめくる手が止まらない。物語に退屈な場所が何処にもないのだ。

 

神と人の間に生まれた最高の王。身体の半分、いや女神の胎に宿ったことからほぼ全てに神を宿す無敵の王

 

 

蝶よ花よと民に愛され。また民を愛した至高の王

 

 

しかし成人してからは暴君へと姿を変え、民が音を上げる圧制、無慈悲な処断。ウルクに住む夫婦の処女を全て先に散らすという嵐のごとき振舞い

 

 

困り果てた神々は泥をこねて人形を作る

 

神々の最高傑作、エルキドゥ。野を駆け回る理性無き獣であったそれは、神聖娼婦との六日七晩の語らいにより、知恵と人形を得てギルガメッシュに並ぶ力を得た至高の兵器

 

慢心と驕りの頂点にあったギルガメッシュと相対するエルキドゥ。ウルクを軋ませ嵐と見紛う連日連夜の戦いの後、二人はお互いを認め合う至高の友となる

 

 

連綿と描かれる場面。心踊らせる冒険。フンババと呼ばれる森の魔物との対決。

 

  

読みたい。もっともっと読み進めたい。

 

だが――魂に反して肉体が凄まじく退屈を感じているのだ。倦怠を感じているのだ。めっちゃ瞼が重い。気を抜けば意識が飛んで行きそうだ

 

 

「くぁ――……かの作家が手掛けていれば少しは読み応えがあるものを……」

 

つまらなさそうに欠伸を飛ばす英雄王。今にも眠りこけそうだ

 

 

待て、待ってくれ英雄王!まだ読みたい!もっともっと読みたいんだ貴方の物語を!後で昼寝するから!もう少し耐えてほしい!

 

 

「……一眠りするか。我は寝る。誰ぞ用があらば起こすがよい……」

 

 

――もしかして

 

 

思い至る。この退屈さ、感じる面倒さ

 

 

――ひょっとして、自分の物語なんぞ読み飽きたと思っている……?

 

その答えに至るのと。真紅の瞳に瞼が降りるのは同時だった。

 

 

嗚呼――もっと読みたかったのに……!

 

 

 

 

――――神々は、何も人間どもに肩入れして我を造ったのではない。神々は、いずれ神の陣営に戻る人の支配者を欲しがった

 

 

それは地上に穿たれた、『楔』。人と神の両方の視点を持ちながら、最終的に神々の陣営に付く絶対者として我は神々に造られたのだ

 

 

――声がする。誰にともなく話しているかのような語り口

 

――神々は、言うなればただそこに在るだけのモノだ。力は強くともそれはただの現象。自然が神となったのだからな。当然であろうが

 

 

それに対して人間どもの生存力は並外れていた。莫大な力を持つ超抜種こそいないがとにかく数が多い

 

生存力とは、自分達の住みやすいように環境を整える力の事だ。人間どもは数が多く、そしてそこには数だけ個性があった

 

如何に全能を発揮する神であろうが、矮小な人間であろうが、形取る人格、導きだす結論はそう大差がない

 

解るか?敵と感じたなら排除する。喜びを感じたなら高揚する。そら、違いはなかろう?神々が恐れたのはそういう事だ

 

 

神々は、人間の可能性を恐れたのだ。このまま人間が台頭すれば神は不要になる

 

故に――我を造ったのだ。……が、奴等が我を造れたのは肉体のみ。そこに生まれた魂は我の定めた我の魂のみ

 

 

――だから。言葉は紡ぐ

 

神々の意向なんぞ知ったことか。我は我の感じるままに生き、神と人を訣別させる切っ掛けを作った

 

神には従う。敬いもする。だが滅びよ

 

我を産み出した時点で、貴様らは自ら世界の席を喪ったのだ

 

――この王は楔として産み出された

 

 

産み出した者の誤算であったのは、その魂の自我が強すぎた

 

 

結局の所――ギルガメッシュは、神々の時代に止めを刺す『槍の穂先』となったのだ―― 

 

 

 

――これは、英雄王の生誕の経緯、なのだろうか

 

これは、誰に語ったものなのだろう……?

 

「……英雄王?英雄王?」 

 

声に瞼を開く。今のは――夢か?

 

 

「む……マシュか。我はどれほど眠っていた?」

 

「一時間ほどです。オルガマリー所長が開発した、魔術礼装を試したいとマスターがシミュレーションルームに呼んでいますよ」 

 

「くぁ――うむ。慣れない読書なぞすべきではないな」

 

 

「ご自分の英雄譚を、読んでいらっしゃったのですか?」

 

「あぁ。――マシュ。これをマスターと読むがいい」

 

 

「あ、ギルガメシュ叙事詩……これを?」

 

 

「退屈はさせん。我以外はな。――気紛れで読み解いてみたが。当事者にはなんの面白味もないな・・・」

 

 

欠伸を噛み殺しながら図書室を出るギルガメッシュ

 

「……英雄王……本を読むんですね……」

 

ちょっぴり、親近感が湧くマシュであった




――AUOキャストオフが記載していないとか愚書にも程があろう。焚書ものだ、たわけ

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