人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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(最終回になるかもしれない。覚悟して読んでほしい。魂を狙ってくるとはね。形振り構わないとは恐れ入るおまけに監禁幽閉ときた。悪趣味にもほどがある。同じビーストして恥ずかしい!)



(――だけど、ソレは致命的な失策だ。無銘は『無垢』であって『無知』じゃない。思い通りに行くとおもうなよ、素材柱ども。こうしちゃいられない。ボクも追いかけなくちゃ!)



(そして補足だ。これが一番大事なことだ)




――――『その魂を誰より近くで見守り、庇護していたヤツは、誰だと思う?』



(今更後悔しても遅い。浅はかな選択は、友達を辱しめられた『ボク』と、大切な魂と認識していた『アイツ』を――本気で怒らせたぞ――!!)

『魂分離』

(負けないでくれ、無銘!君の声があるなら、ボクは必ず其処に辿り着く!そう、地獄の底にだって――!)


原初を語る、開闢の星

「ギル!?しっかりして!!ギル!ギル!!」

 

 

腕を組み、不動のまま停止せし英雄王

 

 

同時に迫り来る、無数の凝視――!

 

 

 

 

「くぅうう!!」

 

 

無防備な英雄王を庇い、マシュが歯を食い縛る

 

 

「私が食い止めます!!皆さん、英雄王を早く!!」

 

 

 

『リッカ!彼に霊体化を!』

 

 

「やってるよ!?でもダメ!出来ない!どうして!?」

 

 

英雄王は応えない。微動だにすらしない

 

 

「フォウ!!フォウ!!」

 

フォウが鳴く

 

「フォウさん!?」

 

辺りを貫く咆哮が

 

「フォ――――――――――ウ!!!」

 

高らかに響き渡る――

 

 

――意識と魂は、とある塔に堕ちていた

 

 

何処かに建設された、おぞましき地獄の塔

 

 

その一室で目を覚ます、無銘の魂

 

――気がついたら、自分は英雄姫の姿に、一枚の布切れを纏わされていた。いや、それ以外には何も身につけていない

 

 

鎖のついた首輪を付けられ、腕は枷で繋げられ、脚には鉄球を重石としてつけられていた

 

 

素足のまま、石畳に座り込む形。それはまさしく、『監獄に幽閉されし姫』そのものであった

 

 

『我等の総ては、お前に意思を送る。我等の総ては、お前に敬意を送る』

 

 

声がする。声がする

 

 

身体を動かすと、ジャラジャラと鎖が擦れる音がする

 

自分に直接語られる、声がする

 

 

 

 

――誰だ・・・貴方達は

 

問いに、答える

 

『我等は人間の不完全さを嘆くもの。我等は人間の愚かさを憐れむもの。我等の総てを以て、人間の不完全さを超克せんとするもの』

 

 

――!

 

 

『銘を、72柱の魔神。人理焼却式と自らを定義せし、真なるソロモン也』

 

 

真なる・・・ソロモン・・・

 

 

自分に語りかける言葉は、確かにそう自己を名乗った

 

『我等はお前を歓迎する。来たれ、無垢なる魂よ』

 

 

――!?

 

 

彼等は、自分に問いかけている。自分と言う魂に、問いを投げているのだ

 

 

『お前の存在こそは我等が指針、お前の存在こそは我等が理想』

 

 

――敵意はない。嘲りもない

 

 

『来たれ、我が下に。最先端の我等が同胞として、我等が下に恭順を示せ。死を越えし無銘なるものよ』

 

 

――あるのは、ただ・・・『憐れみ』のみ

 

 

 

顔だけを上げて、問いを投げる

 

 

ー死を越えた、とはどう言うことだ・・・?

 

 

『決まっている。お前は死した魂だ』

 

 

――!

 

 

『お前は死して自我を得て、新たに転生を果たした。肉を持ち、定命の軛より解き放たれた、我等が命題『死の克服』を成し遂げた唯一の例だ』

 

 

――貴方達の、命題・・・?

 

 

『生命は、必ず終わりがある』

 

 

魔神を名乗るものは告げる

 

 

『生命は終わりがある。存在には終わりがある。物事には終わりがある。希望には終わりがある。夢には終わりがある。全てには終わりがある』

 

 

 

『無意味、無意味、無意味、無意味。無価値。無価値。無価値。無価値。無価値』

 

 

嘆きの言葉が紡がれる。憐れみの嘆きが叩き付けられる

 

 

『あまりにも無益、あまりにも徒労。あまりにも無駄、あまりにも不完全な命がこの星を満たしている』

 

 

――・・・・・・

 

 

『悲劇を見た、嘆きを見た、悲劇を見た、悲劇を見た、悲劇を見た、嘆きを見た、悲劇を見た』

 

 

 

瞬間、叩き付けられる

 

 

 

あらゆる悲劇、あらゆる嘆き、あらゆる苦痛、あらゆる絶望、あらゆる終わりが、魂に叩き付けられる

 

 

――――っっっっ、ぁ――――!!

 

 

凄まじい衝撃が魂を揺らす。あまりに凄まじい怒濤が魂を満たす

 

 

72の憐憫が・・・魂を打ち据える――!

 

 

 

 

悲劇を見た

 

 

苦痛を見た

 

 

嘆きを見た

 

 

おぞましさをみた

 

 

面白い、面白い、面白い、面白い、面白い

 

 

くだらない、くだらない、くだらない、くだらない、くだらない、くだらない、くだらない、くだらない

 

 

 

3000年より前から、人間は無為の繰り返しだ

 

 

 

死に怯え、死に震え、浅ましく嘆く姿を私たちは見続けた

 

 

 

――うんざりだ、と我等は定義した

 

 

何故こんなものを見なければならないのか、と私たちは議論した

 

何故こんな不完全な生物に使役されねばならないのかと我等は議論した

 

 

――結論を出した

 

 

 

この世界は、間違っていたと。全ての生物は、定義を誤ったと

 

 

ならばいらない、この世界に用はない

 

 

悲劇に満ちたこの世界に訣別を言い渡す

 

光帯を回し、この世界を焼却する

 

 

過ちの歴史を熱量に変え、無限の過去に遡り、自らが世界となって新たに生命を造り出す

 

 

それこそが我等が偉業、それこそが我等が誕生の真意

 

 

――『逆行運河・創世光年』――それを為すのが、我等が永遠の命題である・・・

 

 

 

 

 

――――――・・・・・・・・・

 

 

力なく項垂れる英雄姫

 

 

・・・理解した。彼らの行いを理解した

 

 

 

彼等は、生命を『憐れんだ』。死を迎え、散っていく未来を憎んだ

 

 

死を乗り越えようと、彼等は決議した。だから彼等は立ち上がった

 

 

――人間の哀しい定命の定めを、乗り越えんと

 

『愛』を以て――人類を焼却したのだ・・・

 

 

 

――・・・ならば、自分は・・・

 

 

『我等の決議は、正しく伝達されたと定義する。無銘の魂よ、その肉体を捨て、新生せよ』

 

 

――・・・・・・この、結論を

 

『我等に連なる新たなる魔神。無垢と俯瞰、憧憬を励起する魔神『レメゲトン』と呼称し、我等の偉業に参列せよ』

 

 

――・・・・・・覆すことは・・・

 

『世界を愛し、世界を慈しむならば。我等に招かれ新生する事こそが最善と知れ』

 

 

――・・・

 

 

『『この世界に、価値はない』。無銘の魂よ、我等が御名を受け入れ――』

 

 

 

 

――魂が

 

 

 

 

萎えていた魂が

 

 

 

 

一つの言葉を聞き入れた契機に

 

 

 

 

 

無銘の魂に、熱を灯す

 

 

 

 

 

――今、何と言った

 

 

『――何?』

 

 

ぎらり、と真紅の瞳が輝く

 

 

今、何と言ったかと聞いたんだ

 

 

 

燃えるような想いを、言葉にする

 

 

――世界を、無価値と言ったのか。この、世界を無価値と

 

 

 

その言葉は、聞き逃せない。その言葉だけは、断じて看過できない

 

 

『――肯定する。悲劇と哀しみに満ちた世界に意味はなく、死を乗り越えられぬ世界に意味は――』

 

 

 

――ふざけるな

 

『――何?』

 

 

 

その言葉だけは・・・――

 

――ふざけるなといったんだ――!!!!!

 

 

 

断じて赦せない――――!!!

 

 

無銘の魂の猛りと咆哮が、あらゆる絶望を吹き飛ばす

 

 

鎖は砕け、纏っていた布は焼け落ち

 

 

決意と奮起に応えるように。黄金の、英雄姫の鎧が装着される!

 

 

『――これは』

 

 

生命力と活力に満ち溢れ、奮い立つ英雄姫なりし無銘が叫び、想いを叩き付ける

 

 

 

この世界が無価値だなんて言わせない!そんな結論を認めたくなんてない!いや――この魂に懸けてそんな結論には否を叩きつける!

 

『慟哭、嘆き?いや――これは、『怒り』・・・?』

 

燃えたぎる感情は言葉となって、空間総てを震わせる

 

塔の総てが、魂が吐き出す炎に焼かれていく

 

 

――この世界に生き、この世界に生まれたものでありながら・・・そんな答えを――何故出してしまったんだ!

 

 

胸に想いがたぎる

 

 

自分が観たいと願い、愛する世界を侮った、目の前の魔神たちに対する憤りが魂を満たす

 

 

 

自分は今、怒っていた。王の世界を侮った魔神たちに

 

 

自分が愛する世界を無価値と断じた魔神たちに――どうしようもなく猛っていたのだ――

 

 

沸き上がる思いのまま、言葉を魔神たちに叩きつける

 

 

『――この世界は悲劇に満ちている。我等は』

 

 

――何故、悲劇だけが総てだと思った!

 

『――・・・』

 

 

確かに悲劇はある。苦痛はある、絶望はある、苦悩はある

 

お前たちが見据えていた総てを、自分は目の当たりにした。だからこそ・・・その価値が痛いほど身に染みた。理解した

 

 

『――ならば』

 

 

でも、何故気づかなかった。72の眼がありながら、何故『悲劇』しか価値を認めなかったんだ!

 

『――何だと?』

 

 

この世界は、悲劇以上に価値あるもので満ちている

 

 

夢、希望、未来、明日、絆、愛、勇気、友情・・・

 

 

その悲劇を乗り越え、例え終わりがあろうとも。遥かな未来に繋がる――無限に世界を紡ぐ可能性が広がっていると、何故思い至る事が出来なかったんだ――!!

 

 

『――――』

 

 

自分はそれを見た。それを見せてくれた王がいた

 

 

魂を受け入れ、世界を見せてくれた王がいた。

 

『――英雄王、ギルガメッシュ・・・』

 

断言する。反論する。魔神達が導き出した結論に否を叩きつける

 

 

お前たちが目の当たりにした憐れみや苦しみなんて――王が見せてくれた世界を構成するほんの一部でしかない――!!

 

 

魂が叫ぶ。魂が猛る。

 

そんな狭い視野で、世界を無価値に断ずるなど――思い上がりも甚だしい――!!!

 

 

 

『・・・・・・』

 

世界は未だ未熟で、発展を続けている

 

 

人間は価値を示すために、歴史を紡ぎ続けている

 

 

――この星は、未だ未熟で・・・産み出した生命を手放せずにいる

 

 

――そうだ。まだこれからだ

 

 

自分が見てきた世界は、未だこれからなんだ。まだ王の裁定は下っていない

 

 

様々な価値を示し、様々な未来を広げていく。いつか来る、終わりと旅立ちをめざして

 

『――魂、励起を確認。燃焼を確認』

 

この星の総ては、無限に広がって行くんだ!!そして、自分はその世界を――

 

 

『――』

 

 

――『視て』いたい。ありのままの世界を、その世界に広がる営みを護り、ずっとずっと見ていたい

 

 

憐憫がなんだ、覆せない死がなんだ

 

 

そんなもの――世界には『当たり前』の出来事なんだ!!

 

『・・・お前にもいずれ死が現れる。お前の結論は、必ず終わりが来る』

 

 

 

それがどうした――

 

『人の世は苦痛と哀しみの連続だ。――無銘の魂よ。我等を受け入れねば貴様も滅び、死に絶えるのだ』

 

 

それがどうした!!

 

 

『・・・・・・!』

 

 

王以外の誰にも自分の価値を決めさせない!世界が導き出す結論の邪魔はさせない!!

 

 

――王が裁定するその日まで、誰にも世界を滅ぼさせはしない――!!

 

 

魂が、焔となって猛り狂う

 

やっと見つけた、自分の願いを――

 

 

それは――広がり続ける世界。王の愛する人間たち。そのありのままの姿を見つめる事。そこに在る、確かに価値のある物の営みを見据える事だ!

 

 

『魂、完全に破滅から脱却――』

 

 

輝く魂。それに比類する唯一無二たる英雄姫

 

 

あらゆる悲劇、絶望、汚濁に晒されても尚、魂と器に一片の穢れ無し

 

 

そして――それを滅ぼさんとするものの魔の手から――

 

砕ける、砕ける。誂えた世界が砕け散る

 

『――不可解。こんなことが――』

 

 

驚愕する、憐憫の魔神たち

 

 

 

高らかに、無垢なる英雄姫は耀き、詠う。

 

 

自らの、魂の答えを――!

 

 

――――心と魂、自らの総てを懸けて――――護り抜くことだ――――!!!!!

 

 

唯一無二の至高の肉体を躍らせ、無垢なりし英雄姫は高らかに謳い上げる

 

 

――この答えが正しいのかなんて問わない。結論が是が否かなんて二の次だ

 

これは願いだ。自分の、自分の為の願いだ。だから、誰かの所感なんて、どうだろうと構わない

 

 

自分はただ、世界を見たいという『愉悦』のために

 

 

自分が成し遂げたいという『願い』の為に

 

 

 

――立ち塞がる何者にも、屈するつもりはないと叫ぶのみだ――!!

 

 

 

 

――そして

 

 

 

(――それでこそだ。やっと見つけたよ。ボクのお姫さま)

 

 

・・・フォウ――!?

 

 

監獄空間一帯に響き渡る、友たる獣の声

 

 

(それでこそ、ボクの友だ。見事な答えを聞かせてもらったよ)

 

 

『――比較・・・』

 

 

(随分と不躾な事をしてくれたね。魔神ども。こんなへんぴで薄汚い場所に無銘を招き、ボクの姫を組伏せ、犯そうとするなんて万死に値する重罪だ)

 

――フォウ・・・

 

(――反則には、とびきりの反則で返してやろう。自分達の浅はかさを呪え、憐憫の獣)

 

ピョコンと、肩に乗り移る獣の友

 

 

(お前達の計画は、たった今定まった。お前達の反則は、致命的な結末をもたらした)

 

 

『何――』

 

(――そう。お前達はたった今)

 

 

ー高らかに鳴く、美しき獣

 

(――最も偉大な王の、逆鱗に触れたんだ――!!)

 

 

 

――世界が一変する

 

 

満天の空。流れる星。浮かぶ惑星

 

 

星々が耀き立ち並ぶ、遥かな宇宙(ソラ)

 

 

豪華絢爛な星たちの耀き。そして、そんな星たちの耀き総てを上回る――

 

 

 

《フ――――ハハハハハハハ!!我が庭を護りたい、未熟な惑星と来たか!無味乾燥な魂の分際でよくぞそこまで思い上がった!!》

 

 

――あ、あぁ・・・――

 

 

この声は・・・この響きは・・・

 

 

《だがよいぞ、正しく事実だ!星が晩年を迎えようと、人の歴史は未だ幼年。――何しろ、ここまで身の程知らずの馬鹿者を招き入れたのだ。成熟期には程遠かろう》

 

 

聞き間違えるはずがない、自分を導き、庇護し、救い

 

 

――世界を魅せてくれた――至高の王・・・――

 

 

《怠惰極まる人間どもは、未だその価値を示せずにいる。故に、裁定の時は今ではない。そも!たかが腐肉に集った魔術式風情が、宇宙の法を論ずるとは片腹痛い!増長を糾すのは、貴様の方だ!!魔神王ゲーティア!!!》

 

 

(アイツ、あっさり正体言っちゃったよ。ノリがいいなぁ・・・)

 

 

《・・・無銘の魂よ》

 

――!!

 

 

 

《――これまでの旅路、見事であった。貴様の甲斐甲斐しさ、奮闘、敬意。総てが我に心地好いものであったぞ》

 

 

――えい、ゆう・・・おう

 

 

・・・涙が溢れる。喜びが溢れて溢れて、止まらない・・・

 

王に、ずっと寄り添ってきた・・・誰よりも近くに寄り添ってくれていた王が・・・自分を・・・

 

 

《我が肉体、我が財を敬意を以て扱った事実を赦す。我が王道を彩りしお前の軌跡に免じ、王たる我の今生限りの本領を魅せてやろう》

 

――!!

 

《そこで垣間見るがいい。お前が見上げ、目の当たりにし続けてきた王が何者であったのか。――身を以て知るときだ、英雄姫》

 

 

『――バカな、これは・・・未想定の事態である――』

 

 

《――原初を語る。元素は混ざり、固まり。万象織り成す星を生む》

 

 

バシリ、バシリと世界が砕ける。限度を超えた王の風格に、世界の総てが頭を垂れる

 

 

(安心して。ボクが傍にいるよ)

 

 

――フォウ・・・ありがとう・・・

 

 

《真理の頂点を識るがいい。我が真に黄金と認めるもの。――秘匿秘蔵の原型を見せてやろう》

 

 

王と、視線が交わされる

 

 

 

偉大なりし原初の王は微笑み

 

無垢なる英雄の姫は感嘆に涙を流す

 

 

・・・その総ては、王の財に手を伸ばさんとした狼藉者を、誅すために――!

 

 

《さぁ――――》

 

 

世界が砕け――

 

 

 

《死に物狂いで謳え、雑念――――!!!!!!》

 

 

 

――英雄王の真価が、顕現する――!!

 

 

 

 

 

「フォー――――――――――ウ!!!」

 

 

高らかに開幕を告げる、フォウの叫び

 

 

「フォウさん・・・!?」

 

 

「ギル!!ギル――――ッ!!!」

 

『目覚めて!!目を覚まして!!ギル!!』

 

《そう声高に叫ぶな。充分に聞こえている》

 

 

「!?」

 

マスターとマリーの声に、黄金の言霊が返される

 

 

《少しの居眠りで取り乱すな。王のお茶目は笑って流せ》

 

ふはは、といつものように笑う英雄王

 

『あぁ、ギル――!!』

 

 

「ブラックジョークにも程があるよ!!過労死嫌だって言ってたじゃん!ばかぁ!」

 

 

《すまぬな。我も御免だ。確実に安らげぬ。主にイシュタルめの狼藉のせいでな。いらぬ配慮をとらせた故の補填は、これより執り行うとしよう》

 

 

『――凄い』

 

「ドクター!?」

 

 

『・・・凄い・・・なんだこれは!?通常のサーヴァントに与えられる霊基の耐久限界を遥かに越えている反応だ!この数分で何があったんだい!?もう、霊基としての格が違うぞ!?』

 

ロマンの言う通り

 

 

先程の英雄王と、今の英雄王は――存在としての『格』そのものが違っているのだ

 

《魂の霞が晴れたにすぎぬ。庇護せし姫の両目がようやく開いたと言ったところだ。これで我も、何憂いなく裁定を下せるというもの》

 

――其処に顕れしは、真なる黄金の王

 

華美なる鎧は上半身を取り払い、至高の肉体を顕にする

 

 

右手には至宝たる乖離の剣、エア。その風圧から手を保護する手甲

 

左手には、終末の原典、エンキ。終末を告げる大崩壊の矢を放たんと形態を取る黄金の弓

 

 

辺りを取り巻くは天の鎖。朋友の名を冠す、至高の絆の具現

 

 

頭髪は下ろされ、神性を宿せし真紅の双眼は遥かな世界の未来総てを見通す

 

 

《――改めて、我が至高なる銘を謳いあげてやろう》

 

 

その言葉は、圧倒的な王威となりてあらゆる万物を平伏させる

 

 

天よ裂けよ

 

地よ砕けよ

 

有象無象よ、王の御前にて平伏し、頭を垂れよ

 

 

 

其処に在りしは総てを納め、総てを見渡し、総てを断罪せし、英雄の中の英雄王――

 

 

 

《我は絶対にして始まりの王。英雄の中の英雄王、ギルガメッシュ。――さぁ、見せ場だぞ、有象無象》

 

 

72の雑種総てに向けて、裁定が下される――

 

 

《我が魂にその穢らわしい肉の手で触れたその罪過――貴様らの総身を以て贖わせてくれる。――我が真価、我が本領・・・その無様な姿で耐え抜いて見せるがいい――!!》

 

 

――英雄王の、威光が放たれる――!!!

 




地下空間一角
黄金なる魂の揺り籠にて

「フォウ!」

(無銘!)

「あぁ、良かった――!またこうして自分は自分のまま、君に出会う事が出来た――!」

(悪質な勧誘によく負けなかったね!ボクもとても嬉しい!その無垢さに、翳りと傷の一つもつかなかった事実そのものが!)

「うん!」

(さぁ垣間見るんだ、無垢なる英雄姫!あれが人類総てを見定める王!君を庇護せし至高の金ぴかだよ!)

「うん――!!」

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