人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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今朝は失礼致しました。改めて本編どうぞ!


感想は今から返信いたします!

ディーヴァ『ありがと、うたう。色々助かったわ』

うたうちゃん(真祖というのは凄いのですね。地球の触覚…地球ちゃんですね)

『そんな安直でいいのかしら…あ、そう言えばあのジェット機はいつの間に?』

(石丸さんからの提供の超合金ニューZα式ジェットらしいです。最近発見されたらしくて)

『私達のプロジェクトに関わった一人ね!どこで何してるのかしら…そう言えば、リッカ達はどこかしら』

うたうちゃん(夏草ウラヌスタワーの頂上外壁です)

『…はぁ!?』





世界を救った責任は一緒に背負うもの

リッカは今、天地の星空に挟まれていた。天には輝く星々。地には人の営みの星々。夏草ウラヌスタワーより垣間見える絶景は、見上げてよし見下ろしてよしの至上の光景でもある。きっとそれは、永劫忘れない心象風景ともなり得るものであろう。

 

「落ちたら流石に死ぬ、足滑らせたら流石に死ぬよこれ…!」

 

まぁそれはそれとしてガラス張りも何もない外周、人が立ち入ってはいけない足場なき足場から臨む光景にそんなノスタルジックな感傷が挟まる余地は基本ない。風が直に吹き付ける命綱無しの死地、夏草の秘境スポットはここにあった。こんな危険な場所を秘境とは言うまいな、などと洒落る余裕すらない。高いところはギル専用なのだ。

 

「ん〜〜〜〜…夜風が気持ちいー。夏草の空気ってなんかこう、マイナスイオンよね!ずっと浴びてたいわ!」

 

夏草をいたく気に入った真祖のお姫様。落ちるヘマはしない自信か何も考えていないのか呑気に伸びである。もう色々と構造が超越している。王と姫は高いところが好きなのだ。どちらでもないリッカはもう鎧抜きでいられない程である。

 

「それはとてもようございました!せめて命綱をお恵みくださいませんかアルク姫ぇ!」

 

「うん!良きに計らえー!」

 

「死ねってコトぉ!?」

 

リッカなら大丈夫!絶対の信頼から来る鬼畜旅行。必要ない必要ない、命綱なんて必要ない!アフラックドン引きのあーぱー旅行も、いよいよ区切りである。

 

「ねぇリッカ!私、リッカの台詞ですっごく好きな台詞があるんだけど!」

 

流石に数百メートルの高さからすれば風は強い。吹きすさぶ風に負けぬよう、アルクの言葉に返すリッカ。

 

「なんか私言ってたっけー!?」

 

「私は、私であることから逃げないってやつー!リッカの決め台詞よねこれー!」

 

そう言えば…。リッカは思い返す。人類最後のマスターから、人類悪の運命から、世界を救う為の全てから、そのために全てを滅ぼす全てから。逃げない決意が口に出ていた事を思い出したのだ。

 

「決め台詞のつもりはないけど!確かに気がついたら言ってたー!」

 

「でしょー!それ聞いて、わたしずっとずっと考えてたのよねー!」

 

風が徐々に弱まっていく。二人の会話が進む中、空の月と星は輝きを増していく。

 

「あなたは世界を護るでしょー!カルデアの皆も一緒に、世界を護ったりするわよねー!」

 

「そのためのカルデアだからねー!」

 

「じゃあー!そんなリッカを、誰が護ってくれるのかしらー!」

 

「…!」

 

世界を護るために、世界を救うためにカルデアはある。人理を救うためにカルデアは、サーヴァントはある。それは周知の帰結だ。マスターも、職員も、そのためにいるのだ。

 

だが、アルクからしてみればそれは不平等でもあった。戦いの中で傷付き、疲弊していくリッカは誰がどう護ってくれるのだろうかと。メンタルケアや体力回復といった問題ではない。生命としての在り方、生き様の問題だ。

 

戦いが終わった後、リッカはちゃんと日常を得難く思えるのだろうか。戦いの中にしか充足はなくなっていないか。そんな事を、彼女はリッカを見て考えていたのだ。彼女は、マスターではなく一人の人間として彼女を信じていた。

 

「それは、どうなんだろ?もう十分、みんなにはしてもらってるから自分じゃ…」

 

「ううん、足りないわ。全然たりなーい!もっともっと、自分を幸せにしてあげなくちゃ!奪われたぶんまでどーん!ってね!」

 

アルクは軽やかにリッカの眼前に立つ。月と重なる金髪赤眼の姫は、時間神殿で垣間見た彼女の姫のごとくに麗しい。

 

「なんで私が呼ばれたか、割と不思議だったの。戦いが終わったあと、サーヴァントも皆いるのになんでかなって。その意味、今日で解っちゃった」

 

アルクは頷いた。彼女はもう、答えを見つけたのだと。

 

「リッカ。私ね、アナタを護るためにここに来たんだよ」

 

「私を…?」

 

「うん。リッカがどんなに辛いことにあっても逃げないで、世界を救って護るなら。皆がそんなリッカと世界を護るなら」

 

自分が護るべきは世界じゃない。彼女は奔放な、致命的なエラーを得た真祖だ。だから、世界を救う戦いでこんな答えを出した。

 

「皆が世界を守るなら、私はリッカを護るの。リッカが平和な世界に帰れるように。あなたがあなたでいられるように。きっとそれが、私がここにいる意味よ」

 

世界ではなく、たった一人を。彼女がたった一人と出会い、愛した様に。運命の男性は一人。でも、人間には男女二つある。

 

「世界を救う頑張り屋のあなたが、私は大好き。そんなあなたでいてほしいから、私はこうして力を貸すわ。あなたがあなたでいられるように。あなたがあなたで良かったと思えるように。だから───」

 

「え───、ちょ!?」

 

アルクは──目を閉じ、ゆっくりと背後に身体を傾けていく。後ろに仕切りや柵など在る筈もない。

 

落ちたのだ。ウラヌスタワーの頂上。数百メートルから地上に向けて…!

 

『ッッ!!』

 

リッカは瞬間駆け出していた。自分も危ないとか、落ちるとか巻き添えとか、見られるかもしれないとか、そんなものは何もかも置き去りにした。

 

『アルクーーーーーッ!!!』

 

龍鎧を纏い、翼を開き流星の様に夜空を駆ける。御転婆とかそんなレベルじゃないお姫様に追いつくために。翼からの魔力放出により、落ちるアルクに一瞬で追いつき、身柄を確保する。

 

「ふふ、リッカ?私は落ちても大丈夫だよ?」

 

「だからって見捨てる理由にも見送る理由にもならないやい!」

 

「わたしの事、心配してくれたんだ?」

 

「当たり前でしょ!あなたには大切な人がいるんだから、向こう見ずにはしゃぎまわるのはダメだよホントに!」

 

「リッカにとって、私は大切?」

 

「当たり前でしょ!!」

 

別に落ちても真祖だから平気だからとか、着地できるから大丈夫だからとか、そんな感情など挟まる余地のない全身全霊の気遣いと労り。彼女が彼女足り得る、優しさと勇ましさ。

 

「ね、リッカ。兜取って?」

 

「え──?う、うん!」

 

彼女を受け止める都合上、お姫様抱っこな形になっているアルクはリッカに龍鎧の兜を解除させる。頭から首が顕になったリッカが、どうかしたかとアルクを見やるその時──。

 

「ぁいっ──!!」

 

首筋に、鋭い痛み。それが、アルクに齎された痛みである事に気づくのは数瞬の間。

 

「あ、アルク…?」

 

見れば、アルクがリッカに噛み付いていた。当然ながら噛みちぎるためではない。彼女が忌避する吸血行為でもない。

 

「うふふ。キスマーク──付けちゃった」

 

リッカの首筋への甘噛み。それは確かに彼女の首に跡として残る。血を吸わず行なうそれは、彼女の最大の親愛の証。

 

「ね、リッカ。これからもよろしくね!あなたがやるべき全部が終わったら、絶対に会ってもらうんだから!私の、一番大切な人に!」

 

好きな相手から、血など吸わない。彼女の意志と思いは、異なる世界のもう一人に行われる事となった。少年への愛とは違う、かけがえのない親愛として。

 

「うん!アルク、本当におめでとう──!!」

 

こうして、彼女のお祝いの夏草巡りは今度こそ本当に幕を下ろす事となる。アルクェイドは大満足し、帰路につく事となる。

 

「ヴィマーナ!ヴィマーナ飛んでくるわリッカ!」

 

「マジで!?ギルが迎えに来てくれたの!?」

 

御機嫌王のヴィマーナにて帰りは直接であった。ただし夏草での度重なる破天荒な行動と、マスターであるリッカへの危険極まる行動を諌める役割として搭乗していた者が二人。

 

「アルクェイド、並びにリッカ。任意だが…事情聴取に付き合ってもらおうか」

『武力行使鎮圧担当、仮面ライダーディーヴァです』

 

「「…はい」」

 

『本気で怖いんですけどこの人』とまでアルクに言わしめた無慙お巡りさんに、わざわざ低速飛行モードになったヴィマーナの上でみっっっっちり絞られに絞られたアルクェイドでありましたとさ。

 

ちなみにリッカはというと…

 

「ぐ、グドーシ!今度ショッピング行かない!?」

「おや、勿論お付き合い致しますぞリッカ殿」

 

(ニッコリ)

 

いつかする、アルクとのWデートの練習に励み始めるのであった。

 

 




別世界のとある場所

眼鏡の少年「ん…」

『封筒』

「……」

『私は元気にやってるから心配しないで!とっても可愛いマスターと一緒に必ずそっちに帰るから!』

「…全く」

『その時に…言いたいこと、とっておくね!ばいばい!』
『リッカとのプリクラ画像』

遠野志貴「元気にやりすぎてる方がこっちとしては心配なんだよ、アルク…」

どうやって送ってきてるんだ?それにしても隣の美少女は誰だ?少年は不思議そうに、便箋を見やるのだった。

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