人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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そしてこちら、原初の一編となります。


いつも毎日一緒にいたこちらと、やってきたばかりのあちら、異なる触れ合いをお楽しみくださいませ。ちなみに彼女らの普段の傾向はこんな感じです。

アルクェイド 長女

気ままでマイペース。皆のやることを眠たげに見ているが思い出したように参加してくる読めない人。皆からは猫っぽいと思われている。

両儀式 次女

さり気なくアドバイスし、さり気なく場をとりもち、さり気なくいたずらする人。なんでもできるが、なんでもするときはほとんどなくたおやかに笑うのみ。実は一番ルール無用な人

マリー 三女

とにかく快活で行動的。皆の指針や傾向を定め引っ張るタイプ。だからといってわがままではなく愛らしい奔放さなので、いつの間にか皆がやりたいことになっているムードメーカー。おやつおいしい。

ネフェルタリ 四女

生来の穏やかさでみんなの調和を維持する花のような存在。喧嘩にならないのは彼女が間に立ち意見や主張を折半してくれるから。彼女いてこそ、平和な一時は生まれる。

エア 五女

愛すべきいじられキャラ。どんな無茶振りも全力かつ真面目に挑む姿が皆に可愛がられまた無茶振りをさせられる。でもそんな屈託のない無垢さが皆に慕われ、可愛がられている。ただし彼女の前でギルガメッシュ関連の話は禁句。一時間は語り続ける。


(感想メッセージは今から返していきます!)


アルクェイド実装記念話〜原初の一編〜

アルクェイドがリッカを連れ回す破天荒な御祝いを行っていた頃。その言祝ぎを受け取るに相応しき者はもう一人いる。アルクェイドが奔放な側面なら、こちらはもっと古く厳かな一面。星の精霊、或いは頭脳体。原初の一たる、世界の重鎮。

 

──アルクとお呼びさせていただくのは、もう相応しいものか分からなくなっちゃったけれど…

 

[構わん。今更畏まり、恭しく見上げろなどと野暮は申さぬ。伝えたい言葉に、伝えたい想いを乗せて私に言霊を捧げるがいい]

 

カルデアでもトップシークレット。楽園において、ギルが認めた者にしか開かぬ天上の宮殿を模したプライベートルーム。エア、マリー、ネフェルタリ、そして『両儀式』が、祝の主賓たる真祖、アルクェイドに言祝ぎを捧ぐ。

 

──それでは。星の精霊、我等がともだち。原初の一、姫アルク!カルデアへ実装、おめでとうございます!

 

「「おめでとうございまーす!」」

 

エアの拍手と同時に、マリーとネフェルタリが用意していたクラッカーを打ち鳴らす。厳かな空気は幾分か和やかなものへと変わり、アルクェイドもまた、珍しく笑みを零す。

 

[用意のいい事だ。さてはお前たち二人…出待ちしていたな?]

 

「もちろんよ、アルク。私達の大事な友人がいよいよ重いおしりを上げたのよ?それはもう、とびっきりの御祝いをしなくてはいけないわ!大事な大事な友人として!」

 

「モーセから預かったクラッカーセット…アルクの為に用意したものもあるわ。今日はあなたが主役よ。おめでとう、星の精霊にして私達の大切なあなた」

 

フランスの王妃、ファラオの后。人間としてこれ以上無いほどの品格を備えた二人がアルクェイドを祝う。その事象の前に、クラッカーに多少塗れていても意に介するものではないのだろう。原初の一は、穏やかだった。

 

『私からもおめでとうと言わせてもらうわ、アルクェイド。グランドヒロインとして満を持して…といったところかしら』

 

両儀式も、嫋やかにその事象に彩りを添える。思わば7年かかり、ようやくアルクェイドへと辿り着いた。挫けるような事象も多くあった。それでも、歩みは止まることなく彼女へと辿り着いた。

 

[正直なところを言うとな。私にとって7周年がどうだの、実装がどうだのといったものがどのようにめでたく、どのように喜ばしいのか…いまいち合点がいかぬ。所詮はここにあってここではない時空の一幕であるからだ]

 

『あら、お祝いは無粋だったかしら?』

 

[話は最後まで聞け、無垢式。そうだな…嬉しいと言うなら、お前たちだ。人間の中でも礼節、品格を極めた者達よ。共に時を過ごすに足る、人間という種の上澄みよ]

 

それは伝わりにくいが、間違いなくかの真祖の少なからずの情だ。不機嫌、冷酷、冷徹の側面たる彼女が、確かに認めた者達(至上の姫君達でようやく、というハードルでもあるが)

 

[お前達が歓喜し、喜悦を謳うと言うならば。我が事であって我が事にならぬ祝い事も享受できようというものだ。お前たちの営みは、共にある一時は心地よい。それが全てなのだからな]

 

──…………つまり…?

 

[お前達が嬉しいのなら、私も同じと言うことだ。お前は気を張らぬと、揺蕩う風船のようだな。エア]

 

ぺしり、とデコをつつかれはうっ、となるエア。愉快げに笑うの姿は、意地悪な長女とイジられる末っ子といった光景だ。見ていた三人も、風雅に微笑みそれを見守る。

 

「勿論言葉だけではないわ。プレゼントもありましてよ!月の姫様、地球の精霊に相応しいかはわからないけれど…」

 

[よい。気持ちが籠もっているならばそれで至上の賜りとなろう]

 

「フランス王妃の冠と王笏を作ってみたわ!どうぞ!」

 

[フランス全ての気持ちを込めようとはな…]

 

真祖、王妃の輝きに一本取られる。ガラス細工の冠に、きらびやかな王笏。姫たる彼女に、圧倒的な貞淑さと威厳が宿る。

 

「私はラーメスと手掛けた、王妃の首飾りを。無垢金で紡ぎ上げたから、劣化することなく在り続けるでしょう」

 

[ほう…。人間が築いた一時代の頂点をこの身に纏うとは。中々の贅沢ではないか]

 

そして首には無垢金の飾り物。もはや額など想像すらできないレベルの至純の贈り物が、アルクェイドを彩る。

 

『私からはこれをどうぞ。コレクションの中から厳選した一振りよ。銘は…『真祖』なんてどうかしら』

 

[ほう、知っている。ポン刀というやつだな?]

 

式が渡すは磨き上げられた日本刀。空の境界を映す清澄な拵えは、地球が営む清流を表すかのようである。アルクェイドは満足気に受け取り、それを帯刀する。

 

『なんだか統一感のない見た目になったわね。ゲームでほら、性能ばかりを優先した装備みたいになっちゃったわ』

 

[それでよい。今更格式ばった付き合いなど肩が凝ろう。私が出張るほどの事態などここではそうない。貰った品を見ながら、想いを馳せ無聊を慰めるとするさ]

 

──あ、あの…アルクェイド、あのね…

 

そんな中、最後に渡すものを控えた(トリを任されたともいう)エアが自信なさげにあたふたしているのを見やる。真祖たる彼女は、その狼狽を咎めずただ優しげに眺める。

 

──て、手作りです。その、ワタシが一番親しくて愛らしいものを用意させていただきました。

 

[…、…]

 

まさかギルガメッシュフィギュアではあるまいな…。流石に反応をどう返したものかと思案するアルクェイド、その心配は杞憂となる。

 

──奇跡の具現たる真祖、アルク!受け取ってください!本当に本当に、おめでとうございます!

 

渡されたもの…それは、白地に虹色の紋様が浮かぶ至上の素材で編まれたもの。そして可愛らしい、星の獣のぬいぐるみ。

 

──フォウのマフラーと、ぬいぐるみ!アルク、首と胸元が寒そうだから…風邪をひかないようにと思って。それとこのフォウのモフモフを、是非体感してほしいと思って!

 

[…ふふ。星の獣はお前に、大層熱を上げているのだったな]

 

きっとこれも、二つ返事で素材を提供し編み上げたのだろう。彼女を有する黄金の王も監修したに違いない。何よりも、それらには心地よい親愛と尊重が詰まっているのは明白だ。

 

──み、皆が別々に用意しようって言うから、親しみやすさをチョイスしたらこんな、スケールが大変慎ましくなってしまって!あぁ、御祝されてばかりで御祝いはからっきしで、親しき仲にも礼儀ありな中でこのフォウはどう説明したらいいか!カワイイ、そしてカワイイのは間違いないんだよ!それと…カワイイ!

 

あたふたアワアワとフォウをアピールするエア。王を補佐し万象を尊ぶ自らと同じ銘を有する魂の輝きはどこへやらである。

 

[っふ、ははははは!いやぁ、お前は本当に見てて飽きぬな、至尊の魂よ。人の織り成す喜劇以外でこうまで笑うことなどそう無いぞ、誇るがいい]

 

──うん!フォウ、カワイイよね!

 

[そうだ。お前はそれでよい。感じるまま、思うままに生きよ。それが何よりの楽しみとなろう。これよりも期待しているぞ]

 

不徳は己、美徳は他者。それを魂レベルで体現するエアに、アルクェイドは満足気に頷く。

 

…そして、そんな彼女の在り方は。ギルガメッシュだけではないもう一人の機嫌を良くしていた。

 

[エア。今日の夜は少しだけ夜更しをするがいい]

 

──今日の、夜?う、うん。

 

[うむ。機嫌がよく興も乗った。末っ子気質のお前に、私が手ずから愉快なものを見せてやろう]

 

「あら、内緒話かしら?水臭いわ、ハダカノオツキアイしましょう!」

 

「その後は、地球の精霊様に私達の風土料理を堪能してもらいましょうか。残してはだめよ」

 

『せっかくだもの、何回か本気でぶつかってみない?月の城でぼんやりしているだけでは呆けてしまうわ、ね?』

 

[ふん、いいだろう。腹拵えの後、空の境界へ叩き返してくれる]

 

──お、穏便にね!お祝いの席だから、ね?ね!?

 

[手を貸せエア。この鼻持ちならぬ根源接続者に、目に物言わせてやろうぞ]

 

『あら、エアはジャッジよ。どちらの味方もしないわ。公平な審判をお願いね?』

 

──うぇえ!?

 

「ネフェルタリ!本場のアレ!アレ!」

「こほん。…パーティー開始の宣言をなさい、エア!」

 

──ぱぱ、パーティー開始ぃー!!

 

ロイヤルズの四人にそれはもう振り回され、それでも偽りなくアルクェイドを祝ったエア。リッカとアルクとは正反対な、静かで和やかな時間が過ぎていく。

 

[お前たちにおいて一番気に入っている箇所は…]

 

──なんです?

 

[礼儀作法だ]

 

無礼のない、それでいて不快もない。長く自然と付き合ったこの集いを、少なからず気に入っているアルクェイドであった。

 




…そして、夜。アルクェイドが言った、夜更しの誘い。

フォウ(夜に自分の部屋に来い、だなんて随分情熱的じゃないかアルクェイド…)

──フォウも来てくれたんだね、ありがとう!ギルは『姫の秘め事に首を突っ込むは無粋。獣に番を任せよう』って引っ込んで眠っていらっしゃるけれど…

(AUOジョークかまして丸投げしたなアイツ…だがいいよ、エアの守護はボクの使命だからね。頼まれずとも!)

──ありがとう、フォウ!…ここだね。あれ?

(明かりがついてる?)

エアとフォウが前に立つ扉から、漏れ出すは明るき光。引き寄せられるように、扉を開くと──




〘──────ようこそ。星を覆う天蓋、月の城へ〙


浮かぶ月。


咲き乱れる華。


厳かに、聳え立つ城。

〘親愛なる魂、至尊の姫。この私とは、はじめましてですね〙


──あ、アルク…!?

フォウ(な、なんてサービスなんだ…!?)

目の前に現れし彼女は、紛れもなく真祖たる彼女。

ただ、そのあまりの淑やかさと初々しさは、初対面と言ってよい程の変貌ぶり。


〘エア、フォウ。それではこちらへ。とびきりのテラスを用意しています。互いの秘密を、語らいましょう〙

──あ、は、はい!喜んで!

そのあまりの貞淑さに、エアすらも一般お姫様にしてしまうほどの圧倒的ロイヤルさ。フォウと共に、彼女は後ろをひょこひょこついて行くのであった…。

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