人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ボルバルザーク『よう、ランドに集いし者共よ!俺様はボルバルザーク!パレードエリアのガーディアン・ドラゴン!!知らないやつは覚えていけ!!』


『俺様はこれからパレードを開く!それは見るやつ、戦うやつ、全ての者を昂ぶらせる偉大なる戦いだ!!見たい奴は見ろ!この俺様、ボルバルザークの戦い…そして俺様、殿堂王ボルバルザークの戦いを!!』

『見逃すんじゃねぇぞ!!』


竜の誇り

『あの野郎…言いたい放題にやりたい放題かよ。向こうでもそうだったしずっと思ってたが、殿堂王ってなんだ殿堂王って!』

 

ボルバルザークのカルデアに留まらない大宣言。ドラランド大通り、パレードエリアを統治する大将格のガーディアン・ドラゴンの破天荒ぶりに口を尖らせるボルシャック。どうやら身内から見ても、あの振る舞いは傍若無人に過ぎたようだ。

 

『そうさせるだけの実力は当然備えているのは知っての通りだ。以前訪ねたが、無敗の俺様は殿堂入り、などといった理由からの自称らしい』

 

『最早彼は数少なき我等の同胞。とはいえ…無闇やたらにランドを楽しむ者達を怯えさせないでほしいものだ。お灸を据えてやらねばなるまい。どのみち、ガーディアン・ドラゴンとして叩かねばならぬ関係だ』

 

『そういうこった。さぁ皆、頑張ってこうぜ!ボルバルザークの次はくーそーじゅとかいうスサノオ…ん?』

 

気炎を燃やす三体と対象的に、カルデアの面々の覇気は優れない。決戦前であるというのにあるまじき煮えきらなさに、三体は顔を合わせる。

 

『おいおい、どうしちゃったんだよ?ボルバルザークはあんなんで実際強いが、カルデアの皆が遅れを取るだなんて思っちゃいないぜ?』

 

『動揺を感じる。皆、一体何が心持ちを乱している?』

 

バザカジールの問いに、リッカが代表し言葉にする。率先し、彼女は批判や糾弾の矢面に立つ覚悟を決めたのだ。

 

「ロマニや、皆から聞いた。空想樹は…皆の歴史を異聞帯から本来の歴史にできる楔だって」

 

『おう、なんかそういう事らしいな?スサノオのヤツ、無口だと思ってたらなんとまぁ、やべぇやつだったぜ』

 

「ボルバルザークをやっつけられたら、私達はスサノオを倒すことになる。それはヴリトラの言ったように…あなたたちの世界の再起の芽を潰す事」

 

それをなあなあにしてはいけなかった。世界と世界の在り方として、ドラゴン達に問わねばならなかった。

 

「ボルシャックやボルメテウス、バザカジールはどうしたい?スサノオを護って…また、自分達の世界を蘇らせる可能性があるのなら。カルデアと敵対したとしても、それをする?」

 

そう。それは即ち生存競争の始まりだ。ボルシャックらの世界が、伊邪那美の世界のように牙を剥くならば。人理を保証するカルデアは真っ向から戦わねばならない。それはつまり、ボルシャックらと訣別し敵対する事を意味するのだ。

 

「カルデアは信念からの離反、対立は咎めない。みんなの意志を聞かせてほしいの。皆は…どうしたい?」

 

それもまた、尊重の概念。一度紡いだ友誼が、一度築いた絆が離れようと。彼等が成したいことを成す、それを留めはしないのだ。

 

『ああぁ、出来れば敵対など真っ平だ…!ボルシャックもボルメテウスもバザカジールとまとめて真正面から戦えばカルデア諸君の負担は一体どうなるか!間違いなく死人が出る!出来るなら争ってほしくない!』

 

『副所長、それは彼等の決断次第ですよ。彼等がどういった判断を下すか──』

 

『ふ────わーーーっはっはっはっはっはっ!!』

 

カルデアの重苦しい空気を吹き飛ばしたのは、ボルシャックの豪快な笑い声だった。ボルメテウスは神妙に頷き、バザカジールはカルデアの神妙な扱いに礼を見せる。

 

「ぼ、ボルシャック?」

 

『あぁ、悪い悪い。そうかそうか、元気がねぇ理由はそれか。俺らの世界がまた蘇る望みが出たから、俺らがカルデアの敵になっちまうか心配だったんだな?』

 

リッカは、一同は頷いた。それは強敵だからではない。ドラゴンとの戦いが恐ろしいからではない。絆を結んだ者と殺し合う地獄を疎んだからだ。

 

だが──、彼等はまだ、ドラゴンがドラゴンたる所以を理解していなかった。

 

『心配すんな。俺も、ボルメテウスも、バザカジールも。もうずっと、お前らの味方だぜ』

 

「え…?」

 

『大前提として、私達の世界は我等の行いで滅びた。誰が介入したものでもない。私達がそのように選択し、そのように滅び、そのように世界を閉じたのだ。そんな私達の世界の末路をただ受け入れるのが、生き延びた私達の義務であり責任だ。世界は剪定されたが…それでもそれは、私達が生き抜いた結果なのだ。リッカ』

 

ボルメテウスが告げるのは、滅亡した世界の生き残りとしての矜持。滅びた事実すら、常人には堪難き重圧すら、ドラゴン達は真正面から受け止めていた。生き抜いた結果とすら胸を張っていた。

 

「でも!もしかしたら、皆が失った仲間や、大切な人達にまた会えるかもしれなくて…!」

 

『それは我等が悼み、別れを悔やんだ彼等に非ず。蘇った世界で生きる別人だ。世界をやり直したとして、『死んでいった彼等』には二度と会えぬ。我等四体の知らぬ、我等のいた世界によく似た場所で生きる友の生まれ変わりでしかないのだ』

 

「バザカジール…」

 

誰よりも再会を願っているはずなのに、誰よりも蘇りを望む理由があるはずなのに。バザカジールはその可能性に微塵も縋ろうとしなかった。死した者、逝った友らの尊厳を決して貶めようとはしなかった。

 

『リッカも、カルデアも聞いてくれ。俺らは試練としてお前らに立ちはだかった。最初の導きがサンタだったのはそうだが、俺らは自分の意志でお前らと戦い、認め、惚れ込み、共に生きる事を決めた』

 

ボルシャックが真っ直ぐに告げる。彼は最早迷いすらしていなかった。彼は全てに相対していた。世界を滅びに導いた自身の判断にも。自身の生きた結果にも背を向けななかった。

 

『俺らの世界は滅んだ世界だ。あんたらの世界は今も一生懸命に生きている世界だ。もし、俺らの世界を再びどうこうできる権利が俺らに委ねられているのなら、その答えはとっくに決まってる』

 

ボルシャックはその大きな手で、リッカを撫でる。そこには、敵対の意識など欠片もない。

 

『生き残るべき世界はあんたらに決まってる。真っ直ぐに、一生懸命に、これからの未来を護るために戦うあんたらの世界に明日があってほしいと思う。滅びて身寄りのねぇ俺らを受け入れてくれた、優しいあんたらの世界こそが前に進むべきなんだ』

 

『ボルシャックの意志は私の意志だ。迷うまでもない、仲間になると誓った瞬間より、私は君達の為だけに戦うと決めている』

 

『竜の終生の誓い、見縊ってもらっては困る。舌の根も乾かぬうちに誓いを捧げた君達を裏切っては、散った友らに合わせる顔などない』

 

彼等はどこまでも気高く、誇り高かった。一度友誼を結んだ相手に向ける刃など持ちはしない。彼等は既にこの世界で見出していたのだ。護るべきもの。切り拓くべき未来を。

 

『何も気にすることはねぇよ、カルデアの皆。別に俺らは遠慮してる訳じゃねぇ。俺達は心から見たいんだ。お前さんらが築く未来を。お前さんらが向かう明日を』

 

「ボルシャック…皆…」

 

『俺らはもっと見たいんだ。お前さんら『虹の文明』を。お前さんらが紡ぐ未来を!だからそれの邪魔をする奴等はぶっ飛ばす!たとえそれが、俺等の世界そのものだろうとな!』

 

最早彼等は異聞帯から来た刺客でも、放浪者でもない。汎人類史を共に臨み、同じ未来を掴み取るために戦う新たなる同胞だ。

 

『さぁ行こうぜ!ボルバルザーク、そんでスサノオ!んでもって、世界同士を戦わせる悪趣味な事を考え付く野郎をまとめてぶっ飛ばしてやろうじゃねぇか!!』

 

「うん!ボルシャック、皆…!改めて、これからも!よろしくね!」

 

何者かの導きによりもたらされた別天地は、既に彼等が戦うべき故郷となっていた。

 

いや──今度こそ守り抜くべき世界として、彼らは誓うのだ。多種多様な色が重なり合う、絢爛の文明のために。

 

──虹の文明の為に。彼等は見出した虹を懐き続け戦う。星見の天文台を守護する、守護の竜として。




伊吹「良かったぁ。せっかく見知った仲間ですもの。一緒に乾杯したいものねー!」

温羅「あぁ。アタシらが思うよりずっと、彼等は誇り高かったって訳だな」

伊吹「うんうん!ならアタシ達も気合い入れて、ガーディアン・ドラゴンをやっつけなきゃねー!」

温羅「ああ。どうする?どっちをやる?」

伊吹「そうねぇ〜!じゃあアタシはぁ〜──」

温羅(親孝行がすげぇことになっちまったなぁ…サタン、何考えてるのか知らねぇが、あいつらは救いなんて必要はねぇみたいだぜ…!)

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