仲間達と共に、その光景を目の当たりにした。
闘争の果て、彼は歓喜した。生命の果て、戦いの果てを見ることができたのだから。
彼は仲間達と喜びを分かち合わんとした。
…だが、その歓喜は彼だけのものであり。
彼と想いを同じくする者は、終ぞ現れることはなかった。
『─────!!!』
カドックと入れ替わりに参戦した、三体のドラゴン。ボルシャック、ボルメテウス、バザカジール。ボルバルザークという闘争と破壊の竜、その望みたる万象の闘争を阻むため、三体は全身全霊を以てボルバルザークの前へと立ち塞がり、かつての仲間である竜との極限の闘争を演じていた。その先鋒はバザカジール。その瞬刃たる魔剣の苛烈な攻めは、ボルバルザークに多彩な破滅の手段を取らせない。
『腑抜けた剣が見違えるようだな、バザガジール!これこそが本来の貴様の速さよ。虹の文明との出会いで取り戻したな!己を!!』
『そうだ、ボルバルザーク。私は闘争の為の闘争などに興味はない。戦うのは、戦えぬ全てを護るため。破滅より今度こそ弱く小さき者を護るためだ…!』
『ならばもう一度試してみるといい!貴様の前に立つは、バロムを越える生命の終わりよ!!』
バザガジールの迅速の刃は凄まじく、ボルバルザークの武力をもってしても受けきれず、捌ききれない。反撃の瞬間にはそこにはおらず、時空転移からの斬撃が身体を引き裂いていく。火の文明最速の剣技を振るう守護の魔剣、輝きを取り戻した今それは十全に振るわれていた。
『見事見事!戦いとはこうでなくては!劣勢、不利!勝利の凱歌を腹の底から歌うには不可欠なものよ!』
『ボルバルザーク…!』
『仲間と争う合縁奇縁、その郷愁もろとも吹き飛ぶがいい!!逝った仲間に侘びの一つも考えるのだなァ!!』
再び展開されるマナを超圧縮した巨大隕石の群れ。小さき隕石は切り裂くバザガジールだが、地球環境を激変させるクラスの巨大隕石は手に余る。故に──。
『貴様こそ、野蛮な物言いはこの場では控える事だ。無限の闘争は滅ぶべき概念。我等の世界の残滓と共に!』
カルデアにて修復を終えたボルメテウスの武装が火を吹き、超巨大隕石の群れを白熱の塵へと帰す。火の文明における最大火力の持ち主が、理不尽極まる破壊を食い止める。
『ボルメテウスか!賢い貴様の選択だ、虹の文明は確かに理があるのだろう!懸けるべき命、護るべき誇りを見出したのだろう!』
『だから戦いを止めろ、とは貴様には言わん。お前は誰よりも真摯に、熱烈に、苛烈に、純粋に…森羅万象の闘争を望んでいるのだから』
『よく理解しているなァ!!そうとも、俺様には歴史の行末や誰が何を護るか、世界がどうあるべきかなど些事でしかない!平和や理想を謳ったものは死に絶え、覇道や野望をほざいた者はこの手で討滅した!!』
ボルメテウスの射撃を真正面から受けながらもボルバルザークは猛進する。そこにはなんの混じり気のない闘争への渇望、そして滅び去ったかつての世界への僅かなる思いが垣間見えた。
『如何なる崇高な理想も!おぞましき野望も!等しく灰燼に帰すのを俺様は目の当たりにした!あの世界は最後まで和解を選ばず闘争に殉じ、故に滅びた!平和も破滅も等しく闘争の前には無力、そして無価値!!俺様が見てきたのはそういう世界の有り様だ!』
ボルメテウスとボルバルザークが鍔迫合う。そこには断固たる理性と絶対たる衝動が激突し、火花を散らす。
『だから闘争を繰り返すと?待つのが焦土と知りながら再び戦いを選ぶというのかボルバルザーク!滅びを知りながら学ぼうとすらしない、そこまで愚昧な貴様ではないはずだ!』
『いいや学んでいるともボルメテウス。平和を維持するも手を取り合うも必要なものは武力であり抑止力だ!!調和と平和は容易く暴力に滅ぼされる!俺様が示してやろうと言うのだ、この俺様自身が世界を滅ぼす暴力となって!!』
『ボルバルザーク…』
『護りたいならば打ち払ってみせろ!!今度こそ正しい未来を選ぶと息巻くならば、過去の暴虐と破滅を乗り越え掴み取れ!それができねば滅ぶだけだ──虹も!我ら全ての文明のようになァ!!』
ボルバルザークがボルメテウスの横っ面を殴り吹き飛ばす。そこに入れ替わるように組み合うボルシャック。ボルバルザークと、頭突きすら交えぶつかり合う。
『俺様には誇るべき幸福と疎むべき不幸があった!貴様らには最後にそれを伝えておかねばならんなァ!』
『なんだってんだいきなりよ!殊勝な物言いが出来るんなら手を止めて言いやがれ!』
『そういうなボルシャック。俺の幸福!それは貴様らが仲間であり友であった事だ!お陰で俺様は、闘争の行き着く果てを見ることができた!!』
世界すら滅ぼす戦いの果て。一度も負けることなく、一度も止まることなく走り抜けた。その果てに、世界の全てが滅び去るほどの純粋極まる闘争の日々。闘争の末路は、何も残らぬ停滞の世界。
『それは貴様らが友であり仲間であったが故に辿り着いた境地だ。俺様は俺様自身が望むままに暴虐であり、厄災であり、闘争の化身であった!それを最後まで貫けたのは貴様らの積だ!礼を言おう!ボルシャック!!』
『世界滅ぼすまで戦わせてくれてありがとうってか!わけのわからん礼なんぞ口にするんじゃねぇ!じゃあ不幸ってのはなんだ!』
『知れたこと!貴様らが仲間であった事だ!真の歴史の覇者が我々であるが故に、俺様は真の覇者を決める戦いを行えなかった!』
ボルバルザークはあの戦いを皆が手にしたものと誇っていた。全てを打ち倒し、薙ぎ倒し、手にした滅びこそが我等の勲章であると。
だがそれ故に、彼は仲間である彼等と殺し合う機会を持てなかった。ボルバルザークにとってボルシャックや火の文明の者達は仲間であり同胞。ライバルであっても宿敵ではない。
故に彼は不幸と感じていた。自身が渇望する最高の好敵手。世界すら滅ぼすドラゴン達と殺し合う機会が永遠に喪失していた事に気付いたのだ。彼等は共に、破滅の殿堂に到達した朋友であったのだから。
『あの導きに感謝せねばなるまい!貴様らは虹の文明に鞍替えし、俺様は貴様らと陣営を分かつ事となった!お前達の見出した文明、護るべきものに挑むことで、俺様は全力で貴様らと戦うことができる!』
『一から十まで戦いしかねぇのかテメェは!変わろうとも、他の生き方を探そうともしねぇのかよ、ボルバルザーク!』
『然り!!最早火の文明の竜は俺様一人、ならば俺様は滅びの火種となりて燃え盛ろう!さすれば貴様らも本気とならざるを得まい、己が手にした未来を護るために!!』
ボルバルザークの闘気が更に膨れ上がる。それは吸収の逆、受けたダメージを何倍にもして周囲の全てを破壊する一掃除去覇道。
『戦いの果は垣間見た!!ならば俺様を越え垣間見るがいい──闘争の向こう!!真なる相互理解の未来を!!虹の文明とやらが多様性の文明であるならば!!』
『『『!!』』』
『この俺様の屍の上にこそ!!新たな未来が待っているのだアアアアァッ!!!』
核爆発もかくやの大破滅的エネルギーの膨張。ボルシャックら三体のドラゴンを呑み込んであまりあるエネルギーの放出。
『うぉおぉおぉおっ!!』
『ぐ───!!』
『ぬぁああっ────!!』
ボルシャック、ボルメテウス、バザガジールを諸共に飲み込むエネルギーの大放出。まさにボルバルザークは王。並ぶものなき殿堂に座する王であった。その力に、三体のドラゴンすらも並び立つことはできなかった。
「ぐははははははははははァ!!さらばだ破滅を共に垣間見たかつての同胞!さらばだ、かつての朋友!さらばだ、袂を分かちし同志達よ!永遠になァ!!」
ボルバルザークは吼えたける。仲間を葬り、本当の意味で彼は一人となる。虹の文明に下った仲間達は、跡形もなく消え去った。
『───ん?』
否…ボルバルザークはまだ、孤独の殿堂には至っていない。
「まだ勝ち誇るには早いですよ、ボルバルザークさん!」
「彼等が信じた私達は、ちっぽけな庇護者なんかじゃないからね!」
ボルバルザークの爆発すら受けきった、紫紺の盾。
殿堂王にすら物怖じしない、勇気の龍。
『貴様らは…!』
「藤丸リッカ!グランドマスターズの一人!そしてこっちは!」
「マシュ・キリエライト!ギルガメッシュ王、じゃんぬさんに続く、先輩のオンリーワンサーヴァントです!」
殿堂王に、二人の魂が謁見を果たす!
ボルバルザーク『ぐはははははははははァ!!そうか勇者達よ、誇り高きマスターたるカドックら、グランドマスターズの真打ちか!』
リッカ「戦うのは私達だけじゃない!」
伊吹童子『はいはーい♪バザガジールくんに加護をぴぴぴ〜♪』
バザガジール・八岐・ドラゴン『感謝する、日本の神よ!』
エル『闘争だけでは辿り着けない発展の成果!どうか見せてあげてください!ボルメテウス・イカルガ・ドラゴン!!』
B・I・D『無論だ。その輝きに私達は魅せられたのだから!』
鈴鹿「しっかりするしボルっち!田村麻呂の力を受け継いだあなたがこんなんじゃまけたりしないって!」
アテルイ「彼の魂を救いましょう。孤独の玉座から!」
ボルシャック・将軍・ドラゴン『おおっ!!』
ボルバルザーク『おぉ…!虹の文明、本領を発揮するか!』
リッカ「滅びの火だと言うのなら、あなたを止める!私達の未来のため、あなた自身の行き着く場所の為に!」
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