人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
勝者たる人類史を覆さんとするもの。
それは、剥き出しの暴嵐の力であった。
『■■■■■■■────!!!』
遂に起動を始めた空想龍スサノオ。およそ人が乗るような想定をしていないマグマアトラクション、マグマスプラッシュ中央にて雄々しき角と優雅なる羽根を拡げし空想の楔は、そのマグマの灼熱を喰らって牙を剥く。
『圧倒的な力ではあるが、我等に怖気など通じはせぬ!』
その巨大さはボルシャックらを二周り近くも上回る威容だが、誰もがあの滅びを受け止め生き延びた精鋭の中の精鋭。他への恐怖などに縛られはしなかった。バザガジール・ドラゴンが怯まず猛進し、その神速の剣技にて首を狙う。
『消えされ、我等が世界の残滓たるものよ!!』
その一撃はスサノオに、決して小さくない刀傷を刻む…その筈だった。しかし、次の瞬間一同の目を疑う事例が起きる。
『■■■■!!』
『何ッ!?』
スサノオはバザガジールを一瞥した瞬間、なんと彼の刃を自身の刃で受け止めたのだ。バザガジールを上回る巨体、されど速度は互角。それ即ち、武において神速を誇ることに他ならない。
『バザガジール!ちぃ──!』
バザガジールのフォローの為、ボルメテウスが弾幕を張る。それらはエルやカルデアの干渉にて力強さと速さ、制圧力を増した必殺の一発一発総の乱射だ。当たれば、都市すらも消し飛ばす超絶の必殺射撃。
『■■■■■───!!』
『!?』
ボルメテウスが瞠目する。スサノオはエネルギーを一瞬で上昇させ、チャージしたのだ。ボルメテウスのエネルギー総量すらも上回る、超ド級のチャージ効率。
全身が発光するほどのエネルギーをチャージしたスサノオは、なんと『消滅』した。目の前から、自身らが認識する空間から。それ程の速さ、否。光速で掻き消えたかのような一瞬の出来事。そして、その刹那。
『ぐぁ─────!!』
『があぁあっ…!!』
なんと、バザガジール・ドラゴンを首根っこを押さえ捕縛していたスサノオがボルメテウスの上部より現れ、ボルメテウスに渾身の叩きつけをぶちかましたのである。反応すらできない神速の行動、鮮烈にして怒涛を極めし無双たる剛力。火の文明最強が2体が、何もできずに甚大な被害を被ってしまう。
『ボルメテウス!!バザガジール!!』
『ぐはははは面白い!!その暴風雨が如き力!俺様にも見せてみろォ!!』
微塵も怯むことなく突撃するボルバルザーク。ドラゴンは相手の力が強ければ強いほど闘志を燃やす。仲間を二人も瞬く間に処理したその力、まさに世界の楔たる龍に相応しいと判断したのだ。
『我こそはボルバルザーク!!貴様に、あの世界に引導を渡すものよ!!死ィィィィィィねぇェエェエッ!!』
『!!』
その踏み込みも、その威圧もまさに王。殿堂入りクラスと自称する程の覇気に満ちた威力の攻撃は、スサノオの予想を上回っていた。
『─────■■■■!!!』
スサノオの胸が深々と抉られ、内部には『銀河』が垣間見えた。それは彼等の世界には存在しない概念の為彼らが気に留めることはなかったが、空想の龍たるスサノオは文字通り身体に宇宙を内包しているのだ。世界を塗り替える存在としての資格を有している証明である。
『ぐはははは!!何人たりともこのオレ様を止めることはできん!さぁ覚悟しろ!あの世に送ってやるァァァ!!』
『■■■■■!!』
なんとボルバルザークはスサノオと打ち合うことが出来ている。その武力はまさしく無双であり、世界に仇なす何者かにも通ずるほどに苛烈極まるものだ。体格差をものともせずに猛進するその姿は、ボルシャックらの士気を確実に上げる。
『ボルバルザークに続け、ボルシャック!私達の事は心配いらん!』
『ここで負ければ虹の文明に禍根と波瀾をもたらす羽目になる!止めねばならんぞ!』
『おぉ、解ってらァ!!』
ボルシャックがボルバルザークの隣に並び立ち、スサノオを攻める。苛烈さを更に増した攻撃の乱打は、空想龍も守勢に回すほどの勢いと圧があった。ジリジリと、相手を押しやっていく。
『ぐはははは!!行けるぞボルシャック!!やはり火文明一の勇者とオレ様に叶うものなどおらぬなァ!』
『油断すんな、虎の子のなんちゃら龍がこの程度な筈がねぇ!』
『■■■■■!!!』
『ッ!?』
ボルシャックの言葉に呼応するかのようにスサノオが吠える。眼光鋭く、覇気は更なる強度を増し、最早人では気風一つで吹き飛ぶほどに凄まじい様子を見せつける。ボルシャックは瞬時に警戒を見せるが、ボルバルザークは構わず叩く。
『何をしようとも知った事では無いわァ!!』
『ちょっと待て、ボルバルザーク──!』
なおも攻撃をするボルバルザークの前に、巨大かつ水色の『シールド』が現れる。それはドラゴン一体分の巨大さであり、異様な存在感を放つ。
『無意味な悪足掻きだ!こんなものォ!!』
ボルバルザークが怯むはずもなく、力づくで叩き壊す。僅かな拮抗も見せず、そのシールドは粉々に砕け散る──
──それが、契機となった。
『ぐぉあぁあァァァァァァァァァ!!?』
断末魔のような絶叫を上げるボルバルザーク。彼はシールドを破壊した瞬間に現れた、胸部がローラーと化している機械の怪獣に囚われ、その身を轢殺されてしまったのだ。ボルバルザークすらも強制的に捉えうるそれは、スサノオが有する護衛機構。汎人類史において『シールド・トリガー』と呼ばれるトラップだ。スサノオは、それすらも使いこなした。
『ボルバルザーク!!テメェ────!!』
自分以外の仲間を蹂躙されたボルシャックは怒りと共に拳を振るう。その拳は、正確にスサノオの顔面を捉えていた。──だが。
『ッ!!』
挟み込まれていた、2枚のシールド。そのシールドがスサノオへの直撃を避けていた。そして2枚が、儚く砕け散る。
『ぐ、あっ!がぁあぁあぁっ!!』
瞬間、ボルシャックの身体を貫くドリルトラップと、押し潰す地獄スクラッパー。それは火文明が有していた攻撃兵器であり、失われた筈の技術が一つ。それをもろに受け、ボルシャックとボルバルザークは甚大な被害を受けてしまい──
『■■■■■■■■─────!!!!』
より一際大きい力の爆発が、ボルシャックらを包み込む。4体纏めて吹き飛ばす程の、大地を揺るがす力の暴風雨。それがスサノオの空間を軋ませる程に展開され、そして…。
『『『『ぐあぁあぁあぁあぁあぁっ!!!!』』』』
巻き起こる灼熱の暴風、世界を破壊し新たに作り出す創造の力。偉大なるゼロへの挑戦の為に巻き起こされる、儀式たる破壊。
これを4体のドラゴンのみで受けたのは幸運と言えるだろう。『対界宝具』に分類されるであろうその大破壊は、人類史の熱量を使用し外界を遮断するマシュの防御以外では受けきれぬもの。人が生きていられる空間ではなく、サーヴァントですら絶死は免れない。
一瞬か、永遠か。あまりの破壊に時間と空間すら歪めたかと錯覚する一時。やがて、その破壊は徐々に収まり──。
ボルシャック『く、…ぐぁ…』
ボルメテウス『…………、…………』
バザガジール『ぅ…』
ボルバルザーク『ぬぅ、ぐ、ぉお…』
──完膚なきまでに叩き伏せられ、瀕死となったドラゴンと。
スサノオ『■■■■■■■■■ーーー!!!』
嵐の様に吠え猛る、空想龍の姿のみが示されていた。