『■■■■■■■■─────!!!』
外敵を排除した。そう認識したであろう空想龍は更なる変異…いや、開花を遂げる。かの龍は空想樹をモチーフとしてサタンが鋳造した龍であり、その在り方は空想の根を下ろし、現実を侵食するもの。汎人類史への進行こそが本領にして使命だ。
スサノオから無数の光の奔流が穿たれ、辺り一面に突き刺さる。それらは種子を飛ばす花が如くであり、ただしくそれは習性にして本懐を果たさんとしている所作に他ならなかった。
『『『『『『────!』』』』』』
それは異形…否、かつて彼等がいた文明に生きていたモンスター達の姿を取った空想の種子達であった。あらゆる文明の情報を内包し、それらの情報を読み取り、世界に根付く種子たる尖兵。それこそが、スサノオが成さんとしている汎人類史への攻撃。空想の具現化の全容たる全てであった。
スサノオのいる空間が、空間そのものが汎人類史に仇なすものに変質していく。滅び去った全てが再誕しようとしている。人類とは比べ物にならない個々の強靭さは、数日でこの世界の生物の勢力図を一変させていくだろう。
強きものは弱きものを駆逐する。発想と改善、試行錯誤をもって霊長の覇者となった人間の文明を踏み潰す空想の種子たち。ドラランドにいる全てを蹂躙して足掛かりとするだろうそれは、自らの再誕を心待ちとしていた。無尽蔵に、ランダムに生命を産み出すそれは、かつて追放、殺害されたティアマトと全く同じ力を持つ脅威的な力。
苛烈なる嵐とそれを満たす恵み。まさにそれは、空想たる滅び去るべき異聞帯を力づくで降誕させる龍。スサノオたる名前に、一切の矛盾のない強さと圧力を兼ね備えていた。
『■■■■■■■!!!』
スサノオが吠え猛る中でも、ドラゴン達は動けなかった。その力と、その威圧。生物としても圧倒的なその威風は、ボルシャック達の遥か上を行く蹂躙をもって四人を叩き潰したが故だ。
このままでは全てが終わってしまう。年末に行われる人理金箔の前に、世界の漂白…いや、鉄風雷火による世界の汚染が始まり、人類は抵抗虚しく滅び去る事だろう。スサノオを神とした新しい世界が地球に生まれ、人類の繁栄、人類史はクリーチャー達に世界の覇者の座を譲る。完全なる敗北、完全なる滅亡、完全なる人類史の抹消はすぐそこまで迫っていた。
『■■■■■■■─────!!!!』
嵐の様に吠え猛るスサノオ。
──しかし。そこにはまだ、誰も知らない細やかな希望が遺されていた。
『ピュ、ピュイー』
『……、っ…』
意識すら定かでない4体のドラゴンに、種子のいくつかが近寄る。それは敵対行動にしては優しく、あまりにも無警戒だ。初めは一つ、だが、次は、二つ。ゆっくりと、確かに彼等に集っていく。
『…君たちは、あぁ…君たちは…』
ボルシャック、バザガジール、ボルメテウス、ボルバルザーク。それらには、それがなんなのか伺い知れた。自身らに近寄るその、小さな鳥のような者達がなんであるのかを正しく理解した。
『…ルピア。お前、そんなんなってまで…応援してくれんのかよ…』
コッコ・ルピア。ドラゴンの友であり、ボルシャック達を支え続けた、ファイアー・バード。種子として内包されたその状態であろうとも、彼等はわすれてはいなかった。自身らの為に闘った英雄達を。燃え盛る、炎のような勇者達を。
『ピュイー!』
元気出せ、諦めるな。意志など介在しているはずもない、スサノオに刻まれた存在でしかないルピア達は、確実にドラゴン達に言葉を送っていた。正しい言語を発せられなくても、それは間違いなく彼等を激励し、寄り添うものである事は伝わったのだ。最後まで、彼等は勝利を信じていた。きっとそれは、彼等が彼等であるかぎりずっとずっと変わらないのだろう。
彼等は、久遠に竜達の友なのだ。だからこそ──その在り方は、再び竜達に火を灯す。
『…お前ら…やれるよな…!』
ボルシャックが手を付き、立ち上がらんと顔を上げる。どんな形であれ、かつての友に発破をかけられた彼の目には熱い涙が浮かんでいた。彼は力を振り絞り、皆に声をかける。
『無論だとも…!彼等に侵略など、させはしない…!』
バザガジールは数多の友達に支えられ立ち上がった。護るべき彼等の残滓は、確かに通じ気迫に繋がっていた。
『まさか、遺伝子レベルで私達を支えてくれるとは。…報いるぞ、お前達。そして、絶滅戦争など二度とさせん』
ボルメテウスもまた、懐かしき知己に応援され立ち上がる。冷静な彼の声は、揺るがぬ決意に満ち溢れていた。
『えぇい煩わしい!起きる!起きるからつつくな!散れ!散れぃ!』
多種多様に突かれていたボルバルザークも跳ね起きる。殿堂状態を上から叩き潰されはしたが、彼もまた友に叩き起こされた。まだ、何も終わってはいない。
『■■■■■■■■■■─────!!!』
スサノオはその現象を理解していない。いや、そんな自我があるのかすら不明だ。ただの機構として、無尽蔵に種子を生産しているのだ。
『スサノオ…確かに話した記憶もある。意気投合した記憶もある。それがこれだとはどうなってやがるんだ…?』
『或いは、初めから情報集積の為に送られたのやもしれんな。私達が疑問を持たぬよう、竜の生き残りと誤認させられたか』
『これもサタンと名乗る少年が、一から目論んだ計画なのであろうか』
『知った事か!全て潰し、虹の文明を守護する!考えるべきはそれでいい、立ち塞がるなら全てを潰すまでよ!』
かの種子たちの姿はもう無い。彼等に力を与え、種子としての力を失い消え去った。最早二度と会うことのない、束の間の再会。彼等はもう、情報すら残さず消え去った。
『皆──見ててくれよ』
いや、ボルシャック達の胸の中に今でも絆と友情は生きている。消え去った世界であろうと、最早滅びた世界であろうと。彼等はずっと、永遠の朋友だ。
『よし──気合入れろてめぇら!!なんとしてもあのスサノオはぶっ潰して、この世界を護るぜ!!』
最早目の前には、四大文明の再演が展開されている。全てを乗り越え彼等にまた、世界すべてを討ち果たす大任が託される。
『ぐはははは!!見ろ、アルカディアスにバロムもいるではないか!憐れよな!敗者の末路というヤツは!』
『戦力的には絶望的だ。だが…』
『うむ。そんなのはいつもの事だ』
『そんで、やるこたぁ決まってらぁ!』
彼等は感情と魂の赴くままに戦う。それは自身の為でなく、いつか素晴らしい未来を掴むためのポジティブな理念の具現。
行き着く果ては剪定であったとしても、彼等は戦いを止めはしない。今度こそ、護るべきものを失いはしない。
彼等の姿が変わる。この虹の文明にて手に入れたもう一つの姿。
『全員──死ぬまで戦えぇっ!!!!』
ボルシャック・将軍・ドラゴン。黒と赤の大将竜。
『彼の人生はこれからだ。くれてやるわけにはいかんな!』
ボルメテウス・イカルガ・ドラゴン。人の叡智が産み出した機竜。
『因縁があるようだ。雪辱、果たすぞ!』
バザガジール・八岐・ドラゴン。全てを癒やす優しき竜。
『ぐははははははは!!ならば見せてやろう、先程から使っていた俺様の本気!!その全霊をなぁ!!』
更なる精度を示す、殿堂状態。僅かな勝機すら生まれぬ未来を見てなお、ボルバルザークは吠えたける。
『──────■■■■■■■!!!!!』
スサノオドラゴンと、四人の竜。サタンが招き入れた骨肉を争う異聞帯の蠱毒は、全く未知の局面を迎える。
そう、紅蓮の如き虹と破滅の朱。嵐の止む先に残る色は、果たして。
?『──やっぱり、スサノオは開花してたか。だったら、相手にとって不足はねぇ!』
?『ムフェトを思い出す命の書き換え、許すわけにはいかないわ!』
瞬間、ボルシャックらの目の前に信じ難き光景が飛び込む。
『■■■■■■!?!?!?』
スサノオが何かに殴られかのように吹き飛ばされ、彼がばらまいた種子が赤き稲妻に打たれ消し飛んでいく。それは、れっきとした生命が起こした事象。
『あんたらは!?』
温羅『よう!グランドバーサーカー・オニキュア温羅!お前さんらを助けに来たぜ!』
ミラルーツ『祖龍、ミラルーツ。調和を護るためにやってきたわ。空想龍…その存在は私的にアウトよ!』
スサノオ『■■■■■■■■!!!』
役者は揃った。スサノオとの戦いは、クライマックスに移行する──!
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