人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
フォウ(言ってる場合か!!ヤバいぞアイツ、何でもありすぎてほっとくと普通の特異点まで偉いことになるんだぞ!?)
──あわわわ…
ギル「ふむ。確かに少し釘を刺さねばならぬか。自分以外は役不足だなどとほざかれては気分がいいものでもない」
《という訳で、エア!》
──は、はい!
《飛び切りの釘を…刺すぞ!》
──釘…ですか…!?
「あの炎って…!」
中心部分にいたリッカ達からも伺い知れるほど、空を紅蓮に染めあげる火柱。マグマスプラッシュ部分、火山の噴火の如くに吹き上がる灼熱の焔が、ドラランドを照らし尽くす。
「うぉお、なんだありゃあ!?」
「新しいイベント?すっごーい…キレーイ…」
一般客からも見伺える程の大規模の焔は、禍々しいものではなくむしろ輝かしく、眩く、美しく映る。それはどこにいても把握、そして見据えることの出来る超巨大な黎明の炎。ドラゴンの覇気が如くに見るものを圧倒するそれは、しかしリッカ達に一つの予感を過ぎらせる。
「ボルシャックや皆が戦ってくれてたのって…あそこだよね…!?」
超絶な温度に上昇しているその中心部分に生命など存在できる弾もない程の極限環境。あの中に生きている事が叶う存在はおおよそ絶無であり、それは間違いなく、ボルシャックらドラゴンすらも…
『ドクター!あの火柱の中心に生命反応は!?』
ゴルドルフの確認に、ドクターの返答は長く、重く、そして鎮痛であった。務めて冷静に、事実のみをきっぱりと告げる。
『…あの火柱の内部環境は地獄と言っていい。星の内核に至らんとする程の大灼熱。空間を区切られていなければ、君達のいる空間ですら危なくなっているほどの大熱量。人は愚か、ドラゴンですら…』
「そんな!」
『嘘だろ…!?』
それだけの勢いと、それだけの全身全霊を込めて戦い抜いたドラゴン達が勝利した事は疑いようもない。彼等は勝利した。だが、その勝利がもし己の存在を懸けたものであったのたとするならば…。
『ボルメテウス!ボルメテウス!!嘘ですよね、これから僕のロボ発明のテストドラゴンに立候補してくれたじゃないですか!どうして!どうして反応してくれないんですか!?どうしてっ!?』
『返事しろおい!ボルシャック!!嘘だろ!嘘だろオイ!なんでだ!なんでだよ!!』
『温羅!温羅!ちょっと、冗談キツイわよ?ねぇ!ねーってば!?』
所縁ある者たちが必死に呼びかける。あの焔を紡いだものがドラゴン達の輝きだとしたら。空想龍を焼き払う為に必要なものが、彼等の存在全てなのだとしたら。
「ルゥ様!ルゥちゃん様!返事してよ!モロコシ以外でやられないんでしょ!?邪神にも負けなかったんだよ!?炎になんて負けないよね!?ねぇ!?」
「親孝行はどうしたんだよ〜!?おーい!おいってばぁー!?」
「らしくないじゃないか…!アンタ程の鬼が…!鬼神とまで呼ばれたあんたがさぁ…!」
「………温羅はん…」
楽園の旅路は完全無欠を標榜していた。犠牲を出さず、しかし容易ではない道を歩み、安易ではない試練に挑み、それでもなお勝利を収めてきた。誰もがきっと、これまでもこれからもそうなのだと確信し、最善を尽くさんと努力し、奮起し、奮闘を続けてきた。人間ですら全身全霊を尽くし、楽園の理念を遵守し戦ってきた。
だが、それがよもや竜、鬼、龍たちを失う結果となる事実を彼等は受け入れる羽目になるとは思いすらしなかった。彼等ならきっと帰還する。きっと笑顔を見せてくれるはずだと信じていた。
だが──この空間に彼等の反応はない。それがどれほど受け入れ難いものだとしても、どれほど信じ難い事だとしても。彼等は同じ世界で、同じ喜びを分かち合う事は敵わないのかと思えば…その心は、ヴリトラから手にした勝利を喜ぶ事など出来ない。
喪失感と、無力感と後悔。自身らが速やかに加勢する事さえ出来ていれば、違う結果を導くことは出来ていたのか?それは楽園のメンバーが初めて浮かべる感覚。
「ルゥ様、ウラネキ…ドラゴンの皆…!!こんなのってないよーーーっ!!!」
リッカの悲痛の叫びが、ドラランドを震わす。喜びを分かち合うべき相手がいない。それは、魔神沖田と分かれる時に嫌というほど味わった絶望であった。膝を付き、涙を零す。
「皆…せっかく、虹の文明は素晴らしいって言ってくれたのに…こんなお別れだなんて…こんなのって…」
「先輩……」
リッカの弱さに寄り添わんとするマシュ。
──だが、その嘆きは、やがて全く異なる色合いを見せる。そう、多色を織り成す虹のように。
「…!この感覚は…!」
アテルイが立ち上がり、空を見やる。驚愕を以て、彼女は輝く太陽を指差す。
「皆様!見てください!涙と哀しみは、無用なものですよ!」
『へっ?──えぇえぇ!?』
ロマニが毎度の事ながらの絶叫を上げる。だが今回は、今回こそは本当に誰も彼もが予測出来ない事象…超常現象と言っていいものだったからだ。
【ブラックホール!ブラックホール!!ブラックホール!!!レボリューション!!】
突如、空に巨大な黒き穴が浮かぶ。太陽に重なる程の巨大なるブラックホール…否、ワームホールが展開される。
「あの穴は…!?」
『まさか!?嘘だろう!?いや嘘じゃなくていいんだけど!?』
それは不吉な現象以外の何者でも無かったが、彼等にとっては吉兆に他ならない。何故ならばその現象を起こせる存在を、彼等は知っているのだから。
【ルゥ様、こちらになります。どうぞ迷わぬように引率を】
『解ってるー!ウラネキ、離さないでねー!』
そこから出でたのは、白き鎧と赤き外套を纏いし仮面ライダー、エボル。誘導棒に導かれ、ワームホールより現れしは純白の龍、ミラルーツ。
「腕いてぇが、まぁ任せとけ!グッと力と気合い入れりゃあなんとかなる!お前さんら!生きてるよなぁ!?」
ルゥの背中にて牽引し、綱を引くは鬼神温羅。身体中に焦げ跡が付いているものの、その威容や角に微塵も翳りも無い。その呼びかけには──
『ぐははははははぁ!!まさか生きているとはなァ!身を捨ててこそ浮かぶオレ様ありという事だなぁ!!』
『とりあえず黙れ…私達はお前程頑丈ではないのだ…』
『生き延びる事が出来るとは…ありがとう、盟友達よ。もう少し…生きてみようと思う』
『あー、皆はどこだ?死ぬかと思ってたら生きてたんだ。帰還報告をしないとな。おーい、みん、ぐぉあぁあ……!』
【無理をするでないわ。我等の応急処置にも限度がある。竜とて死ぬぞ?】
ボルシャック、ボルメテウス、バザガジール、ボルバルザーク。ルゥと従者達、温羅が引きずる様に連れてきたりしは、虹の文明が迎えし、ドラゴン達。瀕死なれど、確かに彼等は生きている。
『こうなることが解ってるから、私達が来ようって言ったんだよねぇ。あれくらいの炎で死にそうになるなんてまだまだだなぁ、皆ー』
【まぁそう仰らず。生命体としての格が違うのですから】
『祖なる龍かァ!!要するに汎人類史最強のドラゴンという事だな!よし、戦え!!』
『いやよ!私は今バカンス中なの!野蛮な戦いなんてやりたくないのー!』
『迷惑をかける、温羅殿。貴方の傷も決して浅くは無かろうに…』
「気にすんな。腕がもげてもくっつくんだアタシはな。あんたらが無事で良かった。来たかいがあったってもんよ」
『ボルシャック、これから貴殿はどうする?正真正銘、我等の行うべきは行ったわけだが』
『おう、そうだな…』
ボルシャックは見やる。遥か下、自分達に手を振る新たな世界の仲間たち。
『手を貸すよ。新しい仲間の為に戦う…それは、俺等が世界を救うために決めた誓いだ』
「なら、アタシらの戦いに付き合ってもらえるか?アタシらが本来やるべきだった、本当の戦いにさ」
『そいつぁ…』
「あぁ──『親孝行』ってやつだぜ」
そしてルゥ達は帰還する。カルデアの下へ。誰一人、欠ける事なく。理念のままに。
──楽園の理念に揺らぎなし。再びまた、欠けし者は在らず。
ベルゼブブ【ほっ…どうやら皆、無事なようですね。サタン様…サタン様?】
サタン【あ、あぁ、あぁ…!】
ベルゼブブ【どうなさいました?】
サタン【あぁあぁぁ…!!】
『楽園への招待状』
サタン【なんで!?なんで僕なんかに!?】
ベルゼブブ【………………………さぁ………】