人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ヴリトラ【ぬわぁ!】

ベルゼブブ【身柄を引き渡す。好きになさってほしい】

ヴリトラ【ぐぬぬ、わえにこのような辱めを…覚えておれよ〜!】

ベルゼブブ【楽園の皆と仲良くやれ。それでは】

──バアルさん!是非カルデアに、遊びに来てくださいね!

フォウ(まともな神様は大歓迎だぞぅ!)

ベルゼブブ【…必ずや。いつかそちらで弔わせてくれ。カナンの民を】

《部屋は設けておくぞ》

ベルゼブブ【感謝を。…それでは】



ベルゼブブ【誘われました】

サタン【良かったね!】

クリームヒルト【どうやらあちらはまだやることがあるみたい。なら少し待ってあげましょう】

サタン【優しいね!】

クリームヒルト【滅びる前に、心残りがあるのは無念でしょう?】

サタン【怖いね!】


謎の脚本家、モノクロクマ仮面登場!

「ウラネキ、ごめん!ホントにごめんね!」

 

戦いが終わり、本格的な温羅の目的である親孝行を協力せんとしていたカルデア一行。これからが本当の戦い…という頃合いにて、何故かリッカは温羅に平謝りしていた。それには勿論の事、理由が介在している。一緒にいた時間がズレてしまったが故の、致し方なくもある意味逃れ得る事の出来ないブッキングが。

 

「まぁまぁ、気にしないでくれよ。むしろそういう行動を取って結果が必ず付いてくるって考えなかったこっちの落ち度でもあるんだからさ、な?」

 

温羅が気前よく笑って許すそれは、ドラランドにおけるオニキュアショーの脚本問題である。本来なら、オニキュア5人のみで構成し、温羅が四人と熱いバトルを行い友情を深め、そして悪の黒幕を倒す…といった様相の展開を示した本が描かれていたのであったのだが。

 

「ボルシャック達も加えるとなると、流石にオニキュア無双ってわけにもいかないよなぁ。ドラランドって思いっきりドラゴンのホームグラウンドだもんなぁ」

 

想定外の自体、いや想定外の和解が起きたことにより、ボルシャックらドラゴン達も共にオニキュアショーに参加する運びとなった事に温羅は考えを巡らせる。つまるところ出演者が5人から十人、2倍に増えたのである。一人や二人も活かすのが大変な中、作劇キャスト2倍はとても難儀な事態である。丸々書き直しすらも必要になる程の修正が必要になるだろう。その負担を、リッカは詫ていたのである。

 

「まぁいっその事1から考え直すしかないわな。一応聞くけど、リッカは脚本の経験あるかい?」

 

「お恥ずかしながら、夏草ではもっぱらコネクションやコンサルタント部門でして創作は可もなく不可もなく…」

 

学べば誰よりもできるのだが、リッカは他人やもしもの人生を描ける余裕が無かったので経験値は圧倒的に不足しているのであった。頼れる人材に格安あるいは無料で頼めはしても、彼女自体の脚本の腕前は関連しない事は致し方ない事であろう。誰も完全ではないからこその人間社会だ。

 

「あー大丈夫大丈夫。ならほら、アンデルセンやシェイクスピアとか、作家組とかにさ?」

 

「任せて!……納期明日で受けてくれるかな…?」

 

「ふざけるなの三行半が解りきってるよなぁ…アタシも御免被りたい期日だぜ…」

 

おおよそ人間扱いしていない超ピッチの作業依頼に頼みすら憚られるのは解りきっていた。今日は日を改めるにしても、特異点がいつ是正されるかは読めない。割と一刻を争う中で改変、修正を成さねばならない。はてさてどうするかと頭を悩ませていた二人であったが、その時。

 

『ぜぇ、はぁ、お困りの、ようですね。はぁ、はぁ…』

 

慌てて走ってきたのか、非常に息を切らした様子で二人の前に現れる女性。片方ずつで表情が違う白と黒のクマの顔を模した仮面を付け、顔の上半分を隠したセーラー服の蒼髪ロングヘア―の女性が、ひゅーひゅーと肩で息をする中懸命に言葉を紡ぐ。

 

「アンタは!」

 

だがその奇怪かつ珍妙ないで立ちにに温羅は覚えがあるようで、見知ったようなリアクションを返す。リッカ的はまるで覚えがない彼女について、問い返す。

 

「し、知り合いなのウラネキ?とりあえずお水をどうぞ」

 

『ありがとう。優しいね…』

 

「閻魔亭で偶然出会ってな。今書いてある脚本を手掛けてくれた…まぁそれは後でだ。とりあえずベンチに座りな。落ち着いて話をしようじゃねぇか」

 

温羅の言葉に従い、二人はベンチへと向かう。その存在は初対面ではあったが…

 

(なんだろ、この感じ?)

 

リッカはその人物に、単なる初対面では懐きようのない感慨が胸に芽生えているのを感じているのであった。

 

 

『すみません、もう大丈夫。心配をおかけしました』

 

その仮面の女性は平静を取り戻し、落ち着いた様子を二人に見せる。どうやら本当に慌ててきていたらしく、拙速を尊びすぎたようだ。

 

「にしてもまさか、こんな場所で会うことになるなんてな。素性も謎なのは知ってたが、神出鬼没ってやつか?」

 

「確か、閻魔亭で会ったって言ってなかった?」

 

「あぁ。アタシも作劇や創作はからきしでな。どうしたもんかと悩んでたときに脚本を手掛けてくれたのが、このモノクロクマ仮面ってわけさ」

 

『こんにちは、モノクロクマ仮面です。謎の脚本家Tでもあります』

 

ぺこりと頭を下げるモノクロクマ仮面こと謎の脚本家T。ラマッス仮面とは知り合いかと訪ねたが違うらしい彼女は、脚本が心配だったので追ってきたという。

 

 

『活躍を草葉の陰から見ていたんだけど、リッカちゃんが当たり前のようにドラゴン達を物語に誘うから、初期脚本じゃ対応できないかなと思って。皆が参加したものを届けに来たんだ』

 

「なるほどぉ!ってもう書き上げたの!?」

 

なんと彼女が言うには、ドラゴン達を含めた皆が登場する脚本を既に書き上げていたという。筆が早いという次元ではないその仕事ぶりに、二人は同時に舌を巻く。

 

「いつ見ていつ書いたんだよ…?どうやっても書き上げられる時間なんて無いよな、時系列的に…」

 

 

『愛と勇気と気合と根性と添削が出来ればなんとかなる。いや、しました。せっかく大勝利で終わったんだから、こんなとこでケチを付けてほしくないので』

 

要するにめちゃくちゃ気合を入れて頑張ってくれたようだ。彼女の事は預かり知らないが、楽園の勝利を祈り、祝ってくれたという事実だけでリッカには十分だった。

 

「ありがとうございました、脚本家モノクロクマ仮面さん!」

 

『混ざってる混ざってる。…気にしないで。物語が愛…ううん。物語が好きな人は私の同志だから。それより、誤字脱字、落丁や場面の把握のために読み合わせのチェックをお願い。確認して貰わないと、最後にボツになるかどうかを決めるのは楽園の皆だから』

 

「う、うん!」

 

「何から何まですまねぇな。世話になる!」

 

 

そして三人は、出来上がった脚本に目を通し最終チェックを行う。それは確かに違和感なくドラゴン達とオニキュアが共存した、短期間で済ませたものとは思えないものだった。

 

「あぁ、これなら行けるな!本当にありがとよ、モノクロクマ仮面!」

 

『謎の脚本家T…まぁいいか、どっちでも。よかった、あっちから見てて…』

 

(あっちから…別の世界ってことかな?自分一人で特異点に来れたり、物語に愛やこだわりを持ってるこの人は一体…?)

 

思えば不可解な事ばかりである。モノクロクマ仮面が普通の人間であるとするならば、何故閻魔亭に顔を出しているのか?あっちとは別世界の事なのだとしたら、それを当然のように行き来出来るのは一体何故なのだろうか?

 

(ん〜…なんだろ。いつもみたいに頭が冴えないなぁ…?)

 

対話の龍たるアジーカやアンリマユを有するが故のコミュニケーションの絶対性、普段の澄み渡るようなクリアな思考が上手く働かない事にリッカは思い至る。それは普段ならば絶対に起こり得ないような事態である事を理解しつつも、すぐには晴れそうにない。

 

(まぁそれはとりあえず後回しでいいや。今は脚本や親孝行に集中しないと!)

 

そう、極論だが敵でなければそれでいい。自分たちの窮地を助けてくれた、その善意を信じる事が出来れば、リッカにとってはそれが全てなのだから、

 

『リッカちゃん。親孝行…上手くいくといいね』

 

「はい!私も、そう思います!本当にありがとうございました!」

 

少なくとも、邪悪な訳がないよね。人として当然のよ善意を信じながら、リッカはモノクロクマ仮面、温羅と最終脚本を詰めていくのであった…──。




ドラランド・展望台

ギル《ほう。よもや我が龍の探知すら潜り抜けるとは。サタンめの介入は、敵側の階梯を更に一際上げたと見える》

──リッカちゃんは対話にて全てを理解する女の子。そんな彼女が実態すら掴めないなんて…

《同じ視点では掴めぬであろうが、我の目は誤魔化せぬ。物語への愛、単独の時空移動。空間の干渉。答えなど一つしかあるまい》

フォウ(まさか…ビーストだって言うのか!?)

《IF、がつこうがな。いずれ楽園に立ちはだかろうが…此度は楽園に利する行いを見せ、また敵意もない。故に存在は不問と処してやろう。焦る必要はあるまい。獣である以上、どのみち相対は運命であるが自明の理ゆえな》

──はい。それにイフであるなら、和解の可能性も!

《そういう事だ。獣の調教はカルデアの仕事よ。我等はその成果を楽しめばよい。退屈せぬ幕間よな!ふははははは!》

まだ見ぬ強敵、獣の胎動にも動じず。王は姫と獣と共に観光に戻るのでしたとさ。


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