人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
紅白髪の少女「え…」
【君の歌は輝いている!君はきっとなれる…!神を超えて、世界中を幸せにできる歌姫に!】
「世界中を、幸せに…」
【僕はダンテ!名前を教えておくれ、未来の歌姫!いつか君の歌を、僕の愛する人達に届けるために!】
これは脳を焼き尽くされた作者が描く、『エレジア』の物語──
【『魔王の楽譜』って、知ってる?】
始まりは、楽園と契約を結んだサタンが、エアやギルガメッシュに届けるお土産…或いは、とびきりのプレゼントを考えていた時の地獄の一幕。サタンは音楽や芸能の勉強として、翅の力で各世界を自由に行き来する、平行世界への転移。魔法を駆使していた。
そんな中バアルに告げたのは、【大海賊時代】の音楽の都に伝わる【魔王】を封印した楽譜の在り処。そして最大の『音楽の都』エレジアという所在。彼は魔王、【トットムジカ】の楽譜に目を付けたのだ。
【楽園の皆に演奏するのにピッタリだと思うんだ。ほら、僕も魔王だからさ。凄くいいと思わない?】
【なるほど…確かに良きお考えかと。音楽の都であるならば、サタン様の本懐であらせられる芸能の探究も可能でしょう】
【ハイ決まり!じゃあ軍勢監視よろしくね!行ってきまーす!】
そうして即断即決にて【大海賊時代】における音楽の都、エレジアに辿り着いたサタンが見たものは…
【何これ…何にも無くなってる…】
一夜にして国民が消え失せ、物寂しい廃墟と化した音楽の都の変わり果てた姿。滅び去った音楽の都を見て愕然とするも、サタンはせめて【『魔王の楽譜』】を求めて廃墟を彷徨う。
【立派な国だってバアルは言ってたのに…なんでこんな事になっちゃったんだろう?】
歩けど歩けど音楽どころか波の音しか帰ってこない閑散の極みに、サタンは打ちひしがれ浜辺にて項垂れる。
【やっぱり、神に与えられただけの僕じゃぁ芸能は駄目なのかなぁ…】
そんな中、彼の耳に届く──絶世の歌声。心を突き動かす、至高の歌声に彼は自らを越える『美しさ』を見いだす。
【──凄い…!き、君!】
「えっ…人…?」
歌声の持ち主、それは9歳程の年頃の少女。目に全く光のない、紅白の髪を持つ女の子だった。サタンは彼女の歌声を、『自身を超える美しいもの』と確信する。
【君の名前を教えておくれ!】
「あ、あたし…ウタ」
【ウタちゃん!君の歌声は本当に素晴らしいよ!もっと聞かせて、幸せを運ぶその歌を!】
ウタ。そう名乗る少女を見出し、朝から晩まで彼女の歌を聞き続けたサタン。ウタもまた、サタンは閉じた世界の外からやってきた『最初のファン』でもあり、歌を通じて二人は会話を弾ませる。
「ここには、二人だけ。ゴードンさんと、あたし。…本当はシャンクスの娘で…赤髪海賊団の、音楽家だったのに」
【音楽家だったんだ!じゃぁお父さんはどこに?】
「いない…いない!!シャンクスはあたしを裏切った!あたしを置いて!家族だと思ってたのに!!仲間だって、お父さんだと思ってたのに!!あたしはずっとずっと、シャンクスと赤髪海賊団の皆の傍で歌いたかったのに!!」
【…!】
「なんで…なんで置いていったの…あたしは、あたしはずっとシャンクスと、皆と一緒に…一緒にいたかったのに…!シャンクス…ルフィ…会いたい…会いたいよ…!」
サタンは自らより美しきものには敬意を払う。ウタの慟哭を、彼は静かに聞き入れた。
【…泣かないで、歌姫さん】
「え…」
【皆を幸せにする歌姫が泣いていたら、皆の心も曇っちゃうよ。──大丈夫。君の願いは僕が…僕達が叶えてあげる!】
サタンは約束する。ウタの涙を、心を晴らし、世界を幸せにする歌を歌わせてみせると。サタンはカルデアに、助けを求める。
「なるほど。世界を幸福にする絶世の歌姫を一から育て上げる、か。親代わりの海賊めがそれ程の宝をみすみす手放すはずもあるまい。──何かがあったな」
【ウタちゃんが成人するまでの12年間、僕とその軍勢ががゴードンさんといっしょに彼女を歌姫にする為にやれることを全部やります。だからギルガメッシュ、あなたにはどうかやってほしい事があるのです】
──やってほしい事…?
【音楽都市『エレジア』の復興!そして魔王【トットムジカ】の攻略を!】
サタンが垣間見た未来。ウタの目指す【皆が幸せな世界】が結実する12年後までに、彼女の目指す世界に必要な全てを取り揃える事を誓う大魔王。
「サタンお兄さん!なんで、歌を歌うのに、砂浜を走ったりしなきゃ、いけないの!?」
【歌手は平気で何十曲も歌うんだよ!数曲で眠る体力なんて話にならない、君には基礎体力が足りないんだ!さぁもうワンセットダッシュ!】
「鬼!悪魔ぁ〜!」
〜
【ネズキノコ…十年かけて、ウタウタの実にのみの品種改良が出来れば…】
【出来る?バアル…】
【元は豊穣神、やってみせましょう。サタン様の見出した歌姫のために】
〜
「なんで歌うために勉強しなくちゃいけないの…………」
【世界情勢や流行、どういった形で世界を動かすかを知らなくちゃ君の夢は叶わない。君の歌をテロにしないために、正しい手段と方法を身につけるんだ】
「うぅ…ゴードンさんと違って鬼だ。鬼コーチだぁ…」
【頑張って!パンケーキ食べるんだろ!】
「う〜〜〜!やる〜〜!」
魔界の軍勢総出で、ウタの人生に空白が起きぬよう奮闘する一方、ギルガメッシュは単独エレジアの復興を進めていく。時間軸が異なるとはいえ、それは長丁場となった。
「赤髪海賊団がこの国を滅ぼした…そう世間は騒いでいるようだが、この破壊の跡はたかが海賊が出せる規模では無かろう。対人の略奪の領分を越えすぎている」
「そ、それは……」
「【トットムジカ】。…あの娘が関与しているな」
「…!ギルガメッシュ王よ、どうか彼女には、彼女に真実を伝えることだけは…!」
「せぬわ。我はただ音楽の都の最盛を目の当たりにし、我が財達を労う享楽の地を興すのみ。貴様らの問題は、貴様ら当人で解決するが良い。…だがな、国王よ」
「……」
「真実を伏せたまま、あの娘を祭り上げたとして…起きるはエレジアの二の舞いだぞ」
「!…………」
サタンとギルガメッシュの奮闘により、ウタの空白の12年は歌姫たる彼女の血肉と代わり、新生エレジアは完成目前となった。奪われた全ては蘇る。ただ一つを除いて。
「ありがとう、ゴードンさん。サタンお兄さん。ギルガメッシュおじさん。私…この12年、とっても楽しかった」
「おじさんは止めよ」
「あぁ、ウタ。よく似合っている。君は新生エレジアの歌姫。争いも哀しみもない、音楽を愛し平和を掲げる真なる『中立国家』エレジアの歌姫なのだ!」
「うん、でも…私には知らなくちゃならない事が残ってるよ、ゴードンさん」
「え…」
「なんで、エレジアが滅んだのか。なんでシャンクスが私を置いていったのか。私は、皆にとても強くしてもらった。だから、今の私なら受け入れられる。私の過去を」
「ウ、ウタ…」
「教えて、ゴードンさん。私は私の歌で皆を幸せにする新時代を作る。その為には、自分の全部を受け入れなくちゃいけないの!」
そしてウタは知る。滅亡の夜、起きた真実を。
「私が、エレジアを滅ぼした…トットムジカを使って…」
【でも、シャンクスは君を裏切っていなかった。ゴードンさんはそれでも、君を愛していたよ】
「うん…うん…悪いのは私だ。シャンクス達を信じきれなかった、私の弱さが…」
「ウタ…君は悪くない。悪いのは私だ。私なんだ…」
「…ううん。ゴードンさん。私は大丈夫。もう、泣いたり夢の世界に逃げたりしない。受け入れなくちゃ。受け止めなくちゃ…!」
そしてウタは、カルデアとサタンに【願い】を託す。
「お願い!皆で【トットムジカ】をなんとかしよう!ゴードンさんのエレジアを、もう二度と傷つけたりしないために!私が、世界を歌で幸せに出来るように!力を貸して、皆!」
それは、最悪の魔王【トットムジカ】の討伐。エレジアの歴史の第一歩の創造。
「皆で迎える新時代の為に…!魔王と私を、皆でやっつけて!」
──それは違います。生きてください、ウタさん!
【新時代を作るんだろう!?なら、生きて歌い続けるんだから死んじゃダメだ!絶対に!】
「親の代わりに、後始末を受け持とう。忌まわしき過去を越え、真なる歌姫と成るがいい!小娘!」
「…ありがとう。必ず迎えようね!──新時代を!」
顕現する魔王、発進する英雄神。ウタワールドと地獄にて繰り広げられる、エレジアの行方を懸けた最後の戦い。
【ギルガメッシュ。ウタは会いたがっていたんだ。自分の父親に、幼馴染に!】
「────」
【僕は…完全無欠のハッピーエンドをウタにあげたい!道のりが険しくても、遠くても。そこに向かう資格だけは奪わせたくないんだ!】
「フ──随分と熱を上げたものよな、大魔王。案ずるな、二度も三度も国を滅ぼさせては王の名折れ!」
【■■■■■■■■■────!!】
「今の貴様では、誰も耳を傾けぬと知るがいい!新生エレジアの礎となれ、トットムジカよ────!!!」
2000話記念コラボ特異点『ONE PIECEコラボ特異点 復興天空音楽都市エレジア』
〜
【準備はできてるよ、ウタ!】
「うん。…サタンお兄さん」
【?】
「あの時、あなたに会えてホントに良かった。見ててね、アタシの…ううん。エレジアが作る『新時代』!」
【──うん!楽しみにしてるからね!】
近日、執筆予定。
ウタ『電伝虫の放送を見ている皆、はじめまして。私はウタ。ウタと言います。この場を借りて、世界中に宣言します!』
ゴードン「ウタ……」
『12年前に滅びたエレジアは、今ここに復活します!ここは海賊に奪われた人達、海軍に護って貰えなかった人達を受け入れ、そして音楽を愛するすべての人達の為の国に生まれ変わる!誰も傷付けない、傷付けさせない中立国家!誰もが平和で幸せになれる『新時代の音楽都市』の発足を宣言します!海賊も、海軍も、誰にもこの国を侵害させはしない!』
〜
シャンクス「…ウタか。あいつ…」
ウタ『私はこのエレジアで、歌で世界中の人々を幸せにする為に歌い続ける!もう大丈夫!エレジアの復活が、明るく素敵な『新時代』の始まりなんだよ、皆──!』
〜
ルフィ「ウタ…!あいつすげェことやってんなァ!」
ギルガメッシュ「フッ、天竜人に世界政府。敵は山といるであろうに」
サタン【心配ないよ。彼女の歌はきっと響き渡る。世界中の全部にね!】
ギルガメッシュ「ふはは。その理想、いつまで貫くことが出来るか見せてもらおうではないか──!」
──その日。天空に音楽の都が再誕する。