呪われてあれ。
〜
【自信なんて、後からついてくるものよ。あなたはあなたを信じてあげなさい】
きっとあなたは受け入れられる。愛される資格は、皆に平等にあるべきなのだから…──。
【本当は…本当はここで会うべきじゃない。私達の出会いは、もっともっと別の形があることはよく分かってる。】
モノクロクマ仮面…つむぎと名乗った女性は目の前にいる少年に痛烈な敵意を向けている。静まり返ったテーマパークの中で、サタンは静かにその存在を見つめていた。
【……………】
誰?そう言外に首を傾げるサタンに構わず、つむぎは大魔王に言葉を投げかける。それは、彼女にとって譲れない矜持やこだわりに基づくものでもあった。
【サタン、傲慢の化身。自身を一番として他の全てを踏み躙る大魔王。今まで人を誑かし、弄んできた悪魔達の総帥…間違いないよね】
【何をそんな、分かりきった事を僕に?】
【そして次は、カルデアに目をつけた…!カルデアを自分を楽しませてくれるものとして、介入を繰り返している…そうだよね、大魔王…!】
それは間違いなくそうだと言わざるを得ない事実だ。サタンはカルデアの、正確には『至尊』に惹かれやってきた。既にあれこれと彼女らに接触している。それは間違いなく、問われるまでもなき事。
【お前はこれまでたくさんのものを踏み躙ってきた。その中にはゲームのキャラクターや、カルデアが挑む筈だったありのままの物語もあった!そして何より、私の先生リリスの何もかもが!】
【リリス先生…?】
その単語に、サタンは興味を示す。リリスと言えば、最初に楽園を追放された女であり、人類に原罪を唆した縁からの顔見知りだからだ。
【お前のせいで、お前のせいでリリス先生は今も永遠に彷徨い続けているんだ!人類を原罪から解放すると、お前がもたらした人類への原罪を取り除くために…!】
【慈悲深いからね、彼女。人間を愛し、神からの不平等を憎んでいる。そうか、今も彼女は変わらないんだ。いつまでも真面目に罪からの脱却を望んでいるんだね】
まるで他人事のように懐かしむサタンの態度に、つむぎの敵意は一層膨れ上がる。そしてサタンはその因果関係に興味を示す。
【となると、君もそうなのかな?リリスは人類を滅ぼせるくらいに愛しているけど、ひょっとしたら君もそうなの?】
【…何を言っているの】
【ほら、言うじゃない。愛故に人類を滅ぼす獣、人類悪。リリスの弟子か何かならきみだってそうな筈だよ。だから僕に会いにきたんじゃないのかな?】
サタンの言葉には、つむぎと言う存在を揺さぶる魔力があった。つむぎの根幹に、彼は囁く。
【教えてよ、リリスのお弟子さん。リリスのように、君はどんな理があって人類を滅ぼすのかな?君はどういう獣なんだい?】
未だ誰も知り得ぬリリスの本懐にして辿る未来。それを口にしたサタンに対し、つむぎの敵意と怒りが爆発する。
【リリス先生は人類を、人を愛している素晴らしい方…それをお前が…】
【〜?】
【お前みたいな奴が語るな───!!】
煮え滾るような怒りと共に、サタンの周囲にはモザイクがかかり荒れたテクスチャで展開された剣、ハンマー、槍などが生成される。サタンからしてみれば、それはフェイクやモザイクの類。
【これは…】
【楽園の…カルデアの物語にお前なんかいらない、必要ない…!これ以上、お前なんかの為に物語を消費させはしない…!】
自覚はしていないのか、つむぎはそれを半暴走の様な状態でサタンに差し向ける。そこにあるのは、物語を使い潰す最悪の読者と認識した相手に向けられる敵意と殺意。
【この物語から、出ていけ──!!】
絶叫と共に向けられる数多無数の攻撃手段。サタンに降り注ぐ拒絶の虚構。それが、つむぎの抱く力の一端。
【へぇ~…】
サタンはそれらを、なすがままに直撃する。逃げられなかったわけではない。ただ、サタンに対する何かが作用し、逃げても避けても無駄だという事実を理解したのだ。
【お前なんか、お前なんか、お前なんか…!!】
先生を狂わせた元凶、楽園の紡ぐ物語を狂わせる癌。物語そのものを染めあげる邪悪。敵意が転化したその殺意は常軌を逸していた。大魔王が、一方的に貫かれる程に。
【お前なんか、誰も望んでいないんだ──!!】
【!】
自身に攻撃を振るうビジョン。サタンはそれに見覚えがあった。それはかつて聖杯を渡した別の世界の住人。名前は…マルク、マホロア。
【なるほどね…そう言う事かぁ】
サタンは徹底的に叩き潰され、叩き斬られ、攻撃をもって害される。それは一方的な、サタンに対する全存在の否定。
【はあっ、はぁっ、はぁっ…はぁっ…】
精根尽き果てるまでサタンを蹂躙し、その場に崩れ落ちるつむぎ。そこにはまるで剣山のような、凄惨な現場が出来上がっていた。
【やっ、たの…?】
身体中を余さず串刺しにされ、動きを見せないサタン。果してそれは、届いたのだろうか。
【──そう言えば君、あれだね。脚本家で、オニキュアの脚本を書いてた娘だったね】
【!】
だが、大魔王にして地獄の総帥たる彼の不条理さを彼女は失念していた。彼女の展開していた攻撃は、腐り落ちるように闇に崩れていく。
【脚本家かぁ。作家にしては凄い戦闘力だね。もう少しで死ぬかもしれなかったよ】
心臓を、霊核を貫き、頭を破壊した。なのにそれを意に介さず動いている。眼の前の存在は動いている。殺したはずなのに、一向に死ぬ気配がない。
【…化け物…!】
こんな不条理があること事態が間違っている。人でも、サーヴァントでも不可能だ。つむぎの理解の外にいる、この怪物は一体何なのかと。
【でも、残念。力はあるし愛もある。ただ──】
【!!】
【君は僕より醜いんだ】
瞬間、翼を広げ放たれた波動の奔流に攫われ、つむぎは大いに吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。先の攻撃とは純度も何もかもが違う絶対的な力の具現。それはつむぎが受けるにはあまりにも酷だった。
【ぐうっ!…あ……】
【善悪、愛、希望、夢。汚濁、悲嘆…どれらも僕にとっては等しいものだ】
ちぎれている腕が独りでに戻り、穿たれた穴が塞がっていく。ちぎれかけた首をぎしりとはめなおし、倒れ伏すつむぎに歩み寄る。
【それは、僕より美しいかどうか。崇高であろうと僕より美しくなければゴミみたいなものだし、醜悪であろうと僕より美しいならそれは至高だ】
【っ…】
【全ては僕より上か下か。世界はそういう風に出来ているんだよ脚本家さん。君はリリスの為、カルデアの為に僕を排除しようとしたんだろうけど…】
髪を掴み、引き上げる。そこには、楽園に目を輝かせている少年のような美貌ではなく、冷淡にして冷酷。大魔王たる覇者の表情があった。
【残念。愛を知らない薄汚い獣じゃぁ僕には勝てないよ】
【私が…獣…?】
【知らなかったんだね、やっぱり。…………この物語にいらない存在、か】
サタンはつむぎに叩きつけるエネルギーを展開する。つむぎの言葉は、皮肉にもサタンに届いていた。
【そうだとも。だから僕は敵対者なのさ。この物語で僕は、この上なく鮮やかに殺される事を望んでいる】
【…!】
【だから邪魔は許さない。僕の最期は今年の末だ。その無二の終わりまで、僕は誰にも害されない】
故に、自らを敵対する輩には報いを。至純の終わりまで、自身を殺す者などありはしない。
【君が僕を邪魔した報いは重い。だからここで、僕は君を殺すよ】
【…大魔王…サタン…!】
つむぎは右腕で、力の限りにサタンを殴りつける。それは、最後の抵抗。
【地獄に還れ…独り善がりの破綻者…!】
【──さようなら。楽園に行くはずだった未知の獣…】
口から血を流しながらも、サタンは無感情につむぎに最後の一撃を放つ。つむぎの意識は光に呑まれ手放され──。
サタン【………!】
だが、その一撃は通ることなく阻まれる
?【…人の教え子に、あなたは一体何をしているの】
サタンの腕を制する、拘束されし女性。それに、サタンは見覚えがあった。
【…久し振りだね、元気してた?【リリス】】
【あなたに会うまではね】
それはあらゆる意味での因縁の相手。時空を彷徨う追放者、リリスだったのだから──
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