人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1980 / 2537
メリーゴーランド

ルイノス「妖精たちが、どんな方だったか…ですか?」

ウーサー「あぁ。俺は託されたのみで、まともな話しすら出来なかった。今一度、この聖剣の重さを確かめたい」

ルイノス「…分かりました。ケルヌンノス様からは『毎日話してもいいよ』と言われています。お伝えしましょう」

ウーサー(フリーだった)

「では、一人ひとりの人柄と性格、伝聞された外見…そして最期のお言葉をお伝えします──」


キャラクターエピソード〜虹の誓い〜

6人の妖精たち…かつての楽園にて聖剣となった、ケルヌンノス様のかけがえのない親友たる6人たち。彼等、彼女達の事を忘れることなど出来るはずがありません。私はケルヌンノス様に拾われ、かつてのアヴァロンにやってきたので実際に会話などはできませんでしたが、毎日ケルヌンノス様が語ってくださったのです。決して忘れぬように。決して思い出が色褪せぬように。ですからこれは巫女として、ケルヌンノス様の言葉を伝える事になりますね。それを、ご了承くださいませ。

 

 

『皆、仲良くしましょうね。私達は妖精、楽しいことは皆で一緒、哀しい事も皆で一緒よ』

 

 

ではまず、風の妖精ウィンダ。漆黒の艷やかな髪を持ち、背も高くとても美しい美貌を兼ね備えていたとケルヌンノス様が仰る程の御方。修め、司りしは風の魔術。言葉を風に乗せ皆に伝えたり、秘中の言葉をこっそり伝えることを可能としていた御方だと聞き及んでおります。

 

特に目を見引いたのが、背中の大きな羽根。現代で言うモルフォチョウのように雄大で優雅なそれを彼女はとても大事にしていて、仲良しの誓いとして皆に手入れをお願いしていたようです。皆の纏め役の、リーダーの様な方だったと仰っていました。

 

 

『小さくとも、私は皆と一緒の楽園の妖精。見くびったり、侮ったりはだめですからね!私達は6人で一人なんですから!』

 

 

二人目は、皆の中で一番小さかった妖精プルム。誰よりもイタズラ好きであり、ケルヌンノス様をよくからかって遊んでいたとされる掴みどころのない妖精だったそうです。今でいう、トリバネアゲハのような緑色の美しい羽根を持っていたこれまた美しい方であると聞き及んでいました。

 

非力ではありましたが、自らの陣地を作成し自分の有利な環境を作ることに関してはまさに最強。彼女の陣地では、誰も彼女に勝つことは出来なかったとか。小さくとも彼女は、皆と対等に振る舞う事を望み周りをそれを受け入れておりました。

 

ただ、ケルヌンノス様だけが知る彼女はとても寂しがり屋で、ケルヌンノス様のモフモフに毎日包まれ眠っておりました。彼女を通じて、ケルヌンノス様は慈悲と慈愛を学んだと深く感謝しています。

 

 

『出来ないことは誰かに頼れ。お前たちが辛い、苦しい事を、オレは助ける事が出来るかもしれないのだから』

 

三人目は、強く大きく優しい妖精ファング。その身体と力強さはケルヌンノス様を軽々持ち上げる程で、力仕事を皆の分までやれてしまう程の逞しい方であるとケルヌンノス様は伝えられました。

 

戦う、運動が好きではありましたが乱暴ではなく、その力を誰かの助けとする事を望んでいた優しい力持ち。そしてウィンダと共にとても綺麗好きで、毛並みを皆でブラッシングしてあげる時間が、一日の終わりを告げる習慣であったそうです。ケルヌンノス様や皆を担げるくらい、彼はとても強かったのです。

 

 

『地味な事、面倒な事こそ真面目にやらなければならん。素敵なものを作るのには、そういう心が一番大切なんだ。…仕事は嫌だがな』

 

四人目は、太くどっしりとした妖精ソイル。みんなの服や、コップや杖や道具を作ることの出来たとても手先の器用な御方。ケルヌンノス様にぴったりな椅子や机をよく作ってくれていました。

 

仕事は嫌いと公言してはいましたが、ひとたび受ければ決して投げ出さず、手を抜かず、最高のものを手掛けることを誇りとした職人気質の御方で、ついついサボりがち、手を抜きがちな妖精達は彼をよく見習い、参考にし、サボりの回数を減らしていったそうなのです。彼の作る様々なものは、今でもアヴァロンに思い出として保管されているようです。

 

…ケルヌンノス様にだけ伝えられた秘密ですが、人形づくりがご趣味だったようで。いつも5人とケルヌンノス様の人形を作り、保管していたのだとか。いつまでも、共にいられるようにと。

 

 

『楽しいこと、嬉しいことは空から降りてくる!さぁ、予言に耳を傾けて!』

 

5人目の妖精はミラ。最も賢く、そして多才なる妖精であり、最も多くの魔術を振るい、未来すらも見抜いていたとされる妖精とケルヌンノス様は驚きと共に語っておりました。

 

彼女は誰も知らない未来を唯一予言という形で知ることの出来た妖精であり、その力を何よりも他人…皆のために活かす事を喜びとしていたとされる方だったとケルヌンノス様は仰っていました。まるで、巫女のようであったと。

 

しかし彼女は、自らや皆の運命だけは見ようとしませんでした。それは何より、自分だけがズルをしてしまうというこだわりの上の行動だったとされています。

 

…その最期の使命を知りながらも、彼女は皆と笑い、変わらず過ごしていたといいます。それは逃れ得ぬ死よりも、仲間たちが大切だったのだと…ケルヌンノス様は想いを馳せておりました。

 

 

『喧嘩は良くないし、嬉しいことは分かち合う。哀しい事もついでに分かち合って小さくしよう。雨が降れば、地面は堅くなるからさ』

 

最後の妖精は、とても穏やかで気配りに満ちた妖精レイン。最も人間に近い見た目で、皆の事をよく見てくれていた仲裁役や補佐役、といったポジションの御方です。

 

言葉と会話を好み、喧嘩してしまった二人の意見や言いたい事をよく吟味し、誤解なく仲直りできるように間に立つ。そんな、恵みの雨のような妖精でありました。

 

…最期の時、彼の言葉が最後のひと押しだったとケルヌンノス様は仰っています。彼が一言、決心を告げたその瞬間に彼等妖精は聖剣を造る覚悟を決めたのだと。

 

──僕らがやろう。僕らが消えてしまっても、僕らが愛した友達はきっと僕らの事をずっと覚えてくれている。

 

ケルヌンノス。その子を護ってあげるんだよ。大丈夫、僕らは晴らしにいくだけさ。悲しく辛いだけの雨を。心の虹を取り返しにいくだけさ。

 

だから、ほんのちょっとのさよならさ。今までとても楽しかった。ありがとう、ケルヌンノス。

 

ありがとう、ケルヌンノス。僕らの、永遠のともだち。

 

…彼等は最期まで共にありました。誰もが欠けることなく、世界を救う願いとと共にその身を聖剣に変えて、世界を救った。

 

それは誰にも語られぬお話で、本当の事を知る人は、ほとんどいません。ですが彼等はそれでいいと言いました。

 

自分達の使命であり、仕事であり、当たり前にやるべきこと。ただそれがどうしても、好きになれなかった。仕事は辛くて面倒なものだったから。

 

でも今、やりたいと思えるようになったんだ。だって君が泣いているから。その小さな命がとても可哀想だから。

 

だからこれは、僕達にしか出来ないことで、私達がやりたい事だから。

 

だから一つ、お願いするよケルヌンノス。今は大変だと思うけれど、今はとても辛いと解るけれど。

 

でもいつか、顔を上げてほしいんだ。涙の溜まった目で、見てほしいんだ。

 

そこにはきっと、とても綺麗なものがある。とても素晴らしいものがきっとある。僕達が大好きだったものがある。

 

僕達と、君を入れて一緒の数のもの。必ず見つかる筈だから。変わらず美しい筈だから。

 

だから───君がそれを見つけられるように、僕達はこれから向かうんだ。

 

僕達の、大好きなもの。とても綺麗な空の帯を、君に見ていてほしいから──

 

…そうして6人の妖精の願いは聖剣となり、あなたの手によりセファールは討ち果たされました。

 

その大偉業をケルヌンノス様は知り、誰よりも喜び、誰よりも涙したのです。地上に降りた時、静けさと大地は確かに護られており。

 

まるで…『どんなもんだ!』と伝えるように。地上には美しい虹がかかっていたのですから──。




ウーサー「…敬服しかない。オレは、それほど素晴らしき6人の写し身を背負っているのだな」

ルイノス「ふふ、6人もきっと喜ばれます。…ですからどうか、忘れないでいたいと思うのです」

ウーサー「あぁ。忘れられるものか。虹を見るたび、胸に懐こう。彼等への敬意を」

──彼等が護った、虹に誓って。

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