人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1983 / 2536
リッカ「……………」


エア(体育座り)──リッカちゃん、丸腰でマシュちゃんの隣に!?

フォウ(信じているんだ、マシュの守りを。揺らがない信頼の証として…彼女は防御しないつもりだ、マシュを信じて…!)

──王に待機を命じられた今、できることは見守るのみ…!

フォウ(さぁ見せてくれ、楽園のグランドマスターとそのサーヴァントの力を!)



人理の礎

「はぁあぁあぁあっ!!」

 

(ほう────)

 

誰も見ることのない決戦。人知れず行われる裁定。王に挑む楽園の雪華の盾。腕を組み泰然と構えるギルガメッシュに、マシュの取った最初の行動は先手必勝。雄々しい盾の乱打であった。

 

(攻撃は最大の防御と言うが、フッ…一丁前に雄々しくなったものよ。つい最近ほどまで飼われ、死にゆくのみであった実験体であった小娘めが)

 

エアの選定をひとまず止めている中、クリーンヒットを財の寸出しで捌きながら、王は勇猛を極めしマシュを武器越しに見やる。どれほど阻まれようと、その勢いは微塵も翳らぬ苛烈さと、恐れを呑み込む勇気に満ちていた。

 

(その身に充溢した魔力。そしてこの体運びのキレ…サーヴァントとしては申し分無き出来栄えよ)

 

それは世辞でも、麗句でもない。サーヴァントの強さとは結局のところ、マスターとのパスから流れ込む魔力がどれほど満ちるかに起因する。ヘラクレスを呼び出したとして、特注のホムンクルスをあてがわねば木偶の坊に成り果てるのもまた然り。マスターという要石の質がそのままパフォーマンスに起因するものだ。

 

その点で言えば、マシュとそのマスター、リッカの出来栄えは一流そのものである。神代の肉体への調整、完全に適合したギャラハッドの霊基、魔神王が手ずから編み込んだ最悪の傑作であるマスターの膨大極まる魔力総量、そしてそれを過不足なく伝える、オルガマリーから移植された質量共に超一流の魔術回路。それら全てが、リッカとマシュの評価を最高級のマスターとトップサーヴァントのカテゴリに押し上げていた。

 

(間接的ではあるが、魔術師としてオルガマリーめはこやつらを支え続けていた、か。雑種ではなき貴種の習合とは豪気なものよ)

 

その質、その在り方、その出来栄え。及第点を遥かに越えた逸品たる有り様に浮かべるギルの笑みは愉快さと、満足げな獰猛さを孕んでいた。手塩にかけた逸材が大輪の花を咲かせている。こうして、頂点に武を示す程に。

 

「───」

「ッ!?」

 

ならばと宝物庫を開放し、マシュに財を擲つ。エアに選定を任せぬ児戯のような財の放りぶりだが、この程度を捌けぬなど話にならない。ギルにとっては稚拙極まるそれへの対処も、マシュは満足な対応を見せる。

 

「はっ、せっ!はぁっ!」

 

馬鹿正直に受け止めるのではなく、受け流し押し返し、またはかわすことも織り交ぜた素晴らしき防御術。それもまた、戦いの中で磨き上げた直感と比類なき研鑽に裏打ちされたものであることを王に示す。その手解きが何者かを、王は一目で看破する。

 

(この動き、我の射出を心得ている。そうか、エルキドゥ…やつに師事し磨き上げたのだな)

 

身体のキレ、動かし方、見ればなるほど友たる天の鎖の動きを汲んでいるではないか。はじめからマシュの目標、目的は定まっていた。成る程、ヤツ以上に我を知る輩はおらぬとマシュの先見の明に言葉なき喝采を贈る。そう──日頃よりエルキドゥの武力や速さを知ればこそ、マシュの研鑽に果はなかった。紛れもなく、王に並ぶ最強のサーヴァントであるのだから。

 

「………………」

 

見ればリッカも、硬く口を結びその場から一歩も動こうとしない。マシュの後ろ姿をただ見つめ、悠然と立ち尽くしている。鎧も纏わぬその姿は慢心の表れか?否、それは違う。

 

(豪気な女よ。己の護りはマシュ一人、丸腰で立っていようが傷一つ付きはせぬ。魅せつけおって、あざといわ!)

 

それは何より強きマシュへの信頼。サーヴァントとマスターとの鉄則である信頼を、この上なく示している。パフォーマンスとしては最上だ。マシュの決意を尊重すればこそであろう。考えたな、とギルは高揚と愉快さに口許を緩める。

 

(絆、というヤツか。数多の戦いを乗り越え、数多のサーヴァントと契約を結べど色褪せぬ繋がり。──益々もって痛快よ。変わらぬ在り方、というのはこうも見応えに満ちるか)

 

一つ一つの流れ、所作。そこに退屈の挟まる余地は微塵もない。見事なる守備、見事なる研鑽。見事なる歩みの結晶。試練の場でなくば大笑していたところだ。あの小粒の種が、汚濁の龍がよくぞここまで練り上げた。天晴という他無いと。

 

「ならば──これはどうだ、盾の乙女よ」

 

「!!」

 

意気軒昂大いに結構、されど敵は我ほど悠然と構えはせぬとばかりに手を振り下ろす。するとリッカを、マシュを覆う竜巻のように砲門が展開される。その数、驚異の150門。

 

「どう凌ぐ?さぁ、見せてみよ」

 

別次元にて堕しきった犬畜生に放った驚天動地の一斉掃射。一つでも当たれば肉片になる一撃を、マシュは静かに、悠然たる決意を以て見上げる。それは──確かなる希望を目に宿した眼差しだ。

 

「オルテナウス部分展開…!飛来ユニット・スパルタ、宝具並列接続!モードⅠ、アクティブ!」

 

マシュの掛け声に合わせ、彼女の決戦用礼装たるオルテナウス付属ユニット、ビット式小型防御兵装スパルタがリッカとマシュを隙間なく覆うように展開される。それは、彼女の得た宝具の一端を完全にサポートする為の布石。

 

「宝具発動!コード…ロード・カルデアス!!」

 

「ほう…!」

 

かつて未熟であった、宝具の疑似展開。稚拙なるその護りはなんと彼女の中で昇華されていたのだ。前面に円卓を叩きつけ、宝具を展開した瞬間にそれは起こる。

 

一つ一つのビットシステムが、マシュの宝具に応えるように共振し、なんと一つ一つが鉄壁の盾となり多重に折り重なり、的確に全方位を護る忠実な子機となる。前方のみを護るしか無かった稚拙な盾を、数多のユニットを並列宝具にすることで何重にも束ねる妙手。それは彼女が編み出した、自らの未熟さすら奥義となした研鑽の成果!

 

「はぁあぁあぁあぁあぁあぁあッ!!」

 

無数の宝具の嵐にすら、マシュは揺らがず挫けない。静かに佇むリッカを、その無数の盾で守り抜く。その気迫、その気概、そして彼女の心は慢心に満ちた自身の放つようなお粗末な射撃を万重ねても貫けぬ重厚に満ち溢れていた。

 

「──────」

 

王の射撃は無数でありながら、それらは貫くに至らない。数を重ねようが所詮それは至宝の選別なき頭の悪い癖。

 

 

目の前の──盾の英霊を貫くようなものでは断じてなかった。手を降ろし、砲門を下げる。

 

「すぅぅ…っ」

 

リッカの下に戻り、呼吸を整える。万全な結果に気を緩める事もなく次に備える。それは、王の力がこの程度であるはずがないとする敬意。そして、警戒。スパルタを下げ、王を強く見据えるマシュの表情。そこには他ならぬ、勇気を湛えた少女の決意が宿っていた。

 

「────フッ」

 

最早言葉で括るは無粋であろう。皮肉の一つも湧き立たぬ。この旅路を盛り立てて来た成果は存分に垣間見た。愉快な旅路は、これ程までに雛鳥を雄々しく育て上げた。

 

「リッカ。並びにマシュ」

 

「は、はい!」

「どったの?」

 

敵意も、傲りもない澄んだ呼びかけに素に戻る二人。ただ、王に名前を呼ばれる事の栄誉は二人には未だピンときてはいないのだろう。

 

「称えよう。よくぞここまで磨き上げた」

 

端的な称賛、礼賛。それをくれてやるには充分すぎた。やや早いが──褒めそやす言葉をくれてやる程に。

 

「はいっ!王の旅路の素晴らしさのお陰です!」

「王の財だよ?当たり前じゃん!」

 

二人の返答もまた、敬愛に満ちた素晴らしきもの。どこぞの誰かのような慢心など有り得ぬ善なる在り方。益々もって、愉快な事だ。

 

「うむ。──ならば最早、侮りはすまい」

 

そして──その成長は。

 

「貴様らには、我の本気を見せてやろう」

 

王の専心を引き出すに、相応しい領域であった。




ギル《ふふはははははははははは!!エア!フォウ!目の当たりにしていたな!我等もまた、本気でこやつらを計るとするぞ!》

──はいっ!彼女たちの成長、ワタシも肌で感じたいとうずうずしていました!

フォウ(よぉし!やってやろうじゃないか!!)

リッカ「おぉ…!」

そして展開される──御機嫌極まる砲門展開、空を埋め尽くすは星の如き無量大数…!

マシュ「──サモン、ホーリーグレイル」

だが、本気はマシュもまた同じ事。

「オルテナウス…!プット!!オン!!!」

その身に──楽園の叡智の結晶を纏う!

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