人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「年末だからといって!王に休息はない!一日休めばそれだけこなさねばならぬ仕事が増えるのだからな!」



一日一件くらい大丈夫だ、問題ない


問題ない!!10000字までなら!!


幕間 ワーカホリックは美徳ではない。ただの自殺志願者だ。努気を付けるのだな
改築王!師走とは、我が忙しく動き回るという意味である!


「こちらに新たに召喚されたサーヴァントの要望をまとめました。英雄王、目を通してください」

 

 

「うむ、御苦労」

 

 

ギルガメッシュの私室にて、資料を編纂し、職務を手伝ってくれるアルトリア・ランサー

 

 

聖槍にて肉体が王に相応しい姿に成長したアルトリア、ということらしい。セイバーのアルトリアは成長が止まった姿のようだ。だから貧乳ではないとヒロインアルトリアはしきりに主張していた

 

 

「フッ、相も変わらず好き勝手に要望を出すものよな。よし、時間が惜しい、さっさと終わらせるとしよう。御苦労であったな獅子王」

 

 

「王として当然の責務です、礼を言われるほどでは」

 

ピシリ、と完璧な規律を体現するかのようなアルトリア。

 

「かのアルトリアの成長した姿、か。体型は好みからかけ離れてしまったが、その非の打ち所のない王としての姿は高く評価せねばならんな。我が補佐、我が職務を任せる右腕に相応しい。アルトリアとは、無限の可能性を表す言葉であったか」

 

 

「ありがとうございます」

 

――そう。この方、ランサーアルトリアはすぐ、英雄王の補佐を願い出てきたのだ

 

 

『職務があれば、私が補佐しましょう。私は貴方に招かれたサーヴァントだ』

 

――なぜかマスターへの契約の譲渡を固辞し、王の補佐に専念すると言って憚らない

 

英雄王としても、自らに並ぶ程の王威を身に付けたアルトリアの『在り方』は高く評価しているようで、獅子王の申請を快諾した

 

《后としては些か可愛げがないがな》と呟いていたのは、内緒である

 

 

「では早速取り掛かるとするか。――だがその前に一つ明らかにしておくか」

 

くい、と顎に触れ

 

「――!」

 

顔を触れあうほどに近付け、獅子王の碧眼を覗き込む

 

――凄い。透き通っていて・・・宝石みたいだ・・・

 

 

「瞳を見れば解る。お前は悩み、迷っているな」

 

「――何を・・・言うのです」

 

「あれほど下手な自分の殺し方を見れば一目瞭然よ。気付かぬと思ったか?我が洞察を嘗めるでないわ。――当ててやろう」

 

碧眼を、紅き瞳の輝きが犯す

 

 

「『神に近付いた己の価値観』に、戸惑っているな。もはや自分が善きものと考えることが、辺りの善きものと考えることと一致しているか解らぬ、故に距離を取らねばならぬと自分を狭めていると言ったところか」

 

「――――!!」

 

 

「フッ。なんだ、驚けるではないか。まだ心は錆び付いていないと見える」

 

 

ふはは、と笑いながら顔を離す

 

 

「マスターめに近付かぬのもそれが理由だな。『拒絶されるのが怖い』あるいは『自分が違うもの』と痛感させられるが怖いと言ったところか」

 

 

黄金の波紋からワイングラスを取り出す

 

 

「やはりお前は肉体以外は素晴らしいな。その生真面目な気質ゆえ、悩みからは脱せられぬと見える。その苦悶、その恐怖、まこと我好みよ」

 

ふはは、と笑う器

 

――ちなみにフォウは大興奮でした。柔らかそうだもんね、あの胸。やっぱり、人の上に立つから威厳あるボディじゃないとダメなのだろう

 

女神、すごい

 

「――・・・・・・っ」

 

悩みを暴かれ、褥にて処女を散らされ、破瓜の苦痛に顔を歪ませる少女のような表情を浮かべる獅子王

 

 

――ロンゴミニアドを持ったことで、肉体と価値観が女神に近付いているアルトリア

 

その変化に、最も困惑しているのはアルトリア自身

 

・・・彼女が悩んでいるなら、少しでも力になってあげたい。彼女は進んで、王の力になりたいといってくれた

 

なら、自分だって何かをしてあげたい。王は総てを手にし、孤高である。ならば自分は総てに手を伸ばし、価値ある何かに寄り添い、手を差し伸べたい。それが『姫』の名を貰った自分の生き方だ

 

――神の身体に、人の心・・・その齟齬に苦しむアルトリア・・・

 

――そうだ、ならば!

 

 

「――うむ、良いことを思い付いたぞ」

 

バキリ、とグラスを砕く

 

 

「お前がセイバーならその苦悶をこのまま肴にしても良いが、今のお前は我が右腕、我が補佐。いつまでも下らぬ悩みにかかずらせる訳にはいかぬ」

 

くい、と手を引く

 

「付いてこい。貴様の心を軽くしてやる。だがその前にやることを済ませるぞ」

 

 

「――改築ですね、解りました」

 

即座に表情を変え、王の表情を浮かべる

 

「では行くとするか!例によってダイジェスト!成果のみを見るがよい!年末くらいは休めよ、部員共!」

 

 

――アルトリア、えっとランサーの方の、は最後だ、先ずは皆を!

 

 

 

 

源頼光 マスターのマイルーム

 

 

「ありがとうございます、英雄王さま。我が子と同じ部屋を見繕ってくださるなんて・・・」

 

「三人所帯だが楽しくやるがよい。・・・ゴールデンめも誘ったのだがな『勘弁してくれ!ベリーデンジャラスだからよぉ!』と言っていてな」

 

 

「そんな・・・母は避けられているのですか・・・?うう、よよよ・・・」

 

「それはない。未だ距離感を掴めておらぬだけであろう。気長に見守ってやれ。母の務めだ。――貴様にしかできぬ責務、しかと全うするがよい」

 

「まぁ――!はい、ありがとうございます、

英雄王さま。ふふっ、よろしくお願いいたしますね、ジャンヌ様」

 

「あっ、はい。えと、こちら御近づきの饅頭だから・・・」

「まぁ・・・」 

 

「英雄王」

 

「次だ!」

 

 

パラケルスス カフェ・ホーエンハイム

 

 

「皆様に一時の安らぎを・・・私はそれが望みです」

 

(ずず・・・)

 

「流れるように飲むな獅子王」

 

 

「美味しいです。ミルクを下さい」

 

「私は皆様の善を信じます・・・例え悪逆に至ろうとも、我が身はマスターが必ず・・・」

 

「うむ、思うままに生きるがよい」

 

「英雄王もいかがです?ハーブティーです」

 

「頂こう」

 

――フォウと一緒に来たいな・・・

 

「リッカにお伝えください。いつでもあなたを待っていると」

 

「良かろう。伝えてやるか。次!」

 

 

ニトクリス ニトの部屋&大理石踊り場着き大玉座の間

 

 

「でませい!でませい!でませい!」

『ギィー』『ギィー』『ギィー』

 

「慌ただしいことよな。太陽めの部屋を改築とは甲斐甲斐しいことよ」

 

「英雄王!?いえ、あの、これは――!」

 

「よい、好きに広げよ。ふはは!ヤツの顔が目に浮かぶわ!」

 

「・・・・・・」

『ギィー』

 

「ブリテンにはいませんでしたね、これ」

 

――可愛い・・・フォウ用に外套もらえないかなぁ・・・

 

 

 

玉藻 天照大御殿

 

 

「貴様の注文通りの設計だ」

 

「フーッ!!♥♥ふぅーっ!!♥♥」

 

――・・・そろそろ心配になってきた

 

「貴様の本性通り、思うままに贅を尽くすがよい」

 

――大丈夫ですか?体調が悪くなったなら、いつでも王か、自分に言ってくださいね

 

 

聞こえているかはわからないけど・・・

 

「うきゃ――――!!!!!♥♥♥♥♥♥た――ま――ん――ね――!!♥♥御主人イケ魂王様ピュア魂!玉藻ちゃんかんげき――――!!♥♥♥二人を迎えて玉藻!玉の輿!!キタ――――!!!♥♥♥♥」

 

 

「尚、タマモキャットさんの申請にて部屋はシェアされます」

 

「そう言うことだ。キツネ煮カレーには困らぬぞ、喜べ!」

 

「げぇ――――!?なんでハッピーな落ちにならねーんですか――!!?」

 

「・・・疲れますね」

 

「我もだ。次」

 

 

ミドラーシュのキャスター ロマンと相部屋

 

 

「なんで!?ねぇなんで!?プライバシーは!?僕の意思は!?」

 

 

「貴様の趣味の矯正よ。色を知る時だロマン。女の柔肌を知れば、バーチャルの在り処は心の支えにしかなりえぬと知るだろうよ」

 

 

「――無価値とは仰有らないのですね」

 

「それを好むマスターを一人知っているのでな」

 

 

「イヤだ――!!僕の嫁はマギ☆マリなんだ――!!」

 

 

「はぁい、突然ですが英雄王に謎かけでーす♥」

 

「む――」

 

《エア、代われ。これはお前では答えられぬ》

 

――は、はい!

 

「――その部屋には、十の扉がございます。一つが開くとき、他の九つは閉じております。九つの扉が開いてるとき、一つの扉は閉じております」

 

――?

 

《人だな。部屋とは子宮。十の扉とは目、耳、鼻、口、臍、排泄物の穴。人が胎児であるとき臍の扉は開いているが、生誕の産声上げしとき、その扉は閉じよう》

 

な、なるほど・・・!

 

「正解~♪では次を。その言葉は金よりも命よりも重く、運ぶには四人の人間を必要とするほど。されどもその言葉を、主は見たことすらありません・・・」

 

――?、・・・?

 

《それは神が人間との信頼の証にくれてやった『アーク』とやらだな。ソロモンめが先の王より受け継ぎし契約の証であり、中には十戒の石板を納めた箱だ。ヤツめの神殿、その至聖所に置かれ、香の煙に焚かれていたと聞くが?》

 

――なるほど~!

 

「お見事~♪では、最後の問いを、と。――その海は凪いでいます。風に逆らいながら船は進みます。水先案内人の示す先には暗雲が見えます。船の備えは決して万全ではありません」

 

――?????

 

「ん?んん?え?どゆこと?」

 

 

《解りきった問いだ。答えは『国』。巧みな船頭が帆と舵を操れば、逆風はより素早く船を一つの方角へと走らせる。海は一様に見えて同位の個体ではない。無数の滴の寄せ集めだ。凪いでいようが水面の下は荒波や渦を隠し持つ。砂漠が砂の集まりであるように。密かに蠢く流砂が唸りを響かせるように》

 

 

「では、その船はいったいどこに?」

 

 

《船は止まらぬ。安寧と忌避に甘んじ漂うは船ではない。沈むを待つばかりの流木に過ぎぬ。水先案内人は避けられぬ嵐と知り、それを踏まえ警告を発するのだ。苦難を耐えた船のみが、試練を乗り越えた乗組員のみが新天地に辿り着き、新世界の夜明けを目の当たりにするのだ――》

 

――凄い・・・!本当に凄い・・・!

 

 

「お見事~♪あなたはかの王にひけをとらぬ、始まりにして絶対の王にございます~♪私がこのカルデアの経理と価値を護ることを誓いましょう~♪」

 

《この程度答えられて当然だ。このような容易き問い、ロマンにも理解できような。なぁ?》

 

「そ、そうだね、そうだね・・・うん」

 

《懺悔の時は近い。覚悟は決めておけよ》

 

「・・・うん。逃げないよ」

 

「ではでは場の仕切りは私にお任せを~。さて、ロマン様にも質問です」

 

「はい!?」

 

「朝も昼も、夜も寄り添い、温もりと安らぎを貴方に与える敬虔な女性、だーれだ?♥」

 

 

「助けてマギ☆マリ――!!」

 

 

――あの問いは?王

 

《ヤツめが生前ソロモンに問うたとされる三つの言葉遊びよ。あの女め、不遜にも我が王の格を査定してきおったわ》

 

――でも、王は完璧に答えました!凄い!やっぱり英雄王は凄いのだ!

 

《フッ、当然よな。我の威光を思い知ったか、エア?》

 

――はい!英雄王!

 

 

「では、次だ!」

 

 

モードレッド フランと相部屋

 

「責任を取るとはよい度胸だトレイター。最後まで飼い慣らすがよい」

 

「あー、そうか。ファンブッたからな。解った解った」

 

「もーど。やきそばぱんを、ください。じゃーきーも」

 

「パシリじゃねぇから!調子乗んな!」

 

「で、やはり面は外さぬのだな」

 

「いさかいは無用ですから」

 

 

「生真面目なことよ。次」

 

 

アンデルセン 最新機器書斎

 

 

「よし完璧だ。これが俺の仕事場俺の書斎。俺だけの聖域だ。御苦労だった。さっさと出ていけ」

 

 

「ふはは!反骨と毒舌は相変わらずよな!だがよい。我が叙事詩、しかと書き上げるがよい!」

 

 

「ならば絶対に戦場に呼ぶなよ!『貴方のための物語』はモチベーションが命なんだからな!福利厚生が完璧なのはいいが!」

 

 

「締め切りは人理修復までよ!せいぜい励め!フハハハハハハ!!」

 

 

「――」

 

「さて、最後は貴様か」

 

「私は・・・」

 

 

「何も言うな。此方に来い」

 

 

――もう改築は終わっている。ささ、こちらへ

 

 

「・・・はい」

 

 

 

アルトリアランサー 

 

 

「――――」

 

素朴な馬小屋と牧場

 

「どうだ?我ながら気の利いた改築であろう」

 

「――ここ、は・・・」

 

――そう、アーサー王が剣を抜く前の、ただの町娘だった頃にいた景色の再現だ

 

思い至ったのだ。聖槍を抜いた日が神の始まりで

、それの齟齬がアルトリアの人の心を苦しめているなら

 

 

「ドゥン・スタリオンだったか?ちと狭苦しいかも知れぬが、存分に走り回るがよい。ここにいる間は貴様にはなんのしがらみもない。貴様にすがる民も、貴様に理想を押し付ける騎士もおらぬ」

 

 

――いつでも、人であり、無邪気に世界を駆けていた景色に立ち返ればいい

 

 

王冠も、槍も、マントも置き去りにして、自分のために駆け抜ける空間があってもいい

 

 

そうすれば、自分の人の心はけして無くならないだろう、きっと

 

――人としての我儘くらい、容易くこのカルデアは飲み込む

 

 

だってここは――『楽園』なのだから

 

 

 

「――何処までも広がる空。土の匂い。頬を撫でる風。――覚えている。私は――覚えている」

 

 

馬から降り、空を見上げる

 

「――あぁ、なんて・・・美しい――」

 

 

その眼からは、涙が溢れていた

 

 

「――ふっ。その名馬と駆けてこい。今日の職務は終わりだ」

 

 

「――はい。では、お言葉に甘えて。――英雄王」

 

 

「ん?」

 

 

「――これからも、よろしくお願いしますね――」

 

そういって笑うアルトリアの顔は、

 

 

穏やかな、少女のものであった――

 

 

 

――二人の王は、素朴な牧場で羽根を伸ばす

 

 

夢中になって、駆け抜けるアルトリア。泥にまみれても意に介さず、ドゥン・スタリオンと笑い合う

 

木にかけたハンモックに揺られ、そんなアルトリアを見ながら酒を飲む

 

《我には思い付かなかった対処法だ。ヤツもこれでやる気になろう。手柄だぞ、エア》

 

――王やアルトリアの力に、なりたかっただけですよ

 

 

《――そうか》

 

 

それ以上、王は何も言わなかった

 

 

・・・蔵から引き出された天空神が愛した神酒は

 

 

 

――アルトリアの笑顔と相まって、突き抜けるように爽やかな味だった――




「満足したか、獅子王」



「えぇ。貴方に感謝を」


――良かった。少しは気持ちが晴れたみたいだ

「これから、よろしくお願いいたします」


「うむ。マスターめに乗馬の一つも教えてやれ。交流のきっかけになろうよ」

「はい。――いつか」

「ん?」


「いつか、貴方を変えた存在にも・・・お逢いしたいですね」

「――フン。そのような存在、滅多にいるものか」


「ふふ、そう言うことにしておきます」


――獅子王・・・

「では、また。――何かあったら、何時でも呼んでください」

「火の入ったその心、それは自らを決める唯一の部品だ。無くすなよ」


「――はい!」

――あぁ、やっぱり


笑顔は、いいなぁ・・・



番外編 フォウ フォウマイルーム


「じゃーん!王の部屋に、フォウ専用のお部屋を作ってみたよ!生活用品とか色々あるし、見た目もファンシーにしてみたんだ、綺麗な感じ!フォウイメージ!はい、ちょっと首出してね」

『ネックチョーカー』

「特注で作ったフォウ専用アクセサリ!それがあればいつでもここにワープできるよ。ふらりと立ち寄りたくなったらいつでもおいで!ルームシェア?って言うんだっけ?」

(い、いいのかい・・・?君と部屋が一緒で)

「もちろん!身体を貰って嬉しいことは、こうやって感謝の気持ちを現せる事だよね!いい加減しつこいかもしれないけど、何度でも言わせてね。――いつも、本当にありがとう!ワタシの大切なフォウ!これからも、ずっとよろしくね!」

(――――――)


『』『』『』『』『』『』『』『』『』『』


「フォウ!?」

『『『『『『『『『尊い・・・(爆散)』』』』』』』』』


「フォウっ!?今、増えてなかった!?」

(甘かった・・・君の尊さが凄まじいなら、ボクは十体のフォウになって受け止めようと思ったけど・・・2秒も持たなかった・・・)

「しっかり!しっかりフォウ!」

(ありがとう、エア・・・君の尊さに、ボクは幸せなまま倒された――)

「フォウ――――!!」

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