人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1993 / 2535
グドーシ「リッカ殿、リッカ殿〜」

リッカ「…ふぁ!?」

グドーシ「お疲れ様でござる。ここはカーマ殿の宇宙…大奥の振り返りの時間でござるよ」

巨大カーマ『ようこそ♪ここはリッカさんとグドーシさんの為の宇宙…カーマ特製、真実の愛の宇宙です♪』

リッカ「おっっっっっっっっっっ!!!!!!」

カーマ『はい、いただきました♪』
グドーシ「ははは、インドクラスのおっすごですなぁ」

カーマ『そしてなんと〜、私からの記念を用意していますよ』

リッカ「記念!?」

カーマ『はーい、こちらでーす♪』



【挿絵表示】



こちらがアンケートで所望されたアジ・ダハーカ・アンリマユとなります!スキマにて、ケセルムさんにご依頼し描いていただきました!

2000話記念にお収めください!アンケートの御協力、ありがとうございました!


振り返りその3〜二人のための愛の宇宙〜

「振り返ってみれば、拙者やカーマ殿がリッカ殿と共に特異点に挑んだのも遠き昔。弛まぬ歩みは、振り返ってみればそれはそれは遥かなる足跡となっているものなのですなぁ…」

 

カーマの宇宙、巨大なカーマの掌。蓮の座に相当する愛の神の慈愛に包まれた水入らずの空間にて、リッカとグドーシ、そしてカーマは振り返り、語り合う。それは始まりの中でも更に始まり、カルデアの物語が始まる更に前のメンバーの会合でもある。輝く宇宙の星空を柔らかな手に包まれ、二人は絶世の光景を見上げる。

 

『カルデアの記録には残らない最悪のブッキングではありましたが…まぁでも、リッカさんが誰かの頼みを見て見ぬふりだなんてする訳ないですし、こうして3人だけの時間に繋がったと思えば、私的には善きことです♪』

 

そう、これはフレンド依頼であり極秘の依頼。カルデアが機能不全に陥った藤丸立香の救援に応える形で、岸波白野と共に3人体制で向かったのである。Aチームの合流とブッキングしてしまい、カルデア総出の戦いではなかったものの…グドーシとカーマが出陣し、ビーストが相手である非常に重要な戦いであったのだ。

 

「あちらのサーヴァントはキアラ殿やパールヴァティー殿。カーマ殿の縁はとても素晴らしい出会いを残しましたなぁ」

「春日局さんもいてくれたし、流石愛の女神だね!」

 

複雑ですぅ…。苦笑いと共に冷や汗をかくカーマ。本来なら3人だけのとても楽しく嬉しい攻略だった筈なのに、まさか自分を倦怠に叩き込んだ元凶の片割れと決して相容れない獣の片割れ。嬉しさと無念さで当時のカーマは情緒と脳が破壊されていた。

 

「徳川を起点とした大奥。マーラ殿の策謀と手際は限りなく完璧でござった。ゴルドルフ殿をも籠絡させ、カルデアをほぼ詰みに陥らせた凄まじき難敵…」

「徳川特効の龍哮、グドーシの完全物欲カットやカーマのフィニッシュが無かったら藤丸くんも私も大変な事になってたよ…ブッちぎりの概念マウントバトルだったのは流石のインドだよねぇ…」

 

そう、将軍の概念としてあちらのゴルドルフを取り込み、徳川の歓待の概念としてカルデアを大奥に取り込んだ。それに対し、魔王の天敵としてグドーシが干渉をカットし、大奥の罠をリッカの愛刀、龍哮が喰らい尽くす形で突き進んだ。そしてこれは、最後のマーラの決戦にすら致命の刃と相成る程である。

 

『マーラの自分の甘やかしっぷりは実に滑稽でしたねぇ。グドーシさんが何度も何度も説得してくれたのに聞く耳を持たず、最後まで無様な姿を晒して無事に爆散。ふふふ、真の愛を得た私と、真の愛を持つ二人の敵にしてはあまりに矮小でした。魔王マーラ、恐るるに足らず!ですね♪』

 

そう、龍哮に徳川そのものたる大奥の中核たるマーラに絶死の刃を向け、春日局に大奥の乗っ取りをひっくり返され、イザナミに内密に送り込まれていたタケちゃんにより松平の策が成り、あらゆるメタを貼られたマーラ、ビーストⅢラプスは大号泣の末に大爆散を果たし無事にミッションは完遂されたのだ。その末路は岸波白野、はくのんによりばっちり撮影され今も保管されている。

 

敗因は、彼女は自身を甘やかしすぎた事。本気を出せば詰みにできる場面はいくらでもあった。太刀打ちできなくできるほどの力の差はいくらでもあった。それが出来なかったのは一重にビースト、マーラが愛の魔王であった事。全てを愛すが故に敵対者すら甘やかしてしまい、自分自身すら甘やかしてしまった事だ。その手落ちを、存分にカーマは指摘する。彼女はもう、愛すべきものを見つけているのだから。

 

「あれほど因縁深かったパールヴァティー殿との、確執を超えた必殺の合体技。その心意気と、我々を見守り続けてくださった真なる愛の神の本領…拙者、大変感服致した」

「素敵だったよカーマ!カーマはずっと最初の方から、私達の神様だったもんね!」

 

『い、いやぁ…ふふ、ふふふ…それほどでもぉ…ありますぅ…ふふふ、ふふふ…♪』

 

推し二人に褒め囃され、持ち上げられ骨抜きとなるカーマ。彼女にとってパールヴァティーなど自身を愛に巻き込み焼き尽くした片割れでしか無かった。本来ならば力を合わせるどころか不倶戴天の敵でしか無かった。

 

しかし、カーマは自身の見出した真実の愛にてその確執と倦怠を乗り越えた。グドーシ、そしてリッカの為に…自身の愛する者の為に自身の使命たる愛の神に立ち戻り、自身の片割れたる側面の愛の魔王に引導を渡したのだ。それは、自身の為でなく誰かの為という献身、自己や自我を超えた他者への奉仕。仏の教えにすら該当する神の真の愛であった。

 

『…。改めて、ありがとうございました。リッカさん、グドーシさん』

 

そして、カーマは忘れていない。その愛が、忌むべきものであり疎ましいものであり、身体を焼き尽くした苦痛であり倦むべきものであったものから変えてくれた二人の存在を。無数に氾濫する愛の宇宙でなく、二人を尊び重んじる宇宙となったその心の有り様の中で、カーマは二人に感謝を告げる。

 

『自身を省みない、他者への尊重。互いを思いやりながらも、互いを求めずに共に歩む。互いの生き様を尊び重んじる。そんな素敵な本当の愛を、二人に教えていただきました』

 

「カーマ…」

『カーマ殿…』

 

そう、二人が夏草で出会った際からカーマは二人を見つめていた。その最期は涙に満ちたものであり、自身は何も出来なかったと無念に沈むしかなかったカーマ。

 

しかし、今は違う。再会し、こうしてまた同じ時を過ごしている。その奇跡を、そして変わらぬその愛を、カーマは心から愛していた。

 

『二人に教えてもらった愛がある限り、もう私は愛に倦むことも、魔王になることもないでしょう。愛の女神としてカーマは生まれ変わり、いつまでもいつまでも愛の在り方を慈しむでしょう。二人の愛を、ずっとずっと』

 

カーマにとって、愛することは責務だ。愛の女神としてあらゆる愛を後押しし、愛することは神の業務に過ぎない。

 

だからこそ、二人の愛は彼女にとって特別なのだ。物欲、肉欲、渇愛の何も介在しない、そこにいてくれるだけで良いという清廉にして根源の愛。それを示してくれた二人を、カーマは心から愛するだろう。

 

『だから、これからもよろしくお願い致します。私にできることならなんでもしますから…仲違いとか、しちゃ嫌ですからね?』

 

カーマの願いに、グドーシとリッカは顔を見合わせる。そこまで自分らを思いやってくれたカーマの想いに、満面の笑み。そして…

 

「カーマ殿にこれ程言われては、もう喧嘩の一つも出来ませんなぁリッカ殿?」

「そうだねぇグドーシ。これからはパン一つもしっかり分けていこうねぇ」

 

『あ、いえそのですね?決して二人の在り方を束縛したい訳ではありませんから!あ、いえでも喧嘩は哀しいのでしてほしくはありませんから…あぁいえ、でも喧嘩するほど仲が良いというならリッカさんとグドーシさんは毎日喧嘩すべき…?ん?ん?ん?』

 

「……ふふっ」

「あははははは!大丈夫大丈夫!ちゃーんと分かってるよ、カーマ!これからも見ててね!私達の事!」

 

『も、もう〜っ!からかわないでくださいってば〜!』

 

身体は巨大ながらも、その心はずっと二人の傍に。カーマは掌で心から笑うリッカとグドーシを、心より慈しむ。

 

(どうかいつまでも健やかであってくださいね。私は、二人の幸せと健やかな日々の為にカルデアにいるのですから)

 

二度目の生で見出した、素敵な本当の愛の形を護るために。愛の女神は、いつまでもいつまでも二人を見届ける決意を懐くのであった。

 

…──三人の語り合いは、誰にも邪魔されずに続いた…──。

 




カーマ『私も、愛の女神として本気を出すと致しましょう』


(今年の夏…。楽しみにしていてください、ふたりとも♪)

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