人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1995 / 2535
スペースエトナ火山

テュポーン【ほー。ギリシャ代表と銀河警察代表が、雁首揃えてオレに何の用だ?】

アデーレ「御礼です。感謝状も」

テュポーン【は?】

マカリオス「あなたの魔獣、紛争や悪徳勢力の抑止に大助かりなんだよ。お陰で宇宙規模の争いはかなり削減されてる。それも、エキドナの夫のあなたのお陰だ」

エレシュキガル「銀河警察、他勢力の満場一致にて、あなたを調和均衡維持大臣として正式に任命させていただきたいの。どうかしら?」

テュポーン【あ、お、おう?まぁ…貰えるもんは腐れ実以外は貰っとくぜ】

エレシュキガル「良かったぁ…」

テュポーン【まぁ、あいつらがいつか帰ってくる場所だからな】

(オイオイ、愉快なことになってんぜ…?あの事件が全部の始まりだ。ホント、マジでターニングポイントだよなぁ…)

【…おい、てめぇら】

「は、はい!」

「なんでしょう!?」

【折角だ。思い出しに付き合えや。振り返りってやつだぜ】

「「「…は、はぁ…」」」

【付き合うよな?】

「「「はい!」」」


振り返りその5〜魔獣神との和睦〜

始まりは…アレか。コスモギルガメスの野郎が花嫁探しの一環で、宇宙の全部を吹き飛ばして切り裂いて、何もかもを消し飛ばしたんだっけか?

 

 

──ええ。真のセイバーを自分の妃にすると思い立ったギルガメスは乖離剣を起動。その最大出力でシーズンそのもの、神々達ごと纏めて切り払ったのだわ。それにより、サーヴァントユニヴァースの神霊の大半がリポップ待ちの脱落。その庇護下にあった勢力も大幅に弱体化しました。

 

──しかもその時はエレシュキガル所長の一日署長記念日だったのですよね…

 

──そうなの。お陰様でセイバーバッチによる無法下で銀河警察はほぼ壊滅。私も希望が絶たれることの無いようあらゆる手を尽くして未来を繋ぐ活動を行ったわ。でも、傷も深かった私はコールドスリープするしかなくて…

 

銀河警察警視総監、涙の下積み時代ってヤツだな。わっはは!人に歴史ありだな!

 

──うぅ、笑い話ではないけど笑い話で本当に良かったのだわ…

 

 

〜異世界からの救援、スペース攻略〜

 

──そして私が眠っている間、スペースイシュタルは奇跡的にカルデア・シャングリラにコンタクト。こちらの危機を聞き付けた御機嫌王ギルガメッシュの計らいにより、銀河平和の為の心強い味方がやってきてくれる事となったのです。

 

宇宙を滅ぼしかけたのがギルガメスなら、元に戻すはギルガメッシュか。因果ってのはどこの場所にもあるな、総督さんよ。

 

──えぇ、本当に。ギルガメスはゴールドセイバーバッチを集めなければ謁見できない仕様を作っていたため、皆総出で攻略を行ってくれます。ブロンズスペース、シルバースペース、ゴールドスペース…

 

──その攻略の最中、私達はオリュンポスの神々に匿われ命を繋いでいました。正確には、リスポーン待ちにならなかったというのが正解ですが。

 

──大神ゼウスは全部を見通していた。今回の騒動を通じて、完全に後進に後を譲る準備と覚悟をしていたんだ。残念ながら、神々はギルガメスに全部やられたけれど…俺たちに、希望を託してくれていたんだ。

 

ほう…あの色ボケジジイもやるときはやったわけだな。まぁ不意討ちで全員仕留められてるのが笑えるが、それもお得意の全知全能だったわけか?今となれば、確かめる術は向こうのカルデアのゼウスに聞かなきゃいけない訳だが。

 

──きっと、その大いなる智慧と力でカルデアの皆様の力となってくださっているはずです。大神とはオリュンポス最高の天空神にして、偉大なる雷霆の担い手。素晴らしき最高の神であらせられるのですから。

 

──どうかなぁ…。力はともかく、性根はそんなに一気に変わらないと思うんだよなぁ…

 

 

 

その頃の楽園ゼウス

 

ゼウス『おねぇさーん!私、キリシュタリア・ゼウス。略してキリゼクー。今から私とお茶しなーい?』

 

女性職員「こ、困りますぅ〜!」

 

『かーわーいーいー!へへー!でらキリシュタリア!誘って全部ゥ!』

 

ヘラ『……………』

ヘラクレス「………」

 

ゼウス「はっ…」

 

 

──そういえば、テュポーンさんは不倶戴天のギリシャの大魔獣神だったけれど、前も今も味方でいてくれてるんだよな。

 

──魔獣の女神エキドナの夫にして、オリュンポスの悪夢。あらゆる神々を蹴散らし大神ゼウスすら一度は破った星の怪物。エトナ火山に幽閉されている今も、あなたは私達の宇宙を護ってくださっています。

 

ん?おうよ。こっちなりの愉快な事情があってな。多分あいつら、宇宙旅行はここを拠点にするだろうからよ。要するにここはあいつらカルデアの帰る場所でもあるんだ。

 

──ですから、護ってくださるのですね?

 

そういう事だ。契約を成功させるコツは相手にも得させる事、契約を長続きさせるコツは相手にも損害を想定させることだ。あいつらが来るのがプラス、あいつらに会えなくなるのがマイナス。分かりやすいだろ?

 

──テュポーンさんって、こんなに話が解る人なんだな。

 

──マカリオス、失礼よ。

 

気にすんな。魔獣ってのは大抵分かりえないまま殺るか殺られるかだ。その神、元締めってんならちょっとはナリやオツムを意識しねぇとならねぇ。面子ってのはそういうもんだ。エレ娘もテメェらも、融和や温和は結構だが足元を見てくるやつは必ずいる。備えだけは忘れんなよ。

 

 

──はい!

──心に刻むのだわ、偉大なるテュポーン。

 

 

──…その、愉快な事っていうの…聞いてもいいですか?

 

──マカリオス!

 

ん?おう構わねぇぜ。実は嫁に新しい旦那ができてよ。その旦那がすげぇ愛妻家で親バカな訳よ。そいつが逐一嫁や家族の写真やらホームビデオを贈ってくるのが楽しみでなぁ。

 

────?????×3

 

 

で、いつかこっちに里帰りも考えてるってんだからよ、そりゃあ護るだろ?いやー、まさか母胎でしかなかったエキドナかまあんなに幸せそうに笑うなんてよ。オレの出来なかった事をしてくれた二人目の旦那のアイツにゃ感謝だぜ!

 

───新しい旦那様と、自身のお嫁さんが仲良しなのが楽しい…?

 

──や、やっぱり神様クラスの恋愛って違うなぁ。まぁ、ギリシャって大体そんな感じだもんな…

 

幸せそうでよぉ…お互いを思いやるっていいよなぁ…

 

──ちなみに、その旦那さんのお名前は…?

 

 

ニャルラトホテプだ

 

────!?!?!?

 

〜新組織設立

 

 

んで、お前らもそれなりに努力してるんだろ?新組織の…

 

──グランド・スターズ。各自の最高首脳達が集い、新しい日々を作っていくための組織…僭越ながら、私がトップを務めさせていただいております。

 

 

……。平和ってのは辿り着くのが終わりじゃねぇ。黄金、白銀、青銅になってくように、維持するのが大切で、大変なんだ。

 

 

──…………

 

これからの明日は、未来は、今を生きるお前らにかかってるんだ。コスモギルガメスみてぇな慢心、かますんじゃねぇぞ。

 

もしまた混沌になるような真似をしやがったら…今度は俺が立ちはだかるかもな?

 

──そうはならない。させないよ。その為のグランド・スターズだ。

 

 

ほう…

 

──私達は、この平和を守っていきます。あなたの仰るように、どれほどに困難や苦難が待っているとしても乗り越えて見せる。

 

一人でか?

 

──皆で、です!

 

 

…それでいい。ゼウスみてーにあれもこれもとやり続けてるといつか必ず無理がくる。ガタが来る。てめぇらは弱い、ちっぽけな生き物だ。サーヴァントだから生きてないとか無しな。

 

だから、まぁ…頑張れよ、てめぇら。

 

 

───はい!!

 

…奇しくも、魔獣神たるテュポーンとの話し合いと振り返りは極めて穏便に終わった。

 

あらゆるものと共に歩む世界。あらゆるものを受け入れる世界。その世界が今、少しずつ形となっている事は…

 

テュポーンと歓談を可能にする今が、それを証明しているのであろう。

 




マカリオス「なぁ、だったらさ。テュポーンさんもカルデアに行ってみたらどうかな?」

テュポーン【おん?】

アデーレ「御家族と共に過ごしたりする事も、今のテュポーンさんになら…」

テュポーン【…入るかねぇ…】

エレシュキガル「そのつもりになったのなら、ぜひご連絡をください。手を尽くさせていただくのだわ」

テュポーン【……そうだなぁ】

(ゼウスの抑止力として…考えてみるかぁ…)

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