人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「日頃冷え込むな。貴様らの体調管理は万全か?風に咳き込み倒れるなど無様な真似は晒すなよ」


「我?案ずるな。我に限界はない。過労死は!賢しい我の特権である!フハハハハハハハハハ!!」


――年越しも近付いて参りました。皆様、穏やかで幸せな時間をお過ごし下さいね


《さて、エアよ。仕事納めといくか》

――はい!


絶対迎撃電子神話バビロニア

「さて、と。下らぬ未来を目の当たりにした以上、カルデアの警備の強化に一層力を入れねばなるまい」

 

 

風呂に浸かりながら、ゆっくりと呟く英雄王ギルガメッシュ

 

「なんと。この楽園に、未だ穴があると申すか」

 

 

不思議そうに聞くのはネロ。薔薇を撒き散らしながら優雅に浴びている

 

 

「ますます素敵になってしまうのね?貴方の手で、素敵にしてしまうのね?」

 

マリーがアヒルのオモチャをぐぁぐぁさせながら笑う

 

 

「英雄王は心配性ですね!そして、その案とは一体?」

 

ジャンヌが滝行紛いな事をしながら訪ねてくる

 

 

「やはりセイバーの増やしすぎ!一掃すべきと私は思いますが如何に?」

 

ヒロイン、アルトリアがタオルを素振りしながら提案する

 

 

――こちらも器も、大体の目処はつけている。カルデアは魔術、そして科学の融合した施設だ

 

ギルガメッシュや自分は魔術ならなんとかなったが、もうひとつ手付かずな所がある

 

 

それは――科学、電子機器の防衛強化だ。インターネットや回線などの防衛は、物理的な驚異に比べて格段に甘いといった問題点が出ている

 

 

現に、一度容易く本体に侵入されてしまったことがある。座から送られた『アラフィフ・ウィルス』は巧妙かつ悪辣で、あっという間に最奥にまで蜘蛛の糸を伸ばされた

 

 

 

・・・これではいけないと器は睨んだ。魂や何かを電脳化してサーヴァントでも送り込まれたら対処が叶わない

 

 

「いつかは取り組まなければならぬと思ってはいたが・・・ふむ、ノウハウが薄いな、どうしたものか」

 

言うなれば最新スペックの領域だ。自分は論外だし、王もちょっぴり分が悪い。ちょっぴり

 

《出来ないことなどない、が些か参考資料が足らぬな》

 

 

――では、皆に聞いてみてはいかがでしょうか。僅かなきっかけさえあれば、王なら容易く突破口を見つけられるかと

 

 

《うむ、そうさな。せっかくのゴージャスなのだ、慣れぬことに挑むも悪くはなかろう》

 

 

「これより我は電子機器と言う城を防衛する機構を構築する。何か意見はあるか?参考にするぞ。異なる時代の高貴なる女たちよ。あぁ田舎娘がいたな」

 

「はい!そうですね、砦を護るにはたくさんの壁がいると思います!」

 

「壁、ファイアウォールとやらだな」

 

 

「単純に砲弾を弾き返す強力な壁もいるぞ!神祖のように、あらゆる驚異を跳ね返すローマ的な硬さを持った壁が必要だ!」

 

「それとは別の壁、か」

 

「セイバーとは日々進化しています。それはウィルスの如く。それらに対応する臨機応変なソフトウェアは必要でしょう」

 

 

「成る程な。管理者と統治者が必要と言うことか」

 

 

「ちゃんとお手入れもしてあげなきゃ駄目だと思うの。毎日お風呂にはいるみたいに!そういった人も必要ではないかしら?」

 

 

「管理者の仕事か・・・ふむ」

 

 

《要点はこんなところか。エア、お前も何か意見はあるか?聞き届けるぞ》

 

 

――そうですね。最新のものと思わず、一つの神話体系と考えて構築すれば解りやすいのではないでしょうか?

 

 

《――――よし。方針が定まったぞ》

 

 

ザバリ、と立ち上がる

 

 

 

「物理的な防衛は大迷宮!ならば今度は電子的な防衛に着手する!それらを以て、カルデアの守護とする!名付けて『電子迎撃神話バビロニア』!期待するがいい、者共よ!」

 

王の決意に、キラキラと目を輝かせる一同

 

 

 

「さぁ、更なる磐石の体勢を築き上げようではないか!雑種ども、油断慢心無きこの我の気の細やかさに震えて死ぬがいい!フハハハハハ!!」

 

 

 

――王の、わくわく改築が始まった!

 

 

 

1 幾つもの形相の違うファイアウォールを設置する

 

 

「これらは特に難しくない。要するに番犬のようなもの、姫を護衛する衛兵を設置すればよいのだ。特に頭を捻る必要もない」

 

カタカタとキーボードを打ち込み、プログラムを組み上げていく

 

 

「単純なプログラムでよい。必要なのは強度と強靭さだ。――モチーフにするものは決まっている」

 

 

そうして作られたプログラムは11

 

 

蛇のムシュマッヘ、竜のウシュムガル、蠍尾の竜ムシュフシュ、巨大な獅子のウガルルム、狂犬のウリディンム、嵐の魔物ウム・ダブルチュ、海魔ラハム、蠍人間ギルタブリル。翼を持つ雄牛クサリク、毒蛇バシュム。魚人間クルール

 

 

「原初の母が産み出せし子の名を象った防衛機構だ。これらはファイアウォールとしての機能だけではなくウィルスとしての側面をも併せ持つ。侵入してきたモノを跳ね返し食い殺すだけではなく、侵入してきた経路を逆探知してカウンターとして送り込まれ、相手の機器を完膚なきまでに破壊し尽くす。防衛機構にして殲滅機構。それを束ねるは」

 

カタカタと打ち込む

 

 

「始源コントロールシステム『ティアマト』。これを破壊せぬ限り魔獣どもは即座に補填される。これを突破したくば全魔獣を撃退した上でティアマトを下さねばならぬ。まぁ、それを成して漸く侵入成功なのだがな」

 

侵入してきたが最期、あらゆるモノを食い散らかす悪辣きわまりない最悪の防衛ファイアウォール

 

 

名を『ティアマトと十一の魔獣』システム。無限に生成され無限に殲滅する最古にして最新の防衛機器がカルデアに誕生した

 

「さて。次は単純な強度の壁だな」

 

 

2 外からの衝撃に備えた対衝撃の守りを用意する

 

 

「これにも我は備えがあるぞ。突破できぬ七つの門を組み上げればよいのだ」

 

 

早くもコツを掴んだのか、あっという間に作り上げる器

 

「敵対者を裁く七つの門。カルデアという深淵に挑む愚者の魂を削る試練と言うわけだ」

 

 

カルデアとの間に七つの門を設置する。無論ながら、これらは単純な衝撃ではびくともしない

 

 

通るためには『自らの一部』、7分の1を門に捧げ、開かなくてはならないのだ。魂であるなら情報を、武器であるなら武器を、魔術師なら魔術回路を

 

そうして7つの門を潜り抜ける頃には丸裸になり、まともな抵抗すらできなくなるだろう。その無防備な魂を――

 

「冥界の槍、そして月の聖杯戦争にて使われた魂を焼ききる防壁を使い、完膚なきまでに破壊するわけだ。抵抗など叶うまい。総て剥奪された後なのだからな。フハハハハハ!我ながら容赦のないことよ!だが侵入者の罰には生温いことこの上ないな!」

 

権利を剥奪し、槍で串刺し、魂の尾を寸断する。試練を乗り越えた先にあるのは苦悶による死。そして奪い取ったリソースはカルデアの貯蓄となる

 

敵対者を殺害しながら更にリターンを得る効率のいいシステム、名付けて『カルデア冥界下り~骨折り損のくたびれ即死』である

 

 

「よい!興が乗った!どんどん行くぞ!フハハハハハ!愉しくなってきたな!」

 

 

 

3 日々進化し続けるウィルスガードを作る

 

 

「これは簡単だな。サーヴァントを電脳化させ、対処を考えさせてやればよい」

 

パチリ、と指をならし『電脳』の原典にてサーヴァントを召喚する

 

「来るがよい。冥界の女主人よ」

 

そしてパソコンに現れたのは・・・

 

『ふぁ!?なにここ!?え!?どうしたのだわ私!?』

 

あたふたとあわてふためく、ツインテールの少女

 

 

「そこはカルデアの電脳空間、貴様はAIサーヴァントとして招かれたのだ」

 

『その声はギルガメッシュ!?私を召喚って・・・どういうこと!?説明してほしいのだわ!』

 

「かくかくしかじか」

 

『ふむふむ成る程。そう言うことなら私が適任ね!この冥界の女主人エレシュキガルが貴方のカルデアを護るのだわ!』

 

「任せるぞ。貴様はマメで、責務に真摯な女神。こう言った地道な作業にはもってこいだ。期待しているぞ。電脳の全権限を貴様に預ける。敵対者を完膚なきまでに蹂躙せよ!」

 

『任せるのだわ!じゃ、じゃああの、御願いがあるのだけど・・・』

 

「む?なんだ、申してみよ」

 

『電脳空間に、地上の景色を。お花畑とか太陽とか・・・投射してほしいのだわ』

 

「なんだそんなことか。任せておけ。そら」

 

 

電脳空間を、華やかな場所に作り替える

 

『わぁあ――!』

 

「これで文句は無かろう。職務を全うせよ!エレシュキガル!」

 

『任せるのだわ!ここは私の、new冥界!』

 

「あ、魔獣の世話は任せるぞ」

 

『キャー――――!!なんか来るのだわ――!!』

 

 

「最後はメンテナンス係か」

 

――自分が受け持ちましょうか?

 

《お前には自らの旅路がある。カルデアから離れられなくなるような雑務は任せておけん。心配するな。目星はつけてある》

 

 

――なんと!

 

 

4 メンテナンス係!

 

 

『天地引き裂けし黄金の巨神』に、ロンドンの界聖杯をくべる

 

 

「目覚めよ『シドゥリ』」

 

 

王の言葉に応え、戦艦制御のAIが目を覚ます

 

 

『おはようございます、ギルガメッシュ王。相も変わらず精悍なお顔立ちにて』

 

「フッ、当たり前のことを誉めるな。早速だが仕事だぞ」

 

事の経緯を簡単に説明する。シドゥリは総てを察し、システムを動かす

 

 

『承知いたしました。マルドゥークと数々のプログラムの整備、メンテナンス。外界侵略への防衛兵器起動を行えば宜しいのですね』

 

「然り。敵対者、我が財に触れんとする狼藉者に容赦は要らぬ。マルドゥークの火力、存分に知らしめてやるがよい」

 

『承知いたしました。別に、山ごと焼き払ってしまっても構いませんね?』

 

「む――それは最後の手段にせよ。本末転倒ではないか」

 

『ふふ、冗談です。それでは、エレシュキガル様に御挨拶をして参ります』

 

「貴様が言うと冗談に聞こえぬ・・・まぁよい。一区切りとしてはこんな所か」

 

『あ、ギルガメッシュ王』

 

「む?」

 

シドゥリが訪ねる

 

『此処をウルクとするならば、都市神は必要不可欠。一時休戦して、イシュタル様を招いてはどうでしょう?』

 

「――――・・・・・・・・・」

 

『お気持ちは解りますが、守りを磐石にするには・・・』

 

「・・・考えておく」

 

 

――かくして、電脳防衛機構『電子神話バビロニア』は完成を迎えた

 

ファイアウォール11層(無限復活)、権利剥奪門7つ、無数の槍、魂の尾を焼ききる防壁、サーヴァント一騎、戦艦のシステム連結

 

 

電子の海を支配する空間となりて、敵対者と侵入者を完膚なきまでに粉砕する防衛戦線がここに完遂したのだった

 

 

 

 

「ふむ、一応はこんなものか」

 

 

風呂に浸かりながら一人ごちるギルガメッシュ

 

 

「防衛に完璧はない。課題点を纏め上げ、更なる改良に努めなくてはな。――さて、イシュタルめはどこに配備するか・・・」

 

その声音に、慢心と油断は欠片も見当たりはしなかった――




「ここが、カルデア・・・!電脳空間とはいえ、私が足を運べるなんて!嬉しいのだわ!」

『良かったですね、エレシュキガル様』

「えぇ!仕事もあるし、きっちり働くのだわ!あぁ、太陽、青空、花畑――!素晴らしいのだわ――!」

『ふふ。イシュタル様もきっと気に入るでしょうね――あっ』


「?」

『一応エレシュキガル様はAI扱いなので、そういった振る舞いをしてくださらないといけませんね』


「あぁ、それなら問題ないのだわ。ナノダワ、ナノダワ。ね?」


『(可愛い・・・)』



「しかし、マルドゥークね・・・何を考えてギルガメッシュはそんな暴れん坊の名前をその戦艦につけたのかしら」


『・・・いつか』

「?」

『いつか来る、訣別の時を・・・かの王は見越したのかもしれません』

「訣別の、とき?・・・まさか。母上が敵になるってこと?」


『解りません。ですがこれは・・・対悪・対神の戦艦。その可能性は――』





「我が偉業!!」


「はいババ~。お前魔神の癖に弱すぎなんだよ」

「オォ、オォオォオォオォ――――――!!!」

「フォウせんぱーい。セイバーのキャメロットはいつ~?」

「エアが辿り着いたらだよ。落ち着いて待ってろよ」

「はぁい!(全裸)」

「脱ぐんじゃない!ボクにおぞましいものを見せるなコールタールゾンビ!!見せ付けてくるがっついた美なんてもう好みじゃないんだよ!!ボクが好きなのは、こう。そこにあるだけでいいんだ。ただ、そこにあるだけで尊い――――」

「先輩が消滅した――――!?」


「ありがとう、エア――君を思い浮かべただけで、ボクは君に倒された・・・――」

「もうプライミッツマーダー何十体分貯めてるのー?ティアマトかーさん並に貯めてない?」


Aaaaa(無理はしないでね、フォウくん)


「へーきへーき。まだまだ貯めて、貯めて、貯めて未来に備えなきゃいけないからね」


「称えるがよい!!我が名はゲーティア!!魔神王ゲーティアである!!」

「トイレ行きたいならさっさと行けよぉ!!」


「ふーん。私との約束もあるしね」


「できればオマエなんかに頼りたくないから貯めてるの!」

「ひどーい。あ、ほら始まるよ。『24時間ビーストテレビ、キアラによる72柱魔神調教』」

「チャンネル変えろよ・・・年越しかぁ。エアとお詣り行きたいなぁ・・・よし!やっぱエアと過ごそう!」





「ぷしゅっ」


《風邪か?バイタルには問題は無いが》

「す、すみません・・・はい、王。一緒にソバを食べましょうね」

《日本の麺、とやらか。よい。どうせお前には獣と我しかおらぬのだ。口に運ぶことを許そう》


「はいっ。どうか王と、王を愛する皆様に、素敵な年が訪れますように――」


(エア~!)


「あ!待ってたよ!フォウ――!」

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