というわけでまずは一番高かった出張コラボ!複数あるのでお楽しみに!
それでは、第一弾をどうぞ!
『メイメイ!〜現代に蘇りしゴーストバスターのお時間がやって参りました!このチャンネルではあらゆる科学では説明できない不可思議な現象、台所の汚ればりにしつこい悪霊怨霊、怪奇スポット全般の対処などを請け負う活動チャンネルでーすぱちぱちー!』
そんな明るいノリでハキハキと話す、耳に奇怪なヘッドギアのついた黒髪少女が目の前の困惑している大柄の男との空間にて明朗快活に説明するそれは、さばちゅーぶで大人気チャンネルでありカルデアの資金源ともなるヒューマギアさばちゅーばー、安倍晴明ことメイのチャンネル活動の概要である。彼、いや彼女はこうして日夜世界中に点在する怪奇現象や怪奇スポット、呪物全般を日々追いかけているのだ。平安最強陰陽師の現代活動そのものである。
「あ、あの晴明どの?それは良いのです。良いのですが何故拙僧なのでしょうか?普段のアシスタントは香子殿の筈では?」
困惑している法師服の大柄男性は彼女のライバル蘆屋道満。京都お抱えの凄い陰陽師であり、メイが認める凄い陰陽師の一角だ。ドーマンセーマンのドーマンの方で大体合ってる。
『いつもはそうなんだがな。普段金蔓リスナーの連中からスパチャと贈られるしょうもないお祓いや心霊スポットと違って、私がガチと認めた現象の対処にはお前を使うと決めている。お前は私が認めた陰陽師だからな』
「おおっ!…その心は?」
『お前なら別に死んでも構わないからに決まってるだろ。勘違いしないでよねっ。お前なんか死んでもなんとも思わないんだからっ』
ああ、はい…。微塵も感情の籠もっていないツンデレに乾いた笑いを返しつつ、つまり今回は非常にいとやばしな案件であることを理解した道満。本気で死んでもなんとも思われない程のヤバい案件の概要を聞き返す。
「つまりつまり…今回はそれほど難儀な案件を抱えたという事ですな、晴明殿」
椅子にどっかりと座り脚を机に投げ出し、電子タバコを吸いながら式神を振るいモニターに映像を映し出す。陰陽師アイドルどころか完全なヤンキーめいたガラの悪い不良少女の姿にはもう突っ込まない道満。
「【見たら一週間以内に死ぬビデオテープ】と、【足を踏み入れたら確実に死ぬ屋敷】の二つ。これらを今回は処理していく事にした。恐らくこれが日本における最も有名な二大怪異だ」
浮かび上がったのは、一本のなんの舗装もされていないビデオテープと荒れ放題の一軒家。そこには、日本人ならば誰でも知っている程の恐怖が納められている。
「片方は性的暴行を受けたあと殺害された女の怨霊、片や一家心中で地縛霊と化した女の怨霊。まぁこういう怪異は昔から女が強いと決まっている。女の腐った、という言葉通りにな。フィクションで似たような映画があるのだが、なんとこの度これの所在が確認された」
「なんと、真ですか!」
「嘘など言ってどうする。リスナ…金蔓も被害に遭った、または目撃したという報告も何件も拾っている。本来なら放っておくが、赤スパを投げてくれていた太客の書き込みが途絶えた以上放ってはおけん。更にこれを見ろ」
そうして日本地図の分布を展開するメイ。そこには点々とした黒の点が書き込まれており、日本の南部から少しずつ北へ北へと移動していた。
「これは、まさか…」
「あぁ、そうだ。これは件のビデオテープと屋敷の被害のまとめだ。…これらは今、【日本中を移動している】」
それらはつまり、日本中へと呪いを振り撒いているも同義である。そしてそれらは今や西日本から中部、近畿地方まで足を伸ばしている。やがて都心に至るのは時間の問題だ。
「いい歳こいてバーチャルアイドルに嵌る奴等などどうでもいいが、これらはそのうち夏草、リッカ君の故郷にも来るかもしれん。あそこは霊験あらたかで観光避暑地にも最適だ。香子君と本屋巡りの約束もした手前、こんなものを紛れさせる訳にはいかん。という事でこれらの対処を私とお前で行う。分かったな?」
晴明の口と素行は冷淡で酷薄だが、要するにマスターと愛弟子の為に一肌脱ごうという魂胆である。情が微塵も介在しない冷血漢ではあるが例外もいる。彼は夏草に被害が齎される事を嫌ったのである。何故ならこれは、配信として回していないからだ。
「ははあ、解りました。それでは夏草の為、香子殿のためにも我等平安陰陽師が力を尽くしましょうぞ!」
「皆まで言うな、鬱陶しい。それじゃあ早速対処に移るぞ。起て、幻想郷に行く」
幻想郷?何故そちらに行くのかと告げると晴明は呆れたように返す。
「あのな、配信やDVDブルーレイが主流の昨今にVHSなんて普段遣いしてる場所があるわけないだろ。紫氏がいうには幻想入りしているんだと。そしてオリジナルも博麗霊夢が抑えてる。そこで私がこれを見る」
懐から、メイは一本のビデオテープを取り出す。それは白い五芒星が書かれたものだ。
「呪いのテープにはルールがあってな。見たものは一週間以内に死ぬが、ダビングして他人に見せたら助かるというルールだ。オリジナルを確保した時点でダビングし、これから見る予定だ」
「なんと!?危険なのではありませぬか!?」
「危険も何も、いずれ誰かが連鎖を止めねば未来ある命が脅かされる。サーヴァントなど所詮は奇跡で編まれた亡霊、呪いで凝り固まった怨霊と共倒れするくらいが丁度いいだろう。さっさと支度しろ」
万が一にもカルデアで被害が起きないように幻想郷で、躊躇いなく自分が被害を被る。その合理性は自分の事などなんとも思わぬ冷淡さの表れだが、だが道満としては素直に容認できるものではない。道満は立ち上がり、メイからビデオテープを拝借する
「あ、何をする」
「これを見てしまっては死んでしまうのでしょう?であればこれは拙僧のお役目。晴明殿は拙僧を助けると思い、解決に邁進してくだされたならば」
「道満、お前…」
「まさか平安最強の陰陽師がしくじるはずなどあるはずがありませぬでしょうが、万が一、万が一駄目だった場合に残るのがアナタであるならばなんの憂いもありませぬ。ですのでどうか、この場は拙僧に」
信じているのだ。晴明に解決できない怪異など無いと。ならばこそ、彼には全力で力を振るってもらいたいと道満は信じた。ならばこそ、彼は犠牲役に立候補する。
「道満…」
晴明は感心感激したように道満の肩に飛び乗る。ヒューマギアとはいえ重力軽減しているので、道満の肩に少女のような重さが乗り…
「そう言ってくれると思っていたぞ。片方の足を踏み入れたら死ぬ屋敷にも勿論お前が行く。お前は私の大切な替えの効かない玩具だからな」
「あぁ、最初から殺しには来ていたのですな…」
「腐るな腐るな。私が香子君以外に頼る相手などお前しかいないんだから。光栄に思えよ道満、お前は私の大切な存在なのだからな」
邪神サイドによった思い入れやかけがえの無さの発露に苦笑いを浮かべながら、道満は頷く。何はともあれ、これにはリッカの故郷を護るための戦いでもあるのだ。
「かつての償いのため…ンン、やってみせましょう!この道満と晴明殿、ドーマンセーマンコンビの発足にて!」
「思ってたんだけど、なんでお前が最初なの?」
そうして二人は幻想郷へと向かう。日本に根付く、最大の怨霊を排除する為に…。
幻想郷 無縁塚
道満「ここで見るのですな…」
晴明「幻想郷の住民の万が一も危惧してな。じゃ、見終わったら教えろ」
退出する晴明。道満は覚悟を決め、ビデオテープを機械に押し込む。
道満「…………………」
…そこには様々な不可解な映像があった。飛散する文字、髪を梳かす女性、浜辺、目のようなエフェクト。謎の言語の音声。
「!!」
そして彼が最後に見たのは…ポツンと点在する、井戸。そこで映像は終わる。
道満「………お、終わりましたぞ。晴明殿」
晴明「私がなんとかできなければ、あと一週間で退去だな」
ニヤニヤと笑う晴明。だが…その目は決して、戯れの色は浮かんでいなかった。
「では次だ。かつてのリッカ君が住んでいた地獄、その地に行くぞ」
「なんと?」
「屋敷もな、動いているんだよ。呪物としてな」
二人の陰陽師は、さらなる怪異へと挑戦する…
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