人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

201 / 3000
200話だぁ――!!



ありがとうございます!!ここまで来れたのは、一重に善き読者たる皆様のお陰です!!


下の上の文章力、台詞まみれの小説ではありますが、皆様の支持を得られたという事実が総てを打ち砕き自信と誉れに変わっています!

200話ならばこの話!自分が一番大好きな、cccのアレしかありません!

それにオリジナルを絡めたマテリアルめいたお話し、どうぞご堪能ください!


それでは、エア事英雄姫ギルガメシアの言葉をお借りして締めさせていただきます!

自分は皆様と、皆様を産み出してくださった総てが大好きです!

本当に、本当にありがとうございます!これからも、どうかどうか、よろしくお願いいたします!


よいお年を!これからもこの作品が、皆様のかけがえのない人生を彩れる娯楽でありますように――!



「うわぁあぁいっぱいウィルスが来てる!?凄い勢いでパソコンが食い破られていくぞ!?この容赦の無さはギルガメッシュだな!え!?データを喰らって受肉!?くそぅあの御機嫌王め!どうして覗き見している僕の事を考えてくれないんだ!マギ☆マリもここまでか――!!」


『ウィルスイレイザーワクチン・キャスパリーグ』

「えっ!?ウィルスが浄化されていく・・・!?」

『リカバリーバックアッププログラム・ギルガメシア』


「データ復元まで!?な、何が起こっているんだ・・・!?」




マイルーム

「勘違いするなよ。オマエを赦したわけじゃない。一生赦してやるもんか。・・・でも、オマエに叩き落とされたお陰で、ボクは大事な親友が出来たわけだし」

カタカタ

「それに、エアと会ってから・・・オマエをいたぶってほくそえんでる自分が、恥ずかしくなって来たからね。エアに全身全霊で感謝しろよ」

『キャスパリーグ・・・!』


「勘違いするなよ!オマエなんか絶対赦さないからな!!」

『マーリンシスベシプログラム・フォウ』

「あっ」

『うわぁあぁあ大量のムキムキキャスパリーグがやってくる――!!!』

「・・・まぁいいや。不可抗力だし」



王の真理 人類最古の物語

深夜、カルデアの一室、皆が寝静まった夜

 

 

 

部屋の中央にて、英雄姫となり、深呼吸する

 

 

 

 

「すー、はー・・・すー・・・」

 

 

これから自分は、王に御願いをするのだ

 

 

器の中に魂は在った。英雄王は確かに傍にいてくれた

 

 

ならば――どうしても、御願いしたいことがある

 

 

 

《なんだ、眠れぬのか。深呼吸などしおって。休めるときに休むも王と姫の仕事なのだぞ》

 

 

器の奥から響く絶対者の声。英雄王ギルガメッシュだ

 

 

――自分と共にあった、正真正銘の英雄王

 

 

「はい。――英雄王。貴方に問いを投げ掛ける無礼を御許しください」

 

意を決して問い掛ける。覚悟を決めて

 

 

《む?珍しいな。お前が我に何かを請うとは。よいぞ、苦しゅうない。話してみよ。大抵の願いは叶えてやろう》

 

 

――やった!では遠慮なく・・・

 

 

「はい。――英雄王。貴方の口から、貴方の人生を語っていただきたいのです」

 

《――――》

 

「叙事詩はあくまで人の手の編纂。正確ではあれど他人の所感。ワタシはそれでも心が踊りましたが・・・」

 

 

――傍らに王がいるなら話は別だ

 

 

 

聞きたい。王自身の口から

 

 

知りたい。王の歩みし軌跡を

 

 

誰に評価を預けていない・・・王のありのままを。自分は聞いてみたいのだ。王の語るままに

 

 

《――何かと思えば。改まって我に何を問うのかと思えば、我のことを識りたい、ときたか。そして我に語らせるとは、まこと姫らしい我が儘よ》

 

 

――ごめんなさい。でも、どうしても知りたいのだ

 

 

せめて半生だけでも知りたい。あの放浪の果て、貴方が何をつかみ、何を得て

 

 

何故、不死を諦め戻ったのか――それが、どうしても知りたくて

 

 

 

《フッ、好奇心と無垢と敬意の化身に制止は無駄か。――よい。お前たっての嘆願だ。気前よく話してやろう》

 

「やったぁ!ありがとうございます、英雄王!」

 

 

《そこまで崇められればけして無下に出来ぬではないか。英雄姫などいい得て妙に過ぎる》

 

 

ゆっくりと寝台に腰掛け、目を閉じる

 

 

《楽にしろ。直ぐに終わる。何しろ、叙事詩通りの顛末だからな。映像はサービスしてやる。気前が良かろう?臨場感も必要だからな。――眠るなよ?》

 

「(わくわく、わくわく)」

 

《要らぬ心配であったか。真に人をその気にさせるのが上手いヤツよな》

 

 

「えっと、確か英雄王が放浪を・・・」

 

 

《よい。大まかなあらましを一から話してやる。今更場面を選ぶのも面倒だ。我の口から、我が幼年期を語ってやろう》

 

 

――あ

 

「ありがとうございます!英雄王!!」

 

《たわけ、深夜だ深夜。声を落とさぬか》

 

 

「あ、・・・すみません・・・」

 

 

《解ればよい。では――始めるとするか》

 

 

 

意識は、ふわりと浮き上がり

 

 

そのまま、器の奥へ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《先々代の王、ルガルバンダと母リマトの間に我は産まれた。人として最上級の肉体と、真理に至る知恵を与えられてな》

 

 

――神の胎から産まれ、三分の二が神である至高の王。それが英雄王ギルガメッシュ

 

 

《幼年期の我は、それなりの善人だったそうだ。民どもからは蝶よ花よと愛でられ、理想の王を得たと喜ばれたそうだからな》

 

――はい、英雄王。質問を宜しいですか

 

《赦す。述べよ》

 

だったそうだ、や。らしいという表現は些か誤りのような?まるで幼少期の記憶が曖昧なような・・・

 

 

《まさしく曖昧なのだ。我と幼少の我では性質がまるで異なる。幼年期の我など、知覚すらできん》

 

そんなにですか!

 

《うむ。幼年期の我も同じだろうよ。成長した先がこの我と知っていたなら、成長を止めていた可能性すらある》

 

――となると、幼年期の英雄王は別の英霊に・・・?

 

 

《だろうな。賢しくも冷酷な我として、いずれお前の前に立つかもしれぬ》

 

――どんな子なんだろう

 

《話を続けるぞ。成人した我は、自らの方針を定めた。人を治める王としては生きぬ。人を諫める嵐として生きるとな》

 

それが、彼の王道

 

あらゆるものを見て、価値を決めることを選んだ彼の生きざま

 

日々の幸福ではなく、人々の営みを見定める在り方を

 

《そこから先の顛末は叙事詩にある通りだ。我は思うままに奪い、収集した。人も国も、我のものだ。奴等が産み出す宝、その総てを集め、我が物とした》

 

――それは

 

《そうだ。お前なら察していよう。裁定するためだ》

 

決めるため、さだめるため

 

価値を、己の基準で決めるために

 

 

《人間は発明の基準だが、共通の基準を持たぬ。いや、共通の基準を持たぬからこそ、新しいものを生み出し続ける。なればこそ絶対の基準が必要だ。人を越えながら人であり、神に属しながら神ではない裁定者がな》

 

あらゆる基準を定める王。どちらの価値をも認めながら、その総てを分け隔てなく裁く絶対者

 

それが、彼なのだ。英雄王ギルガメッシュ

 

《治めるだけなら人でよく、脅かすだけなら神でよい。神々はそれを最後まで理解しなかった。――どうだ?休憩を挟むか?》

 

――いえ、続きをお願いします!

 

《良かろう。しかと聞け。――ウル・ナンムの法典が定められる前の話だ。後にハンムラビめが細かく定めたが、根本は人が人を訴えるための法よ。我は我の基準で生きた。財を集め、女を抱き、友と戦い、地上の全悪を滅ぼした》

 

――その光景は、確かに目の当たりにしている

 

それを見せてくれた、何者かによって

 

――そして

 

《うむ。――その仕事が済んだ後にな。エルキドゥ――我が友が塵に還った。有り体に言えば、死を迎えたのだ》

 

 

――そして、その死は彼に深い影を落とす

 

 

《我はそれまで、死を悼んだ事も、死を恐れたことも無かった。意識さえしていなかった訳だ。だが、目の前で対等の力を持っていた者が消えた。誰であれ死はあると知っていたが、実感したのはアレが初めてだった》

 

 

――思い出す。天雷のごとき王の叫び

 

友を喪った、王の慟哭

 

 

そして、彼は荒野へと放浪することになる

 

死の運命を打倒しに。自らの年月を費やして

 

 

それこそが、ギルガメッシュ最後の冒険。『不老不死を求める旅』である。彼は、死を克服したとされる賢人を訪ねることにしたのだ

 

――長い長い、放浪の果てに

 

《無論、不老不死の薬について考えていなかった訳ではない。我の蔵には、地上総ての財宝が集められなくてはならんからな。ヤツが塵に還らずとも、いずれは取り掛からなければならない仕事だった。加えて、我には理由ができた。我はヤツを奪った死を嫌い、恐れた。生まれてはじめて、己の生に恐怖したのだ。そこからの旅は、滑稽の一言に尽きる》

 

自嘲しながら、笑いながら彼は語った。笑っても構わんぞ?と問いかけてきた

 

――笑うなんて、思いもしなかったが

 

 

《冥界には死を克服した男がいるという。我はそれまでの人生と同じ年月、荒野をさまよい、冥界を目指し続けた。――どうだ?伝説の通りであろう?我は死にたくない一心で惨めに地べたを這い続けた。人間達と同じ動機だ。神の子も、死を前にしては人間と何ら変わりはないという話だ。だがなエアよ。ここが我の我たる所以だ》

 

ぐっ、と腕を組む魂

 

《我は愚かさにおいても、人間どもより上だった。・・・見苦しくも、我は自分の浅ましさを飲み込み続けたのだ。――何のために、誰のために。死を越えようとしたのかも解らないまま。ただ、己は永遠不滅でなければならんと、空を睨み続けてな。――しかと覚えておけ、エア》

 

ゆっくりと息を吐く

 

《永劫が愚かなのではない。永劫を求める心こそが愚かなのだ。我に語らせたのだ、我の持論の一つも覚えていけ》

 

――貴方は、自分が

 

自分が赦せなかったのですね。愛する人間を見定める職務を放棄する自分が

 

自分の使命を邪魔する、死という存在そのものが――赦せなかったんですね。

 

《――次々と、我が真理を衝くものよな。それは、貴様だけの答えだ》

 

――はい。貴方は、自らの王道を貫くために。世界の終わりまで在り続ける為に、不老不死を求めた・・・ 

 

 

《冥界に辿り着いた我は、賢者から不老不死の秘密を聞いた。なんということはない。賢者は神の列に加わり、長寿を得たというだけだった。まさにお笑いぐさだ。賢者は半ば植物と化していた。神の列に加わるとはそう言うことだ。その時の我の落胆は言葉にできぬ。我は人の欲望を抱いたまま不滅でなくてはならん。欲望を味わえぬ体で永劫を生きて何になろう》

 

 

『随分と、下らぬ旅をしたものだ』

 

彼はそういって、冥界を後にした。失望と落胆で、肩を落としながら

 

 

《さっさとウルクに戻り、我が宝物庫を完成させる気になった。――しかし、だ。賢者は自らの在り方を否定され、弱気になったのだろう。慌てて我にある秘密を伝えてきた》

 

 

 

「――貴方の想いは解りました。私もアヌ神の慈悲を乞えとは言いませぬ」

 

 

「当たり前だ。天地が裂けようが、我が神なんぞに情けを乞うものか」

 

 

「ですから貴方に――ある秘密を、教えましょう」

 

 

――それが、深淵に生えているという、この王が求めてやまなかった『不老不死の霊薬』である

 

 

《そんなものを口にしたところで、植物になるのでは話にならんが、それはそれで珍しい宝だ。不老不死の妙薬として我が蔵を飾るだろう。我は深淵に立ち寄り、霊草を瓶に詰め、地上に戻った。――さて、ここで問題だ》

 

フッ、と王が笑う

 

 

《深淵とは原初の海。その底に霊草は生えていた。さて――我はどうやってそれを手にしたと思う?》

 

 

――潜った、と言うことですか?王と言えど、そんなに深くを潜れたとは・・・

 

《正解だが、秘訣がある。瓶があろう?此にな、砂を詰めたのだ。重石があるならば――》

 

 

――成る程!しっかり沈む!

 

《お前も深淵に用があるときは覚えておけ。『深淵を打破する鍵は、冥界の砂』とな》

 

 

――はい!瓶を持っていきます!

 

 

《よい返事だ。息抜きを終えるぞ。――だがまぁ。不老不死を求めた理由はこんなところだがな》

 

 

フッ、と笑う英雄王

 

 

――あれ?英雄王。再び意見をよろしいですか?

 

 

《む?まだ知りたいことがあるのか?》

 

 

――はい。不老不死の妙薬を持ち帰りはしましたが、王は不老不死にはなり得ませんでした。確か・・・

 

《――はぁ。エアよ、我は確かに伝承通りと言ったであろうが》

 

言いたくなかったのだ、察せよと言わんばかりに口を尖らせ、拗ねたようにいう

 

《あれは蛇にくれてやった!我は水浴びをしている隙に、不老不死をかっさらわれた慢心の徒。欲望を良しとする我が、野を這う蛇の欲望に足を掬われたのだ。ただ『腹が減った』という欲望にな!》

 

ヤケクソ気味に言い放つ慢心王。だから蛇が嫌いなのですね・・・

 

《お前も、水浴びをする際には気を付けることだ。置き引き、掠め取りにはな。お前にとっての蛇はどこに潜んでいるかは解らぬぞ》

 

 

――はい。でも、不思議だと思います

 

《む?何か心に触れたものがあるのか?》

 

 

はい。――確かに王は不老不死の妙薬を蛇に賜らせました

 

ですが貴方は再び深淵に戻らず、そのままウルクに戻り、王として都市を穏やかに治めました

 

 

――自分はここが気になったのです。手段もある、力もある。叡知もあった英雄王が、生涯をかけて探し求めたその薬を、何故手放したのか

 

 

・・・もしかしたら、ここの英雄王の所感にこそ、自分が求めた理由があるのかもしれない

 

 

――話しづらい話題を蒸し返し、誠に申し訳ありません。――ですが、どうか教えてください

 

 

意を決して、訪ねる

 

 

不老不死など不要と断じた、貴方の得た胸の答えを――

 

《――ふむ。それは確かに、叙事詩には書いておらぬな。好奇心旺盛なお前がそこに目を付けるは必然であったか》

 

ふむ、と愉快そうに目を閉じる

 

 

《だがまぁ、確かに不思議よな。あのときの心境は、我とて言葉に出来ぬ――》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神に準える不老不死など不要。そう語りながら、心の一端で我は期待していたのだろう。

 

 

 

「――フッ、ふはははっ!見たか友よ!エルキドゥよ!お前の友は!偉大なりし王は遂に成果を不老不死を掴んだぞ!!」

 

 

地上に戻った我は自らの成果に笑みをこぼした。これで死を打倒できる。我が友の雪辱を晴らせるのだと

 

 

同時にウルクの民どもの声も想像した。不老不死を持ち帰ったとあらば、民どもの称賛も今までにないものになるのは自明の理

 

「民よ喜べ!賛美せよ!お前たちを治めし絶対なる王は!未来永劫不滅の存在となったのだ!!我が威光は世の果てまで世界を照らし!貴様らの営みを見守り続けよう!!真なる王は!滅びの定めより解き放たれたのだ!!」

 

 

――国を空け、国を捨てた王に構う道理は無く。後のウルクにはただ一人しか残っていなかったのだがな。所詮、我も肉を持った人の子だったと言うことだな。若気の至りと云うヤツよ。

 

――しかしそうなると虚栄心も顔を出す

 

 

「――なんだこのみすぼらしい姿は。まるで浮浪者ではないか。何をしていたのだ我は。これで歓喜と祝福を得るつもりだったのか?」

 

まるで、ではなくまさしくみすぼらしい姿が気になってな。今まで一顧だにしていなかったというのに、誠現金な事よ

 

 

ウルクに戻る前に身を清めようと、手近な泉で疲れを癒した

 

 

「――――あぁ――・・・・・・・・・心地好い――――――」

 

 

積もり積もった数十年もの疲れだ。水は天上の風のように、霊峰の雪のように。暖かく、冷たく、柔らかに我を癒した

 

 

――安らぎ、というのだろうな。肉体も精神も長きの淀みから開放されるようだった

 

 

「あぁ――我は、なんという――なんという偉業を果たしたのだ・・・――ッッッ。天も、地も、人もッ!もはや我に並び立つものは無いのだ――ッッ!!」

 

 

我はこの時ほど、自身の成果に酔いしれたことはない。叫びだしたくなるほどの陶酔だった

 

・・・白状すれば、それが我にとって初めての悦びでな。財を集めるのは我の本能。呼吸のようなものだ。悦びではない。

 

だが――あれは違った

 

「世界よ、生よ、神々よ!感謝する、称えよう!よくぞ我を産み出した!よくぞこの我を――この素晴らしき世界に産み落としてくれた――!!」

 

 

我は初めて、この世に生を受けたことを感謝し、歓喜した。人としての視点を持つ、などと謳っておきながら、我はあの時まで人間ではなかったのだ。

 

 

「我は今――正しく、まさしく!未来永劫に至るまで!!全智なりし、全能たる王である――!!!」

 

 

我は総てから解放されていた。迷いも恐れもなく、執着も責務もなく。圧倒的な全能感に身を震わせた

 

 

「あぁ、これが、これが――!!」

 

 

これが生命の躍動、これが我欲の報酬。この、宇宙が誕生した結論とも言える悦びを、我は未来永劫欲しいままに出来るのだと!

 

だが

 

「――――――――――――――――――――――――」

 

 

そんな愚か者を待っていたのは、蛇めの盗み食いだ。霊草は失われていた。蛇は新しい身体を得て去っていた

 

「――――――ふ、は」

 

この時我に走ったのは――笑いだ

 

 

「ふはははっ!!ふはははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!ははっ!ははははははははははははははははははははははははははははははっ!!ああっ――ははははははははははははははは!!はぁ、はぁふはははははははははははははははは!!ひははははははははははははははははは――――――!!!」

 

 

腹が捩れるほど笑った。おかしくておかしくて仕方がなかった

 

 

見ろ、これが結論だ、と。我は自らの愚かしさに大笑いした

 

 

「あぁ、あぁ――そうか。そういうことだったのか――――」

 

 

我が手にし誇るものは『無』だけだ。ああ、何も得られない、と言うことではないぞ?

 

最終的に我の手には何も残らない――それこそが我の仕事に与えられる唯一の報酬だと理解したのだ

 

 

「――総てには、滅びと終わりが必定である」

 

 

初めて得た命の充実も、生の悦びも。このように一瞬で消え去るもの

 

 

これこそが人の世だ

 

 

これこそが、我が見定めるべきものだ

 

永劫不滅の身でこの醍醐味の何が分かろう!

 

 

不老不死など所詮は凡俗の不始末。長く生き続けなければ終わりに立ち会えない雑種どもの夢にすぎん

 

 

「――フッ。気付いてみれば、真理は其処にあったのだな」

 

 

我に不老不死は不要だった。もとよりこの眼は未来を見通す。死を恐れる理由は何処にもなかったのだ

 

 

我はあの時代にあり

 

 

既にして不滅であり

 

 

時を重ねずとも、遥かな未来を見据えればよい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――人類最古の物語

 

   後の世に語られ続ける英雄としてあれば、我の責務は果たされる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話はそれだけだ。我はあの時、人として生まれ、悦びを味わったのちに――人として死んだ

 

 

 

――すまんな。お前は我を完全かつ全能と捉え、敬意と憧憬を払っているが・・・我とて未熟だった時はある

 

 

我は生涯のほぼ総てをかけて成長した。肉体は友との日々で育ち、精神はこのとき、成熟を迎えた

 

 

 

 

 

――――長い幼年期が、ようやく終わったのだ

 

 

 

「――――――――・・・・・・・・・」

 

 

見上げたソラはどこまでも広かった。我の眼を持ってすら、見通すには幾星霜、といったところだ

 

 

その頃には我の体も朽ち果てる。だが人間の認識(せかい)は広がっていく。いずれ何億年もの先の光すら見通すだろう

 

 

・・・そんな未来を我は見たのだ。それは心躍る光景だった。思えば我は、やる気を失っていたのだろう

 

 

集めるべきは既に集めた。今の時代にはもう、これ以上の愉しみはない

 

 

ならば潔く滅びるだけのこと。――死など何度でも味わえばよい

 

 

その後にいくらでも甦る。その度に、その時代を見定めよう。この世の終わりまで

 

 

 

人類が我の(にわ)を越え、暗い大海にこぎ出し――ソラの果てに辿り着き、結論を出すその日まで――――――

 

 

「――我は、貴様らを見続け、裁定の刻を待ちながら。お前たちの文明を守護し続けよう――」

 

 

 

 

 

 

 

 

《――話としてはこんなところだ。すっかり日を跨いだな。もう朝ではないか》

 

 

見ると、時計が早朝を示していた

 

 

――その時の、英雄王の気持ちが魂に流れ込んでくる。確かに、この気持ちに比べれば。不老不死なんてちっぽけな価値しか持たない

 

 

《ま、ウルクに戻って宝物庫を完成させた後、こっそり深淵に戻って回収したがな。アレはアレでレアな宝だ》

 

 

――あぁ、やっぱり

 

「財を集めるは、英雄王の本能ですからね」

 

《――そうだ。王のお茶目は笑って流せ》

 

顔を見合わせて笑い合う二人

 

《さて、最早二度寝と云う訳にもいくまい。よい、今日は安息日とする。我もお前も完全休眠だ。一日を休みに費やすぞ》

 

「解りました、英雄王」

 

器の機能を完全にシャットダウンし、完全休眠の体勢に入る

 

 

《起動権は我に回せ。何かあれば我が跳ね起きる》

 

「はい、ありがとうございます。英雄王」

 

《――む?どうした。蕩けた視線で見つめおって》

 

 

――あ、ばれてしまった。うっかり見抜かれちゃった

 

 

《もしや貴様、尊敬の眼差しで我を見ているな?良かろう、存分に見よ。なんなら着替えても構わないが?》

 

「尊敬してない日なんて、一日たりともありませんよ」

 

偽らざる本心を告げる

 

 

「英雄王、一つだけ・・・宜しいですか?」

 

 

《赦す。手短にな。休息が狭まる》

 

「はい、では・・・」

 

こほん、と咳払いし

 

 

「――――ありがとう、英雄王。ワタシは貴方に出会えて本当に良かった」

 

《――――》

 

――自分を認めてくれた王

 

見守り続けてくれた王

 

価値を見出だすまで、寄り添ってくれた、愉快で、素敵な王

 

世界の美しさを、その総てを見せてくれた王に

 

 

「ワタシは、貴方と、貴方の愛する総てが大好きです――」

 

 

――確信した。王は、人を愛している

 

 

『世界の果てまで、お前たちを見定める』なんて・・・深い愛が無ければ到底なし得ない

 

 

愛しているから、愉悦を見出だし

 

 

愛しているから、時には深く失望する

 

 

そして、遥かな果てに導き出す答えを信じているからこそ――王はその職務を果たしている

 

 

人類が駆け抜けるその先へ

 

人類の織り上げていく『歴史』が、いつか

 

 

――王にとってかけがえのない、『紋様』を描き出すと信じて

 

 

――『人類の軌跡』という宝を手にする、その日が来ることを信じて

 

 

《――敵意で我を睨む輩は数知れず、眼を潤ませながら挑む雑種より尚稀だな。眼を輝かせながら、我の総てを愛していると宣った姫は》

 

ゆっくりと頭を撫でられる

 

 

《そのありのままを見据える眼、何者にも染まらず、総てを正しく愛するその在り方。けして損なうなよ》

 

「――はいっ」

 

《獣めが倒されるのも道理よな。人類が積み重ねた汚点、癌細胞。より良く未来を築き上げる意志が人類悪ならば、お前はその真逆。自らの居場所が世界の何処にも在らずとも、あらゆるものに敬意と愛を見出だし。その総てを『好ましい』とする在り方。人類悪すらも否定せず、世界の総てを『受け入れる』その魂。悪性を眺めながら、悪を否定せずただ寄り添い、善を称えながらそれを慈しむ。その心が振る舞う愛はまさしく――》

 

――その言葉は、聞こえなかった。聞かせるつもりもなかったのかもしれない

 

 

 

《――母や姫が子に、民に向ける無償の愛。それが人類総てに向けられているならば・・・それは『人類愛』と呼ぶに相応しかろう》

 

 

――視線が合い、こちらを見詰める王の瞳は、何処までも穏やかだった

 

 

「?英雄王?」

 

 

《何、他愛ない所感だ、忘れよ》

 

「は、はい。――あ!そうです英雄王!」

 

 

《なんだ、まだ何かあるのか?》

 

「はい!その――」

 

――お願いしてばかりだが、ええぃままよ!戦いはノリがいいほうが勝つって王も言ってたし!

 

 

「人理を取り戻したら、いつか――皆で星を飛び出して、果てしないソラにこぎだしませんか!?」

 

 

《――何?》

 

 

王の話を聞いて、胸が高鳴ったのだ

 

 

 

世界がこんなにも広いのに、そこを飛び出した先には王すら見通せぬ程の未来が広がっているという

 

 

そんなの――ワクワクしない筈がない!

 

 

「全部を終わらせたら、マスターやマシュ、マリーにロマン、ダ・ヴィンチちゃんにフォウ!部員ネットの皆様も通じて!勿論王が先導で、遥かなソラに旅立ってみたいです!その果てに何があるのか、その先にどんな世界が待っているのか・・・!ワタシは、皆と一緒に見てみたいです!」

 

 

《――――》

 

眼を白黒させ、固まる王

 

 

「――ダメ、ですか?」

 

――やはり、人類には早いということなのだろうか・・・?

 

 

《――いや。あぁ・・・そうであったな》

 

ニヤリと笑う王

 

《人類どもが味わう愉しみであるならば、先ずは我が味見してやるのが道理。何億年も先の愉しみを、一足先に堪能するのも悪くはないな》

 

 

「!では!」

 

 

《良かろう。準備を進めておく。我とお前がその時と判断したならば、我等は飛び立つとしよう。果てしなき運河。――星の大海へ!》

 

 

「――はいっ!!」

 

 

心踊る盟約、人理の先に続く旅

 

 

誰も見たことのない、ソラの果てに至る旅路

 

 

 

王は笑い、姫は期待に胸をときめかせる

 

 

 

人類がいずれたどり着くその先へ

 

 

一足先に、駆け抜ける未来を夢見て――




《次から次へと仕事を増やしおって。――しかし盲点であったな。確かにカルデアごとマルドゥークにて旅立てば、雑種どもの下らぬ雑事に追われることもない》


「すぅ・・・」

《・・・全く腹立たしい。我の予想を当たり前のように上回りおって。無味無臭だったころが懐かしいな。眼を輝かせて一端の口を利くようになったものよ》

「・・・フォウ・・・ばいく・・・ずっと、いっしょに・・・」

《――星の海のツーリング、姫と獣の道行には相応しかろう・・・シドゥリ》

『はい、ギルガメッシュ王』


《恒星間航行、星々を渡る為の機能を整備しておけ。――我の旅路は、いずれ其処にすら至るやも知れぬ》


『ふふ、はい。解りました。お任せを』


《――励めよ、エア。お前が望んだ旅路は、世界を救った先にあるものだ》

「むにゅ・・・」

《我と、お前。どのような結末を迎えるか。――我も愉しみながら旅をするとしよう――》

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