人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

2017 / 2537
リッカ「ペンギン〜!」

マシュ「お誕生日、おめでとうございます!!」

ペンギン「リッカ、マシュ。わざわざ祝いに来てくれたのか」

リッカ「うん!仕事のプロのペンギンの誕生日が勤労感謝の日だなんて!」

マシュ「サブチーフなのが惜しいくらいの有能ペンギンさん…まるで…有能ペンギンさんですね!」

ペンギン「なにそのキリエライト構文。…実は、誕生日はそんなに嬉しくなかったんだ」

リッカ「ふぁ?なんで?」

ペンギン「ブラック企業勤めが長くてな。そんな俺が勤労感謝の日を祝うなんてなんて皮肉だ…なんて思っていた」

マシュ「では、今はどうですか?」

ペンギン「凄く嬉しい。君達に出会えた事、君達に祝えてもらえた事がだ。ありがとう、ふたりとも。ありがとう、カルデアの皆」

「「どういたしまして!」」

ペンギン「せめてものの御礼に…」

「「御礼に?」」

「ペチペチさせてくれ。ペチペチ、ペチペチ」

「「あぁ〜〜………」」


ペンギン、誕生日おめでとう!!

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エピローグ〜ハッピーテイコウエンド〜

そんなこんなで、ペンギン達のカルデアスカウト、某企画からの引き抜き、ブラック企業解体は完全な形で完遂する事が叶った。オルガマリー、ニャルラトホテプ、そしてエンジェルグレイブの観点から、某企画は完全に監視指揮下に入ることになる(某企画の技術力は準世界改変装置や固有結界生成装置を制作できる領域のものすらある)。

 

「そこで今回、月の新王たる岸波白野様にお勧めいたしますのは、マルチスペースを利用した保温麻婆豆腐携行装置です。これは四次元空間を利用し常に嗜好品を持ち歩けるカルデアと某企画の技術力を重ね合わせた新商品で…」

 

「えぇやん…(ほっこり)契約」

「奏者よ!?」

 

「ありがとうございます!」

 

ペンギンは引き続き仕事に対し頭角を表し続け、カルデアオペレーターの他に外宇宙や外生生命体への契約販売業務員に抜擢。月の新王やウルトラウーマンフィリア相手の営業に精を出している。ブラック企業の呪縛から解き放たペンギンはまさに水を得たペンギンであり、早くも楽園内では不動の信頼と地位を築いている。

 

(仕事を心から楽しく、素晴らしいものと教えてくれたカルデアには感謝しかない。この恩は、一生を懸けて返していこう。この命の限り)

 

「シャチ、次のスケジュールは」

 

「はい、ペンパイ!次は刹那Fセイエイさんと周辺軌道のパトロールです!」

 

シャチはたっての希望と、ペンギンが見ていなければ危なっかしいという理由からペンギンの助手、フォローに回っている。厳しく、時には優しく育成されたシャチは少しずつミスも減り、名サポーターとして経験を重ねている。

 

「まさかこんな形で宇宙旅行ができる日が来るだなんて思いもしませんでした!カルデアは宇宙進出が悲願と聞きましたし、僕達の頑張りが夢を叶える一歩になるんですね!」

 

「そういう事だ。給料の為に働くのも勿論間違いじゃない。だが、自分からやりたい仕事だとやっぱり見えてくるものは違うものだからな」

 

「はい、ペンパイ!僕たちもこの新しい職場カルデアで、一生懸命頑張りましょう!敵対者や侵入者、縄張りに入った奴は食い殺していいとお墨付きも貰いましたしィ………!」

 

「俺は食わないでくれよ、頼むから」

 

「勿論ですよペンパイ!………今は、ね」

 

「なにか言ったか?ほら、早く地球に戻るぞ」

 

「はーい、ペンパーイ!」

 

二人は外交動物として、カルデアでいきいきと働いている。ペンギンの言葉通り、生まれ変わった…或いは、自分を変えたのだ。

 

「いいねいいねー!僕にピッタリのナイスデザインだよー!」

 

一方こちらはパンダ。腹黒面はすっかり矯正され、自分から礼装や技術テスターに立候補。日頃新開発されたあらゆる発明品のテストを行っている。

 

(もうあんな怖いところに行きたくないし、給料は数千万だしサボったりしないで真面目に働くのが一番だよね!真面目に仕事をする以上に最適なお金稼ぎはないんだ!)

 

一度この世の深淵を垣間見た事によりこちらも完全に改心。ブラック企業で培われた図太さとふてぶてしさであらゆる不満や改善点を提唱する模範的テスターとして活動中だ。

 

そして意外な才能も開花しており、ゲームや娯楽、食べログ等の幅広いレビューや実況をさばちゅーぶにチャンネル開設投稿してみたところこれがヒット。登録者数十万の売れっ子さばちゅーばーとしても活動中である。

 

【豚をおだてりゃ木に登る。パンダをシメれば人気者。くれぐれも炎上するような真似は控えるんだぞ?】

 

「はい!邪神様!」

 

(なんでこの人がマネージャーなのぉ〜〜〜〜〜!!!)

 

だが調子に乗って炎上するのは目に見えていたため、動画吟味はニャルラトホテプがこなしていた。逆らう、炎上するなどすれば、お仕置きとして即座にケイオスカルデア行きであるためパンダは逆らえない。というか逆らう発想が起きない。

 

【それはそれとして、動画は好調だ。ボーナスは弾むぞ】

 

「ありがとうございますぅ〜!!」

 

(でも怖いだけでクソ上司とは天地の違いだ!マネジメントも完璧だしこれからもこの人に頑張ってもらうぞ!)

 

【頑張ってもらう、じゃないんだよ白黒畜生。お前も頑張るんだよ?(ミシミシミシ)】

 

「ずびばぜんでじだぁ〜〜!!心読まないでください〜〜!!」

 

まぁ、ニャルからしてみれば絶妙に可愛くない白黒パンダなので対応は塩よりの親身。さばちゅーばーの売上をノルマとして、ニャルラトホテプは今日もパンダのケツを蹴り上げる。

 

「ど、どころでニャルラトホテプさん…!上司は一体どうなったんでしょうか…!」

 

【ん?あぁ、アレか。ケイオスカルデアで今日も頑張ってるよ。ほら、これ飲め。万能ドリンクだ】

 

パンダに栄養ドリンクを叩きつけ、自分は子供たちが作ってくれたサンドイッチを頬張るニャル。

 

「ん?おぉお〜〜!なんだか力が漲って疲れが吹き飛んでいくぅー!!」

 

【そうだろうそうだろう。それは人間や動物に対し効く万能ドリンク、ケイオスカルデアで発明した試作品だ】

 

その様子だと効果はばつぐん、効き目は2倍なようだな。何よりだとサインをサラサラと書くニャルラトホテプ。

 

【名前は上司汁。上司をベースに様々な改良を繰り返したものだ、彼に感謝しろ】

 

「えっ、それってつまり」

 

【要するにそれは上司のエキスだ】

 

「ブーーーーーーッ!!!!!」

 

【あ、こら。吐くな】

 

上司の身柄は引き続きケイオスカルデアの預かりとなる。その身体は人類の輝かしい未来の礎となり、科学技術をおおいに発達させてくれる実験体としての任を全うするだろう。

 

 

【せっかく最初の試作品を貴様に飲ませてやった私の慈悲と愛情が理解できなかったのか?んん?】

 

「いやだって流石に上司エキスは原材料知らなかった方が良かったというかいだだだだだだごめんなさいごめんなさいごめんなさいー!!」

 

【どうやらお前には反省が必要なようだ。午後の時間は夕方までケイオスカルデアで僕と搾取】

 

「搾取って何ーーー!!はなじでー!だーーずーーげーーでーー!!!」

 

と、こんな風に調子に乗っていかないよう入念に出る杭を打つニャルラトホテプとパンダ。監視付きとは言え、パンダもまた出来ることを懸命に行っている。

 

 

(初めはどうなることかと思ったが…新たに訪れたここで、俺達はやりがいと生き甲斐を見つけた)

 

定時にタイムカードを押し、優雅に食堂でランチを食べながらペンギンは思い更ける。

 

「お疲れさま、ペンギン」

 

「所長!お疲れさまです!」

 

「そのままではいいわ。仕事のコウテイペンギンくん?」

 

「その呼び名は…」

 

オルガマリーもコーヒーを飲み、ペンギンとの食事と歓談に勤しむ。

 

「かつて俺は、口にしたことがあります。どんなにどん底でも、諦めずに目の前の事業に取り組めば必ず打開できるんだと」

 

「その理念は楽園…いえ、カルデアの共通認識よ。人理を取り戻す旅は、そういったものでもあった」

 

自分達以外が滅びた世界を取り戻す。それはまさに絶望の戦いだったろう。王がいなかったら、こんな笑顔も、コーヒーを嗜む自分もきっといなかった。

 

「だから、あなたをどうしてもカルデアに招きたかった。ペンギンのあなたは、人間の良い所である克己心、反骨心、向上心を持っていたから。そう、まさにあなたは…」

 

「俺は…?」

 

「理不尽にテイコウする『テイコウペンギン』なのね。…なんちゃって」

 

「…………あ、ここでタイトル回収?」

 

そんな穏やかな昼下りの中、残業も書類追加も無いゆるい時間が過ぎていく。

 

「ギャグというかセンスがモリアーティ教授に似てきてませんか所長」

 

「えっ、やだっ…!」

 

「ガチ目な拒否はしないでおくれマイレディー!!」

 

「どっから出てくるんだこの犯罪界のナポレオン…!」

 

これからも彼らはテイコウしていくのだろう。

 

───人類の未来に、立ちはだかる全てに。




ペンギン達の部屋

ペンギン「まさかモーツァルトのBGMを流して11時に眠れる日が来るとは」

シャチ「この生活が、頑張りの秘訣ですね!」

パンダ「やりたいことをやってきちんと仕事もこなす!僕達、今最高に充実してるね!」

ペンギン「その通りだ。俺達はカルデアの皆に返しきれない恩がある。世界を救ってくれた恩義、少しでも返していこう」

パンダ「どう?僕いい仕事したでしょ?」

ペンギン「そのことにも、礼は言っておく」

シャチ「じゃあそろそろ消灯ですよ。明日も頑張るために!」

「あぁ…」

「「「おやすみなさーい…」」」

数分も経たず、穏やかな寝息を立てる三人。

その顔は、なんの憂いも浮かばぬ安らかなものであったという。

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