ご機嫌如何ですか。ニャルラトホテプです。
此度はたくさん家族が増えましたので、御報告させていただきます。
つきましては実際に会い、おばさまとして会ってもらいたいんですがいかがでしょうか。
今までの非礼も侘びたいので、一報待ってます
ニャルラトホテプ
PS 最近太陽系付近は騒がしいので気をつけて。
「へぇ〜……。あいつがこんな殊勝な手紙を書くなんてねぇ。家庭を持つと落ち着くのは人も神も一緒だった訳かぁ」
ここは冥き宇宙の海、その只中を絢爛に走る銀河鉄道999。人の皮で作られた封筒に羊皮の手紙を席で開きながら、一人の女性が薄く笑う。
長髪で膝裏に届くほど。髪先は白く、ともすればナイアの母と間違えられるやもしれない程に肌は白く、目はルビーのような紅。違うとすれば、生真面目かつほんわかなナイアと切れ長で理知的、魔性を湛えた点だろう。ナイアには不可能な属性である。服装も、神父服とシスター服をエキゾチックに改造した特注のビジネススタイルといったいで立ちだ。可愛らしさを重視した見た目である。
彼女の名はマイノグーラ。手紙の差出人たるニャルラトホテプの従姉の関係にあたる。れっきとしたニャルラトホテプの「家族」の一員であり、とある理由から銀河にて有数の有名人でもある。
「写真まで送ってきやがって〜。子沢山だし嫁ももらったなこいつぅ!羨ましいぞニャルのくせにー!」
彼女は宇宙的総合ブランド兼財閥「MAIGURA」の社長兼会長の肩書を有する超絶的資産家だ。広大な宇宙においても彼女程の富豪は存在しない程の。しかし、経営は自身の眷属と子供達に任せ、自分は商品を開発・納品しているという、本来逆なのでは?と言う立ち位置となっている。
『めんどくさい経営のアレコレは任せ、私は宇宙に変化や変質をもたらす技術の雛形を生み出す。私は趣味かつ自分の為に生きる!』
と豪語しており、性格は普通の人間に近い。若干引きこもり体質ではあるが、外に出るのがめんどい程度。邪神特有の人間を弄びたいなどはなく、自分にとって人間は「最高の嗜好品であると同時に近しい価値観を持つ者達」と言う認識。ある意味では危険でもあると考えている。
嗜みとして人間の生命力を吸っており、美味しい人間は大好き。弟は玩具として、姉は食料や嗜好品として愛しているのだ。神様視点ではあるが。
「諸々了解、素敵なおばさまが来ることを予め伝えておくんだぞ、っと…メールやラインじゃなくて手書きなあたり、あいつも一度決めたらマメよねー」
そんな独り言をごちながら、その顔は笑みが溢れている。ニャルラトホテプはかつて、このように交流をするような殊勝な人格など有していなかった。
【家族はいいぞぉ。壊しがいがあるからな】
根っから他人の幸せを翫ぶ事しか考えていない弟が、常日頃呟いていた言葉。冗談でもなんでもなく、彼は一生を独りで生きていくつもりだったのだろう。それがまさか、こんな娘や息子、家族に囲まれる写真を送ってくるようになるとは。
「人は変わるもの。あの蒼い星は、宇宙の奇跡が集う場所なのでしょう」
「お、メーテルじゃない!よっすぃ〜!」
そんな物思いに耽るマイノグーラに声をかけたのは、999の導き手メーテルである。金髪の麗しい美貌を有した女性が、マイノグーラの前に腰掛ける。
「ニャルラトホテプ様には大変良くしていただいていました。そちらのシート、小さきナイアさんと共に愛用していた座席なのですよ」
「えっ、ほんと!?たはー、なんたる偶然か!やっぱ縁ってあるよねぇ!」
「うふふ、そういう事です、株主様」
株主、とはマイノグーラの事であり、彼女は宇宙鉄道株式会社の現実権者でもある。彼女はブラックめいた銀河鉄道の労働環境を改革し、働きやすくやりがいのある場所へと変えた。その縁とニャルラトホテプの活躍から、この姉弟は999フリーパスを有しているのである。また、メーテルからしてみても車掌やダイヤの恩人でもあるため、交流を持っているのだ。
「こちら、菓子折りです。車掌がぜひにと」
「おぉ〜!ゴチになります!メーテルも一緒に食べましょうぞ!」
「あら…では、失礼して」
かつてニャルとナイアが座っていた座席に、二人で穏やかに過ごす。それは二人の会話の花の種となり、優雅かつ溌剌とした時間がすぎる。
「噂じゃあいつ、神の座を降りたらしいじゃん。アザじじぃの直属だからマジで最強だったのにさー」
「きっと、あの星で強さや自分自身よりも素晴らしい宝物を見つけたのです。それはきっと、家族という安寧の揺り籠。あなたもまた、その揺り籠に招こうとしているのでしょう」
「それが聞いてよメーテルっちさー。あいつ澄まし顔で【家族は弱点だ、キリッ】とか言ってたくせにどの面で家族作ってんだっつの受ける〜!自分が一番家族の弱みわかってんじゃないの!ってさー!」
「ふふ…理屈ではないのでしょうね。そして、あなたを呼んだのは血縁もまた大切にしようと思いたった。私は、そう思うのです」
「んー。そういや、あいつとあんまり過ごした記憶ないなー。お互い邪神だし、親愛とか希薄でさー」
惜しいことしたなー、とごちるマイノグーラに、メーテルは説く。
「きっとあの御方は始めたいのでしょう。本当の家族たるあなたをも迎え、家族や家庭の再スタートを。あなたと向き合う決意をしたのがきっと、その手紙」
「素材からして悪趣味っしょこれ?」
「ま、まぁそれは…。ですが、込められた感情は間違いなく本物。きっと、そこの窓から眺めていた娘さんにも、あなたを会わせたくなったのだと思います。家庭を通じ、愛を知ったあのお方はきっと」
「そっかー…あいつがかー…カルデア、だっけ?」
「はい。星見の天文台…噂では、カルデアは地球の技術を結集し復活した『機械の神』がいる、とか」
「あー!未解析の英雄機神ってやつ!?興味あるー!地球を起点にした外交プロジェクト締結も噂されてるとかなんとか!」
彼女たちは地球に、青き星に思いを馳せる。邪神に愛を伝えた、美しき星に。
「あいつ、楽しくやってんじゃん。何よりだけどさ」
「あなたも、きっと見つけることができるでしょう。あの御方のように、かけがえのない素晴らしいものを」
「かけがえのないもの…かぁ」
自分が手に入れられるかはともかく、それがどんなものなのかは興味がある。
──神が神であることを捨てることは容易ではない。人が、虫や動物になるようなものだ。自身に満ちる自負や全能感、他者より隔絶した力を全て捨てる。それはどれほどの虚無感を伴うのか想像すらできない。恐らく、神にとっては死よりも重い罰だ。人間から、端末や文明を全て取り上げるようなものである。
それほどまでに素晴らしいものを彼は見つけたのか?家族とは、神々すらも翫ぶ邪神の座すら捨てても惜しくないほど、見つけたものは素晴らしいものであるのか?
興味は尽きない。尽きないからこそ、この誘いを受けたのだ。あの最低最悪、下劣にして悪辣な這い寄る混沌が見つけたものは、一体どれほどのものか。
「見てろよ弟〜。今から私が、バッチリ査定しにいっちゃうぞー!」
「ニャル様とナイアちゃんに、どうぞよろしくお伝えくださいね」
「勿論!任せといてよねー!」
メーテルとも個人的な親交を深め、御満悦なマイノグーラ。しかし…
『宇宙海賊が接近中!乗客の皆様は席を動かずお待ちください!繰り返します!宇宙海賊が接近中…!』
「おぉ?」
その道行きは、例外なく波乱のものになるのであった…。
マイノグーラ「どれどれ…」
『胎児の老人のマーク』
『炎のマーク』
「クトゥグアに…アザトースの信奉者かぁ。これはまた…」
(めんどくさいことになりそー…)
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