人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギル「成る程。我が財の秘奥が一つ…マルドゥークが状況打開の鍵となるか」

オルガマリー「そうなります。これは王の領分…。判断はお任せ致します、ギル」

──マルドゥークにかけられた技術は、遙か未来の人類のもの。だからこそ、未来に帰還する技術もどこかに眠っている。そういう道理なのですね

ギル「筋道の通った結論だ。そも、アレ無くして惑星間の航行は遙か未来の話。唯一無二の未来の兆しなのだからな。…ふむ、良かろう」

オルガマリー「よろしいのですか?」

ギル「秘奥であって秘匿ではない。アレは特例の中の特例かつ切り札である。隠す必要も無いのだからな。好きにさせてやれ」

オルガマリー「解りました。寛大な処置に感謝致します」

《いずれ至る未来を内包する…それはある意味でカルデアスと似たようなものよ。さて、人類はどれほど自身の背中に迫れるのやら》

──ごくり…。


汎人類史の神々の王

黄金の英雄機神。界聖杯という特異点のリソースを六つ注ぎ込み、とある魂の祈祷を鍵についに起動した黄金の機動機神であり、そこには遥か太古の神、マルドゥークを降霊し起動している事が確認されている。

 

彼について現在判明していることは武装と変形機構、単独における恒星間宇宙領域の航行能力。そしてマルドゥーク神が有する権能、力を行使できるが故のあらゆる『神』を上回る圧倒的戦闘能力。意思疎通が可能であるという事、そして、その構成技術が未知の技術でなく人類に拠るものという事だ。つまり、ワープやタイムトラベル、タイムマシンにもなりうる可能性も内包しているということだ。ハーロック達が帰還する為のきっかけも、必ずここに眠っている。

 

(……駄目だ!お手上げだ!)

【あーもう!解るのに解らないのが悔しいー!】

 

だが、銀河における有数の富豪にして神の一角、未来における大天才を以てしても英雄機神の解析は極めて不可能に近かった。特別に許可を受けた二人が、揃って降参の声を上げる。

 

(お前に解らないことがあったのか、トチロー)

 

(正確には解る。基本原理は確かに人類が見つけた、或いは把握している数式や計算式、解式しか見当たらない。だがその精度と緻密さが段違いだ!一つ解き明かすまでに戦艦の十や二十は簡単に作れるし、一つ解き明かしただけで人類の技術は千年進む!)

 

それは例えば、『トライアスロンでエベレスト、グランドキャニオン、アマゾン湿地帯、海底数千キロを一息で完走しろ』といった領域を求められているようなものだ。理屈はわかるし、どうやれば走破できるかは理屈が通るだろう。だがそれができると本気で思う輩は皆無であるし、できるという発想自体に至らないだろう。そんな領域で、全てのテクノロジーが極限のスキルツリーで編み込まれているのだ。

 

【こりゃあ全銀河中の天才や科学者、技術者総出案件ですわぁ…一人の出資者に手に負える問題じゃなーい…】

 

重ね重ね伝えるが、それはあくまで純人類の作り上げたもの。外宇宙、外星人の叡智の挟まる余地はどこにもなく、地球人類に無しで解明は不可能だ。人類を下等と見下す輩には、永劫辿り着けない過ぎた宝。それは他星の神だろうと同じ事だ。

 

(これを解明するには途方もない時間がかかる。残念だが他を当たる…それこそ地球や宇宙を駆け回ったほうがまだ早いぞ、ハーロック)

 

【それにおっかないのが、圧倒的なまでの神性、神霊に対する想定効果ね…】

 

そこには、人類の全てを信頼するマルドゥークの意志と力が宿っている。もう、どのような神にも人の歩みや運命を好きにはさせない。そんな揺るぎない魂の覇気を肌でマイノグーラは感じていた。同じ神でであるが故に。

 

【世界の全てを救い、全てに打ち克つ。それはもう信念でもスローガンでもなく、確定事項だった訳か…】

 

どのような経緯でこの神を起動させたかはまだ理解には至らないが、最低でも六つの世界中の電力や動力を注ぎ込んでいることは把握した。そしてそれは、特異点の数に一致する。つまりこれは、カルデアが解決した特異点のリソースを全て注ぎ込んでいるのだ。

 

あらゆる神々の二倍の力を、世界中の全ての力で無限大、無量大数に引き上げている。それは即ち…幼年期を終え、神の庇護を不要とした事に他ならなかった。マルドゥークは、その人類達が唯一その決意を託すに相応しいと見出した神なのだ。

 

【異聞帯の神と想定される戦力のみに振るわれるらしいぞ。楽しみだな姉貴殿】

 

ニャルが愉快げにドックの手すりから見上げてくる。装甲板一つの成果すら掴めなかった事が愉快なのか、いつになく愉快げだ。

 

【汎人類史に挑むってことは、あの王様とこの神に挑まなきゃいけないってことでしょ?同情するわ…】

 

それは皮肉でもなんでもない、心底からの同情だ。恐らく真正面からでは外なる神すら勝負にならないだろう。不可能を可能にする…そういった形ある奇跡が、これなのだ。

 

(今は、出来ないのだな?)

 

だが、ハーロックは…友を信じる宇宙海賊はその正解を疑わなかった。

 

(ま、まぁあくまで技術は人類のものだ。毎日解析できるなら、いつかはきっと…)

 

(解った)

 

【お?姉貴殿、あちらの海賊さんは何かを決めたようだぞ?】

 

【…?】

 

そう。彼は速やかに決断する。それが不可能でないのなら、越えられるのなら──。

 

 

「キャプテン・ハーロック、並びにクイーン・エメラルダス。以下クルー一同はカルデアに協力する」

 

「職員の保護や防護、警備として腕を振るわせてもらう」

 

「ほう…?」

 

後日、ギルガメッシュにハーロックは邂逅しそう答える。それは客人ではなく仲間として、同胞として籍を置く事だった。

 

(い、いいのかハーロック!?)

 

(時間をかければ辿り着けるのだろう?ならばいま少しここで真面目に働けばいいのだ)

 

(いや、まぁ、それはそうなんだが…)

 

(お前ならできる。お前は俺の友なのだから。そうだろう?)

 

ハーロックらがカルデアにいれば、必然的にトチローが解析できる時間が確保できる。それは、ハーロックにとっても望むべき事案なのだ。断る理由も見当たらない妙案だ。

 

【私も同じカルデアに協力するわ〜。せっかく未来宇宙進出を見込める企業なのだもの。先行投資させてくださいな】

 

【とのことです、王様。アニムスフィア家、並びにカルデアへの投資をさせてほしいと】

 

マイノグーラもまた、カルデアに協力の意志を示す。そうすることで、人類の歩みや進歩をもっともっと吟味できる。それにマルドゥークの解析が進めば、人類の可能性が把握できる。そうすれば人類の価値が侮られる事も無くなるだろう。先見の明というやつだ。

 

「ふむ。我等の抱えた問題は中々に多忙だ。人員は多ければ多いほどよい。…良かろう、略式だが参列を許す。精々励むがいい。」

 

ギルガメッシュは当然快諾する。今更神だの海賊だのは問題ではない。王に参ずるか、それ以外かの話なのだ。

 

「ならば引き続き未来への帰還の可能性を探るが良い。マルドゥークの解析は許そう。並びにカルデアスの危険性を提唱したプランも受諾する。オルガマリーと提携し、カルデアに代わる新生システムの開発にも着手するがいい。備えあれば憂いなし、とは日本の金言だからな」

 

そう、準備はしすぎて悪いということはない。世界を救う業務にはあらゆる手段を取らねばならないのだ。

 

こうして、無事に二大勢力の方針が決まった。一時的にハーロック達はカルデアに協力し、マイノグーラはアニムスフィア…いや、オルガマリーとカルデアに投資する株主ともなった。王の裁定の下、カルデアに新たな風が吹き込まれる。

 

(すまないな、ハーロック。俺が不甲斐ないばかりに)

 

自身の至らなさを詫びるトチロー。しかしハーロックはアルカディア号を見上げ言う。

 

「慰安旅行とでも思えばいい。男には、時にそんな時間も必要だ。エメラルダスもな」

 

(ハーロック…)

 

「娯楽施設も含め、騒がせてもらおう。海賊らしく…な」

 

(…それは構わんが、酒を飲み尽くすなよ?)

 

トチローを信じ、暫く羽根を休めることを決心したハーロック。

 

【お邪魔しま~す!ここ使わせてね〜!】

 

【ケイオスカルデア勤務なのか姉貴殿…】

 

【幸いにも、あんたが一足早くマリスビリーの息がかからないカルデア作ってたのは嬉しい誤算だったわ!ここなら、誰にも情報は漏れないからね】

 

【〜。大丈夫だとは思うが、カルデアの皆を裏切らないでくれよ】

 

【…もし、裏切ったら?】

 

【エボルトと同じ目に遭う事になる】

 

【そりゃ怖いわ〜!死ねって事じゃない!大丈夫よ。人類、私も好きだしね!】

 

(いつか人類が宇宙に行ったら、観光ガイドや外星人から保護できる。その為にも頑張らなきゃ!)

 

マイノグーラもまた、個人の興味でカルデアをサポートする。

 

 

未来からの来訪者は、こうして今に根付く事になった。未来につながるかは…きっと、これから次第だ。




──皆様の頑張り、応援しましょう。マルドゥーク神。


マルドゥーク『……』

──マルドゥーク神?

マルドゥーク『(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠)』

身体を解析され、ちょっぴり恥ずかしかったマルドゥークであった。

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