マイノグーラ【無事に潜入できたみたいね。大変結構!】
ニャル【本人たっての意向とはいえ、ナイアにはもう少しおめかししてほしかったものだが…まぁ、本人が納得しているなら何も言うまい。数日の内に片を付けるが故、好きにさせてあげよう】
マイノグーラ【そうそう。どれくらいチェンジリングが進んでるかわからないけど、将来有望な精神も肉体も大人になりきれない学生は最適な資源。必ずアクションがあるわ】
ニャル【この世界の惑星保護機構は何をしているんだか…】
マイノグーラ【聖杯っていう別時空のテクノロジーを感知できないと予想するわ。地球人が異星人のノウハウを知らないようにね】
ニャル【所詮ニャルラトホテプ星人なんぞ雇ってる会社か…アテにならんな】
マイノグーラ【あんたもしっかり働きなさいよー。授業はどうしたの?】
ニャル【自習にしたよ。生徒の自主性に任せる】
マイノグーラ【やる気出しなさいよー!】
ニャル【やってるやってる。生徒相談も私の仕事だ】
女生徒「や、山寺先生…」
ニャル【ようこそ。では…君の人に言えない秘密をお聞きしようか】
【学園生活に当たって、いくつかお前が気をつけるべき点を伝えておく。学園生活で何をしても大丈夫だが、これを押さえておけばお前は悪目立ちをすることも無いだろう】
ナイアは学園生活に編入するに至って、いくつかの心構えの薫陶を受けていた。変装は彼女たっての希望だが、それ以外はきちんと教えという名の教育を受けていた。
【まず、コミュニティを築く際には異性ではなく同性を重視しろ。当然お前は女性だ、女性は男に色目を使う同性をやたらと敵視するものだ】
「ヘッヘッヘ、ナイアをよろしくお願いいたします。ナイアを是非よろしくお願いいたします」
クッキーやプレゼント、菓子包を休憩中に女性に配るナイア。そのズボラで無造作な見た目と、可愛らしいラッピングや細工の細やかさのギャップは瞬く間に女生徒達の心を掴む。
「これナイアちゃんが作ったの!?」
「うれしー!ありがとー!可愛いクマー!」
「凄く手間暇かけてくれたんだね!これからよろしくねー!」
「ヘッヘッヘ、コンゴトモヨロシク」
ナイアだけでなく、家族総出で作り上げたプレゼントは大好評を博す。
「き、気になる男性用にもあります。どうぞ渡してあげてください」
「やだー!もーナイアちゃん気配りの達人ー!」
人心を何よりも把握している邪神の教え。弄ぶと言うことは理解し尽くしているという事だ。意中の相手に渡しなさいというクッションでコミュニケーションの輪を崩さないままするりと溶け込む。
【そうしたら後は女子の気になるスキルやアーツを存分に見せてやれ。化粧、占い等が有効だ。イジメの主導は大抵同性のやっかみだ。基本だが微塵たりとも手を抜くな】
「戦車の正位置…上手く行きます。勝利と前進。ガンガン行っちゃってOKですよ」
「ホントに!?じゃ、じゃあ告白しちゃおうかな…あっ!」
「!?」
「お、オッケーもらえたー!!」
「うっそ!?」「マジ!?」「ナイアちゃんまさかのプロ占い師!?」
「ネイルアートやメイクもできますよ、レベルアップしたい皆様に是非とも…ヘッヘッヘ、心配することはありません」
「やってやってー!」「私も私もー!」「ナイちゃん陰キャ風陽キャー!」
「ヘッヘッヘ…ヘッヘッヘ…」
(お父さん、ありがとうございます。流石、人と人の繋がりに関してはまさにプロフェッショナルですね)
心の中で感謝を捧げつつ、あっという間にクラス女子の人気者となるナイア。同性へのアピールは大成功と言ったところだろう。
「見たか、八坂。彼女、抜群に上手いぞ」
その様子を遠巻きに見ていた真尋に、彼の親友にして委員長余市建彦が話しかける。見るからにメガネ男子だ。
「上手いって…占いとか、クッキー作りとかか?」
「人心掌握術がだ。転校生っていうのは馴染めるかどうかでこれからの学生生活が問われる大事な局面、失敗は許されないんだ。クラスから浮いたり、最悪いじめられたりする。それを完璧にかわしたどころか、同性からの支持を一瞬で獲得した。見た目と違ってとんでもない策士」
「…確か、山寺先生の娘さんだったよな」
真尋は既に把握している。山寺先生はニャルラトホテプ、星人ではない正真正銘の這い寄る混沌。ニャル子すら手玉に取りTwitterアカウントを閉鎖に追い込んだ実績を持つ。
(その娘さんも…相当やばい存在なのかもしれないぞ…)
あの顔面を半分以上覆ったメガネや挙動不審な態度から、想像以上の有能ぶりを見せたこと。裏側の存在を知った事から深読みする真尋。
「個人的に気になるのはあの顔面半分覆っているメガネだ…度は合ってるのか?特注品なのか?同じメガネキャラとして警戒せずにはいられないな…!」
「なんの張り合いをしてるんだお前…」
だが、少なくとも今はただ贈り物を送っているだけの女の子だ。猫背だったりキョロキョロオドオドしている態度からまるで真意は読み取れないが、穏健派であることは疑う必要は無いのかもしれない。やたらと笑い方がキテレツなのが気になるところであるが。
そして、あくまで所感ではあるが…自身らに迂闊に近付く事のないよう配慮しているように見える。それは、やはりニャル子や他の異星人を刺激しないような振る舞いなのだろうか。
(底が見えないな…って、ん?)
「そこのぐるぐるメガネぇ!」
すると、そんな気遣いの均衡を破るかのように声が上がる。声質は愛らしい響きを有するその存在は、当然ながらニャルラトホテプ星人ニャル子である。
「占いにご自信がおありのようで。先にて挨拶は済んでいますから私も占いに預からせていただいてもぉ?」
(ま、まさか!新入生を可愛がる気か!?)
可愛がり。要するに先輩マウント。パシらせたりカーストの下に置いたりする熾烈な学生の戦いである。朗らかに挨拶を交わした以上、今更そんな事をするとは思えないのだが。
「ヘッヘッヘ…では、ニャル子さんの占いということでよろしいですか…?」
「勿論です。ニャル子ですから」
もしかしたら、邪神の娘である存在を牽制するつもりであるのかもしれない。ニャル子にしてはガチの警戒の様子だ。同じ邪神に連なるもの。危険度は骨身に沁みて解っているのだろう。
(勝算があるのかニャル子…下手を打てば大変な事になるぞ…)
「えー、何を占うの!?」「気になる気になるー!」「見せて見せてー!」
「くっ、何も見えないぞ!女子の好奇心の壁だ!遠巻きじゃ何も見えない!!」
余市が必死に見ようとするのにつられて、真尋も自然と拝見しようとする体制となる。一体何を占っているのか!?水面下の戦いは一体何を齎そうとしているのか!?
(下手を打つなよニャル子!相手は冗談が通じない相手なんだぞ!)
その必死の願いが届いたか否かは定かでは無いが…やがて静けさが戻り、そして…
「真尋さーん!私と真尋さんの恋愛運は太陽でした!暖かな希望!成功、達成、心の安寧!やりましたよ真尋さーん!」
「お前は一体何を占って貰ってたんだっ!」
「じぇがぁんっ!?」
走り寄ってくるニャル子に渾身のフォーク。深遠に見えて俗にまみれた欲望を占ってもらっていたニャル子に釘ならぬフォークを刺す。
「ぐぉおぉ…で、ですが一つ解った事がありますよ…。ニャルラトホテプはゲロ野郎ですが、その娘さんはいい人です。信頼できると思います」
「本当か?」
「はい。なんというか…どちらかといえば真尋さんやママさんに雰囲気が似ているような感じがしましたね」
それはつまり、邪神やそれに連なるものではなくむしろそれを狩る存在である事を示唆しているという事となる。となると…あの挙動不審な女の子の正体を真尋は思い浮かべる。
(邪神ハンター、なのか?彼女…)
まさか、そう考えて真尋は首を撚る。可能性はあるのかもしれないが、あのどんくさげで野暮ったい見た目がどうしても邪神ハンターと結びつかない。
「もしかしたら懐柔できるかもしれませんね!それではもう一度結婚運を占ってもらいに行ってきまーす!」
「…懐柔されてるのはお前の方じゃないか!」
「しなんじゅ〜!?」
そして煩悩まみれのままにニャル子に、再び冴え渡るフォーク。
(ひょっとしたら、何かあったら協力できるのかも知れないな…)
「ヘッヘッヘ…ヘッヘッヘ…」
でもあの笑い方は一体何なんだろうか。ぼんやりと考えつつ、真尋は不思議な感覚でクラスに馴染もうとする彼女を見やる真尋達なのであった。
「ところで、ハス太とクー子はどこにいったんだ?」
「そう言えば見ませんね?」
(お父さんは屋上でしょうか…?)
その一方で、別の箇所では細やかな争いの火種が沸き起ころうとしているのであった──。
屋上
女生徒「それでは、よろしくお願いいたします…」
ニャル【解った。任せてほしい。今日はありがとうね】
「はい!よろしくお願いいたします…!」
ニャル【………ママさんから話を聞いていなかったのか?】
クー子「見つけた…ニャル子の敵…!」
ハス太「真尋君には近付けさせない!」
ニャル【あのニャルラトホテプ星人…ホウレンソウしておけよ…】
まるで統制の取れない異星人サイドの動向に、心底呆れ果てる山寺先生。一触即発の緊張が屋上に走る──。
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