女生徒「またねー!ナイアちゃーん!」
女生徒「ばいばーい!」
ナイア「ヘッヘッヘ、また明日お会いしましょうね。ヘッヘッヘ」
ニャル【ナイア、聞こえるか。私だ】
(お父さん。情報は掴めましたか?)
ニャル(あぁ。どうやら女生徒の家族がチェンジリング被害に遇っているようだ)
〜
お父さんとお母さんがおかしいんです。なんの根拠もなくて、見た目や振る舞いはいつも通りなのに…違和感がするんです!
なんだか家族が家族じゃないみたいで…先生、私怖いんです…!
〜
【勇気を出して打ち明けてくれたあの娘を裏切るわけにはいかない。異星人どもの縄張りなのも面倒だ。さっさとケリをつけて楽しい学園ライフを始めるぞ】
ナイア(了解です。お父さん。ポイントを教えてください。すぐに向かいますので)
ナイア「…では、お仕事の時間ですね」
「先生…信じていますから…」
山寺に、勇気を持って違和感を説明した一人の女生徒。少し前から、母親と父親に言いしれぬ違和感を懐き、まるで別人のように思ってしまわずにはいられないほどに不快感を感じたのだと彼女は打ち明けた。
【話してくれてありがとう。君は部屋にいなさい。すぐに悪い夢は覚めるはずだ】
山寺先生はその端整極まる美貌と、事細かに話を聞いてくれた親身さで女生徒の信頼をあっという間に勝ち取った。同じクラスメイトの無有の父親でもあるらしく、その物腰はまさにややしい父性を有していた。それ故、指示に従い部屋に鍵をかけ、布団にくるまり息を殺している。
「どうしたの?体調が悪いの?」
「扉を開けて、私達に診せてみなさい」
扉の向こうから、父と母の声が聞こえてくる。一人娘の自身を愛してくれた両親。母は市役所通い、父は大手会社勤務。でも多忙の中でも、二人共家族の触れ合いを何より大切にしてくれていた。あらゆる意味で自慢の両親だ。
だけど、扉の向こうから聞こえてくる声には、前々から感じていた『暖かさ』をまるで感じない。無機質で抑揚のない、まるで知らない誰かのようで。他人のようで。いつからかは分からないけれど、たまらなくそれが恐ろしかった。
(お父さん、お母さん…どうしちゃったの…)
はじめは些細な違和感だった。顔を合わせているとき、食事をしているとき、些細な他愛ない会話をしているとき。細かく感じる違和感…仕草や抑揚、身振りや手振り。それらに違和感を感じたのがきっかけだ。
はじめは気の所為だと思った。仕事で疲れているのだと。自分よりずっと頑張っている二人だから、と。しかし、とある日その仕草の共通性に気付いてしまったのだ。
まるで『演技』しているようだと。それに思い至った瞬間、言いしれぬ不快感と恐怖が全身を突き抜けた。
父と母は、誰かと入れ替えられてしまったのではないだろうかと考えるようになった。知らない誰かが、自分の親の皮を被っているのではないかと。
なぜ?なんのため?何故自分たちなのか?ならば本当の両親はどこに行ったのか?思い至る答えから目を逸らしながらも、自身の家ゆえにどこにも逃げ道はない。
【自分が母親や父親と呼べる人物は、最早この家には存在していないのではないか】
そう考えると気が狂ってしまいそうだった。父や母が消えた絶望。やがて自分がそうなってしまうかもしれないという恐怖。日常が非日常に変わっていく狂気。
「開けて頂戴。あなたが心配なの」
「そうだぞ、私達は家族じゃないか」
時折、二人がぼうっとこちらを見つめる姿が堪らなく恐ろしかった。まるで何かを品定めしているような。伺っているかのような。次の瞬間にはもう、自分は自分でなくなってしまうのではないかと。
「いいの、大丈夫だから放っておいて…!」
山寺先生は不思議な人で、恐ろしさと同じくらい、父から与えられた暖かい愛情を感じた。あの人は真面目に、真摯に話を聞いてくれた。先生の言葉を信じて、扉を閉じ部屋に閉じこもっている。
扉越しに、両親を拒絶する。その棘のある言い方は、およそ両親に初めて向けた感情だ。だがどうしても、扉の向こうの存在を両親とは認められなかった。
不気味な沈黙が広がる。下に行ったのかなと、そっと顔を上げた瞬間だった。
「ひっ…!!」
小さく息を呑む。次の瞬間、扉は激しく叩かれ、ドアノブはめちゃくちゃに捻り回される。あまりに異質であまりに恐ろしい、非日常への豹変。
「あなたは変よ。お医者さんに行きましょう。ここを開けて。開けて頂戴」
「私はお前が心配なんだ。心配なんだ。家族だろう。一緒に病院に行こう」
「「ここを開けて。ここを開けて。ここを開けて。ここを…」
「ひっ…ひ…!」
最早不気味なレコードめいた繰り返しの異質さに、ガチガチと歯を鳴らす女生徒。ガタガタと扉が揺らされ、ガチャガチャとドアノブが捻られ続ける。
(先生…!助けて、先生…!)
その非日常に正気を保つことすら難しくなった女生徒は、布団の中で助けを求める。最早確信してもいい。向こうにいるのは家族じゃない。もっと別の、恐ろしいなにかであり見知らぬ誰かだ。
扉を開けてはいけない。開けてしまってはきっと自分も自分でなくなる。あまりの恐怖に発狂寸前になりながら、山寺先生の笑顔と言葉を思い出し懸命に堪える。
「出てきなさい。愛しているのよ。病院に行きましょう」
「お前が心配なんだ。元気な顔を見せてくれ。私達は家族だろ」
家族を名乗る何者かのアクションはますます強くなる。ドアは最早蹴破られるかの勢いで揺らされ、ドアノブは破損寸前な程に稼動している。それは最早、正気の介在しない沙汰そのものだ。
「助けて…!先生、先生…!」
最早頼れるものは先生との約束しか存在しない。気が狂いそうな時間を、懸命に堪える。それが長く、或いは一瞬で過ぎたその時だった。
「「………」」
ピンポン、とインターホンが鳴り響いた。このタイミングで、この家に来訪者が現れたのだ。直ぐ様応対したくとも、部屋の出口は塞がれている。
(誰だかわからないけど、逃げて…!)
母と父を名乗る何かは普通じゃないよ。必ず恐ろしい秘密を有している。そんな存在に応対をさせたら、殺されてしまうかもしれない。そう考えようと、彼女には祈る事しか出来なかった。
二人は階段を降りていったようだ。部屋に、一抹の静寂が戻る。果たして来訪者は誰だったのか。果たして二人は一体何を応対したのか。見に行きたくとも、万が一があってしまうと思うと動けなかったのだ。そのまま、数分が過ぎた頃。
【聞こえるかい。私だ、山寺だ。まだ君は君かな?】
「先生!!」
それは希望の福音にも似た声だった。あの時相談していた事態を解決しに来てくれたのだと彼女は確信した。すぐさま扉を開けようとしたが、山寺はそれを遮る。
【おっと、開けなくても大丈夫。よく頑張ったね。怖かったろ】
「先生…あの二人は、誰なんですか…?」
【君の好きな両親でないことは確かだ。だが、君の両親は必ずお救いする。どうか私を信じてくれ】
山寺の言葉は、信念と誠意を有したものだった。出遭ってまもなくとも、その言葉には信じたくなる魅力が存在していた。
「わ…解りました。先生を…信じます」
自分を信じてくれたように、話を親身になってくれた彼を信じることとした少女に、満足げに山寺の声は弾む。
【では、これを飲んでおいてくれ。ぐっすり眠る睡眠薬だ。起きたら、何もかもが元通りになっているはずさ】
「は、はい…いただきます…」
そっと渡された薬を渡され、飲み込んだ瞬間に眠気に襲われる。あまりに早い眠気に、リアクションすら取れずに崩れ落ちる。
【お休み。悪い夢は忘れるに限る。…さて】
そっと睡眠を確認した後、背中越しから彼女に声をかける。
【二対一だが、手助けはいるか?ナイア】
【なんだお前たちは!】
【惑星保護機構の連中か!?】
そこにいたのは、両親などではなかった。死人色の肌をした醜悪な怪物、グールが二匹。件の違和感の正体である。彼女の両親は、既にチェンジリングされていたのだ。
「大丈夫です。それより、こちらの宅を汚さないコーティングをお願いします」
その眼前には、ぐるぐるメガネの猫背少女が立っていた。
「ゴミ屑二つを、処分するので」
そのまま少女は眼鏡を外し、衣服の袖を掴み…投げ捨てる。
【げぇっ!!】
【き、貴様は…!!】
美しき銀髪、紅き眼。抜群のプロポーション。シスター服を着込んだ麗しき女性を前にし、グールは戦慄する。
「狩りを始めます。覚悟なさってくださいませ」
クラスメイトを脅かした事による絶対零度の怒りを浮かべし狩人…女生徒のクラスメイトとなったナイアが、立ち塞がっていたのだから。
その戦慄は…確かなる悪夢となって降りかかる事となる。
バラバラのグール【】
グール【がっ、ぐはっ…!な、何故この時空に狩人が…っ!】
マイノグーラ【私達に見つかったら終わりなわけよ。てなわけで、質問に答えなさい】
ナイア「間違えたら殺します。望まない答えならば半殺しにした後再び問います」
ニャル【相方みたいになりたくなければ質問には素直にな。相方のように組み立て式フィギュアにしてやってもいいんだぞ】
首を締め上げ脚が浮くほど持ち上げられたグール。持ち上げた彼は戦慄を重ねる。瞬く間に、相方のグールは無慈悲にバラバラにされたのだから
グール【ひぃいぃ…!】
ニャル【さぁ、少しでも長生きしたかったなら質問に応えるといい。私達の気は長くないぞ】
…そして、彼等は有益な情報を手にする。
聖杯の力で生産されたグールに、日本の上級階級の人間達はチェンジリングされているという事実に。
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