ナイア「グールは一匹見たら虱潰しが基本ですが…ニャル子ちゃん達の目をよく掻い潜りましたね」
ニャル【チェンジリングした輩はどうした。まさか殺したのか】
グール【殺してはいない…奴らには使い道があるのだよ。我々の秘宝を駆動するためにな…】
マイノグーラ【聖杯の生体電池が妥当ね。さながらこの世界は白蟻に食われた家屋…】
グール【諦めろ。この星は既にグールの──げぇっ──】
ナイア「失礼。うっかり殺してしまいました」
ニャル【構わん。どうせゴミのような命だ。もしもし?すまん、ちょっと手を借りたい】
マイノグーラ【?ニャル?】
ニャル【事が事だ。ナイア、真尋少年の家に向かい助力を要請しておけ。私は少し下準備をしてから向かう】
ナイア「は、はい!」
マイノグーラ【何をする気なのかしら、ドブ色の脳細胞?】
ニャル【末端を潰しても無駄。頭を潰しても無駄。だが奴らの過ちは潰せる頭を用意したごとだ。聖杯さえ手に入れれば在るべき場所に戻る】
マイノグーラ【だから何を…】
ニャル【単純明快。皆殺しだ。世界に蔓延るグールをな】
マイノグーラ【えぇ…?】
【で、儂を呼んだわけか。お前さんにしては対応が雑じゃのぅ。想像よりあやつら、厄介じゃったようだな】
高層ビル…否、日本で高き塔。東京タワーの頂上にて佇む、黄衣、白髪の青年。二十代前半の美青年ながら、その口調は老獪にして鷹揚な響きを孕ませる。彼は邪神、ハスターである。ニャルの連絡を受け、召喚に参じたのだ。彼はニャルとは違い、神性を有したれっきとした邪神である。ニャル、クトゥグアが実質退位した今、アザトースに迫る地位にいると言っていい彼はニャルと言葉を交わす。
【惑星保護機構の怠慢だよ。今からその尻拭いをしようというわけだ。そこでお前の力が不可欠なのだ。全く衰えぬ風の邪神、君の力がな】
【求める事は大体把握した。それは構わんが…規模が些か大きくなるぞ?】
【問題ない。ここを特異点にした奴等は墓穴を掘った。命のつじつま合わせさえ起こさなければ、この地で起きた事は単なる夢の出来事だ。チェンジリングに怯える娘もいなくなる】
【夢の出来事…。なるほどのぅ】
その意味を把握し、ハスターは腰を上げる。娘をそれでも連れてきたのだ、最後まで殉じてやらねば家族の名折れだろう。ハスターは、身内に義理堅き邪神であった。
【成層圏付近まで頼むぞ。巻き上げたあとは任せてくれ】
【案ずるな。打ち漏らしても落下で死ぬじゃろ。──では】
ハスターは軽く目を閉じ、意識を集中させ…ふうっと、口から黄色の風を吹いた。
【征け。星を駆け巡れ、王の風よ】
その言葉を勅令とした風に…変化が、起きる。
風は即座に竜巻と変化し。
竜巻は即座に嵐と変化し。
嵐は即座に──全天を覆い尽くす、人類が観測した事の無いほど巨大な、星天の星々や雲すらも呑み込むかの如き黄色の大ハリケーンとなり、日本国土を瞬く間に呑み込んだ。当然その勢いは破滅的であり、日本の建造物など瞬く間に…、
否。その風はなんと、何も壊すこともなく、何を破壊することもなく、ただか弱き人形のみをその暴虐の旋風に絡め取り、蹂躙していく。黄色の大竜巻は唸りを上げて蹂躙しながらも、ただの一つも何かを破壊する様子もない。
【おーおー、おるわおるわ蛆虫どもが。ようこびりついていたものじゃのう、穢らわしい】
吐き捨てるハスターが言うように、巻き込まれたそれらは人間ではない。人間のように見えるが、あれらは全てチェンジリングにて成り代わったグール達である。ハスターの大竜巻はなんと、チェンジリングしたグールのみを巻き込む大災厄風を巻き起こしたのである。
【鬱陶しい抑止力の干渉もない。その調子で世界全土を掃除するぞ、ハスター】
【うむ】
ハスターの手の動きに合わせ、超絶巨大ハリケーンは光速の四百倍の速さで移動を開始する。これは眷属、ビヤーキーが出せる程度の通常速度である。質量あれば世界が滅ぶ途方もない速さで、ハスターは地球の全てにグール殺しの大厄災を巻き起こしていく。
【おーい、ニャルよ。もう終わるぞ。お前の場所に飛んでいく筈じゃー】
ハスターの言葉は、真上のニャルに向けられている。正真正銘の邪神であるハスターにかかれば、惑星一つの掃除など5秒もかからない。風の王ゆえ、何を巻き込むか巻き込まないか、何をさらうか攫わないかなどをコントロールするのは容易い。グールという弱さと群体を売りにした種族の一掃は、彼の得意分野なのだ。
〜
【流石ハス爺。自慢の甥で爺ちゃんだ】
【訳のわからん家系図じゃのう、口にするたび思うわい】
ニャルは成層圏付近、雲を見渡せる高度にて待ち構えていた。ハスターの仕込みに呼応し、仮面ライダーエボルとなりその機会を待っていたのだ。
【お、来た来た】
すると雲を突き抜け、次々と投げ出されるボロ雑巾のような人間の形をした者達。突然の神威に成す術なく蹂躙されたグール達が、ハスターの竜巻に遥か上空に打ち上げられたのだ。その数は多く、数万はいるだろうかとニャルは見積もる…が。
【まぁいいか。数なんて関係無いし】
【レディー・ゴー!!ブラックホール・フィニッシュ!!】
ブラックホールを展開し、打ち上げられたグールを片端から吸い込んでいくニャル。自分だけでは加減が利かず、これだけのグールを始末するとなれば星ごと潰すしかない為にハスターの協力は必要不可欠だったのだ。
見る者が見れば、それはまさに地獄絵図だったろう。空に穿たれた大穴に、黄色の大災厄が次々と人を放り込んでいく。これらが全てグールでなければ、未曾有の大災厄である。
【一応二、三セットやっておくかのぅ。哨戒班のビヤーキーを放っておく故、安心せい】
【助かるよ、ハス爺。本当にありがとう】
これだけの規模で嵐を巻き起こしておきながら、被害はグールしか受けていない。完膚なきまでの理不尽、文字通り嵐のような力業で世界に蔓延るグールを一掃するニャルラトホテプ、並びにハスター。
これこそが、ニャルラトホテプとクトゥグアが喪った神の位の圧倒的力。逆説的に、この力の喪失が神にとって何よりも重き罰であり、尊厳の喪失であり、得難き虚脱感である事を証明している。神の座を降りるということは、これ程の力を自ら手放すという事。それは死など歯牙にもかけぬものだ。
【水臭いことを言うでないわ。そなたらが儂を家族と呼ぶ限り、こんなものいくらでも手伝ってやるわい】
ハスターは俗世に、あらゆるものに無関心だった。信者にも、勢力争いにも、神たる自分にも興味が持てなかった。それは彼が抱いた虚無であった。
しかし、ニャルラトホテプの家族惚気を聞く度に興味が湧いた。全方位に恨みしか買わないこやつが家族だなどと。弱点を晒す趣味があるのかと。
だが、ニャルラトホテプは普段のような悪辣な狡智でなく、満面の笑みでハスターに家族の幸せを説き続けた。あの這い寄る混沌をこうまで夢中にさせるものがあったのかと。
そしてハスターもまた、家族なるものに興味を懐き今に至る。カルデア、並びに家族達は既に、邪神ハスターにとっての庇護対象でもあるのだ。
【む、最後の一匹をビヤーキーが始末したようじゃ。娘の場所に行ってやれ、ニャルラトホテプ。見張りは儂が引き受けようぞ】
【すまないな。本当にありがとう。明日の夜明けに飯を奢るからな】
【いらぬいらぬ。好きでやった事じゃからな】
通話を切り、フードを下ろし空を見上げる。ついでに星に蔓延していた排気ガスや二酸化炭素を巻き込み吸収したため、暫くの間は星は綺麗な状態を保つだろう。その証拠に、都心でありながらも夜空の星が鮮明に見えている。
【後はお主ら家族次第じゃぞ。多少強引じゃが、これで残すは頭のみじゃ】
しかし、人間を巻き込まずにやったつもりではあったが、全く目を欺けるという訳ではあるまい。まさに会話していた輩からしてみれば、突然グールが目の前から消えたとしか言いようが無いのだから。
【むはははは、ご愁傷様じゃが許すとよい。親しげに話していた隣人は、夜明けにはきっと帰って来るであろうからのう】
ハスターは邪神なので、人間の感情の機微や立場など気にすることはない。そうなったら愉快じゃのう。特等席で見たかったわいと膝を叩き笑う。屋内にいた者たちは、ゲームのバグのように壁や天上を飛んでいくグールを見て何を思うのだろうか。
【想像したら…シュールよのぉ〜。むっはっはっはっ】
銀髪の青年の見た目をしたハスターは、自身の起こした奇跡のようなマジックに大笑いする。驚かしてすまんのー、というハスターの顔はどこまでもにこやかであり、愉快げであったという。
…これが後に、一晩寝ていたら地球の環境が好転したとされる突風現象【シナドウィンド】と呼ばれる現象の発足である。深夜帯に起きたため、集団幻覚との見解が最も多いのが通説と聞き、ハスターはちょっとがっかりしたとか、しないとか?
真尋「今の…ハス太か…!?」
ハス太「僕だけど僕じゃ無い…これは、邪神ハスターの力そのもの…」
ニャル「意外!邪神は二人いた!!」
クー子「クトゥグアは…?」
ナイア「ヘッヘッヘ…皆さん、こんばんは」
ニャル【夜分にすまない。 ママさんに話があるんだ】
真尋「あの人達…一体、何者なんだ…」
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