人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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真尋ママ「そんな事に…解りました。この依頼、お受けいたします」

ニャル【感謝を。百人力です。…問題は、そちらの異星人達ですが】

「?なんの心配もいりませんよ、先生」

【なんと】

「あの子達も、皆いい娘たちですもの。先生の自慢の娘さんとも、きっと仲良くなさいますよ」

【なるほど…】


同じバグを抱えた邪神

「クトゥグア…惨敗…ボロ負け…ゴミのように…」

 

「あ、あの。あちらのクー子様は…」

 

「お気になさらず。自分の本元がサクッとやられていたことに堪えきれなかっただけですから」

 

ニャルが八坂ママに話を付けている頃、ナイアは狩人としての自身の素性を明かし、真尋やニャル子に共闘を持ちかけていた。真尋は冴えない転入生が突然絶世の美女に変身した事実にSANチェックを受けたが、ニャル子必死の精神鑑定により事なきを得る。男子高校生にはあまりに刺激が強い美女であるのは確定的であるが、ナイアは無自覚である。

 

「となるとナイア舎弟。グールが減りに減った今がチャンス、私達が皆でカチコミをかけるのが吉だと言うのですね?」

 

「はい、ニャル子さん。グールはいてはならない人間社会の侵略的外来種です。ハスターお祖父様が一掃してくださった今がチャンス。グールカンパニーを跡形もなく殲滅させられるのは今なのです」

 

「やっぱりあれは邪神ハスターの力だったんだ!ニャルラトホテプとハスターが力を合わせているだなんて、君の家族は凄いんだね!」

 

ハス太の称賛に、無垢な笑みを浮かべるナイア。父はニャル子と不倶戴天だが、娘のナイアはそんな感情は抱いていない。皆、大切なクラスメイトなのだから。

 

「私の父、ニャルラトホテプに学校の生徒がチェンジリング被害を打ち明けてくださいました。非日常に放り込まれた恐怖、絶望…決して容認してはならない事です。なんとしても、クラスメイトや学校の皆様からそんな闇を振り払いたい」

 

「い、一応ニャル子達に引き摺り込まれた側の人間なんだけどね、俺…」

「何を仰る!私と真尋さんの薔薇色の日常に相乗りできたではありませんか!」

「私とニャル子の、情熱的な日常にも…」

 

「ナイアさん、コイツも殺して結構です。クトゥグアよりは楽勝ですよ多分」

 

「ナイアさん…あなたは本当に、日常や皆を大切に思っているんだね」

 

ハス太の言葉に、ナイアは強く頷く。学園生活は初めての経験であり、自身を受け入れてくれた皆は、既に何をおいても護るべき対象となっている。

 

「まだ一日目でも、私にとっては長い付き合いです。ましてや友好的に受け入れてもらえたのなら尚更の事…。私は、真尋さんやニャル子さん、クー子さん、ハス太さんのこれからも続いていくドタバタな日常…それが紡がれる世界を護りたい。光溢れる世界を護りたいから、私は狩人となったのです」

 

「ナイアさん…」

「なんですかこのコジマ粒子ばりに溢れるイノセントシャイン。これがあのニャルラトホテプの娘!?どんなバグです!?奇跡という名の!」

 

「だからどうか私に力を貸してはくださいませんか!一人では手間取ってしまっても、皆で力を合わせればきっと絶対に完璧なお仕事ができるはずです!父との確執を忘れろとは言えません。でもどうか、恐怖に怯える無辜の皆様を思い今回だけは手を取りあってはくださいませんでしょうか!」

 

ナイアは伏して願う。彼女は理解されない狩人と言われているが、それは闇に蠢く者たちや秩序の番人からの畏怖にすぎない。彼女には備わっている。確かな理性と品性、父から丁寧に、丹念に、決して欠如しないように仕込まれた倫理観が。それが今、真尋達へ助力を乞うことに繋がっている。

 

(ニャル子、どう出る…?)

「……」

 

真尋は即断で受けるつもりだが、気がかりなのがニャル子だ。残酷、悪辣、狡猾なニャル子が、怨敵の娘である彼女にも牙を剥くのではないのかと。そうしないよう抑えると、先生には誓ったが…

 

「水臭いですよ、ナイアさん」

「ニャル子さん…」

 

「あなたは私と真尋さんの行く末を、太陽と占ってくれました。私と真尋さんを応援してくれて、かつ真尋さんとフラグを立てるつもりが無いのなら私達はベストフレンド。邪神繋がりのズッ友にだってなれる筈です」

 

だが、ニャル子はナイアには予想以上の好対応を示したのだ。それはニャル子が恋する乙女(20代後半)であり、それを応援してくれたことによる仁義の通しでもある。

 

「そんなあなたが友達として頼ってくれた。今こそタロット占いの恩を返すとき!相乗りしましょう、その誘い!ニャルラトホテプとして、あなたのことは好感触です!」

 

「ニャル子さん…!ありがとうございます!全力で、真尋さんとの仲を応援させていただきますね!」

「あなたは素晴らしい友達になってくれそうですねナイアさん!よーし、ではサクッとグールカンパニー壊滅させて恋バナから始めましょー!ニャルラトホテプ同盟!大!爆!誕!です!!」

 

ガシッと握手し、肩を組むニャル子。奇しくもニャルの教えが娘の絆の生成に一役買った形だ。自身の恋路を応援してくれる者を、ニャル子は傷付けたりなどしないのだ。

 

「僕も力を貸すよ!だからナイアちゃん、僕と真尋君の関係も占ってほしいな…」

 

「だめですよ!ナイアさんの占いは私のものです!ニャルの娘は我が娘も同然!つまり私専用の占い師なんです!」

 

「ナイア淑女…何故…何故クトゥグアを殺したし…」

 

「て、敵対していたので…、で、ですが私の家族が、新生したクトゥグアの新たな火を保護したのです。このランタンに、ほら。グーアと言います」

 

『…………』

 

「クトゥグアは死滅していなかった…!ならば敵対はやめる。ニャル子の娘なら私の娘も同然!」

「同然、なわきゃねーでしょ不純物!あなたのような薄っぺらい小火が私とナイアさんの深遠なる砦に入ってくるんじゃあないです!」

 

「分かった、分かったからとりあえず纏めるぞ!…俺達の返答はこの通りだよ、ナイア。俺達も、当たり前の日々や皆を護りたいって気持ちはおんなじなんだ」

 

真尋がそれを取りまとめ、ナイアに告げる。だからこそ、自分たちは手を取り合えると。

 

「同じクラスメイトとして、学校や皆を護りたいと言ってくれた君に力を貸してあげたいと思う。…まぁこの三人と違って非力ではあるけど、力にはなれるはずだ」

 

真尋は彼女と、彼女を育てたニャルラトホテプを信じると決めた。彼女を信じ、共に平和を求める事は決して間違いなんかじゃないのだから、と。

 

「だから、一緒にグールカンパニーを倒してやろう!人間の底力、見せてやるんだ!」

 

「真尋さん…!はい!どうか皆様共々、よろしくお願いいたします!」

 

ナイアは勝ち取った信頼に感激しながら真尋の手を取る。ここに、時空を超えた邪神狩人同盟が誕生する運びとなったのだ。他の闇の者共からすれば驚天動地の同盟だろう。

 

「皆様、どうかよろしくお願いいたしますねっ」

 

(うわぁ…近くで見ると人間離れしすぎてる綺麗さだ…邪神の娘だから、見た目も極まってるんだな…)

 

「あー!ちょっとちょっとナイアさん!その手の包み込み方は真尋さんがドキドキしてしまいますのでNG!NGです!あーダメダメ!エッチすぎます!」

「す、すみませんでしたニャル子さん!真尋さんに対して失礼を!」

 

「ふっふっふ、解ってくれればいいのです。ニャル子素直な子は大好きです!ではこれからよろしくお願いいたしますね!」

 

「グーア…クトゥグアがこんなになってしまって…まぁこれはこれでアリ…」

『!〜!』

 

「ハスターとも知り合いなんだよね?話してみたいなぁ。あの力、僕も参考にしたいんだ」

 

(ナイア…流石だ。きちんと仲間になれたじゃないか…)

(ふふ、だから言ったでしょう?子供たちは、親が思うよりずっとずっと成長が早いんです♪)

 

四人の同盟結成を、窓の外から暖かく見守る二人の親。世界一暖かい、窓に、窓に!案件であった。




マイノグーラ【話は纏まった?なら、場所を教えるよ!】

ニャル【突き止めたか。流石姉貴殿。話が早い】


マイノグーラ【褒めるな褒めるな。場所は日本地下…核シェルター内に作られたグールカンパニー本社!その名も【ア グール ホール】!!】

ニャル【血税で作りやがったな…。許さん。一刻も早く潰そう】

ニャル子「じゃあ皆!行きますよ!せーの!」

「「「「「行くぞ!!」」」」」

ニャル【フン。真尋少年がいてくれて助かったよ。…思えば…】

家族愛。乙女の恋。

それは、同じバグなのだなと。自嘲が止まらぬニャルであった。

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