人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

205 / 3000
「金ぴか!金ぴか!」


「む?なんだ?何事だ?」


「マスターが!ケーキパクってばたってなって倒れて目が半開きでマスターが!!」

「全く要領を得ぬわ!要点をまとめ会話せよ!」


「マスターが死んだ!!」

「核心を突きすぎだたわけ!!」


プロローグ 可愛い子は地獄に落とせ

「金ぴか!早く!マスターが、マスターが・・・!」

 

 

 

あまりにも必死なジャンヌ・オルタの声と、オルガマリーの緊急招集に招かれ、慌ただしくマスターの部屋に脚を運ぶ

 

 

 

「何事か!騒々しい!何事にも常に余裕を以てゴージャスたれと常日頃」

 

 

「マスターが――動かなくなっちゃったのよ!」

 

 

――これは・・・!

 

 

 

マスターは虚空を眺めていた。右手にフォークを握った体勢のまま、ベッドに寝かされている

 

「貴様、どんな新作スイーツを食わせた!何故味見の一つもせずに誰かに食わせるのだ!メシマズ系ヒロインでは無いとタカを括った我のミスか!?何故自らの料理を味見もせずに意中の相手に食わせようとするのか我には全く理解できぬわ!まずは己が完食してから差し出すのがマナーであろうが!」

 

「落ち着いてギル!ジャンヌ・オルタは無関係です!」

 

――これは、まるで魂が抜けているような状態・・・しかも外的要因が働いている体だ

 

 

もしや、これは――ゲーティア達の・・・

 

 

「邪視、だね」

 

後を追ってきたソロモン――ロマンがたちどころに現状を看破する

 

 

「視線に乗せて相手を呪う魔術だ。会談の席に着く敵国の要人を仕留める為などに使役されるお手軽な呪殺方法って訳さ」

 

「ロマニ・・・」

 

「もしかせずともゲーティアめの仕業か。チ――そう言えば我が魂を弾き飛ばした直前に呪っていたな。どさくさに紛れて呪いを残すとは小賢しいにも程があろう」

 

 

――目は開いている、肉体は稼働している。精神も壊れてはいない

 

しかし、それを纏めあげる魂が抜け落ちている。この三つは本来不可欠なもの、肉体や精神がいくら強靭であろうと、まがりなりにも魂が無くば器は稼働しないのだ

 

《経験者は語る、か。言われてみれば我が最も無防備な場所はあそこだったな》

 

――はい。恐らく、彼女の魂は囚われています。此処ならぬ何処か――いや、おそらく

 

《――あの下らぬ薄汚れた塔、か。ゲーティアめ、倒錯趣味にも限度があろう。アレか?肉体と精神の守りがあらば会話もまともにできぬのか?》

 

自分の実体験が生きた。彼女は――あの塔にいる筈だ

 

地獄の具現

 

自らが落とされた場所

 

魂の堕ちる塔――自らが落とされた、監獄の具現に

 

 

「うん、これは間違いなくゲーティアの仕業だ。――全く。直接じゃ勝てないからってこんなやり方に頼るなんて。だから小物臭いなんて言われるんだ」

 

ふぅ、と息を吐き

 

「――――うわぁああぁあぁあどうしよう!?どうしよう!?いくらリッカ君でも魂だけなんて無防備さじゃいけない!たちどころに殺されちゃうかもしれない!魂は人間の構成する部品で最も脆くて大切なものなんだ!そんなものを放っておくなんて正気の沙汰じゃないぞ!どうしよう!どうしよう!くそぅなんで僕は指輪を一つしか持っていかなかったんだ!せめて5つあれば半分の魔術くらいは使えたのに!あぁあ、もうだめだぁ――!」

 

 

「落ち着きなさいロマニ!」

 

あわてふためくソロマンを一喝するオルガマリー

 

「貴方や私が動揺すればそれは全体に波として波及するわ!パニックになるのは一番最後!いい!?」

 

「は――はい!所長!」

 

「よろしい!――で、何その格好」

 

 

一息ついたことにより、冷静に醜態に突っ込まれる

 

「うぇ!?あ、いやこれは・・・女王の熱心な御誘いに負けないための正装と言うか・・・だって・・・ほら・・・刺激が・・・」

 

「・・・まぁ、趣味は色々だしね。史実のソロモンも偶像崇拝に傾倒していたと聞くし・・・」

 

 

「僕を何かの間違いとカウントするのは勘弁してください!頑張ります!頑張りますから!」

 

 

漫才を後ろで繰り広げる二人をスルーし、リッカの状態を確認する

 

 

「どうなの!?治るの!?」

 

 

「――魂の尾は切れておらぬ。問題はあるまい。飛ばされた場所も見当がついている。此方からも多少の援護はできよう」

 

王の言葉を聞き、安堵の息を吐く涙眼のジャンヌ

 

「良かった・・・」

 

 

――ワタシのように、此方から引っ張りあげることは可能なのでしょうか?

 

 

(――いや、アレはキミの魂が真っ白かつ、火事場のバカ力、そして器と魂の繋がりがとても強かったからできた力業だ。経験を積んだ魂に同じ真似はできない。確実に砕け散るだろうね)

 

ベッドの傍らに立ち、鼻をスースーさせフォウが告げる

 

自らは例外かつ特例。今度はそうはいかないと

 

――っ。位置は解っても、助けにもいけないなんて・・・!こうなったら、ワタシがまた・・・!

 

《落ち着け。深呼吸せよ。焦りは視野を狭め、混乱は正しき認識を曇らせる。当事者になるばかりが解決法ではない。――我の言葉の意味は解るな?》

 

――は、はい。落ち着いて・・・すぅ、はぁ・・・

 

《それでよい。頭は冷やし、感情は心で燃やせ。それが裁定者の心構えだ。よいな?エア》

 

 

――はい、英雄王。そうです、下手に動いてしまってはミイラ取りがミイラに、英雄王やフォウの頑張りを無駄にしちゃう。冷静に、俯瞰の視点を・・・ですね

 

《そうだ。聞き分けのよい者はやはり良いな。教鞭の振るい甲斐がある》

 

 

――フォウも、ごめんね。冷静にね

 

 

(それでいいんだ。ソイツの言う通り、対処法はある。何せ位置は割れてるんだ、見失いはしない)

 

うん、ありがとうと頷く瞬間

 

 

「マスターは」

 

背後から、ぬらりと声がする

 

 

「マスターは・・・我が子は、無事なのですか?」

 

心配そうに、眼を澱ませながら声を上げるのは源頼光だった。その瞳には――光がない

 

「我が子を掠めとるだなんて・・・指を落とし、喉を裂き、臓物を踏み潰し、眼を抉り、鼻をもぎ、舌を切り落としてもまだ飽き足りません・・・どうしてくれましょう。誅罰執行、天網恢々礎にして漏らさず。許しません、赦しません。えぇ、どうしてくれましょう――そうだ。首を落として、カルデアの飾りにしませんか?金時もきっと喜びますわ、仇を討った首級ですもの・・・」

 

すらりと刃を抜く――ま、待ってください!

 

「マスターは無事だ。必ず貴様に笑顔を見せよう。他ならぬ我の言葉だ、信じるがよい。子の外出を待つも『母』の務めであろうが」

 

 

――そうです!マスターは必ず戻ります!ワタシ達が見守ります!だから、どうか貴女の子を、英雄王を信じてください――!

 

 

必死に説得する。王の言霊に、母の狂気が静まっていく

 

「――母の務め・・・えぇ、解りました・・・」

 

そしてゆっくりと刃を収める

 

「私は・・・待ちましょう。我が子の帰りを待ちましょう。無事であることを信じて・・・」

 

胸に手を当て、悩ましげに告げる頼光

 

 

――母の務めという言葉が効いてくれた!良かった・・・!

 

(モンスターペアレント怖すぎぃ!邪魔するならお前らも斬るぞって言ってた、目が言ってた!)

 

――母、すごい!

 

「それでよい。抱擁と、食卓を囲う準備をしておけ」

 

「はい!――元凶を突き止めたなら教えてくださいませ。私が、ご挨拶をさせていただきたいので――えぇ、えぇ。では皆様、母は失礼させていただきますね――ん」

 

去る前にリッカの頬に口づけをしながら、ゆっくりと部屋を去る

 

 

「「・・・・・・」」

 

「ま、ママって怖いのね・・・なんで教えてくれなかったのよ、ジル・・・」

 

顔面蒼白の所長とソロマン。涙目になりながら震えるジャンヌ・オルタ

 

「鬼子母神だったか?まさにアレよな。子のためにあらゆる悪逆非道を為す。厄介なことにその澱みと矛盾をヤツめも自覚しておらぬ。・・・ふはは、良い母を得たな、マスター」

 

――日本のママは皆凄いんだなぁ

 

 

「さて、では対処と行くか。まずは――」

 

場をとりなし、改めて英雄王が口を開こうとした瞬間

 

「熱ッ!!」

 

短く悲鳴をあげるジャンヌ・オルタ

 

 

「なんだ、自らの火で火傷したか?自爆芸など披露している場合ではあるまい」

 

 

「ち、違うわよ!――なんか、これが・・・」

 

そういって懐から取りだせしは、一枚の便箋

 

 

漆黒のそれは、ジャンヌ・オルタの手の中で、煌々と燃え盛っている――

 

 

「それは――召喚券だね。座標が書かれている筈だ。恐らく――リッカ君がいる場所の」

 

「本当!?」

 

「召喚券・・・座標・・・、ッ!場所と座標が解るのならば、レイシフトの要領でサーヴァントを送り込めるのではないかしら!?」

 

――なるほど!存在証明が出来るなら、サーヴァントを・・・!

 

――でも、どうして招待状をジャンヌが?

 

 

「それをいつ手に入れた?随分と洒落た案内ではないか」

 

「わ、解んないわよ。なんか、いつの間にかあったって言うか・・・なんとなく持っていたって言うか・・・」

 

「宛名のない手紙を大事に抱えているとは・・・詐欺と請求には気を付けるのだな。18サイトのサーフィンは程々にせよ」

 

 

「うっさい!それより、これがあればなんとか出来るのよね!そうなのよね!?」

 

必死な様子でジャンヌが訴える

 

「うん。僕とギルの『眼』があれば観測はできる。何がおきてるかは解らないから、君に頑張ってもらうしかないんだけど・・・」

 

――招待状を貰ったということ、それならばジャンヌが行くことに必ず意味がある筈だ!

 

 

「なんとかなるのではない、なんとかするのだ。――覚悟は良いな、ジャンヌ・オルタ」

 

ギラリ、と王の眼がジャンヌを捉える

 

「悪足掻きとはいえマスターめは確かに地獄に囚われた。多少強引にでも叩き起こしてやらねばならぬ。本来ならばそれは我の仕事ではあるが、先約があるならば譲ってやらねばなるまい。――貴様に、マスターを救う大役が担えるか?」

 

「当たり前でしょう!!」

 

ジャンヌ・オルタは即答した。迷いは微塵もなかった

 

「死んだって助けるわ!私の旗はマスターのモノ、私の憤怒と憎悪はマスターを阻む総てに向けられる!私はここまで――マスターの為だけに戦ってきたんだから!地獄の果てまで付いていくって約束したんだから!」

 

招待状を握りしめる

 

 

「私を求めてくれた、世界でただ一人の大切なマスター!――覚悟なんてするに決まっているでしょう!絶対絶対!私が助ける!私だけが、彼女に寄り添ってあげられるのだから――!!」

 

 

「――私からもお願いします」

 

同調を、オルガマリーも見せた

 

 

「彼女の想いは本物です。彼女は最底辺の霊基からマスターへの想いでここまで鍛え上げてきました。彼女の努力は、いまここで結ばれるときではないでしょうか?」

 

――自分も同感です。彼女は地獄の果てまで付いていくと宣言しました

 

地獄へ囚われたマスターを救うのに、彼女は相応しいと魂を懸けて進言いたします!

 

 

「彼女がいれば明るいよ!ほら、炎とかで物理的に!」

 

「ロマン、黙って」

 

「ひぃ!」

 

「――フッ。こうも進言されては仕方あるまい。我は聞き分けのいい御機嫌王であるからな。良かろう!貴様に勅令を下す!」

 

 

ビシリと指を突きつける

 

「ジャンヌ・ダルク・オルタ!貴様の総力を懸けて、囚われたマスターの魂を奪還せよ!失敗は万が一にも赦されぬ難題だ、しかし我は貴様の浅ましい足掻きを高く評価している!ローマ、オケアノス、ロンドンと貴様はマスターに寄り添い、足手まといであったな!」

 

「誉めてんの!?喧嘩売ってんの!?」

 

――すみません、心から評価しているのです!紛れもない好評価なのです!

 

(まずは罵倒するスタイル。嫌いじゃないよ)

 

「だが、その苦労は今このためにあったと知れ!地獄の業火を体験した貴様ならば、必ずやマスターを導けると我は賭けよう!貴様の旗――今こそマスターの為に振るうがいい!!」

 

 

「――何度も言わせないでくれる!?」

 

咆哮に呼応し、招待状が燃え尽き炎となりてジャンヌ・オルタに纏われる

 

髪は長く伸び、鎧はドレスを象った豪奢かつ美しいものに変化する

 

その輝かしくも麗しく、荒々しく禍々しい姿はまさに『竜の魔女』の名を冠するに相応しい姿である――

 

「私はジャンヌ・オルタ!世界を憎み、怒る復讐者!私のマスターを世界が奪うって言うなら――」

 

バサリ、と竜を表す旗が掲げられる

 

「世界総てを焼き尽くしマスターを奪い返す!世界なんてどうでもいい、ただ。私の運命(マスター)を奪うと言うなら容赦はしない!我が炎にて、何もかもを焼き尽くすのみよ――!!」

 

 

――吼えたてよ、我が憤怒

 

 

監獄の塔を焼き尽くすもう一つの炎は、今ここに定まったのだ

 

 

「よし――マリー、ロマン!そやつを丁重に送ってやれ!我はマスターの身柄を預かる!」

 

――寝たきりになってしまえば加速度的に肉体の機能は落ちていく。三日も動かなければパンクラチオン使いとして致命的だ

 

『保護』の原典。マシュと同じカプセルを用意し、同時に『鍛練』の原典『最も簡素な試練(ブルワーカー)』を選別し、マスターの肉体を保護するサポートを手配する

 

――当事者になるばかりが解決法ではない。こういうことですね、王よ

 

《上出来だ。後で飴をやろう》

 

――フォウの分も、是非よろしいでしょうか?

 

 

《構わぬ。うむ、まさに可愛い子には旅をさせろならぬ――可愛いマスターは地獄に落とせ、であるな!》

 

――酷い字面です!間違っていないのが、また・・・ま、負けないで!マスター!

 

 

「じゃ、僕がジャンヌ・オルタ君をレイシフトさせるよ」

 

「あ、それは出来るのね?」

 

「ソロモンだからね!一人くらいならレイシフトは問答無用で成功できるよ!」

 

 

「ソロモンでも小便王でもいいからさっさとしてくれないかしら!?」

 

 

「はいぃ!レイシフト開始だ!えっと――『復讐の刻きたれり、其はマスターを取り返したいんだもの!』だね!」

 

「ぶっ燃やすわよ医者ァ!!」

 

「ひぇえ気を付けてね~!!」

 

 

そうして、ジャンヌ・オルタは駆ける。人形の炎となりて

 

 

「待っていて、私のマスター!必ず、必ずあんたを引っ張りあげてやるんだから――!」

 

 

地獄の彼方へ、深く深く。

 

 

――復讐の旗と、麗しき長髪をはためかせて――!

 




【人を羨んだことはあるか?】


またあいつ一位だよ

まじうぜぇ、勉強だけやってますーっていい子ぶりやがって

絶対カンニングしてるぜ。ぜってぇ先生になんかワイロわたしてんだよ

そうじゃなきゃ、毎回トップなんてあり得ねぇに決まってんじゃん

あいつに負けたクラスのヤツ、めっちゃキレてたよ『カンニング野郎に負けた』ってさ


マジキモい、なんで学校にきてんのあいつ

死ねばいいのに――

【己が持たざる才能、機運、財産を前にしてこれは叶わぬと膝を屈した経験は?】

マジうぜぇ!なんで俺があんなやつに負けんだよ!

ドーピングだドーピング。薬でもヤッてんだよ絶対

うっわ、引くわー・・・マジでなんでもやるんだね、本当キモい・・・

恥ずかしくねーの?そんな必死に点数ばっか気にしてさぁ

私はあんたたちとは違う~、っての?

・・・なぁ、今度運動靴隠してやろうぜ

あはは!靴がなければ運動できないもんね!

ざまぁ見ろ、ガリ勉ドーピング女――


【世には不平等が満ち、ゆえに平等が尊いのだと噛み締めて涙にくれた経験は?】


え?靴?しらなーい


ノート?あァ悪い、ゴミとして捨てちまった!名前書いてなかったじゃん!見てなかったけどさ!


だからさぁ、学校くんなよ、臭いんだよ

マジで死んで、その方が皆幸せだから


【答えるな、その必要はない】


嘘だろアイツ、裸足でとか・・・!


嘘、意味わんない!なんでまたアイツがトップな訳・・・!ノートとか全部燃やしてやったのに!

【心を開け、目を逸らすな。それは誰しもが抱くゆえに、誰一人逃れられない】


くそっ!くそっ!なんであいつばっかり・・・!

どうして、あんなやつに勝てないのよ・・・!


・・・・・・――あんなやつに・・・!!

【他者を羨み、妬み、無念の涙を導くもの】


俺の方が上なのに――!

私の方が、頭がいいはずなのに――!!



【嫉妬の罪】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。