人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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フレンドリスト


【藤丸龍華 レベル ■■■ 】


【人類愛 藤丸龍華を 召喚しますか?】




年末の楽園首脳パーティー

喫茶店、アーネンエルベ。NPを100%チャージしてくれるおじさんが経営している、平行世界の交差点。ここにはギャグ時空めいた空間が広がり、誰もが利用できる器用で素敵な場所となっている。今はもっぱら、楽園カルデアに経営は任されているが。

 

「出来たよ君達ィ。サンドイッチに生ハムメロン、カルボナーラといった無節操ゴッフセレクションを味わいなさぁい」

 

「ありがとうございます副所長!うわぁ、ボク達スタッフの楽しみなんですよこれ!」

 

「話をしていると二言目にはこれですからねぇ。ゴルドルフ副所長は士気向上に比類ないパフォーマンスを発揮する人材というのは不動の評価ですね、うんうん」

 

「それは間違いなく。だって心が贅肉まみれだものね!流石は魔術師以外は何でもできる男さゴルドルフ!」

 

褒めてるのかねソレ!?ロマニ、ダ・ヴィンチ、シオン、そしてゴルドルフ。彼等は部員時空の年末を静かに祝うことに決め、アーネンエルベにて細やかな首脳会談という名のティータイムを過ごすことにしたのだ。

 

「オルガマリーもこっちに向かっているって連絡があったよ。石丸甲児さんの協力を無事取り付けられたってさ!」

 

「マルドゥーク神の解析のためにも、有能な科学者は最重要ですからねぇ。魔術と科学をバランス良く。何事も調和が大事ってコトです」

 

「人手はあればあるほどいい。それが優秀なら尚更だ。うたうちゃんを手掛けた天才の一人ならきっと力になってくれる筈だよ。何せ愛弟子の推薦さ!」

 

「副所長としては気が引き締まる思いだ。若人達はホント成長が早いからね…少しでも威厳というものを手に入れなくては」

 

そうして各自、思い思いの所感を語りながら一年を振り返る。皆が体感した一年の中で、やはり頻繁に上がるワードは絞られるだろう。

 

「リッカ君の故郷、とんでもない場所だったねぇ…まさか魔神柱も絡んでたとはいえ、あんなにも鮮烈な場所だったなんて」

 

「魔術協会や聖堂協会も予想できないような人材の宝庫でしたよね〜。まぁ、魔神柱アンドロマリウス達や榊原先生がなんとかしていたんでしょうけど」

 

リッカの故郷、夏草。そこにて出会った縁や手にした戦力、紡いだ思い出は尋常ならざるものだった。人々の善意や善性を証明する都市、悪龍を人類愛へと変えた地。カルデアが知った、リッカが世界を救いたいと願う理由となった場所。

 

「まさか一般人枠から大量に補充要員を見繕えるとは思わなかったよ、いや本当に。びっくり人間コンテストもかくやの者達の頼もしいこと頼もしいこと…」

 

「人類とは時に超絶的な素養を持つ存在も生まれます。そしてそれにあれほどの善良な精神が宿った事も含め、まさに奇跡の街でしたね。新年にでもまた、足を運んでみません?絶対まだ判明してない素敵なもの、ありますよ!」

 

シオンとゴルドルフが言うように、夏草はこれからもカルデアの心強い味方であるだろう。内海市長を始め、頼れる大人が少女達の帰る場所を護ってくれているのだから。

 

「ふふ、ロマニ?私達の目的も無事果たすことができてめでたいじゃないか」

 

「あぁ、レオナルド。ボク達スタッフ一同、夏草に心から救われた立場だからね」

 

一息つきながら、気楽なのびを披露するロマニ。彼等の目的という聞き慣れない言葉に、ゴルドルフは片眉を上げる。

 

「リッカ君を、必ず日常へと帰す。それはボク達スタッフ一同の不文律であり訓戒だった。一般人としての人生を、彼女には返してあげなくちゃと躍起になっていたからね。まあ、ギルや姫様のお陰でカルデアは楽園になったけど…」

 

「それでも、リッカ君の帰るべき場所は日本のあの場所だ。必ずどこかで、帰らせてあげなくちゃいけなかったからね」

 

レオナルド、ロマニはそれを悲願として奮闘してきた。必ず、彼女に当たり前の幸せを約束する。必ず、一般人としての未来を返す。その為に、ムニエルを始めとした皆の決心と士気は揺らがなかった。世界を救い、平穏を彼女に返すことがスタッフ達のオーダーだったのだ。

 

「それは素晴らしい願いだねェ。帰らないと帰れないでは天と地ほど違い。ピットインできるとできないじゃ違いすぎる。ガソリンが僅かな中走る山道の不安と言ったら!」

 

「結局彼女はカルデアで戦うことを選んだ。けれどそれでも、彼女はキチンと帰る場所も、護りたい世界も、戦う場所も手放さなかったんだ」

 

「月並みな感想ですが…私達の希望が彼女で良かったですよねぇ、ホント」

 

全員は頷く。決して祝福された運命ではなかったかもしれない。決して容易い運命ではなかったのは間違いない。下手をすれば、彼女が世界を滅ぼす引き金となった可能性すらあった。

 

「うむ。平穏な日常に戻る選択を有した上で、リッカ君は戦う決断を行った。誰もが笑う世界や当たり前の明日が来る未来を護るとカルデアに舞い戻った。ならば大人の我々が、そんな彼女や皆を護り支えていかなければねぇ」

 

「そうですよ副所長。リッカ君の人生はまだまだこれからなんですから。辛い涙や苦しい記憶じゃなく、楽しい日々を我々が約束してあげなくちゃ!」

 

「それはいいんですがDr.ロマニ?あなたはいつになったら御家族を増やすんです?養育費や育児休暇は申請受理なんですよ?」

 

「そ、それはもうちょっとだけは後に!これからサタンとの戦いも控えてるんだから、決して油断しないようにしないとならないし!」

 

「え〜?でもロマニとシバの赤ちゃんを見れたなら私達は限界の一つや二つ簡単に超えられちゃうんだけどな〜?」

 

「れ、レオナルド…!」

 

「キミねぇ、独身の私が言うのもなんだけど、女性はあまり待たせてはいかんよ?30を越えたら身を固めろとうちのホムンクルス達の異口同音を聞く羽目になるのはイヤだろぅ?いやいいんだ!私のことはほっといてくれたまえ!」

 

「ゴルドルフ副所長…!み、皆も待ってほしい!必ず、必ずいい報告を持ってくるから!シバとも話すから!」

 

「セルフ・ギアス・スクロール持ってきますね〜」

 

「シオン君!?」

 

やいのやいのと、歓談に花を咲かせる一同。そこに、とある一人の来客が現れる。

 

『ここが平行世界の交差点…なるほど、平行世界運用のための座標観測の応用ね。中々考えるじゃない、地球人』

 

「あれ?オルガマリー?その格好は?」

 

扉を開け、入店してきたオルガマリーをロマンは見出す。だが、その服装は全く普段と異なっている。それは所々に地球外の意匠、ウルトラ一族めいた衣装と角等を装着している。

 

『お前達も個体名を正しく認識できないクチ?全く楽園、カルデアのフレンドたるカルデア勤務のスタッフがなんと情けない…でもいいでしょう。藤丸龍華の起死回生の逆転劇に免じ、あらゆる無礼を赦免します』

 

「どうしちゃったんだい、愛弟子?その服装は?その角はまた新たなる礼装でも手掛けているのかな?」

 

『…その馴れ馴れしさ、どうやら私に極めて近しい地球原産個体がそちらにいるのは本当ようね。確か、所長だったかしら』

 

うんうん、と頷くオルガマリーらしき女性。その態度は尊大ながらも誠実さを感じさせる、上に立つものたる存在そのものだ。地球文明にないような装束はそれを加速させる。

 

『どうやら藤丸龍華から聞いていないようね。ならこれは私からの一方的な礼、大統領から賜わす感謝状代わりの言葉と思いなさい。私が地球大統領になった暁には、極東の島国は必ずそれなりの対応をさせていただきます』

 

「「「「「???」」」」」』

 

『別世界のカルデア。あなた達の協力により、こちらのカルデアは最後の崩壊、瓦解を回避できました。その献身と奮闘に、この地球大統領Uーオルガマリー直々に御礼を言います。…マリーンを救出した恩は、生涯忘れないでしょう』

 

一同の理解が及ばない事をまくしたて、自称大統領は踵を返す。

 

『謝礼終わり!ではまた。私達は今南米攻略に忙しいのだから。精々よいお年を!精強なる隣人共!あとこの地球大統領に清き一票を!』

 

バタン!と扉を閉められ、静寂が戻る。一同は呆然と過ぎた嵐を見やる。

 

「…どうしちゃったのかね、我等が所長は…」

 

「疲労が、ピークになったとか…?」

 

「ウルトラマンがブームなのかい、マリー…?」

 

──その正体を知れば当然ではあるが。まだその時を迎えぬ彼らに、たった今来訪した者の正体はつかめない。

 

 

『ジパング…ジャパンって恐ろしい場所なのね…立香を真っ先に親善派遣しなくっちゃ…』

「遅くなってしまったわ…!副所長のクロワッサン、残っていますように…!」

 

 

…すれ違った刹那。互いに見るべきものを見ていた故に、彼女らは交わることなく交差を離す。その出会いは、何も生み出さぬ年末の夢だ。

 

…今は、まだ。




───僅かでも英霊を召喚したならば、こいつを殺す。

武器を取り戦い、僕達に殺されるか。

武器を取らず戦い、僕達に殺されるか。

どちらでも構わない。僕は必ず約束を護る。

お前達が、非情さを宿した獣である事を期待する。

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