人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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《嫉妬、それらは文字通り劣等感、やっかみ妬み嫉み。己に無きものを持つ他者を羨み、貶め辱しめる浅ましき感情の起伏よ。これらは人である限り逃れられぬ。何故だか解るか?》


――い、いえ。そんな感情、まだ抱いた事は無いので・・・あ、でも。フォウは可愛くて、ちいさくて・・・いいなぁ、もふもふだなぁ、あったかそうだなぁと思ったことは、あり、ます・・・はぃ


(エアの嫉妬可愛すぎない――?(爆散))

《まぁそれも嫉妬だな。うむ。――何故、嫉妬が切り離せぬのか。それはな――》



嫉妬

「――スター!マスター!」

 

 

あまりに必死な呼び声が耳を打つ

 

 

 

「起きなさい!マスター!無事よね!マスター!」

 

 

 

 

その声に、応えるように跳ね起きる

 

 

 

「ケーキっ!?」

 

目覚めた先に広がるのは・・・楽園、ではなく

 

 

寂れた部屋、血だまりが浮かぶ床、暗い天井

 

 

カルデアとは似ても似つかない・・・『地獄』の再現がごとき部屋であった

 

 

「・・・あれ?何ここ?マイルームは?」

 

 

キョトンとするリッカに、強く強くジャンヌが抱きつく

 

「あぁ、良かった・・・!私は間に合ったのね・・・!」

 

「あいたたたた!ジャンヌ!?」

 

「あ――す、すみません。・・・い、いえ。多目に見なさい、心配したんだから!」

 

うがーっと威嚇される。慌てて頭を下げるリッカ

 

「ごめん!あれ?でもここどこ?」

 

見るからにカルデアじゃないけど・・・と漏らすリッカ

 

「はい。この薄汚い場所はカルデアじゃあありません。ソロ、魔術王の――」

 

ジャンヌが言葉を紡ごうとした瞬間

 

 

「絶望の塔!おぞましき悪性の渦へようこそ『先輩』!お前の魂の訪れを俺は深く歓迎しよう!ようこそ!誰もが絶望を爪弾く舞踏会へ!!」

 

 

劇場の開演のごとく、声が張り上げられる

 

 

「おぉ?」

 

「ッ!?マスター!私の傍に!」

 

 

同時に無数に沸き上がる、矮小雑多の怨霊、魑魅魍魎たち

 

 

「聞こえるか、この叫びが!聞こえるか!この怨嗟の声が!誰も彼もがお前の来訪を心から歓迎している!――絶望の深淵、そして一筋の希望の輝きを持つお前を!――おぞましき歓声にて褒め称えているぞ!」

 

「燃えろ――!!私のマスターの視界から消え失せろ!!」

 

 

燃え上がる炎。地獄の業火の具現が迸り怪物を、霊魂を辺りせましと焼き払う

 

 

「傍らにいるは未熟なれど誠実なりしアヴェンジャー!ハハハハ!いいぞ!お前に寄り添う復讐者(エデ)はすでに招き入れている!お前の輝きは例外、規格外すら惹き付ける!実に面白い!」

 

 

「ぐだぐだくっちゃべってないで手伝うかなんなりしなさいよ!敵なのあんた!?」

 

 

「違う」

 

呟くように否定するリッカ

 

 

「多分、彼は・・・オルタと同じ――」

 

 

「――そうとも!!」

 

「ッ!しまっ――!!」

 

 

霊魂の一つがジャンヌの脇をすり抜け、リッカに飛びかかっていく

 

その魂を――ジャンヌとは全く異なる、黒炎が焼き尽くす

 

 

「オレは誰か!ここは何処か!そう、あらゆる事象がマイナスに作用するこの地獄にも、けして変わらぬ二つの真実を伝えよう!オレは!お前を気ままに翻弄せし『復讐者』!」

 

 

次いで、高速の雷撃にも似た閃光が牢屋を一瞬輝かせ、炎と怪物が一瞬にて霧散する

 

 

「お、おおっ!?クロックアップ!?」

 

「こいつ、やっぱり私と同じ――!」

 

 

「此処は恩讐の彼方なりしシャトー・ディフ!穢れと裏切りを知らぬ魂を辱しめ、絶望に叩き込むこの世の地獄!そしてその絶望の深淵にて吼え猛る我が名を!その魂に刻み込め!」

 

 

黒き燃え盛るヒトガタの炎が形を為す。

 

 

西洋のコート。深く被られた帽子、胸のブローチ

 

 

「我が名!エクストラクラス、アヴェンジャー!!クハハハハハハハ!!お前が知る英雄の頂点たる黄金の王!お前の傍らにいる心優しきアヴェンジャーともまた違う!この世を恨み、怒る!正真正銘のヒトの悪性の極致である!!」

 

 

そして――黒く、金色に血走る眼

 

 

「はじめまして、と言っておこう!!これより七つの裁きに挑み、立ち向かうマスターよ!さぁ、幸せな微睡みの時間は終わりだ!疑問と困惑に脚を止めている暇はないぞ?何故なら!七つの裁きを乗り越えられねばお前は死ぬからだ!」

 

 

「はぁ!?ちょ、何よそれ!いきなり人を招いて死ぬって何!?」

 

「不思議ではない。世の理不尽を鑑みればこれは遥かに容易い試練だ。何故ならば開幕を告げる声があり、それに覚悟を決める為の時間があるのだから!」

 

「あー、なるほど、よし、行こっかジャンヌ!」

 

 

ひょいっと身を起こし、バキバキと身体を鳴らす

 

 

「要するに、カルデアに戻りたかったら試練を七回やれって事でしょ?それに負けたら死んで、それに勝ったら私はカルデアに帰れる。そゆことでいいんだよね?」

 

「そうだ。物分かりがいいな。それが嫌ならここで奇跡が降りるのを待つのもいい。来るかも解らぬ助けを待ち、雛鳥のように口を開けるのも構わん」

 

「冗談!道があるなら私は進むよ、そういう生き方を選んだわけだし!」

 

 

「クハハハハハハハ!!そうだ、進め!恩讐の渦にて鍛えられし刃よ!だがそんなお前を俺はきままに翻弄するまで!ファリア神父になってやるつもりはないぞ?お前にとってのエデたるそのアヴェンジャーをけして手離さぬ事だ!さぁ着いてこい!第一の試練がおまちかねだ!!」

 

 

愉快そうに笑いながら部屋を後にし歩き出す、アヴェンジャーと名乗る男

 

 

「ちょっ、話すだけ話して歩き出したわ!なにあいつ、ナルシスト系のやべーやつなのかしら・・・大丈夫?マスター?」

 

心配そうに呟くジャンヌに対し

 

「ジャンヌ・・・ちょっと寝てる間に、凄く可愛くなったね!」

 

いつもの調子に笑うリッカ

 

「そ、そうかしら?貴女が喜んでくれるなら悪くは・・・じゃーなーくーて!アイツの事、信用するの!?大丈夫!?」

 

「へーきへーき!たぶんいい人だよあの人。親切にいろんな事教えてくれたし!ここでやること教えてくれたし!何より――」

 

更に沸き出る怪物を、素早く接近し右ストレートで粉々に砕くリッカ

 

 

「ジャンヌもいてくれるしね!ありがとう!ギルや皆が送ってくれたのかな?一人じゃないなら大丈夫!私は頑張れる!」

 

「マスター・・・」

 

「さぁ、行こうよ!七つの裁きってやつを乗り越えに!解らないなら、ただ進もう!」

 

リッカの決意に応えるように。魂の絆の具現がカタチとなる

 

 

オルガマリーが与えてくれたリングとバンテージ

 

母たる頼光が授けてくれた天下五剣、童子切安綱

 

女神友が与えてくれた、月女神の弓矢

 

それら総てを装備し、薄暗い牢屋の扉をリッカは蹴破る

 

「さぁ行こう!カルデア代表として、地獄巡りと洒落込もうよ!」

 

手を差し出す

 

「――あぁ、もう!これじゃどっちが助けに来たか解らないじゃない!――私の傍から離れないでよね、マスター!」

 

それを力強く握り返すジャンヌ

 

 

「よぉし!レッツゴーげふぁっ!!」

 

「マスター!?」

 

「ほごりっぼい!」

 

「いきなり叫ぶからよ!ていうかホンット薄汚い場所ねここ!?」

 

「ギル!楽園をありがとうー!」

 

二人は寄り添いながら、第一の裁きの間へと向かう――

 

 

 

 

「来たな!そうだ!この地獄にて安寧と安息は無い!力尽きるか、敵を総て砕くか!それしかお前たちの道はない!嘆きも、慟哭も制止の理由にはなりはしないのだから!」

 

 

廊下のエネミーを片っ端ながら砕きながら辿り着いた、大きな広間。天井は遥か上にあり、闘技場のように広い。暴れても問題はなさそうな強度だ

 

 

「テンション高いわね、アレ・・・」

 

「――・・・」

 

 

「マスター?」

 

 

ぼうっとしているマスターに、ジャンヌが心配そうに声をかける

 

 

「え?あ、あぁ!大丈夫大丈夫!」

 

 

「そう・・・?」

 

「さぁ――呆けている暇はないぞ!裁きは七つ!支配者もまた七人!誰も彼もがお前達を殺そうとてぐすね引いて待っているぞ!――さぁ開演だ!第一の裁き!その支配者たるは――!!」

 

 

――瞬間

 

 

「っ!!」

 

マスターへ向けられる全霊の殺意、そして翻るおぞましき刃をジャンヌが旗の芯で阻む

 

 

「不躾ですね。殺しますよ」

 

「――クリスティーヌ、クリスティーヌ、クリスティーヌ!」

 

 

・・・あれは!

 

 

「沖田さんにアンブッシュで殺されたポエマー!?」

 

 

「そう!!地下に蠢く殺人鬼!絶世の美声を求め!醜きものを憎む!嫉妬の罪を以てお前を殺す化け物だ!」

 

 

「嗚呼 今宵も新たな歌姫が舞台に立つ! 嗚呼 お前は誰だ君ではない クリスティーヌ!」

 

「――目が曇っているようね。そんな目、焼き落としてやるわ――!!」

 

「嫉、妬――・・・」

 

ぐらり、と。リッカの視界が揺らぐ・・・

 

――

 

 

 

何でお前が一番なんだ

 

どうしてお前が誉められるんだ

 

 

お前ばっかり上に行きやがって

 

 

お前だけがなんで一位を

 

 

お前なんていらない

 

 

――お前なんて、生まれてこなければ良かったのに・・・

 

――

 

 

「マスター!!」

 

 

「――あれ?」

 

ファントムと無数の剣劇を演じながら、呼び掛ける声で意識が元に戻る

 

 

「垣間見たか?今のお前の目の当たりにしたもの。それが『嫉妬』だ。妬み、嫉み。人の総てが抱くもの。お前の深淵の一部を司るモノ」

 

 

「――あぁ、今のが。今のが『嫉妬』なんだ・・・」

 

 

ぼんやりと呟く

 

「どうだ?――泣き言の一つも漏らしたくなったか?自らを形作るモノのおぞましさに涙の一つも流したくなったか?」

 

謳うように問い掛けてくるアヴェンジャー

 

 

――中学生の頃の記憶。何をやっても、どうやってもやっかみが酷かった時の記憶

 

自分が悪いのだろうか?出来が悪いから皆の癪に触ったのだろうか?

 

なら――一番になったら、少しは皆は見直してくれるだろうか?

 

 

・・・結果は、否だった。ますますいじめは酷くなったし、モノを無くした

 

それがどうしてなのか――解らなかった

 

どうしてだろう?何故私は皆と仲良くなれないんだろう?

 

解らないことがあったら教えてあげる

 

一緒に勉強しようよ

 

皆でお互いを、高め合えるって素敵じゃない?

 

どうして?どうして私は一人なの?

 

何を・・・

 

 

・・・・・・何をすれば、皆は私と仲良くなってくれるんだろう・・・?

 

 

その答えが――

 

 

 

「――っ、ははははは!あははははは!あははははははははははははははは!!!あはははははははははははははははははははは!!」

 

 

 

笑う、笑う。狂ったように笑う

 

 

「なんだ、そう言うことかぁ!そうだったんだぁ!嫉妬、そっか――私、嫉妬されてたんだぁ・・・!あははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

「――――」

 

眉をひそめるアヴェンジャー

 

「ちょっと、どうしたの!?マスター!?大丈夫!?」

 

 

「――――業を突きつけられ、まだ笑うか」

 

 

「そりゃあ笑うよ!あぁ、おかしい!そうだよね、バカだったよ私!何にも解ってなかった!そうだよね、そうだよね!」

 

 

「クリステ――!!」

 

 

瞬間、オペラの右腕が弾け飛ぶ。女神の弓矢の一撃だ

 

 

「ちょ!?」

 

驚愕に目を見開くジャンヌ

 

 

「『周りの事、なんにも解ってなかった』!そっか、嫉妬かぁ!なんだ、そんな事だったんだ!もっと、もっと、理由がないモノかと思ってた!」

 

 

狂ったように笑い続ける

 

 

同時に――

 

 

「――っ!!」

 

第一の裁きの間、その総ての怨霊が、リッカに吸い寄せられていく

 

否。吸収していくのだ。光に吸い寄せられていく様に、落とし穴に落ちる愚者のように

 

 

彼女の深淵に――叩き込まれていくのだ!

 

 

「教えてくれてありがとう!アヴェンジャー!ああ、やっとスッキリした!私は『妬まれていた』んだね!なんだ――なんだ!そうだったんだ!じゃあ私は、こう言うね!」

 

 

スウ、と大きく息を吸って

 

 

「――――気付いてあげられなくてごめんね!!私の方から、『一緒にやろう』って言ってあげれば良かった――!!」

 

 

そうだ。私がやるべき事は何故、何故?と言うことじゃなかった

 

どこが解らないの?と聞くことだった

 

一緒にやろうよ!と問いかける事だった

 

 

それはそうだ。そうでなきゃ嘘だ

 

何故勉強が出来るのか伝えなかった

 

 

何故運動ができるか伝えなかった

 

 

解らない。不気味だろう。嫉妬もされる

 

努力も見せず――他人より上手くできるなんて。――嫌味以外の何者でもないじゃないか!

 

 

「く、クリスティ・・・ヌ」

 

 

マスターの決意に気圧されるように、ぐらりとゆらめくオペラ

 

 

「嫉妬を知らずに、ただ衆目を集めたのが私の罪――!ありがとうアヴェンジャー!私、心が楽になった気がする!」

 

晴れやかに告げる。復讐者に、笑顔を向けて

 

「私、もう間違えない!『こんなやつに負けてたまるか』って思ってもらえるように、一生懸命頑張るから!周りをおいてけぼりにしないように!」

 

 

「――――」

 

――少女は『嫉妬』を理解した

 

 

それを受け入れ。『対抗心』へと昇華させてやろうと、朗らかに笑った

 

――一つの業は、確かに光へと替わった

 

 

「お待たせ!ジャンヌ!さぁ、裁きを乗り越えよう!!」

 

「――えぇ!!この悪趣味な塔に詰め込まれてるカビ臭い怨霊ども!良く聞きなさい!!」

 

 

「クリスティーヌ、クリスティーヌ――!!」

 

右手を庇いながら尚も迫るオペラ

 

 

「ガァッ――!!?」

 

その喉に剣を深々と突き刺し、高らかに魔女は謳う

 

 

 

「私は魔女!世界に焼かれ、裏切られし愚かな女ジャンヌ・ダルク!我が旗は最早世界には振るわれず!我が信仰はドブに捨てられたただの小娘!――私を動かすは憎悪の炎!それ故に覚悟するのね!!私は私と、私が愛するマスターを阻む総てのモノを業火にて焼き尽くす!!何故ならば!私は私のために戦うのだから!!」

 

「カ、ガ――」

 

「ほら、マスターも!啖呵は大事よ!」

 

 

「うん!――私の名前は藤丸リッカ!!」

 

高らかに、呼応する

 

「好きなことはコミュニケーションとサブカルチャー全般!!嫌いなものは裏切りと先入観!座右の銘は『意志があるなら、神様とだって仲良くなって見せる』!!――これから七日間!お世話になります!!よろしくお願いいたします!!」

 

 

視線を交わし、深く頷く

 

 

「これはこんなクソみたいな所に私の大切なマスターを巻き込んでくれたお礼――ほんの」

 

「ガガッ、グガッ――!」

 

 

剣を押し込み

 

 

「――挨拶がわりよッ!!!」

 

 

爆炎を喉の内側から流し込み、内臓の総てを焼き尽くす――!!

 

 

「ガァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア――――!!!!!!!!」

 

 

「あっははははははははははは!!怪物、罪人には火炙りが相応しいでしょう!さぁ、贖罪のお時間です!あなたが抱えるその罪過、過たず焼き払ってあげましょう!これは――私達からの!!」

 

「宣戦布告だよ!!やれぇ!ジャンヌ――!!」

 

怨霊を深淵と輝きにて食らい尽くしたマスターが叫ぶ

 

「『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュヘイン)』!!」

 

 

呼応し、無数の槍と灼熱の火焔が――嫉妬の怪物を焼き払う――!!

 

「喝采を!!我等が決起に喝采を――!!」

 

「私達は、どんなことがあったって負けない!!必ず、ここから出る――!!」

 

――やがて、総てが終わり

 

 

「フン、思い知りましたか。マスターを誰かと重ねるような輩は、私が皆殺しにしてやります」

 

チャキリ、と刃を収めるジャンヌ

 

 

「――――ふうっ!」

 

一つの悪性を理解し、受け入れ、スッキリとした顔付きに変わるリッカ

 

 

「お疲れさま!ジャンヌ!」

 

「当然です。私は貴女を助けるために来たのですから。――どうしました?随分と大人しくなってしまいましたが」

 

ニヤニヤと笑うジャンヌ

 

 

「――・・・嫉妬を食らい尽くしたか。マスター」

 

「うん!私、もう間違えない!ちゃんと『一緒に上手くなろう』って必ず聞くよ!」

 

スッ、と手を差し出す

 

「教えてくれてありがとう!アヴェンジャー!これから、あと六つの『地獄の意味』を――私に教えてね!」

 

にっこりと、地獄の底で笑う。深淵の意味を知り、輝きはより強くなる

 

 

「――クハハハハハハハ!地獄を求めるその欲深さ!!そうだ、そうだ!お前はそれでいい!地獄の意味を知れ!そして、その先に何が待つのか!――その疑問にはただ一言を以て答えるとしよう!」

 

 

バサリ、とマントを翻す

 

 

「『待て、しかして希望せよ』――だ!!次の試練でまた逢おう!!クハハ!クハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

高笑いを残し、アヴェンジャーは闇へと消え去る

 

「――さて、私達も戻りましょうか」

 

隣で、手を繋ぎジャンヌが笑う

 

「私と貴女。ついでにアイツ。――楽しい地獄巡りになりそうね?」

 

「――うん!!」

 

 

 

――地獄の底に、炎と太陽が笑い輝く

 

 

七つの罪を喰らう深淵を、深く深く穿ちながら――

 

 




「・・・カルデアには戻れないみたいね、やっぱり」

「ジャンヌがいてくれてよかったぁ!!こんなとこ一人じゃ無理ぃ!!――で、やっぱり解るね」

「ん?」

「私達が――どれだけ幸せな場所で生きていたか」

「・・・今度、金ぴかにお菓子を作りましょうか」

「うん!」

「あ、どうせなら――女子力の勉強しましょうか?メモ帳はありますから。まずはダンスを――」

「わーい!地獄で乙女になるぞー!」


――どうかこれからは

皆と切磋琢磨できるようになりますように――




「チナミニィ!なぜオガワハイムがなかったのかといぅと!!私の呼び掛けに!誰も頷かなかったからです!!残念無念!イヒヒヒヒヒィ!!」



《――嫉妬とは、裏を返せば克己心、向上心に他ならぬからだ。己には叶わぬと知ってなお足掻き、手を伸ばす。己を磨き、高め合う。その果てに、互いを認め笑い合う

故に切り離せぬのだ。『嫉妬』は生物が『前に進む力』でもあるのだからな。世の万象に絶対は無い。総ては表と裏なのだ。エアよ》

――はい!克己心、向上心を忘れぬよう、懸命に励みます!

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