人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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つむぎ「リッカ、今すぐ殺りに行くんでしょ?場所はこっちでもう突き止めた。サーヴァントユニヴァースの辺境デブリ帯で特殊回線付き」

リッカ「勿論殺りに行くよ。でも、私達だけじゃ再犯を完全に無くし切る事はできない。私の心当たりのあるやつが犯人だとしたら、そいつは絶対に諦めない」

つむぎ「じゃあ、どうするの?」

リッカ「つむぎには首謀格を仕留めてもらう。私はその後詰めの為に色々声をかける。リリスさんやアマノさんには組織の締め上げを頼みます」

アマノ『やる気だな?』

リリス【一応聞くけれど…何が始まるのかしら】

リッカ「覚えておいてください。私は人の善意を踏みにじる輩を絶対に赦しませんから!」

リリス【〜】

鳩『ではそこにはこの虹を通るといいよ。行ってらっしゃい』

アジーカ【モモモモモモ】

『アジーカちゃんの出番はきっちりと見ておくからね〜』


性善は小悪を駆逐する

「チクショウめ!なんだってんだこいつぁ一体…!」

 

うたうちゃんのサイン色紙…正確には、その筆跡をアームとAIに読み取らせ、再現(といってもうたうちゃんの筆跡の柔らかさや繊細さは表せていない粗悪品)を『辺境の傑作ロボットが描きあげたサイン』と標榜し、珍品として売りさばいていた商売の元締め、スペース☆コンキスタドールことクリストファー・コロンブス。辺境の更に極東の島国、未開拓の市場を見つけ、旅行者を装いうたうちゃんのサインを拝領、それを粗製乱造しユニヴァース販売サイトで売りさばいていたコロンブスの顔面が土砂崩れとなる。

 

現地のアイドルグッズも含め、夏草の土地柄のグッズを粗方手に入れ高値でユニヴァース内で売っていたコロンブスだが、そのわずか数日後にその転売品を扱ったサイトが軒並み閉鎖、強制排除されてしまったのだ。グレーゾーンを有していた販売サイトを狙い撃ちにした一斉摘発、当然そこを主市場にしていた者もまた摘発の憂き目に合う。

 

(今まで転売なんざ珍しくもないこったろうが!なんだって地球なんてど田舎の商品に目くじら立てやがる、機材代も旅行代も回収できねぇじゃねぇか!)

 

誰も手を出していなかった、現地民すらシノギをしていなかった場所。格好の宝の山だとコロンブスは飛びつきグッズを買い漁り、仕入れ、それを元に精巧な粗悪品を量産し旅行代と仕入れ代を回収しようと試みた。しかし、市場が全て滅んでは商売などできない。雇ったスタッフにより買い占めたグッズ代も回収できぬ大赤字に頭を抱えるコロンブス。

 

「何をやってもしくじるものなんだよ。ゲス野郎はね」

 

「あぁん!?」

 

突如響いた声。その声に振り向いてみれば、自身を突き刺すように睨みつける少女や女性達。一様に、怒気を漲らせている事にコロンブスは気付かない。

 

「テメェら…見ない顔じゃねぇか。サーヴァントってわけでもねぇよな?さてはあの星の原住民か?」

 

「そうだよ。貴女が食い物にしようとした場所、夏草に助けて貰った一人」

 

「ハッ!そいつぁ結構な事だぜ!何だい、俺に阿漕な商売の説教でもしにきたってのかァ?」

 

コロンブスには自信があった。小娘が何を言おうが、何をしようが言いくるめられる、有耶無耶にできる。適当に乗り切り、煙に巻き、早々に引き上げ新天地にて仕切り直しだ、と。

 

「説教?そんな事するわけないじゃん。バカに付ける薬は無いって言うし」

 

「んだと、クソガキ…」

 

「【殺しに】来たんだよ、おじさん。社会的にも、物理的にも。私達の故郷を、人の善意と頑張りを踏みにじったあなたを!」

 

瞬間、コロンブスの用意していた端末に映像が送られる。そこには、コロンブスが用意していた脱出艇、資産、隠れ家が全て接収、差し押さえられ協力者やスポンサー、癒着していた組織、マーケットや雇われ集団などが全て逮捕、連行されていく光景だった。

 

「なんじゃ、こりゃあ…」

 

それらを主導していたのは、グランドスターズ。エレシュキガル率いる全銀河の治安維持部隊。『文明レベルの異なる星系の文化的遺産を悪質な商売目的で使用』『売り手への営業妨害』『偽グッズ製造』『それらを取り扱いした個人マーケットの制裁』という様々な名目で、コロンブス商会一味を纏めて検挙したのである。

 

『今回の件から遡り、貴様のあくどい商売を赤裸々にグランドスターズに伝えさせて貰った。貴様らには暗黒宇宙百万年労働が課せられているようだぞ』

【言い逃れは不可能よ。カルデア、エンジェルグレイブ、グランドスターズの協力で完全に裏は取れているのだから】

 

同時刻にて、宇宙における悪質な転売ビジネスへの一斉検挙が行われ、抵抗勢力は当然武力鎮圧されている。それは大衆の支持を爆発的に集め膨れ上がり、蛇蝎の如くに疎まれていた転売屋グループをシーズンから追放処分と相成った。

 

「コツコツと積み上げてきた善意や、本当に価値あるものを貶めた。それがあなたのお上様の目を盗んで続けていた、しょうもないみみっちい商人崩れのあぶく銭稼ぎの末路だよ」

 

「テメェ……!転売は正常な経済活動だ!売り手から正常価格で買っているんだから問題ねぇんだクソッタレ!買い手に購入のチャンスを広げてやってんだ!悪く言われる筋合いはねぇんだよ!プレミア品を扱うリサイクルショップだって適正価格より高く売っているのに、俺達だけ叩かれるのはなんだってんだ!会社の備品を横流しするよりは金を払ってるから正当だろうが!そもそも先に買えなかった奴が悪いんだぜェ!俺が速く多めに買ってるから企業も感謝してる!転売屋だってこういうリスクを取ってるんだから儲けて当然よ!マジで欲しけりゃ深夜から並ぶなり、努力しねェから損をするのさ!購入者もブームが過ぎ去ったり、入荷数が安定したら飽きて店の棚の肥やしにするんだろォ?なら転売屋は店にも貢献してるだろうが!ブリキ人形やアイドルのガキなんざ一過性だろうが!問屋や卸売業者、小売店だって問屋を介してるんだ、実質転売屋じゃねぇか!!何だって俺らだけが文句言われるんだ!アァ!?こっちだって生活がかかっているんだ!それを規制するのは可笑しいだろ!!俺が金を払って手に入れた商品だ!俺がどう処分しようが、そんな物は俺の自由だろ!ファンは複数個買ってるのに俺らは駄目ってか!?俺みてぇな転売屋がいるからお前らは楽して欲しい品物が平等に買えるだろ!?むしろ感謝するべきだろうがよぉ!!」

 

【…………!】

 

「自分の正当化だけは一丁前だね、クズって」

 

長々と語るコロンブスを一刀両断するつむぎ。

 

「何が正しいかと、希望小売価格と市場価格を決めるのはあなたじゃない。法とメーカーさんだよ。アマチュアの値段決めなんて邪魔でしかない。存在自体が鬱陶しいんだよ」

 

最初から和解や譲歩など考えておらず、目の前の悪人を抹殺することしか考えていないリッカ。微塵もその言葉は響かなかったのだ。

 

『お前には既に霊基凍結指令が下っている。万に一つも無罪はない』

 

【抵抗するなら抹殺の後、永遠リスポーンキルの刑が待っているらしいわよ。無様な抵抗は止めることね】

 

夏草の善意から始まった、他者を食物にする悪意の根絶。皮肉にも、それは悪意を許さないとされる者達の一斉蜂起により成し遂げられた。コロンブスは善意を侮ったのだ。

 

リッカ達、ひたむきに善であろうとした者達にサーヴァントユニヴァースの善たちが応えたのだ。グランドスターズは、楽園の紡いできた善行に報いたのだ。

 

『皆やっているから、自分だって大丈夫だろう』

 

などと、そんな薄氷の如き過信の甘えた考えは己の全てにて贖う事となる。悪の報いを。

 

「リッカ、私にやらせて」

「お任せします」

 

「く、クソ、チクショウめ!!あんなガキと、あんなロボットにここまでやるとはとんだイカレ野郎どもだぜ!」

 

万策尽きたコロンブスは銃を乱射するが、つむぎには当たらない。まるで弾が無くなったかのように、かき消える。

 

「ロンパするまでもなく、あなたが犯人」

 

つむぎが手を上げると、背後に片方が白、片方が黒の超巨大なクマ…のような何かが現れる。

 

「あなたは選ばれました。──ドス黒い、マックロに」

 

「う、うぉおぉおぉお!俺は諦めねぇ!諦めねぇぞ!次こそ、次こそはお宝を、でっけぇお宝を掴んでみせるぜ!」

 

現れたモノクロのクマ…モノクマは、にしししと笑いながら拳を握る。すると拳が、オリハルコンのように固められ凶器と化す。

 

「次なんてない。敗者に相応しいエンディングを見せてあげる。…つむぎ!」

 

【お仕置き。潰れたトマト】

 

拳が、振り下ろされ…

 

「次こそは、次こ────」

 

パァン!!というバケツの水を高所からぶちまけた様な音を最後に、コロンブスは永遠に沈黙する。

 

『うたうちゃんのサイン色紙のオリジナルは確保したぞ』

【グッズも。高い施設を使ってコピー品を増やしていたのね。下劣ですこと】

 

「…帰ろう。リッカ」

 

「うん」

 

間もなく、抵抗戦力の鎮圧も終わる。リッカ達は帰還準備に入る。

 

その際───

 

「ロボットじゃない。うたうちゃんだよ、クソ野郎」

 

吐き捨てるように口にし、リッカは血痕を一瞥し肩を怒らせ去るのであった──。




エレシュキガル『今回は本当にごめんなさい。こちらの管理不行届なのだわ。ニャル、大和ちゃん、エル君を始めとした様々な人達の御協力に感謝いたします』

ジークフリート「未開の地と聞き逸ったか、全てが杜撰の商売だった。粗悪品の全回収と信頼回復、夏草への御詫びは必ずや完遂する。安心してほしい」

シグルド「グランドスターズの総力を上げると誓おう」

リッカ「よろしくお願い致します。さあ皆、帰ろっか」

リリス【……………】

アマノ『リリス?』

リリス【ごめんなさい、少し外すわ】

アマノ『…あぁ』


ベンチ


リリス【………】



俺みたいなのがいるから平等に買い物ができるんだろ!?むしろ感謝されるべきだろうがよぉ!



リリス【……アレは、私ね。平等を押し付ける、狂った私。他者から何かを取り上げ、平等を押し付けている私…】

(自分を正しいと信じていた。自分は間違っていないと。…あぁ、なんて…)

【なんて…悍ましい…】

自分勝手な理屈で平等を撒き散らす者。そのあまりの醜さに、リリスは顔を両手で覆い突っ伏す。

──それは、紛れもなく。先程までの自分自身そのものだったのだから。

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