人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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クリストファー「また僕の未来だ!また僕の未来だ!!」

シェヘラザード「し、シンドバッド…落ち着いて…」

クリストファー「ん!?待てよ!?転売品がたくさん売れたということは、うたうちゃんや天空海さんが大人気であったと言う事!つまり…!」

シェヘラザード「し、シンドバッド…?」

クリストファー「こうしちゃいられない!!はっはぁ!これはチャンスなんだー!!」

シェヘラザード「シンドバッド…!?」


…クリストファーの提案により、グランドスターズやニャル、オーマジオウ、天空海とアナーヒター、アクアとディーヴァ、エンジェルグレイブの総協力の下に海賊版の回収と共に、正式なグッズとサイン色紙の交換と補填が行われた。

「こ、これは!?AIでありながら一枚一枚メッセージや筆跡の差異がある!?」
「AIでありながら独創性と創造性、更にミスもできるという揺らぎを完璧に備えているのか!?間違いのできるAI、一人ひとりにメッセージを考えられるAI…!これはフィクションにある心あるAI、いやそれ以上だ!」
「そんな傑作機を、戦争利用ではなく隣人として接するだなんて…地球はなんというモラルと技術を有した星なんだ!」
「歌を自分で作詞作曲した!?」
「変身ヒロイン!?」

そんな『人類の夢』という極めて高い評価を受けたうたうちゃんはサーヴァントユニヴァースにて幻のロストテクノロジーヒロインとしてサイン色紙一枚から大ブレイク。

〜夏草

うたうちゃん(あのお爺さん、サイン色紙一枚であんなに喜んでくださいました。上手く書けていたなら良かったです…)

エレシュキガル「あ、いたいた!うたうちゃん!グランドスターズ一日署長をよろしくお願いするのだわ!」

うたうちゃん「?????」

サイン色紙一枚で銀河シンデレラとなった何も知らないうたうちゃんであった。(ディーヴァは面白がって見ていた)


天空海もまた、二柱の女神を掛け合わせた美貌とアイドルとしての完璧な振る舞いでユニヴァース史上空前の大ブレイク。設立したさばちゅーぶ『あなひたあくあ』が一日で100万人登録を突破。

アクア「花鳥風月!花鳥風月ー!」
アナーヒター『迅速な事後対応は信頼に繋がるわね』
天空海「………なぜゆえに?」

なんか知らないうちに大ブレイクしていた現状に、しきりに首を撚る天空海。

コロンブスが広め、クリストファーがそれを使い最大限利益に転用する。

クリストファー「これで楽園は利益総取りだ!ありがとう大人の僕!これがホントのコロンブス効果だねっ!はっはぁー!」
シェヘラザード(シンドバッド…恐ろしい御方!)

後に『コロンブスプロデュース』と呼ばれる大ブレイク現象は、楽園のログインボーナスにファンからの贈り物として
星5種火×10
一千万QP

が毎日贈られる事になりましたとさ。




血よりも母胎よりも、貴方は等しくそれらを愛しなさい

『辛いよね』

 

【…あなたは…ただの鳩…】

 

自身の理想、自身の夢。歪な形とはいえそれを体現していた輩を目の当たりにしたリリス。それにより、自身が標榜していたリリスの理想たる平等は、極めて強引かつ乱暴なものだと突き付けられる。

 

真なる平等を望むのなら、それを望む者やもたらすものがあってはならないのだ。平等をもたらすという事は、『自分』と【それ以外】を望む事であるのだから。その違い、その矛盾に愕然としていたリリスの下へ、現れたのはハトなる4文字パパポポ。とぼけた顔をしながらも、その身体からは光が漏れ出ている。

 

【…さぞかしおかしいでしょうね。あなたが拒絶し、楽園を飛び出した夢魔はまた膝を屈した。その様子を嗤いに来たのでしょう?】

『そんなに性格は悪くない…と、言いたいが。悪いんだろうな、この地に在る神は。だが、君を放ってはおけないのは真実だ』

 

それだけを告げ、羽ばたき空へと飛び去っていくパパポポ。一体何を…と見上げていたが、入れ替わりにとある二人が現れる。

 

『反面教師としては極めて優秀だったな、あの醜悪な老人は』

「つむぎに言われて来ました。その…あんまり気にしすぎない方がいいと思います」

 

【あなたたち…】

 

アマノザコ、そしてリッカ。同じIFの資格を持つ二人がベンチに佇むリリスを労る。そっと二人は、挟むように腰掛ける。

 

「平等というワードを持ち出したのは苦し紛れの詭弁だ。単語が同じなだけで、お前が追い求めた理想とはきっと違うだろう。気に病むな」

 

【…いいえ、同じよ。もたらすもの、享受するもの。その関係は平等という理想が必ずや伴う矛盾。平等にする、という事柄からして区別や差別があった。彼は露悪的とはいえ、それをわかりやすく示しただけに過ぎないの】

 

リリスは告げ、俯く。その理想を最悪な形で示された事に相当参っているようだ。獣の理念が、揺らぐほどに。

 

「確かに同じメカニズムでもあり、同じような結論だったかもしれません。でもだからといって、あなたとドリカムクソオヤジが同じだなんて私達は思っていませんよ!」

 

【リッカ…】

 

「つむぎから聞きました。リリスさんは真の平等と、救いを求めてどんな事にも堪えてきたって。長い長い放浪もしてきたって。その理念の崇高さが、あんなしょうもない小遣い稼ぎと同じなはずないじゃないですか!」

 

今を生きる人間であるリッカの言葉と、冷静な隣人かつ神、獣だったものの励ましと元気付けはリリスの心を落ち着かせる。こういった者達を救いたいが為、理不尽な罪の贖いを終わらせるために自身は全てを捧げてきたのだから。

 

【……私は、間違っていたのかしら】

 

だがそれでも、あの醜悪な光景と持論はリリスの根底を揺らがせていたのは間違いない。皮肉なものである。あのクリストファー・コロンブスは人類にとって不可欠な英雄であるが故、その死の波紋はあまりにも大きいのだ。死んでからが本番、といった所か。

 

【今を生きる人間達の罪を赦し、救うことが私の理想であり平等だった。でもそれは人間をリリンに変え、あまつさえ自身の不平等を広げる行為だった…】

 

『そうだな。罪を抜き取られた人間は別の存在になると問うたな。やはりそれは、人が受け取るべき救いでは無いのだろう』

 

「私達人間が、清廉潔白なくらいに自分を高められたのは知る限り二人くらいです。グドーシとか、姫様とか…この二人は凄く悩んで、苦悩した末に自分なりの救いを手に入れたのは間違いない。こんな二人と同じ場所に一息に導かれたら、人間は自分の事を見失っちゃいます」

 

罪深き、愚かなる人間。だからこそ今の人間の形がある。不平等だからこそ、そこから自ら逸した者達が示すのだ。人はいつか、不平等を脱せると。救いは、何者かに受け取ってはならないのだ。

 

【…でも、救いたいわ。それでも私は、救いたいのよ。世界に満ちる、腹違いのリリン達を…】

 

それでも、とリリスは言う。ここに来てみせたのは、リリスの優しさと慈愛だ。もう理屈ではなかったのだ。

 

【子供達が謂れなき罪で苦しむのをずっと見てきた。神に見捨てられた者達をずっと見てきた。彼等は苦しみ、嘆いていた。余計なお世話かもしれない。今更かもしれない。それでも、それでも私は子供達に何かをしてあげたいの…】

 

『リリス…』

 

【産まれた子に罪など在るはずがないでしょう…?これ以上、アダムとイヴに刻まれた罪に苦しめられる子達を、世界を見るのは堪えられない…。夢魔であろうと、不浄の夜魔であろうと。子供達に何かを、してあげたいのよ…】

 

それはまさに、愛であった。アダムとイヴなど受け入れようはずもない。だが、アダムとイヴの子供は我が子のように愛している。苦しんでいるのが堪えられない。何かをしてあげたい。それは、まさに人類に懐く無償の愛そのものだった。

 

『…これは我が母、伊邪那美の言葉なのだがな。リリス』

 

そのリリスに、愛を知ったアマノザコは告げる。彼女もまた、優しい母を知っているのだ。

 

『子供に親がしてやることは、ただ育むことだけなのだそうだ。『授かった事が喜ばしい。産まれた事が素晴らしい。産声を上げた事が誇らしい』…とな』

 

【それは…】

 

『子供への愛を注ぐための基礎らしい。何ができるとか、何が得意だとかは重要ではない。親はただ『あなたがそこにいるだけでいい』という心であれという事だ。…最古の母ゆえ、真似するのは容易ではないだろうが』

 

アマノザコは受け取っていたから解るのだ。伊邪那美はただ、自身を今愛している。何をやれとか、何をしろというのは間違いだ。子に対し、親はただ護り育む。望んではならないのだと。それは、女神の無償の愛であった。

 

「リリスさんは、私達人類に何もできていないとお考えですか?全然違いますよ!ちゃんと、大切なことをしてもらっています!」

 

リッカも言葉にする。ビーストIFの主格、アジ・ダハーカとアンリマユを宿していようが彼女は人間だ。そんな人間だからこそ、リリスの心に届く言葉を選べる。

 

「それは理不尽な差別に立ち向かう強さ!毅然と不当な扱いに否を突きつける女性の芯の強さです!アダムに、神にだってあなたは屈さずに女性の尊厳を守り抜いたじゃないですか!」

 

【─────!!】

 

リリスが意識すらしていなかったこと。不当な男性観を押し付けるアダムに、それを推した神に決して屈さなかった。リリスはその生き様を、女性が本来持つ暴力に屈さぬ強さを既に魅せていたとリッカは告げた。だからこそ、リリスはフェミニズムの象徴…女性蔑視や女性差別の全てに抗う者達のシンボルとなっているのだ。

 

「イヴから私達は生まれたかもしれない。でも貴女が言ってくれたように!あなたは私達のお母さんなんです!リリスさん!女性が持つ強さを、人類に教えてくれたお母さん…!それがあなたです!」

 

【…リッカ…アマノ…】

 

『そうだ、リリス。君に罪は無い。呪われるべきは私だ。糺されるべきは私なのだ』

 

リッカ達の前に、降り立つパパポポ。その周りには、光に包まれた四人の胎児がいた。

 

【リリムフォース…!私の子供達…】

 

それはリリスに与えられた四人の端末。産み出すことを許されなかったリリスが、泥と岩で作った人形たち。希薄な自意識の人形であり機能停止したところを、世界を飛び回りパパポポが回収したのだ。

 

『親たる君と離れ、呪いで散らばった果てに機能停止したリリムフォース達、君の娘を回収し、私のパンとワインにて胎児に戻した。うどん粉でサーヴァントが作れるのだ、君の端末を祝福に満ちた子らに戻すなど私には楽勝だ』

 

「見た目がハトさんな事以外何も弱点がない…!」

 

『でしょ?…神とアダムの乱暴により、君には不当な扱いを強いてしまったね、リリス。これは愚かなる神がもたらした行いへの、ほんの細やかな償いだ。この四人を、つむぎと同じ様に愛し育んであげなさい』

 

それは、リリスが学ぶべき平等の為に。つむぎは弟子であり養子のようなものだ。そこに、四人の血を分けた子を託す。

 

『つむぎちゃんと同じくらいにこの子を愛し、この四人と同じくらいにつむぎちゃんを愛してあげなさい。実子と養子、同じ様に愛し育む事が出来たならきっと解るはずだ』

 

「そっか!それは血や産まれなんか関係ないお母さんの愛!本当の『平等』!」

 

『そういう事。さぁ、そんな無粋な拘束具なんてもう必要無いよね』

 

パパポポがそっと拘束具に触れる。神の呪いたる拘束具は放浪の呪いと共に弾け飛び、リリスの原初たる豊満な女体が露になる。

 

「デッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ118!!!!!!」

『目測が早すぎるな…』

 

『世界に仇なすも良し。与するも良し。私は君を応援するよリリス。君だって、神が生み出した大切な女性なのだから』

 

『普通の…鳩さん…』

 

『私はパパポポ。平和を願う聖霊にして、神の不始末を赦さぬもの。どうか健やかにあれ、生きとし生けるもの達よ。私はいつも見守っているよ』

 

アジーカちゃんへの買い出しに戻るっポ〜。そう、黄金の雲に満ちた空へ飛び去るパパポポ。リリスはその光景を呆然と見やる。

 

『あれは…まるで、万物の父…』

 

「リリスさん。あなたがどんな選択をしても、私達は受けて立ちます。ですから、そのお気持ちとして…これを」

 

それは、聖杯。万能の願望機たる、楽園ではありふれたもの。コロンブスから接収したものを、お詫びとして受け取っていたのだ。

 

「楽園に来てくれるなら大歓迎です。楽園に立ち塞がるなら受けて立ちます!私達は、あなたを尊重します!」

『まずは平等を知るがいい。私達はいつでも待っているよ。リリス…始まりの母が一人よ』

 

『……えぇ、えぇ…。ありがとう、皆。まずは知るわ。そして必ず手に入れるわ。平等を…正しい愛し方を…』

 

リリスは涙を浮かべ、聖杯と胎児たちを抱き寄せる。これより先、どのような結果であろうと禍根は残るまい。

 

(やっぱり…お母さんっていいなぁ…)

 

端末ではない、リリスの子としての胎児達を慈しむ姿を、リッカは優しく見やる。

 

『…………』

 

そんなリッカの頭を…そっと撫でるアマノザコであり。

 

【良かったね、先生…】

 

後方モノクマ仮面となっているつむぎであった。

 

 

 




パパポポ『最早確信に変わった』

『最初の人類の設計図』
『アダムの遺体』

『アダムの頭部には、手を加えられた形跡がある。これは神がアダムの鋳造の際につけた傷に間違い無い』

(アダムは初め、完璧だったのだ。リリスとイヴ、どちらも幸せにできる存在だった。だが、神はそれに手を加えた。自らを越えるやもしれぬアダムを嫉み、貶めた)

『これは確信だ。この時空において、その始まりより…』


──────神は、死んでいたのだ。

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