人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
「アイメイクはさりげなく、全体的にふわっとした感じよ。ケバくならないように、主役はマスターなんだからね」
「はーい。あ、見てみてアップリケ!」
「あ、上手上手!見なさい、私も力作よ!」
「かぁい――!」
「――シャトー・ディフで女子会を開いた豪傑はお前たちが初めてだろうよ・・・」
《色欲。これもまた人の、いや生物に無くてはならぬモノだ。原初の欲求、本能といってもよい。男と女などこれしか有り得ぬのだからな。だが、これは時に浅ましきモノとして疎まれる。何故だか解るか?》
――う、うぅん・・・子供を授かる為には、とても大切な儀式なのに・・・?
(アレだよ。子作りじゃなくセックスを楽しむ事がいけないんだ。生物の営みではなく快楽に耽ることこそが罪。非生産的だしね)
《そうだ。交わる以上、子を、実を。実らせカタチにせねばならん。男女の営みとはそう言ったものだからだ。故に、子を授からぬ交わりなど畜生以下の蛮行である。お前も覚えておけ、エア。快楽はあくまで子を円滑に授かるための油。快楽の為の快楽こそ、七つの罪に当てはまる愚行なのだとな》
――は、はい!
(ちなみにエアは子供欲しい?)
――ううん。ワタシはね、フォウ。子供を授かるより、誰かが子を為し、織り成していく世界の営みそのものを見ていたいから。自分が世界になにかを残したいって言うのは、無い・・・かな
(――・・・)
ワタシは、世界に在るだけでいいよ。それだけで、幸せ。王も、親友もいてくれる。二人と一緒に、愛する世界と其処にある人達の営みを見て。いつまでも『愉悦』が出来たら、ワタシはそれだけで満たされているから――
《――より良くしたいと願いは抱かぬ。けして覆らぬ人類愛、か》
(尊い――――)
――もう、フォウ!最近討伐されてばっかりじゃない・・・!?
「・・・誰か、いないのですか・・・」
「む――」
監獄に置くには余りに不似合いな、小さく、か細い声がリッカの耳に届く
「・・・ちょっと。女の声よね今の。どういう事?ここに招かれたのはマスターだけじゃないわけ?」
「招かれたのは確かにマスターだ。特級の例外を除き、ここに集うは悪性や業にまみれた魂のみ。それが此処の唯一なりし絶対なる規則!地獄の果てに紡がれた盟約だ!――そら、目を離していいのか?」
アヴェンジャーがクイ、と顎をやる先には。弓矢をブーメランのように投げ怨霊を切り裂き、パンクラチオンを駆使し怪物を砕きながらマスターが猛進し、声に向かって駆けていた
「エデを名乗るなら目を離さぬ事だ。我等の監視などあれは容易く乗り越えるぞ」
「ああっ、もう!待ちなさい!危ないでしょうが!」
「クハハハハハハハ!!そうだ!走れ走れ!我等はあの女のサーヴァントなのだ、主に雑事を任せていては名折れも良いところだからな!」
「うるさっ!ちょ、マスターぁ~――!」
その場から程なく進んだ場所に、マスターは、いや。その女性は座り込んでいた
手入れの行き届いた綺麗な、少し桃がかかった頭髪。先は結ばれ束ねられている
切なそうに、頼りなさげに揺れる両の赤い瞳。見るものに、気弱そうなイメージを抱かされる
きっちりと着用されているのは・・・軍服、だろうか。これまた赤い
そして――
「おっきぃ・・・」
服の上からも主張する、まろやかに突き出た胸。リッカが思わず呟く
「アルテミス程じゃないけどかなり!・・・大丈夫ですか?淑女の方?」
片膝をつき、目線を合わせて会話を始める
「私は怨霊、怪物ではありません。故あって地獄を学んでいる最中のマスターです。名前は藤丸リッカ。貴女の味方になりたい者でもあります。大丈夫ですか?ゆっくり息を吐いて、落ち着いて・・・」
リッカマニュアル『前後不覚の人はなるべく状況を正確に伝え落ち着かせる』を実践する。やがてすぐに、会話が可能になるまで平静を取り戻す
「ありがとうございます、親切な方・・・私、気が付いたらこの暗がりに一人で・・・ここは、地獄なのですか・・・酷く暗くて、怖気がします・・・」
「大丈夫です。貴女は一人じゃありません」
ぎゅっと手を握る
「何も解らないのなら、一先ず私と行きましょう?旅は道連れ世は情けと言います。お互い、きっとこれは得難い出逢いだと思います。私が貴女を護りますから、どうか怖がらずに共に行きませんか?」
「あ、ありがとうございます・・・!あぁ、なんと輝かしく優しい方・・・!」
「では、私の背中に!大丈夫、一人くらい楽勝ですよ!」
「あ、ありがとうございます・・・!」
ヒョイ、と女性を背負う
「おっ、凄い!おっ・・・凄い!」
「?」
「マスター!もう、止まりなさいよ・・・って誰それ!」
「保護しました!」
「保護ぉ!?ま、まぁアナタが納得したならいいわ・・・名前は?」
「・・・名前・・・」
申し訳なさげに目を伏せる
「・・・解りません・・・何も、何も・・・あぁ、名前、私の名前・・・」
「名前のない女、か。シャトー・ディフに紛れるには余りに頼り無い。海に運ばれた木の葉の如しだ。――無垢なる魂の影響か?まぁ、それはいい」
「アンタ、一人で喋って頷いては結構ヤバイわよ」
「――名と記憶を奪われた女。ならばお前はメルセデスと名乗れ」
メルセデス・・・?リッカが頭を捻る
「・・・ベンツ?」
「かつてこのシャトー・ディフに叩き込まれ、歳月と名前、幸福と存在すべてを剥奪された男にまつわる女の名だ」
「メルセデス・・・」
ゆっくりと反芻する、メルセデスと名付けられし女
「よろしくね、メルセデス!さぁ行こう!」
「待った待った!連れていくの!?マジで?本当に!?」
「勿論?」
「んんん!この聞いた方がバカみたいな確信に満ちた物言い!はいはい、しっかり護ってあげるわよ!目を離さないでね!」
「荷物を増やすとは余裕だなマスター!ならばいい!人生とは無制限に荷物を抱える旅だ!今更女の一人や二人増えても構うまい!気を付けるのだなメルセデス!その女は、近付くものを照らし、また呑み込むヒトガタの災厄だ!」
「ひどい物言い!!」
「あ、あの・・・よろしくお願いいたします・・・リッカ様」
「よろしくね!」
休息を挟み、三人はエネミーを蹴散らす
灼熱の火焔を
おぞましき黒炎を
アキレウスに授けられ、オルガマリーと研磨した総てを刈り取る足技を
試練の間に飛び込むまで、シャトー・ディフは軋み続けた・・・
「待て!しかして希望せよ!」
「いきなり何!?」
「いやぁ、なんか気合入らない!?さすおに、みたいなまてしか!みたいな!」
「クハハハハハハハ!そうだ!人間の叡智とはその言葉に集約されるのだ!気に入ったようだなマスター!」
「待て、しかして希望せよ・・・」
「笑ってないで!飛び込むわよ!私が合図するから!いち、にーの、・・・さんっ!!」
扉をアヴェンジャーの拳とリッカのフロントキックが叩き壊し、メルセデスを庇いながら入場する。ジャンヌがエネミーを焼き殺し殿を果たす
――果たして、試練の間に深淵と太陽が迷い出る
「クハハハハハハハ!!よくぞ来た!これより執り行われるは第二の裁き!さてマスター。お前に問おう」
バサリ、とマントを翻し。マスターに向き直るアヴェンジャー
「――劣情を抱いたことはあるか?」
「え?」
キョトンとするリッカとジャンヌ
「れつじょー、って何よ?解るように言いなさいよ」
「・・・相手を求める、という意味の言葉です」
アヴェンジャーの告発は続く
「一個の人格として成立する他者に対して、その肉体に触れたいと願った経験は?」
「・・・ん、んん・・・お嫁さんにはなりたいといつも思ってるけど・・・」
――――
マジ絶対私が落とすから!頼むかんねマジで!信じてるから!
応援してね!本当に彼氏にしたいの!藤丸がうまく切っ掛け作ってくれたら、上手くやるから!
あいつ最悪なんだけど!人の狙ってるアイツ狙うとかマジ死ね!リッカ、ちょっとアイツの弁当捨ててきてよ!アイツに渡すために作ったとかふざけんなって話!
本当、邪魔・・・リッカは私の友達だよね?裏切らないよね
――お前と付き合ってやるよ。お前の方が一番ツラがいいし。後腐れなさそうだしな
だからさ――ヤラせろよ。あ、生でな。デキても責任はとんねーから。中学生が責任なんか取れるわけねーだろ。実は仲間内でお前んこと噂しててさー
――お前、処女だよな?中古じゃねーよなまさか。俺、ビッチはいらねーの。お前んとこの二人、臭うんだよ。
は?アイツはやめた方がいいとか、何?
・・・酷い。彼をそんな風に・・・信じてたのに・・・抜け駆け・・・?
――この、裏切り者・・・!!
「――それは、あん、まり・・・」
他人を求めた事はあんまりない
他人に触れたいと思った事は多くない
だって――他人に触れたら、また誰かが傷付く
・・・ふと思ったことがある
母だった人、父だった人から私は産まれた
――それは何故?
なんのために、どうやって?私はどうして、産まれることができたのだろう・・・?
「な――――」
「無論あるとも!!」
澱んだ空気を吹き飛ばす豪放磊落な怒号
リッカの答えを遮り試練の間を揺らす
「ふぁっ!」
「来たぞ!見ろ、眼を見開け!あれが今宵お前を犯し、踏みにじらんと狙うモノだ!!」
現れしは筋骨隆々の大男。軽装、さっぱりとした短髪、任侠に生きる堅気がごとき声音。
右手に握るは男のロマン。気前よく、大食漢、恐れを知らぬ勇士の中の勇士・・・
「天地天空大回転!それこそ世の常、ありまくるに決まっていようが!!獣欲のひとつ抱かずして如何な勇士か英雄か!俺の在り方が罪だと言うならば、ふはははは良いともさ!!俺は大罪人として此処に立つまで!」
「タケシ――!?」
「タケシね。ニビジムリーダーの」
「黙っていろ」
「俺は!赤枝騎士団筆頭にして元アルスター王たるフェルグス・マック・ロイたるこの俺は!!」
吼える。吼えたける。性欲の英雄は吼える
「主に女が大好きだ!!!!!」
「主に?」
「主に、って何よ。それしかないでしょ普通」
困惑する二人。くさっては いない
「心を覗け、目を逸らすな。それは誰しもが抱くゆえに誰一人逃れられない。他者を求め、震え、浅ましき涙を導くもの」
ゆっくりと呟く
「色欲の罪――」
「――罪?」
・・・罪、なのか?色欲が?
誰かが誰かを求めることが罪?本当に?それは、本当に――?
あぁ、でも
誰かを想い、誰かを傷付ける
誰かを傷付け、誰かに想われたい
その想いで傷付く事が罪ならば・・・
心当たりは、無いこともない――
「なぁにが浅ましきだッ!!!抱きたいときに抱き、食いたいときに食う!!それが人の真理!それこそが生の醍醐味であろう!!」
「それならば野生に還りなさいな。理性が要らぬならヒトであるべき理由は無いでしょう」
「ハハハハハハ!!手厳しいな!!だが言うまでもなく!!今こそがその時、その味わい!そこな女よ、俺には解る!お前は尊敬に値し、組敷くに困難な女!!」
びしりとドリルが突き付けられる。その先にいるのは――
「メルセデスを言ってるんだね!」
「わ、私ですか・・・?」
「具体的に言うと魅力的だ!特に、よく突き出た胸が実にいい!!しみったれた監獄に独り酒独り寝かと肝が冷えたが、重畳重畳、今夜は最高!俺は!お前を!戴く!!」
獣欲、雄気となりて吠えたける
「っ・・・!」
「大丈夫」
ぐっ、とメルセデスを庇う
「貴女は私が護るよ。安心して。誰にも渡さないから」
「――リッカ、様・・・」
「そして見知らぬ連中!!」
此方に向けられるは――
「お前たちは、アレだ。いらん」
「――で?いらないからどうするの?私もマスターも、ケダモノは御断りです。ロストヴァージンのシチュエーションは決めていますので」
「邪魔だ。殺す」
端的な、殺意と拒絶
「そうですか。話が早いです」
スラリと剣を抜く
「お前たちは俺の女をさらおうと言うのだろうか?解っているぞ。あぁ、解っている。この俺から女を・・・・・・」
瞬間、フェルグスを名乗るモノが吠えたぎる
口は裂け、人相は凶悪になり、下卑た息を吐く――
「女を!奪うことはさせんといっているのだ!!その女は俺が抱き、組み敷き、食らうためのモノ!!お前たちには不要なものだ!!」
「な、なんか変なのになってない!?」
「ほう、そうか。おまえはトゥヌクダルスの幻視を知らぬと見える。アレをなんだと思ったのだ?アルスターの勇士フェルグス等ではないぞ?かつての中世、恐怖を識った騎士トゥヌクダルスがまみえたものだ。燃える丘がごとき巨獣の顎を持ち上げし獄卒の獣――即ち!煉獄の悪魔!!」
「魂の苦悩、中世欧州に伝わる煉獄伝説・・・私、それを何故だか知っています・・・嗚呼・・・かつて主は、異教の神に対して信仰を捧げ、敬虔深き振る舞いをした勇者たちを捕らえたと・・・!」
「あぁそうだ!此処はシャトー・ディフ!主の不在が立証されし地獄!ならば集う!ならば蠢く!!救われぬものすべてが集うとも!!」
「その女、寄越せぇえぇえぇえ!!!」
「ジャンヌ!!」
「解ってるわ!私の後ろに!――上等よ!!マスターの価値を解らない男は死ね――――!!!」
マスターを庇い、獄卒の獣を阻むジャンヌオルタ
「どうだ。目の当たりにしたか?あれが色欲。浅ましき、おぞましき、自分本意の極致。その罪だ。――お前は何を想う?この原初の感情を知り、何を感じる?」
「私は――」
――色欲が罪?本当に?これは罪なのか?
・・・理屈ではない場所で、声がする
心の奥で、声がする
そして――とある景色を、思い出を。思い返す――
その顔を覚えている
夕焼けの帰り道、傷だらけになりながら帰った道筋にすれ違った三人の家族の顔を覚えている
今日の夕御飯は何かな、と問い掛ける父親
二人が好きなカレーよ、と笑う母親
二人と手を繋ぎ、幸せそうに笑う娘の姿
――その姿が、あまりにも美しく、また綺麗だったから
すれ違い、振り返り。いつまでもうしろ姿を見ていた事を覚えている
いつまでも、いつまでも。日がくれるまで。背中が見えなくなるまで見続けていたのを覚えている
涙を流して――いつまでも、見つめていた私を・・・覚えている
高校の時の話だ
ラグビー部のマネージャーをやっていた頃、私は訪ねたことがある
しんどくない?凄いね毎日毎日ぶつかって走って、またぶつかって・・・
聞いたことがある
どうしてそんなに頑張れるの?と、なんとなしに聞いたことがある
そしたら、ラグビー部の皆は口を揃えてこういった
『バカ野郎たち!そしてイカしたマネージャーがいるからさ!!』
――私は、皆と一緒に大笑いした事を覚えている
意中の相手のためにホームランを打った男もいた
自慢の彼女のために、ハットトリックを決めるエースもいた
合コンで顔を合わせて、皆、楽しげに笑っていた
『リッカも、女を磨くのを忘れないでね』
――覚えている
『アンタみたいないいヤツ、世界がほっとかないからさ――』
――先生の言葉を、覚えている――
「――うん。解ったよ」
確信を得て、顔をあげる
「色欲が罪なんじゃない。色欲の付き合い方を見失うことが罪なんだよ」
怨念が深淵に堕ちてゆく。輝きに照らされ、総てが吸収されていく
「だって――『誰かが誰かを想うから、人は産まれる』んだから!」
誰かが誰かを愛する
誰かが誰かの手を取る
時には間違えるかもしれない
時にはぶつかり合うかもしれない
けれど・・・それを越えたその先に
――かけがえのない『恵み』と『いのち』が産まれるんだから!
尊き生命が織り成す『色欲』にて、新たな『豊穣』が産まれる
――業の一つが、光に変わる
「――うん!どんな結果になっても、私はこの気持ちを忘れない――!」
ゆっくりと、童子切安綱を構え
――感謝を
出逢った二人に、感謝を
この世界に産み落としてくれた二人に、感謝を
――私は、期待に応えられなかった、悪い子だけど
「――ママ、パパ」
――この気持ちと、名前をくれた事は――忘れないから――
思いを馳せながら、ゆっくりと
「――私を産んでくれて、ありがとう――」
ゆっくりと、刀を引き抜く
――ありがとう。
私を、この世界に招いてくれてありがとう
見ていてください。あなたたちに望まれる事はなかった娘だとしても
――私の始まり。二人が出逢った世界は、必ず救ってみせるから――!
そして――
「『お母さん』――力を貸して!私に『温もり』を教えてくれた、大切な人!!――源頼光!!」
我が身を愛すると誓ってくれたかけがえの無い母の名を叫びながら、一息に力を込め抜き放つ
なんの抵抗もなく、刃は抜刀される
そして――宿りし母の母性と狂気は、リッカの得た子の感謝と真理にて混ざり合う
母の祈り、子の無垢なる感謝
それらを受け取り、天下五剣の一振りは金色に輝く――!!!
「ジャンヌ!アヴェンジャー!決めるよ!隙は私が作る!!」
新たに見守りし母のごとく、電光石火にてフェルグスを名乗る獣の前に躍り出る
「クハハハハハハハ!!良いだろう!虎の様に駆けろ!!罪も、罰も!踏み越えて進むがいい!!」
「女ァアァアァアァアァア!!」
獄卒の獣が棍棒を振るう
「――ここに刃を入れる」
刀身の腹をカツンと当て、獣の勢いばかりの剣を容易く無力化する
「!?」
「刃は逸れる。――ここで刃を振るう」
くるんと逆手に刀を持ち、流れる所作にて獣の右肩に刃を差し込む
「ほら、肉は飛ぶ」
童歌を口ずさむように、あっさりと右腕を吹き飛ばす
「ガァァアァアァアァアァアァア!?」
そのまま切り刻み、かわし、雷のような太刀筋で獣を滅多斬る
防ぐならばその腕を
かわすならばその脚を
反撃するなら魂を
リッカが振るうは刀に宿りし、母の武練
この刀を振るう時、リッカは唯のマスターに非ず
その身に宿るは母の愛、母の半生。愛を以て子を護る想いの結晶
――刀を抜き放ちし先にて舞うは、即ち其処に顕れし現代に蘇る神秘殺し
――源頼光、その人の生き写し也――!!
「ジャンヌ!消毒の時間だよ!目を瞑って!」
「??――わ、解ったわ!」
「――そしてこれが性別リッカとされる私の奥義!屈強なラグビー部と野球部を震え上がらせた私の最強必殺業!先生のパンクラチオン、玉藻から護身術にて教わった要訣を重ね合わせ完成した私の宝具の一つ――!」
言うが早いか獣の懐に入り込み
「!?」
「ふんっ!!」
むんず、と
「――!?」
マスターは・・・獄卒の股間を掴み
「性別リッカ、女ヘラクレス必殺――」
――地獄の鬼すら哭いて赦しを乞う態勢に
今、閻魔の所業が降臨する――!!
「『
パンクラチオンで鍛え上げ、刀を握るその握力で、力の限りに股間の逸物と添加物を握り潰す――!!
ぐしゃり、と潰れる感覚二つ
「――殺った!!」
――同時に
「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛――――――――!!!!」
地獄に響き渡る、雄であるが故の断末魔
「今だよ!!」
「クハッ――、く。クハハハハハハハ・・・!介錯をしてやろう!!同じ性別として、あまりに見るに堪えん醜態をな!!」
アヴェンジャーが超速で飛来し、瞬時に心臓を抉り取る
「――はっ!!」
3メートルほどに肥大化していた獄卒の獣の体を、膝、胸、肩と器用にかけ登り
「誅罰、執行!」
チャキリと煌めく白刃にて、一息に首を跳ねる――!
「締め!!ジャンヌ!!」
「『吼え立てよ、我が憤怒』――!!」
猛烈なる火焔が、獄卒の総てを焼き払う――!
「イシスの雨、と。清潔清潔」
左手を念入りに消毒する
――総てが終わりし、裁きの間
「哀れにも、そう哀れにも獄卒の獣は果てた。お前は二つ目の試練を突破したわけだ」
ゆっくりと歩むアヴェンジャー
「その調子で学び、殺し続けろ。お前の魂は未明を潰し、強くなる」
「うん!――ねぇ、ジャンヌ」
「ん?なにかしら?」
「――いつか。私の両親に一緒に会ってくれる?」
すっ、と手を握る
「伝えたいの。勇気をくれる?『私を産んでくれて、ありがとう』って言う、勇気を」
「――勿論ですよ。貴女の親には、色々落とし前をつけさせねばなりませんし」
「――・・・リッカ様・・・」
「その未来を迎えられるか否かはお前次第だ!赦されるのはただ一つ!!」
「はい、皆でせーの!」
「「「待て、しかして希望せよ――!!」」」
――試練を踏み越え、リッカは進む
罪を喰らい、美徳を見つけ出し
――魂の渇望が求めるは、後4つの贄――
「あの時何したの?凄い悲鳴だったけど」
「ラグビー部と野球部の喧嘩を収める為の必殺奥義。私を性別リッカと呼んだラグビー部員と野球部員にお見舞いした必殺だよ」
「???」
「それより、主にってなんなんだろうね?グドーシも教えてくれなかったヤツかな?『リッカ殿は真っ当な貞操観念を持ってくだされ。百合や衆道は学ぶものではなく、感じるものですぞ』って教えてくれなかったんだよね・・・」
「グドーシ?」
「あ、言ってなかったっけ?グドーシはね、私の大切な大切な、ギルと同じくらい素敵な人でね――」
「母は、信じていますよリッカ。私は、貴女の帰還を祈り、信じています・・・」
「ゴールデンおにぎりをたらふく拵えなきゃあいけねぇ!ねこけちまった分腹一杯食わせてやるから戻ってこいよリッカぁ!!」
「えぇ、えぇ。もしもの時は、私が総てを切り裂きましょう――」